この素晴らしい世界にリリカルな魔導師を!   作:ゴマフアザラシ

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バニルの提案と中級魔法の習得

「つまり、この店にしかない常備できる売れ筋商品が欲しいと」

 

ウィズ魔道具店へ呼び出しを受けた俺は、バニルと先日の騒動の補填について、打ち合わせをしていた。

 

「うむ、その通りだ。欠陥店主に任せておくと、おかしな商品ばかり仕入れてきて商売にならぬのでな。あれはもう特殊能力の域だ、何ゆえ使えぬアイテムばかり仕入れてくるのやら」

 

「……つっても元の場所の杖だの何だのは、ここじゃあ造れねーぞ。造れたとしても、それを商品になんてしたら俺の首が飛ぶだけじゃ済まないし」

 

バニルの提案に俺の考えを返したのだが、ミッドチルダにだって技術の流出や保護に関する法はあったりする。カートリッジの製作依頼だって結構ギリギリの線なのだ。というか、バニルは普段からこんな感じに話せないもんか……、人をおちょくらなければ、普通に話しやすいのだが。

 

「なに、先日パーティーの女性陣より蔑みの目で見られた男よ、貴様の杖の複製品を造った所で制作費が莫大になるだけで、赤字にしかならぬのでな。汝に造って貰いたいのは……」

 

この余計な一言が無ければいいんだが、思わず撃ちたくなっちまう。我慢してバニルの話を聞き終わり、屋敷へ戻った。

 

 

 

「ユウ、お帰りなさい。バニルとの打ち合わせはどうでしたか?」

 

「まーた店を滅茶苦茶にしてないだろうな?」

 

めぐみんとカズマが出迎えてくれたが、先日の騒動のせいで色々心配を掛けていたようだ。

 

「それに関しては心配しないで良い。それとスキルも習得しなきゃならなくなった」

 

「……ん、新しいスキルか。何を習得するのだ?」

 

先日の騒動でその場にいたダクネスも心配していたらしく、俺が屋敷に帰ってからすぐに話しに加わってきた。

 

「必要なスキルは『中級魔法』だな」

 

「今更、中級魔法とは何をするつもりだ……?」

 

ダクネスの疑問ももっともだろう。俺に中級魔法を必要とする状況は今のところ無い。そもそもアークウィザードのスキルを習得する必要すら無いのだから。なので、俺は全員に事情を説明した。

 

「「「「マジックスクロール製作!?」」」」

 

全員の声がハモり、俺の顔を見ていたので、

 

「正確には、中級魔法を基本にしてある程度のアレンジをしたもの……だけどな」

 

そう、バニルから提案されたのは中級魔法に何らかの追加効果を持たせたマジックスクロールの設計である。

マジックスクロールとは魔法が封じられた一回きりで使い捨ての魔道具であり、魔道具店の売れ筋商品の一つである。駆け出しの街アクセルでは高価な上級魔法の物より、比較的安価な中級魔法のマジックスクロールの方が売れ行きは良いのだそうだ。ただし、ただの中級魔法のスクロールに関しては他の魔道具店でも取扱っているので、”ウィズ魔道具店にしかないマジックスクロール”という触れ込みで売り上げを伸ばそうとしているらしい。

 

「確かにユウは初級魔法でも殺傷力を持たせられるので、何かしらの効果を足す事もできるかも知れませんが、どうするつもりですか?」

 

「それは実際にスキルを覚えてからかな。それからどんな風に魔法を改良するか決めようかと思ってる」

 

めぐみんは職業柄か興味を持ったようだったが、ここは実際に使ってからじゃないと思いつかないものもある。

その夜、冒険者カードで『中級魔法』を習得し、次の日に街の外に出て試し撃ちをしていた。戦闘で使える中級魔法は次の通りで、

 

