この素晴らしい世界にリリカルな魔導師を!   作:ゴマフアザラシ

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この仮面の悪魔に滅びの光を

俺、カズマ、ダクネスの三人はダンジョンに入り、先ほどの砲撃で出来た道を歩いていた。

 

「……しっかし、俺の魔力でアクアの魔法陣が強化されるって、何でだろうな?」

 

ダンジョンに来る前にした話ではアクアと俺の魔力は親和性が高いらしい。別にアクアとは血縁があるわけでもないんだよな。

 

「……確かに不思議だな。もしかしたら二人は知らない内に何かの縁があったのかもしれんぞ」

 

ダクネスがこちらを振り向いて微笑を浮べながら、そんな事を口にした。

 

……アクアと縁か、何にも思い浮かばない。けど、そこまで相性が良いんならミニアクアな融合騎でもいたら、ミッドチルダ式の俺でもユニゾンができたりして。

……でも仮にできたとしても、アクアとだと息が合わなそうだ。でかいカエルを見るたびに俺の中で叫び声を上げるアクア……。うん、絶対無理だ。

 

勝手な想像をしながらダンジョンを進んでいくと、

 

「ユウ、前方に2体と左右に1体ずつ『敵感知』に引っかかった」

 

カズマが『敵感知』と『千里眼』で人形の位置を特定し、それを俺が狙撃する。このコンビネーションはダンジョン内では使い勝手がいい。明かりを付ける必要がないので、アンデッド以外のモンスターに対しては有用な手段になりそうだ。

しかし、本当に自分にしがみつく前に人形を全て爆発させられているダクネスは、つまらなそうにしていた。

 

「……もう少し加減して欲しいのだが。できれば人形を2,3体、私にもまわしてくれないか……」

 

「じゃあ試しにやってみるか? ダクネスの硬さは分かってるから大丈夫だと思うけど……」

 

そうして、人形の迎撃をダクネスに任せる事にしたのだが、

 

「二人とも、見ろ!当たる、当たるぞ! こいつらは私の剣でもちゃんと当たる!」

 

ダクネスの剣を避けようともしない人形達をバサバサ切裂かれていく。もちろん攻撃を受けるたびにダクネスの至近距離で爆発していくのだが、ダクネスは平気な顔をして突き進んでいた。

……というか、今まで攻撃が当たらない事を気にしていたんだろうか? だったら意地を張らずに攻撃用のスキルでも取ればいいのに……。

 

俺の後ろのカズマも同じ事を考えていたらしく二人で顔を見合わせながら、ため息をついていた。この後もリッチーの部屋に向って真っ直ぐ進むだけだったので、特に迷うことなく目的地まで辿り着いた。

 

「……どうしたもんかな。アレ、どう考えてもこのモンスターの主だろ」

 

俺達の前には『エリアサーチ』で見た通り、リッチーの部屋の前で胡坐かいて、地面の土をこね回しせっせと人形を作る影がある。その影は黒いタキシードに白い手袋、そして人形と同じ仮面をつけていた。俺はソイツを見るなり、

 

「……フルドライブ!」

 

目の前の仮面の人物に良くないものを感じてしまい、デバイスをフルドライブ形態にして構える。

 

「……おい、何やってるんだ!? それってデストロイヤーの時の……」

 

「ここで、あんな威力の魔法を使うつもりか!? 落ち着くんだ、ユウ!」

 

カズマとダクネスは必死に俺を止めようとしているが、あの仮面の人影からウィズと対峙した時かそれ以上の何かを感じ取ってしまっていたので、警戒を解くわけにもいかず、構えたままジッと見据えていた。

 

「二人とも、アレはマズイ! 俺が抑えているうちに早く逃げてセナに逐一報告してくれ。俺も隙を見てここから脱出するから」

 

その言葉にカズマとダクネスは驚きながら、仮面の人影の方を向いていた。俺達が騒いでいるのが分かったのか、仮面の人影は、

 

「……我がダンジョンへようこそ冒険者よ! 我輩こそ魔王軍の幹部にして、悪魔達を率いる地獄の公爵! この世の全てを見通す大悪魔、バニルである!」

 

バニルと名乗った目の前の人物は、セナの予想通りの大物――しかも魔王軍の幹部であるらしい。コイツ……少なく見積もっても同じ幹部のベルディアよりも相当強い。現状、ダンジョン内でバニルとやりあうのは得策じゃない。ここで大出力の魔法を使えば、崩落の危険性もあり俺はともかくカズマやダクネスを巻き込んでしまう。

