この素晴らしい世界にリリカルな魔導師を! 作:ゴマフアザラシ
「……なんでお前までついて来たんだよ? 暇だったのか?」
「あたしが来ちゃ悪いってのか! 相変わらずのご挨拶だな、テメェ……!」
目の前には赤毛で釣り目のチビッ娘が、相変わらずの喧嘩口調で俺を睨みつけている。
時は数日前に遡る。
「メディカルチェックですか?」
「ええ、悠君もそっちに行ってから結構経ってるし、一度ちゃんと検診しておいた方がいいわ。レポートを読んだ限りだとそれなりに激しい戦闘もあったみたいだし、知らないうちにダメージが溜まってるって事もありえるから」
メールの主はシャマル先生。時空管理局本局の医務局所属の医務官であり、夜天の守護騎士の一人でもある。それこそ子供の時から生傷の絶えない俺達をいつも看てくれた恩人なのだ。
確かに怪我だのはアクアの回復魔法でどうにかなるが、病気なんてのは専門外って聞いた気がする。ありがたい申し出だったので二つ返事でお願いした。
「みんなすまないけど、お客さんが来る事になったけどいいか?」
「お前の知り合いか、もしかして先日来たもう一方の……」
ダクネスはどうやらフェイトが来ると思ったらしいが、
「いや、みんなとは会った事無い人なんだけど、来るのは女医さんでちょっとした健康診断だ」
女医さんって単語にカズマが反応したらしく、
「その女医さんってのは美人か?」
「ああ、俺が言うのもなんだけど、かなりの美人だ」
カズマは嬉しそうな顔をして何やら考え込み、
「ユウ……相談があるんだが、俺もやって貰っても良いか?」
「一応、お願いはしてみるけど……頼むから失礼な事はしないでくれよ? 基本的にやさしい人だけど、セクハラなんてしたら縛られて抜かれても知らねーぞ」
俺のセリフに違和感を感じたらしいめぐみんが不思議そうな顔をして、
「……抜かれるとは、何を抜かれるのですか?」
「そりゃあ……、カズマの大事なモノだな。これ以上は俺の口からはとても……」
「ま、まさか……カズマのカズマさんを切り取られて抜かれるの!? 駄目よ、カズマ! いくら私だって抜かれたら治せないんだから!!」
うん、アクア大体あってる。想像してるのとは多分違うけど。
それを聞いたカズマは少し引いたような顔をしていたが、釘を刺しておく位は良いだろう。
そして当日、屋敷の場所は前もって教えておいたので、はやての時のように待ち合わせなどなく、直接来てくれるそうだ。
到着時間通りで屋敷の玄関が開く音が聞えたので、出迎えのために向かった。
「ご足労ありがとうございます。まずは少し休んでください、暖かい飲み物でも用意しますから」
「うん、久しぶりに顔を見たけど元気そうで何よりね。じゃあ、お邪魔します」
シャマル先生を屋敷の中に案内しようとした時に、後ろで人影が動いているのが分かり、その人影が前に出てきた。
「よ、よう。寂しがってると思って来てやったぞ。丁度休暇も取れたしな」
赤毛をツインの三つ編みにした釣り目が特徴の小学校低学年くらいの身長の少女がそこにいた。
見た目はこうだが夜天の守護騎士の一人、『鉄槌の騎士』ヴィータである。守護騎士きってのオールラウンダーであり、ハンマー型のアームドデバイス、”グラーフアイゼン”とのコンビは砕けぬ物は無いと思わせるほどの実力者である。
当然、俺とも昔からの間柄なのだが、他の守護騎士達と比べて外見年齢が低いためか、それともコイツ自身性格が少し子供っぽいせいか、俺自身ヴィータに対してズケズケものを言ってしまう部分があるため、闇の書事件の後から今までプライベートで顔を合わせる口喧嘩になることが多い。
「……なんでお前までついて来たんだよ? 暇だったのか?」
「あたしが来ちゃ悪いってのか! 相変わらずのご挨拶だな、テメェ……!」