『ファイアボール』:火球を飛ばす

『ライトニング』:対象に雷を落とす

『フリーズバインド』:冷気を持つ霧を発生させて、対象を凍らせて動きを封じる

『ブレード・オブ・ウインド』:風の刃を飛ばして攻撃を行なう

『ウインドカーテン』:渦巻く風を発生させて矢などを防ぐ

 

俺が何らかの手を加えて、スクロールに封じるのはこの中のどれかにはなるが、実際に使ってみて思いついたものもあるので、アクアに協力を頼むと……、

 

「外は寒いから嫌。暖炉の前から動きたくないの~」

 

この調子である。今は冬、確かに気温は低く、雪も降っているので屋敷から出たくないのは分かるが、だからって一日中ゴロゴロしてるのもどうかと思う。

 

「アクアが無理ならば、私が行くが……」

 

「ダクネス、気持ちは嬉しいけど今回はアクアじゃないと駄目なんだ。結界とかの防御フィールドの魔法を使えないといけないから」

 

ダクネスの申し出にそう答えると、少し残念そうな顔をしていた。そんな顔をされると悪い事をした気になってしまう。

 

「とはいっても、アクアが無理だってんならバニルにその辺り相談してみるか。ギルドでプリーストの募集したって集まらないだろうし」

 

その言葉にアクアがピクっとして反応し、

 

「ちょっとユウ! 悪魔なんてね、人間の悪感情を食料にしてる寄生虫なんだから、そんなのを頼るのはやめなさい。そもそもソイツの言う事なんて聞く必要なんて無いんだから!」

 

「つってもな、ウィズの店に被害出してあのままって訳にはいかないだろ? ウィズには何だかんだで世話になってるし……」

 

アクアはバニルが関わってるのが気に入らないらしく、おそらくはそれもあって協力はしたくないのかも知れない。その時、

 

「アクア、お前がここ最近やった事といえば、ベルディアに止め刺したくらいだよな? デストロイヤーの結界もユウが破壊したし、バニルと戦った時だってダクネスとユウでどうにかした。……パーティーの役に立つ気が無いんなら回復魔法を俺に教えろ。そうすればお前は何もしなくていいだからな!」

 

「嫌ああああ! 回復魔法だけは嫌あああああ! 私の存在意義を奪わないでよおおおおお!!」

 

アクアがどうしても協力してくれなさそうなのを見越してか、カズマが結構えげつない言い方でアクアに詰め寄り、アクアが大声を出して泣き出してしまった。

 

「今回はアクアじゃないと駄目なんだ。頼むから! 終ったら、食堂でカエルのから揚げとシュワシュワでどうだ?」

 

泣いていたアクアがチラッと俺の方を向き、

 

「おつまみセットとカエルのから揚げをもう一皿追加なら……」

 

……どうやら嘘泣きだったらしい。まあここはアクアがいないと始まらないので、そちらの言い分に従うとしよう。

 

 

次の日、アクアを連れて街の外で中級魔法のアレンジを試してみようと思ったのだが、

 

「……ゆんゆんは俺が呼んだからともかく、何でみんなして付いてくるんだ?」

 

なぜかメンバー全員が俺に付いてきていた。

 

「たまには外にでないと気が滅入るからな」

 

「ユウが中級魔法をどの様に使うか興味がありまして……」

 

「ところで、魔法を撃つ的はいらないか? 必要なら私がいつでも的になってやろう!」

 

カズマとめぐみんはともかくダクネスは、どうしてこんななんだろう? 今日は的なんていらないんだが……。

とりあえず目的地に到着しアクアの前面に対魔法の結界を張ってもらい、そのまま立たせている。まずは普通に中級魔法を使って結界で防げるか確認をする。

 

「『ファイアボール』ッ!」

 

俺の右手から火球が飛び出し、アクアの方へ向かっていったが火球はアクアの結界に阻まれてしまい、かき消された。当然アクアは無傷である。

 

「どう? 流石は私の結界ね! この程度の魔法じゃビクともしないわ!!」

 