 

「……ほう、先ほどの攻撃は貴様か。平和主義者のわりにいざ戦闘となれば容赦のない物騒な男よ。もっとも我輩のバニル式殺人光線で全て相殺させたがな、フハハハハハ!」

 

……なんだろう? バニルの発言にはイラッと来るものがある。だけどここは堪えて撤退するのが得策だ。

 

「二人ともさっき言ったとおり、ここは逃げるぞ。コイツは多分ベルディアより強い。しかも場所も悪すぎる」

 

これに対してカズマは同意したのだが、

 

「何を言う! 女神エリスに使える者が、魔王軍の幹部、しかも悪魔を目の前にして引き下がれるか! ここで刺し違えてでもコイツを倒す!」

 

なんで、ダクネスはいざって時にはこんなに頑固なんだろう……。冬将軍の時もそうだし、デストロイヤーの時だってそうだ。もう一回酢の一気飲みでもやらせるかな。

 

「いい加減にしろダクネス。いいからここは引けって! でないとお前を”ララちゃん”って呼び続けるぞ。ララちゃん! やめて欲しかったらさっさと逃げろ! ララちゃん」

 

「ユウこそ時と場合を考えろ! それとララちゃんって呼ぶなあああああ!!!」

 

ダクネスに俺の話を聞かせるために、わざと”ララちゃん”呼びをしていたのだが、俺とダクネスのやり取りを見ていたバニルは面白そうに口元を歪ませ、

 

「そこの茶髪の男に風呂場で裸を見られた際、己の割れた腹筋を見られていないか心配している娘よ。何をカッカしてるのかは知らぬが、怒りっぽい時は小骨を食べると良いと聞く。我輩の仮面の一部には魔龍の骨が使われているが、一口ならかじって良いぞ?」

 

「ふふ、腹き……! おお、お前、ふざけるな、魔王の手先め! 二人とも、コイツの言う事は嘘っぱちだ! 私の腹筋はそんなに割れてないし、そんな心配もしていない!」

 

「お、おい落ち着けダクネス、まずはちょっと冷静になれ!」

 

「そうだって! 俺だって腹筋割れてるんだから、そんなの気にするな」

 

「ユウ、お前まで煽るんじゃねえええ!!!」

 

剣を振り回し斬りかかろうとするダクネスを抱き留めていたカズマではあったが、それに気も留めずにバニルは胡坐をかいたまま、

 

「まあ、落ち着くがいい。我輩は、別にお前達と争うためにこの地へ来た訳ではない。魔王の奴に頼まれた、とある調査。そして、アクセルに住んでいる、働けば働くほど貧乏になるという不思議な特技を持つ、ポンコツ店主に用があって来たのだ」

 

バニルの言葉に俺達三人は顔を見合わせた。

俺とダクネスはいつでも斬りかかれる様に準備をし、カズマが床に座ってバニルの話を聞いていた。要約すると、バニルは魔王軍の幹部といっても城の結界の維持のみを請け負っているなんちゃって幹部である事、悪魔族の食事は人間の悪感情であり、人間を壊したり傷つけたりするつもりは無いのだそうだ。ちなみにバニルの好む悪感情は”期待が裏切られた時の残念な悪感情”であるらしい。

 

……碌でもないな。

 

魔王に頼まれた調査のついでに主のいないキールのダンジョンに勝手に住み着いてしまったそうだ。

 

「言っとくが、アンタの人形のせいで街の人間がえらい目にあってるんだ。人間を傷つけるつもりが無いって嘘じゃねえのか?」

 

「我輩は、こやつらを使いダンジョン内のモンスターを駆除していたのだが。外にあふれ出していると言う事はダンジョン内にモンスターはおらぬようだな。それならば、次の計画に移行するとしようか」

 

……コイツ、見通す悪魔とか言ってなかったか? 人形の動向を全然見通せてないじゃないか。やっぱり嘘っぱちか……。

 

「ふむ、この程度の事で見通す力を使うまでも無い。魔法使いの娘を無理やりにでも自分の訓練に参加させようかと悩んで日夜自室で頭を抱えている男よ」

 

……なっ!? そこまで悩んではいないはず……だよな?

