この素晴らしい世界にリリカルな魔導師を! 作:ゴマフアザラシ
「サトウカズマ! サトウカズマはいるかあああああ!」
セナが大声を上げながら、屋敷に飛び込んできた。聞くとキールのダンジョンから謎のモンスターが湧き出してきているらしく、最後にダンジョンに潜った俺達が疑われているらしい。当然俺達には何の覚えも無いので説明したところ、
「てっきりあなた達が何かやらかしたと思ったもので。となると、誰か人を雇って調査しなければならないのですが……」
セナが協力してくれないかなーなんて目でチラチラこちらを見ていたが、全員協力する気も無く、その旨を伝えると肩を落として屋敷から去って行った。
「なあ、念のためもう一度聞いておくけど、お前ら本当に心当たりは無いんだよな?」
カズマが心配そうに再度心当たりが無いかと尋ねてきたが、めぐみん、ダクネス、もちろん俺も心当たりなんてあるわけは無い。最後にアクアに尋ねていたが、
「まったく、少しは私を信用なさいな。というかあのダンジョンに関しちゃむしろ、私のおかげでモンスターは寄りつかないはずよ? あの時リッチーを浄化するのに使った魔法陣は本気も本気、物凄く気合を入れて作ったものよ? ユウの魔力も使って強化しちゃったから、魔法陣は今でもあそこにしっかり残ってて、邪悪な存在が立ち入れない様になっちゃってるはずよ!」
それを聞いたカズマと俺は目を見合わせた後、アクアの方を向き、
「なあアクア……今、魔法陣が残ってるって言ったよな?」
「……? ええ、あの時は私の魔力とあそこまで親和性が高いのは驚いたけど、魔法陣の効力も持続時間も私一人の時より強化されてるわ!」
すかさずカズマはアクアの肩をガッっと掴み、
「このバカがあああああー!」
頭を抱えながら絶叫していた。
アクアから魔法陣の件を聞いた俺達は、雪深い道を進みながらキールのダンジョンへと向っていた。
「……すまない、今回は俺も一枚噛んじまった。あの時、浄化に参加してこうなるとは……」
「……ぐすっ……。私のせいじゃないはずなのに……。絶対違うのに……!」
俺は謝罪しながら、アクアはグズりながらダンジョンへの道を歩いていた。今回の騒ぎは自分せいではないと主張しているアクアではあったが、この場合……奥の部屋の魔法陣が見つかって、またカズマが疑われる原因になるのがマズイ。なので証拠隠滅をしなければならないのだが、元の職業上で考えれば複雑な気分になる。
モンスターに襲われることも無く、ダンジョンに到着したのだが、その入口から仮面を被った膝の高さ程度のモンスターが次々と這出ていた。
「何でしょうね、見た事も聞いた事もないのですが」
「というか一見、何の戦闘力もなさそうなのだが」
めぐみんとダクネスが人形を見て首を傾げていると、
「私、この人形を生理的に受け付けないわ。これを見てるとムカムカしてくるんですけど」
「俺もなんか無性に攻撃したくなる……」
アクアと俺は何故かは分からないが仮面のモンスターに対して良くないものを感じていた。その時、
「サトウさん……! もしやモンスターの調査に協力してくれる気になったのですか?」
後ろから声を掛けられたので振り返ると、そこには多数の冒険者を引き連れたセナの姿があった。
カズマはモンスターに怯える人々を守るのは冒険者の義務だ……なんて白々しいセリフを口にしていたが、セナには相当疑われていた。
その後、カズマはめぐみんの爆裂魔法でダンジョンの入口を塞いで閉鎖させようとしていたが、セナが慌てて止めた。なんでもこれだけのモンスターを呼び出せる者は相当な大物である可能性が高いらしく入口を塞いでも『テレポート』で逃げられる可能性があるらしい。カズマはセナの説明に従い、ダンジョンに潜ろうとしていたが、
「カズマ、ちょい待った。ここからでもどうにかなるかも知れない」
俺がそういうと、全員こちらを注目していた。
「何か手立てがあるのですか?」
「ああ、まずはこっからダンジョン内を探索してみる」
セナからの問いかけに答えた俺は『エリアサーチ』を発動させた。
「これは……ベルディアの廃城を探索した時の……」
『エリアサーチ』に見覚えのあるダクネスは何をしようとしているのか察したようだった。