ドヤ顔で勝ち誇っているアクアではあったが、そうじゃないとわざわざ結界を張ってもらっている意味がない。

 

「じゃあ次は同じ魔法で結界抜けるか試してみるから、気をつけてなー」

 

そう言って俺は再び『ファイアボール』をアクアに向かって放ったのだが、

 

「きゃあああああ! 本当に結界抜けてきたあああああ!!?」

 

アクアが悲鳴を上げながら俺の魔法を避けていたが、『ファイアボール』の着弾点の爆発で少し吹っ飛ばされたようだ。

 

「な、なんて羨ましい……。次は私が盾代わりになってやろう! 安心しろアクア」

 

「今のはどうやったのですか? 威力自体は最初に撃った方と変わらないはずです……」

 

「威力が変わらないのに結界を破るなんて、どうやったら……」

 

ダクネスのいつもの発言はともかく、めぐみんとゆんゆんのアークウィザードコンビは中級魔法でアクアの結界を抜いた事で、信じられないといった表情をしていた。

 

「それじゃあ種明かし。ゆっくりやってみるから良く見てくれ」

 

そしてまた火球を掌の上に作り出し、その表面に膜状の魔力を張る。

――『ヴァリアブルバレット』、攻撃魔法の弾を膜状のバリアで包み、相手の防御フィールドを中和させ、魔法本体をフィールド内に突入させる、”射撃魔法最初の奥義”と呼ばれる技術である。

 

「この魔力の膜で結界を一時的に中和させたんですか?」

 

「その通り、別に相手の防御結界を破るのは力押しだけじゃなくて、こんな方法もあるってこと。ゆんゆんは中級魔法も使えるから、そのうちコイツも教えても良いかと思って見せてみたんだ」

 

ゆんゆんは感心したような表情で俺の『ファイアボール』を見ていた。こんな感じで魔法を使うのは、おそらく紅魔族でもいないのだろう。

とりあえず実験は終了したので、アクセルに戻ろうとしたのだが、

 

「……も、もう終わりなのか!? せめて後一回くらい試してみて私にも一撃……」

 

ダクネスだけは残念そうに俺を見て立ち尽くしていた。

 

アクセルに戻った俺は、約束どおりアクアに食堂で奢り、帰りに図書館で”マジックスクロール製作入門”という本を借りて屋敷に戻り、その本を読み終える頃には、一日が終っていた。

 

翌日、バニルへ渡す見本としてマジックスクロールの製作に取り掛かった。

――マジックスクロールとは専用の紙に魔力を加えた触媒で術式を書き、開くと魔法が発動するようにした魔法具の総称。一度使うと、スクロールの中の魔力は無くなり、書いている術式も消えるので使い捨てのアイテムになってしまう。

昔々はミッドチルダでも砂や液体を使って魔法陣を書いていた時期があったらしい。現代と比べると随分とアナログな方法だとは思うが、そんな時期があったのだと思うとそれはそれで不思議な気分になる。

マジックスクロール試作一号ができた頃、

 

「ユウ、いますかー?」

 

と言いながらめぐみんが部屋に入ってきた。

 

「どうしたんだ? 今日の爆裂はできれば俺以外に頼んで欲しいんだけど……」

 

「いえ、そうではなくてですね。私に手伝える事はありませんか? 紅魔の里にいた頃、魔力繊維を扱う服屋でアルバイトをしていた事もありますし」

 

……意外である。言っちゃ悪いが、めぐみんが普通に働いてる姿が想像できない。すぐにトラブルを起こして辞めてしまうイメージしかない。

 

「……今、何か失礼な事を考えませんでしたか?」

 

「めぐみんって結構我慢強い娘だったんだなって思いました」

 

「つまり、私は喧嘩っ早いと! 紅魔族は売られた喧嘩は買う種族です! なんなら今買いましょうか?」

 