 

「おい、めぐみんを無理やり参加させるつもりだったのか!? お前の訓練に!? やっぱりお前って……」

 

「無理やり引きずって参加させるだと!? 私ならいつでも喜んで参加するというのに!」

 

「無理やり引きずってやらせるなんて思ってないし、誤解だ! 俺はただめぐみんの体が……」

 

そこまで言った時、カズマとダクネスが顔を見合わせ、俺の方を向き、

 

「めぐみんの体って……そうだったのか!? 頑張れよ! 人の趣味には文句は言わないって。ただ相談ならいつでも乗るからな!」

 

「……そうか。今まで気付かずに済まなかった。これからはなるべく邪魔をしないように気をつけよう」

 

……違う、違うんだ! 後できっちり説明するか……。一応、今はバニルの方が優先だ。

 

「今のはなかなか美味な悪感情であった。では話を続けようか。もう、限りなく永く存在した我輩にはな……。昔からとびきりの破滅願望があるのだ」

 

バニルの願望とは至高の悪感情を食した後、華々しく滅び去りたいというものだった。バニルが考えた方法は、ダンジョンを手に入れ苛烈な罠や自分の部下達を待機させ、冒険者達に挑ませる。バニルの部屋には宝箱があり、その部屋に辿り着いた冒険者達に”自分を倒し巨万の富を手に入れよ”と言い放ち、自分が倒され意識が薄れゆく中で、宝箱を開けて『スカ』と書かれた紙を見ながら呆然とする冒険者達を見てみたい……らしい。

 

……マジで碌でもねえ。

 

「本当に可哀想だから、それだけはやめてやれよ……。ていうかこのダンジョン、コイツが壁破ったせいで、もうダンジョンの機能が無いだろ。他に移った方がいいんじゃないか?」

 

カズマが少し引きながら、バニルに返答すると、

 

「……ふむ、そこは我輩も悩んでおったのだ。まさか壁を抜いて攻撃する輩がおるとは思っていなかったのでな。我輩の前に現れたの魔力の玉を見て、見通す力で攻撃が来る事を察知したのだからな」

 

まあ、確かに壁抜きやったのは俺だけど、バニルの都合に合せてやる必要はない。それにそんなのはやり方によって如何とでもなる。

 

「……ほう、悪くは無い案だ。入口近くに我輩の隠し部屋を作り、ダンジョンを散々探し回って疲れ果てた冒険者に、”実は入口近くにおったのだ”と言い放つか」

 

バニルの奴、さっきから俺の心を見通してるってのか!?

 

「ユウ、お前ってイタズラっ子だったのか? 何だよその残念な方法は……」

 

「普通そんな事は考えんぞ!? どれだけ外道な思考をしているのだ!」

 

カズマとダクネスは残念なものを見る目で俺を見ていたが、別に考えるだけならいいじゃないか。相手の裏をかくのは常套手段だろ……。

 

「まあ、これ以上あの人形を作らないんなら、俺達は何も言わないからさ。俺達はアンタの後ろの魔法陣に用があるんだ。実は、そこの部屋にある魔法陣を消しに来たんだよ」

 

「それは何ともご親切な事で。この忌々しい魔法陣のおかげで部屋に入れず困っていたのだ」

 

俺達が魔法陣を消しに来た事を言うと、バニルは興味を持ったようで、見通す力で魔法陣を作成した主――アクアの事を知ったようで、一発きついのを食らわせてやると言っていた。

 

「アクアのとこ行くんなら、通すわけにはいかない。ここで止まれ!」

 

「貴様がアクアに危害を加えるというのなら、引く訳にはいかない。女神エリスに仕えるクルセイダーとして、ここは通さぬ!」

 

俺とダクネスが戦闘態勢に入ったのだがバニルが俺の方を見て、

 

「……ほう、見慣れぬ魔道具を持つ男よ。貴様の未来を完全には見通せぬな……。力量だけではなく、何らかの加護を受けておる」

 

……何の話だ、俺が加護を受けている? ダンジョンに入る前にアクアが何かしたのか?