「コイツを飛ばしてダンジョン内の様子を探るんだ。大物がいるかもしれないなら、慎重にいった方が良いだろ?」
サーチャーをダンジョン内に飛ばし、しばらくすると……、
「……
目を見開いて驚いているセナだったが、俺に向かって、
「それは本当ですか? 人影という事は人間でしょうか……」
「人型ではありますけど、このモンスターの発生源ってのと周りに食料や物資があるようには見えないので十中八九、人間ではないですね」
それを聞いたセナは何やら考え込んでいるようだった。ダンジョン内に突入するか思案しているのだろう。俺はみんなを一箇所に集めて、
「……実はな、さっきの人影が見えた場所って、リッチーがいた部屋の前なんだ」
「マジか!? なら魔法陣消すのはソイツ倒さなきゃならないのか!?」
カズマにとっても想定外の事態であるらしく、頭を抱えていた。
「……ユウ、悪そうな顔をしていますが何か手立てがあるのですか?」
「後ろからデュラハンに魔法を撃った時と同じ顔してるわよ」
「……これは、裁判でセナを言い負かした時と同じ顔だな……何を考えている?」
めぐみん、アクア、ダクネスが何かを察したようで、少し疑うような眼差しで俺を見ていた。
……というか、そんなに悪人みたいな顔をしてたんだろうか? 結構、気になるんだが……。
「とりあえず、決めるのはセナと話し合いしてからだって」
そうして、ダンジョン内のモンスターへの対処を考え込んでいるセナの所へ行き、
「すまない、ここから攻撃してみていいか? ダンジョン内の壁はそれなりに壊れるが……」
「……ここから……というと?」
俺の発言に怪訝な表情をしていたセナではあったが、ダンジョン内に潜るリスクと中にいるモンスターの危険性について説明すると渋々了承した。
カズマ達の所へ戻り、
「……というわけで、ここから砲撃を撃ってモンスターを攻撃します」
「「「「……へっ!?」」」」
パーティーメンバー全員は何をするのか良くわかっていないようだったので、詳細に説明する。
「入口から砲撃を撃って途中の壁も全部撃ち抜いて、部屋の前に陣取ってるモンスターを狙う。うまくいけばリッチーの部屋ごと壊せて一石二鳥だ」
「……そんなのできるのか? いくらなんでも無理があるんじゃ……」
「このダンジョンは別に対魔法防御の壁でもなんでもないから、撃ち抜くのは難しくないって。セナの許可も取ってあるしな。壁が壊れてもモンスター退治の一環って事でお咎め無しだってさ」
カズマは成功するか不安なようだが、ここ位なら壁抜きは俺でもできる。本当に得意なヤツは他にいるけどな。
そして俺はダンジョンの入口に向かい……、
「さってと長距離砲撃いってみるか!」
デバイスを射撃戦形態にして、ダンジョンの奥にあるリッチーの部屋に向って照準を合わせる。
『座標特定、距離算出』
『通路の安全確認、ファイアリングロック解除します』
デバイスからの距離情報を得て出力を決定し、非殺傷設定ではなく物理破壊設定に切り替え、
「ロードカートリッジ!」
カートリッジ4発消費した後、
『Blaze Cannon Extension』
「ブレイズ……キャノン!!!」
ダンジョン内に向って砲撃を発射した。魔力砲による閃光と轟音が響き渡る中、それを見ていた面々は、
「本当に撃ちやがった……」
カズマは呆れたような様子であった。
「私は爆裂魔法を撃てなかったというのに……羨ましいのです」
めぐみんは羨ましがっていたが、こればかりは仕方ない。
「まさか壁を抜くとは……その様な想像をする者がいるだろうか。無法者とはこのことか!」
誰が無法者だ! 誰も負傷しないで済む方法を提案しただけだ。あとでゆっくり話し合おうか……ダクネス。
「ダンジョンから出てくるモンスター、ムカムカするから私の分もやっちゃいなさい!」
唯一アクアだけは応援してくれていた。まあ自分の都合だろうが……。
そして砲撃を撃ち終わったのだが、違和感に気付いた。
「……どうした、終ったんだよな?」
カズマが不安そうな顔をしながら俺に近づいてきた。
「……おかしい、今の威力なら向こう側まで貫通してもおかしくないのに、そうなってない。……多分防がれた」
「「「「……なっ!?」」」」
メンバー全員が驚愕の声を上げている一方でセナは、