……と、こんな感じになってしまう。つーかこのノリがないと物足りなくなってるのは気のせいだろうか……。
「すまんヴィータ、言い方が悪かった。遠路遥々ありがとう、せっかく来たんならゆっくりしていってくれ、大したもてなしはできねーけど」
二人を屋敷内に招き入れた後、自己紹介を終えてシャマル先生を俺の自室に案内し、検診を行なった。
「よしっと、健康そのものね。体調管理にも気をつけてるみたいだし、言う事無しよ」
「この年で異常がでたら、それはそれで落ち込みますって」
「でも気を抜いちゃ駄目よ? 悠君だってカートリッジデバイスとなのはちゃん程じゃないけど集束系魔法の使い手なんだから、理論上は魔力のオーバーロードを無視したブーストが可能よ。けど、その代償は……」
シャマル先生が言い淀んでいるのは、かつてのなのはを思い出しているんだろう。確かにあんな光景は二度とゴメンだ。
「……なのははリミットブレイクをやっぱりブラスターに? アイツがテスターだったのは知ってますけど、アレはそうそう使わせられるものじゃ……」
「今はまだ調整中らしいわ。……けど、なのはちゃんならその時が来たら躊躇わないでしょうね」
「なら、帰ったらアイツに釘刺しといて下さい。なのははシャマル先生には頭が上がりませんから。それと、もし可能なら希望者だけでいいんで他のメンバーも診て貰えませんか? お願いします」
それを聞いたシャマル先生はニッコリと笑顔を見せて、快く了承してくれた。
……ホント、シグナム姐さんとは違う意味で頭が上がらない。
リビングに戻った俺達ではあったが、ヴィータは早くもカズマ達と打ち解けたらしく、笑いながら何か色々話しているようだった。
そういえば昔、アイゼン持って近所のお年寄り方とゲートボールやってたりしたから、初対面の人とも物おじなく話せるのかもしれない。
「悠のヤツ、昔はオメー等よりヤワだったからな。まあ根性だけはあったから、ブッ叩きがいはあったけど」
……どうやら俺の話をしていたらしい。
ええ、そうですとも。どうせ俺は弱っちかったですよ、今となっては懐かしい話だけどさ。
「……確かに昔は色々世話になったな。アイゼン師匠に」
「あたしじゃねーのかよ! 何でそこでアイゼンなんだよ!!」
「だってアイゼンって”鉄の伯爵”だし、偉い人っぽいだろ?」
俺とヴィータのやり取りを見ていた面々は、少し驚いた様な顔を見せていた。
「……お前がこんな口をきくのは珍しいな。ところで叩かれたというのはどの様にやられたのだ? い、一度私にも……」
やっぱりそう来たか、ダクネス。ギガントフォルムで叩き潰されたりってのは流石に無理があると思うが……、でもやっぱり喜ぶかも知れない。
「ねえねえ、ユウとヴィータってどっちが強いの?」
「まあ、真正面からやり合ったら大体俺の負けだな。前の時みたくならない限り……」
アクアが何気なく質問をしてきたのだが、さっき言ったのは、ここに来る少し前に模擬戦をした時の事である。
「あたしもあの時は熱くなっちまったからな。けど、あれはやり過ぎじゃなかったか?」
「俺だって身の危険を感じてたんだからな……。お前の突撃止めるなんてああでもしないと無理なんだよ! アレだって、そっちが防御固めてれば普通にヴィータが勝ってたろうし」
一同、無言で俺とヴィータの話に聞き入っている。
「バインドで完全に捕まえて集中砲火しても仕留めれねーから、オメーもまだまだってこった」
「そのまだまだな攻撃受けて、一瞬意識飛ばしてたのはどこの誰だっけ? ヴィータ」
「テメェだって試合後ヘロヘロだったじゃねえか!! 押せば倒れるくれーにな!!」
俺とヴィータが顔を見合わせて、お互いを睨みつけている横で、
「カ、カズマ……早く止めなさいよ! 今にもやっちゃいそうな雰囲気なんですけど……」