 

その後もカズマとダクネスに対して、お互いちょっと異性として興味があるくせに同じパーティーという事で一線を越えられない小心者ども……などと言って挑発というか、多分本気でからかってるな……アレ。

結局、痺れを切らしたダクネスが先手を取って斬りかかった。ダクネスの攻撃は当然ながらバニルに当たるわけも無く、高笑いしていたのだが、

 

「口ばかりは一人前のくせに今一つ派手な活躍をし無さそうな方の男はどこへ消えた?」

 

バニルはいつの間にか消えていたカズマの姿を探していたのだが、カズマは『潜伏』を使い気配を消して闇に紛れていた。

 

ナイス、カズマ。なら俺は……。

 

そうしてバニルに斬りかかると見せかけて近距離で集束系のバインド、『レストリクトロック』を発動させ、その場に拘束した。そして、カズマはバニルの背後から全体重を乗せた飛び蹴りを仕掛け、蹴りを喰らったバニルの体が崩れ去り、仮面のみが残されていた。かなり、あっけなかったがバニルを倒したと思ったその時、

 

「もしや討ち取ったとでも思ったか? 残念、何のダメージもありませんでした! おおっと、汝らの悪感情。大変に美味である」

 

バニルの本体は仮面で体は魔力で作り出した偽者らしく、体にダメージを与えても無意味なのだそうだ。バニル自身も俺達にあまり時間をかけるつもりは無いらしく、必殺技を使うと言って、ダクネスに仮面を投げつけた。

 

……これってアレだよな、どう考えてもダクネスの体がバニルに乗っ取られてるんだよな。仮面をつけたダクネスが、ゆらりと顔を上げると……!

 

「小僧ども聞くがいい!我が力により(どうしよう! 私の体が乗っ取られてしまった)どうだこの娘攻撃できるものなら(一向に構わん! 遠慮なく攻撃してくれ! これは絶好のシチュエーションだっっ!!)」

 

ダクネスの体から言葉を発するバニルに俺とカズマは顔を見合わせて、

 

「『チェーンバインド』!」

 

『チェーンバインド』――魔力の鎖でダクネスをバニルごと拘束し、洞窟の入口まで連れて行きアクアに浄化してもらう事にした。どうやらバニルに体を乗っ取られている間に抵抗しようとするとダクネスには激痛が走るらしい。まあ、ダクネスは喜んでいたので、そこは見なかった事にしよう。

 

「貴様! 仲間を縛り上げて引きずるとは……(体を乗っ取られた挙句、罪人の様に縛られ引きずられるとは、何というご褒美だ!)こうなったら貴様らどちらかの体に……」

 

『Sealing』

 

おそらく、仮面をダクネスから外そうとして体から出て行こうとしたのだろうが、すかさず、『封印』の魔法を発動させ、ダクネスから出て行くのを防いだ。

……『封印』ってこんなでも効果があったのか。本当に効果があるのかは試すまで分からなかったけど、新たな発見だ。

 

「小僧、なんだその魔法は!? プリーストでもないのに封印とは!? 貴様の全てを見通す事ができん!?(重ねて魔法で封印とは……まるでケダモノ扱いされているようだ! 今日は素晴らしい日ではないか!!)」

 

バニルの誤算は俺をちゃんと見通せない事とダクネスの体に入ってしまった事だ。魔力でできた体のままだったら、拘束したところですぐに逃げられて消耗戦になってたところである。

そして、ダクネスを連れてダンジョン入口に着いたところで、

 

「『セイクリッド・エクソシズム』ーー!!」

 

いきなりアクアが浄化魔法らしきものをダクネスに対して放ってきた。悲鳴を上げるバニル兼ダクネスではあったが、バニルを浄化することはできなかった。どうやら聖騎士のダクネスは光の魔法に対して特に強い対性があるらしく、一旦封印を解除してバニルを開放すべきというが意見がセナから出ていた。

 

「なあ、アクア……今のバニルって要は魔力そのものがダクネスに取り付いている状態なのか?」

 

「ええ、そうだけど……何するつもり?」

 

「なら、純粋魔力攻撃設定でバニルだけ消し飛ばせばいいって事か」

 

「「「「……へっ!?」」」」

 

俺の言葉に全員が素っ頓狂な声を上げていたが、

 

「そんな事ができるのですか? 中の悪魔だけを消し飛ばすなど……」

 

「昔、似たような事をやったヤツがいてな。多分大丈夫だと思う。」

 

めぐみんが不安そうに質問してきたが、とりあえずやってみるしかないと思う。そして、ダクネスの方を向き、

 

「ダクネス、今から手加減抜きの全力で攻撃するから、早い内に気絶しとけ。死にはしないけど、物凄く痛いから」

 

「貴様、仲間を手加減抜きで撃つとは、本当に人間か? (ああ! 絶対に気絶などせん! 思いっきりやれ!!)」

 

そうして、ダクネスをバインドで空中に固定し、魔法の準備に取り掛かった。

 

「射砲撃殲滅シークエンス『S・B・A(シューティング・ブレイズ・アサルト)』!」

 