「防がれた……とは、どういう……」
「言葉通りの意味ですよ。並かそれより上くらいのモンスターなら、これで終ってます。そうじゃないって事は中のヤツは相当な手練だと思います。セナさんの予想通り、大物の可能性が高いです」
とりあえず、もう一度中の様子を探るためにサーチャーをダンジョン内に飛ばし確認すると……、
「……マジか!? 何事もなかったみたいにまだ
ダンジョン内の人影は最初に見た時と同じように佇んでいた。
「ではもう一度撃ってみてはどうですか? そうすれば倒せるかもしれません」
セナが険しい表情で追撃の提案をしてきたのだが、
「相手にダメージがあればそれもありなんですが、おそらくノーダメージです。これ以上の火力だと、めぐみんの爆裂魔法か俺のフルドライブの砲撃になりますし、……それだとダンジョン崩落の可能性があります」
それを聞いたセナがやはりダンジョンに潜って調査するしかないかと言ってきた。そのうち、また仮面の人形がダンジョン内から這出てきていたのだが、近くへ居たアクアへと猛ダッシュして膝へとしがみ付いた。
「……ね、ねえカズマ。何だかこの人形、ジリジリと熱くなってきたんですけど。ていうか、嫌な予感がするんですけど!」
カズマの方へ行こうとしたアクアだったが、嫌な予感がしたらしいカズマはすかさず、アクアから距離をとっていた。そのすぐ後、アクアの膝にしがみ付いた人形が大爆発を起こし、跡形もなく消し飛んでしまっていた。
この仮面の人形は動いているものに取り付き自爆する習性があるらしい。アクアは無事だったが半泣きしていた。というか、あの爆発であの程度で済んでるアクアも結構頑丈なんだな……。並みの冒険者なら大怪我してるところだ。
中々厄介である。動くものに取り付き自爆、少しでもダメージを受ければ自爆……なら遠距離から一体一体攻撃するしかない。この調子だとダンジョン内にどれだけの人形が徘徊している事やら……。さてどうするか……と悩んでいると、
ダクネスが人形の一体に近づくと、無言で殴りつけた。
「えっ!? お前いきなり何してんだよ!」
カズマだけでなく周囲の冒険者達が慌てる中、殴られた人形はダクネスにしがみつき、盛大に爆発した。
「……うむ。これならいける。問題ないな」
爆発を受けたにもかかわらず、ピンピンしているダクネスにセナや他の冒険者達はドン引きしていた。他の冒険者とともにダンジョンに乗り込む計画を立てていたセナではあったが、
「さっきの攻撃でモンスターまでの道はできてるし、大人数で行っても負傷者が増えるかもしれない。だったらここは少数精鋭でダンジョンに潜って、入口まで誘導して一気に叩くほうが良いと思う」
俺の提案にセナは同意したのだが……、
「……またうまい言い訳考えたな。いくらあの部屋に入られると困るからって」
「ユウって口から先に生まれたの? よくもまあ色々出てくるわね」
「お願いですから、おかしな方向にいかないでくださいね? 下手をすると大問題を起こしそうで……」
「本当にな……。一歩道を踏み外すと、とんでもない人間になりそうだ」
カズマ、アクア、めぐみん、ダクネスが呆れたような、どこか心配するような表情で俺に語りかけてきていた。
ともあれ、ダンジョンに潜るのは、俺、カズマ、ダクネスとなり、めぐみんはモンスターを入口までおびき寄せた際の切り札としてダンジョン入口に残ることになったのだが、アクアについてはアンデッドが寄って来る可能性があるため、これまた入口で留守番となった。
「じゃあ、先頭はダクネスで、その後ろが俺、最後尾のカズマは『敵感知』と『千里眼』でサポートでいいよな?」
「ついに私を盾代わりとして使うか! ユウもカズマに染まってきたな!!」
「安心しろ。ダクネスに人形がしがみつく前に全部爆発させてやるから。お前が最前線なのは万が一に突破された場合の措置だ」
ダクネスが嬉しそうに俺の方を向いて拳を握っていたが、陣形的にこれが最善ってだけである。カズマも同意し、俺達は二度目となるキールのダンジョンの中を進んでいった。
……まあ、今回は真っ直ぐ進むだけだけど……。
主人公の魔力がアクアの魔力と親和性が高いのは、臨死体験時の影響です。
知らず知らずのうちに今回の件の片棒を担いだのはやはり、幸運の低さでしょうね……