「無茶言うな……、俺にどうしろってんだ!」
「ふ、二人とも落ち着いてください。ここは仲良くですね……」
アクア、カズマ、めぐみんがオロオロしながら止めようとしていたが、俺達の口論はヒートアップしていった。しかし、
「二人とも、いい加減にしなさーーーーーい!!!」
大声を出して俺達を止めたのはシャマル先生だった。そして二人とも正座でお叱りを受けている。
「何で悠君はヴィータちゃんと一緒だと子供っぽくなっちゃうの? それとヴィータちゃんも皆さんの前なんだから、あんまり失礼な事はしちゃ駄目よ!」
「「だってコイツが……」」
俺とヴィータの声がハモりながらお互いを指差し睨み付けたのだが、
「二人の戦技披露会だって、過激すぎて一部しか映像資料にできないって担当者が頭を抱えて私に相談しに来ていたのよ? もう少し自重しなさい」
……そうだったのか。その辺りあまり聞いていなかったが。
「けどよ、なのはとシグナムみたく
「そうですよ。あっちは全部お蔵入りって聞いたし……」
俺達の言い訳を聞いていたシャマル先生は、ため息をつきながら、
「それでもよ。試合の後にあれだけ口喧嘩してまだ足りないの? これ以上やるなら、はやてちゃん達に言いつけるわよ?」
「「……ごめんなさい」」
その様子を見ていたカズマとめぐみんは、
「アイツがあんな風に叱られるのは見たこと無いな……」
「あんな子供みたいなユウは初めて見ました……」
意外なものを見る目で俺を見ていた。とりあえず二人が帰るのは明日ということなので、この後、夕食を用意してみんなで歓談してこの日は終わった。
次の日の早朝、いつもどおり稽古をしていると、
「相変わらず早えーな。どうだ、久々に一本やるか?」
「いいかもな、一応街中だから軽めで頼む」
ヴィータも早く起きたらしく、庭で稽古をしている俺を見つけて声を掛けてきた。お互いリミッターを掛けて近接で打ち合うだけだが、やはり攻撃が重い。気を抜くとすぐに持っていかれそうになる。しかし、訓練ってのは相手がいると違うもんだな……というのが良くわかってしまう。
……と、そこに鎧を着たダクネスが姿を現した。
「私も参加していいか? 昨日、言っていた叩かれるというのを是非……!」
……どう考えてもアイゼンで叩かれたがってるな。もう、この際やってもらおう。
そして、ダクネスが攻撃を当たらないのを教えると、敵の攻撃を受け止める方の訓練って事で、ひたすら叩かれていたのだが……、
(おい、このねーちゃんなんて固さだよ!? リミッター付けてるつってもここまで踏ん張れるか、普通……)
(コイツな……俺の
(マジか!? あたし、あれで一瞬意識持ってかれたんだぞ……)
念話で会話したが、鉄槌の騎士ヴィータが驚くほどの硬さのダクネスである。ダクネスは顔を赤くしながらまだ物足りないといった感じで、
「フゥ……まだまだ大丈夫だ! ドンドンやってくれ!!」
「ダクネス、もう朝食の用意するからそろそろ終わりにしよう? あんまり遅くなるとアクアみたくぼやくのもいるしな」
それを聞いたダクネスは、そうかと言って引き下がってくれた。長々とダクネスの趣味につき合わせるのもかわいそうだ。
(あのねーちゃん……
すまんなヴィータ、こういうヤツなんだ。
多分……、今まで会ったこと無いタイプだったんだろうなあ、俺もそうだったけど。
朝食後、みんなでお茶をすすりながら話をしている時、
「ユウ、腕に傷がついていますよ。どうしたのですか?」
めぐみんが、俺の腕の傷を見て教えてくれた。どうやら今朝の訓練でついたものらしい。
「この程度、ほっといてもすぐ直るって」
「駄目よ! ちゃんと治療しないと後で大変な事になるかもしれないのよ」
シャマル先生はそう言うと……、