「これって、屋敷でサキュバスに使おうとした魔法よね……?」

 

「ええ、炎を纏った剣の魔法と射撃魔法と砲撃です……ほ、ほほ、本当にダクネスに撃って大丈夫なのですか!?」

 

アクアとめぐみんが心配そうな表情を浮かべる中、カズマだけは何故か顔を青くして無言で震えていた。そして、

 

「ファイアッッ!!!」

 

全力で撃ち出した魔力刃、射撃魔法、砲撃魔法の全てがダクネスに向っていき大爆発を起こしていた。

 

「ダクネスさんは本当に大丈夫なんですか? あの攻撃では最悪……」

 

セナもカズマ同様に顔を青くしていたが、純粋魔力攻撃は相手の命を奪う事はない。そんな心配は無用だ。

攻撃による煙が晴れてきたのでダクネスの様子を確認すると、

 

「フハハハハハハ!! 素晴らしいぞ娘! 伊達に腹筋が割れておらぬな。無駄に高い魔法防御を持つ貴様でなければ危ないところであったわ! (腹筋が割れているなど噓っぱちだ! 信じるんじゃない!!)」

 

……あれで、無事ってダクネスどれだけ魔法防御高いんだよ。あとの手立ては……。

 

「(めぐみん爆裂魔法を撃て!)」

 

おそらく、ダクネスの言葉だろうが、めぐみんに向かって爆裂魔法を撃つように促していた。対するめぐみんは爆裂魔法を喰らえばダクネスも無事では済まないと思ったようで躊躇っていたのだが……、

 

「フハハハハハ! アークウィザードの小僧よ! ここは意地を張らずにそこの小娘に任せるが吉。爆裂魔法であれば我輩の破滅願望も叶えられるのでな。この娘はどうなるかは分からぬが……。なに、その小娘なら可能であろうて。その者は確かに天才の域の人間だ。()()()()()()()! フハハハハハハ!!!」

 

バニルの言葉に何かが切れたように感じた俺は、詠唱を始めてしまっていた。

 

「咎人達に、滅びの光を」

 

俺の詠唱を聞いたアクアとカズマが不安そうに、

 

「ユ、ユウ……なんか爆裂魔法並みに物騒な詠唱をしてますけど……」

 

「お、おい何する気だ! ヤバい感じしかしねえぞ」

 

二人を無視して、更に続ける。

 

「星よ集え、全てを撃ち抜く光となれ」

 

ダクネスの方を向いて集束していく魔力にその場の全員が何も言えずに固まっていた。

 

「貫け! 閃光!」

 

さらに集束していく魔力が巨大な球を作り出し、はちきれんばかりに膨らんでいた。

 

「何だ、この魔法は!? 爆裂魔法と同等かそれ以上の……(これはデストロイヤーに使おうとした魔法! これを出すとは……ああ、遠慮なくやれ!)」

 

言われなくたって全力でやってやるよ! 消し飛べバニル!!

 

「『スターライト……ブレイカー』ッッ!!!」

 

ダクネスに乗り移ったバニルごと星の光で撃ち抜き、あたり一面に轟音と閃光そして衝撃波が駆け、空一面が俺の魔力光と同じ茜色に染まっていた。

 

スターライトブレイカーで撃ち抜かれたダクネスはというと、バニルは消し飛ばされたらしく、仮面は木っ端微塵に破壊され、大した外傷は無かったが相当な衝撃ではあったらしく気絶していた。

 

ダクネスを降ろし、アクアに容体を見てもらったが、やはり怪我も無く気絶しているだけなので、じき目を覚ますとの事だった。

 

その後、目が覚めたダクネスではあったが、

 

「今日は縛られた挙句、ユウの全力の魔法で撃たれたのだ! まさかこの様な経験をできる日がこようとは……。ああ今日という日を一生忘れる事はないだろう!!」

 

一人でご満悦だった。

その後、俺はセナや周りの冒険者達にまるで魔王や悪魔でも見るかの様な目で注目されながら帰路に着いた。

 

……また、変な噂が広まるんだろうなあ……。

 




エピローグまで行こうと思っていましたが、長くなったのでここで区切ります。



S・B・A(シューティング・ブレイズ・アサルト)
サキュバスの時に使おうとした、射砲撃の全力攻撃。魔力刃、射撃、砲撃を一気に叩き込む攻撃です。今回はフルドライブなので、屋敷で撃とうとしたときより威力はずっと上です。
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