これである。話が進まないと思い、何とかめぐみんを宥めてスクロールの試作品を作って貰う事にした。その途中……、

 

「おい、なんかスクロールが紅くなってるんだけど……」

 

めぐみんもヤバイと思ったらしく、すぐに自分の作っているスクロールから離れたので、

 

「『フリーズ・バインド』!」

 

俺が紅くなったスクロールをすぐさま氷漬けにした。

 

「……めぐみん、これはどういうことだ?」

 

「素晴らしい判断ですね! あのままだったらボンッとなっていたかもしれません」

 

めぐみんが聞き捨てならないことを言ったような気がしたので、色々事情を聞くと、めぐみんは持って産まれた魔力が強すぎるらしく、魔力制御がうまくないらしい。先ほどの服屋でも同じ事をして不採用だったのだそうだ。

というか、それってアルバイトしてたって言わないよな……。

 

「私もレベルが上がって、そろそろ魔力制御の技術も上がったかと思ったのですが……」

 

それは無理な話だ。爆裂魔法はそもそも全力で撃つのが当たり前の魔法なんだから、撃つ前に自分に魔力を留めて置く時以外はそこまで細かいコントロールは必要としない。それを覚えたいのなら、他の魔法を覚えて身につけるしかないはずだ。

 

「……なあ、お前とはやては姉妹かなんかか? 背は小さい、使う魔法は同系統、おまけに魔力制御が苦手なのもそっくりってどういう事だ?」

 

「なっ!? 背が小さいのと魔力制御は関係ないでしょう! 私だってそのうち背が伸びますとも! ユウこそはやての胸揉みを凝視していたそうではないですか!!」

 

目の前であんなのやられたら、そうもなるだろ! 見たくて見たわけじゃ……、いや、少し良かったかもと思ってしまったが……。

 

「じゃあ、他人の胸揉むのまで同じになったら、めぐみんを”ミニだぬき”って呼ぶからな!」

 

「そんなのするわけは無いでしょう! そもそも何で”たぬき”ですか!? もっとかっこいい二つ名にして下さい!!」

 

ツッコむところそこかよ……、と思いつつ結局めぐみんにはマジックスクロール製作は無理だと判明したので試作品は全て俺が作り、ウィズ魔法具店に届ける事になった。

 

俺のマジックスクロールを見たバニルは、

 

「……ほう、結界突破を付加した『ファイアボール』とは、やはり面白い物を作るな。節穴店主よ、これならばこの街だけでなく王都でも需要はないか? 貴様のテレポート登録先の一つだ、そちらにも売り込みに行ってはどうか?」

 

「良いかもしれませんね。ありがとうございます、ユウさん。これでこれからのお店の赤字も少なくなりそうです」

 

バニルとウィズも満足したらしく、生産ライン等はバニルがどうにかできるという事だった。とりあえず、先日の補填の分はこれで終了した。ただ、本当に売れるかはまだ分からないので様子見でアクセルには留まらないといけないが。

店から去ろうとした時、

 

「茶髪の小僧にも伝えるがいい。汝の商品ができたら我輩に見せろとな。それと違う中級魔法でもアレンジができたら持ってくるがいい。それなりの値で買い取ろう」

 

何気に上機嫌なバニルである。売れそうな商品を手に入れたのが余程嬉しかったのだろう。そうして屋敷に戻ると、

 

「……なんで庭に小さいクレーターがあるんだ?」

 

「聞いてください! これは私は悪くありません。昨日はユウに止められましたが、マジックスクロールを作ってみたのです。しかし、ボンッとなるのが爆裂を連想してしまいまして、つい何回かやってしまって……」

 

「……めぐみん、正座」

 

その後、メンバー全員の前で正座説教されためぐみんは、涙目になりながら視線でカズマ達に助けを求めていたが、そんなのがあるわけも無く、その日は終了した。

ついでにダクネスもなぜかめぐみんの隣で俺のお説教を聴いて満足した表情をしていた。

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