「静かなる風よ、癒しの恵みを運んで」
回復魔法『静かなる癒し』で治療をしてくれた。それこそ跡も残らない位に綺麗になっている。
「ありがとうございます、湖の騎士の名は伊達じゃないですね。いつもお世話になりっぱなしで恐縮です」
「スッゲー……本物のプリースト見た気分だ……」
俺は礼を言いながら、カズマは感心したような表情でシャマル先生を見ていたが、
「な、何よ!? 回復魔法なら私だってできるんだから!! 湖が何よ……、私は水の女神なんだからあああああ!!! その大きい胸だってエリスと同じでパットなんでしょううううう!!?」
プルプル震えて涙目になりながら、アクアが自分が水の女神だと叫んでいた。つーかまだ言ってるのかアクア……。エリスってエリス教の神様だっけ、何で神様がパット付けてるんだよ? しかもシャマル先生のは天然物だっての、情報源は
(何か悪い事しちゃったかしら? どうしよう……)
(ええと、多分自分の存在意義とか何とかでうろたえてるだけだと思うんで、あまり気にしないでください。明日にはケロッとしてますから)
(……そう、なら良いけど……)
アクアの態度を心配したシャマル先生が念話で俺に話しかけてきたが、実際アクアはそういう人間なのであまり気にしすぎない方が良い。
アクアを落ち着かせた後、ヴィータ達がお土産を買いたいというので、ある店に案内した。
「ほう、土産か。生憎とこの店にはポンコツ店主が仕入れた、使えばおかしな効果をもたらすアイテムばかりだ。だが売り上げに貢献するのであれば、何でも良いので買っていくがいい」
俺が良く知っている店といえばウィズ魔法具店しかなかったので、二人を連れてきたのだが、バニルの言うとおりおかしな効果とやらが発動するとマズイので、どうしようかと悩んでいた。
……というか、バニルは二人をからかわないのか?
「ふうむ、この二人の悪感情の根源は我輩の好む所ではないのでな。好む悪魔もいるだろうが、我輩の口には合わぬ」
だから俺の心を見通すんじゃねーよ! 二人というより『闇の書の守護騎士達』の心の闇ってヤツか……確かに相当深そうだ……。
「せっかく連れてきた客だ、金髪の少女との模擬戦で一撃当てた時に、晒された地肌と揺れる胸に気を取られて反撃をまともに喰らった小僧よ。夜中に笑うバニル人形などどうだ? 今なら一体購入でサービスとしてもう一体おまけしよう」
……あの時のフェイトとの模擬戦って皆さん見てましたよね?
恐る恐るシャマル先生たちの方を向くと、”ああ、そういう事か……”といった感じで納得した表情をしていた。
「……悠、オメーもちゃんと男だったんだな。フェイトには黙っといてやるから、次は変な事で気を取られるんじゃねーぞ」
ヴィータは俺の背中をポンポン叩きながら、慰めてくれていた。何だろう……凄く暖かいですよ。
「でもね、無理やりとかは駄目よ! もし好きな人ができたら、ちゃんとしなさいね?」
シャマル先生、何を心配しているかは分かりませんが俺が女性を泣かせたら、みんながとても怖くなると思います。とてもじゃありませんが、そんな事はできません。
結局、二人は夜中に笑うバニル人形を購入して帰路に着いた。ヴィータはのろいウサギ気に入ってるから、実はあんなのが好みなんだろうか?
主人公はここに来る前に、ヴィータと戦技披露会で一戦交えて最後の方で双方全力戦闘の血戦になってしまったという設定です。
なのはとシグナムのは漫画版StrikerSで一コマだけ描写があった方の戦技披露会です。
シグナム曰く、血戦になってしまい過激すぎて教育資料にできなかったとか。
あと、なのはのブラスターに関しては現時点で調整中ということにしています。
(実際にレイジングハートに搭載されたのはいつなんだろう?)