この素晴らしい世界にリリカルな魔導師を! 作:ゴマフアザラシ
時空管理局――いくつもの部署に分類される複合組織のうち、『武装隊』とその出身者には一流の魔導師が数多く在籍する。
そんな魔導師達の戦闘技術を”模擬戦闘”という形で披露するイベントが存在する。
それが本局武装隊名物――”戦技披露会”である。
「……で、何で俺がエントリーになってるんだ? しかも相手がヴィータって」
「推薦したのはわたしなんだけどね。ほら古代ベルカとミッドチルダのオールラウンダー同士だから、良いカードかなって思って……」
目の前にいるのは高町なのは――『航空戦技教導隊不屈のエース』と呼ばれ、魔法に関わる前から実家の高町家共々お世話になっている少女である。
「オールラウンダーならフェイトでもいいだろ? よりにもよって俺にお鉢をまわすとか……、公衆の面前でフルボッコにされろと?」
「フェイトちゃんは変換資質持ちだし、そういったのが無い者同士での模擬戦を見せてみたいって話になってて……ダメかな? それにゆーくんなら大丈夫! ヴィータちゃん相手でも良い勝負できるって!!」
なのはが少し困ったような表情の上目遣いで、お願いしてきた。しかも大丈夫とか言ってるが、コイツだって俺がどれだけヴィータに叩かれたか知ってるだろうに……。
でもまあ、ここまでお膳立てが揃ってると断わるのも難しいだろうし、ヴィータ自身そこまで勝負に拘る性格でもないので”模擬戦”なら何とかなるか。
「分かったよ、やるって。確か解説やるんだっけ? 情けないところ見せたら、うまくフォローしとくれ」
その夜、自宅の端末から地球のオンラインゲームにインした俺は、ある人物に会っていた。ゲームを始めたばかりの俺に親切に色々教えてくれた人で、仕事が終った後、よく一緒にクエストに行く事が多かった。ゲーム内では『レア運だけ』とか『インしたらいつもいる』なんて言われてる人物である。レア運の無い俺は、よく彼から要らなくなったアイテムを譲ってもらったりしている。
戦技披露会の当日、クエストに行く約束をしていたのだが、無理になったので事情を説明していた。
「すまないなカズマさん、急に仕事が入ってさ。その日はクエスト無理そう」
「そっか、社会人ってのも大変だな。まあその内また行こうぜ」
カズマさんも特に揉めることなく納得してくれたので助かった。余談だが、この日の数日後を境にカズマさんが全くインしなくなったらしい。
そして、戦技披露会当日。俺とヴィータが開始位置でお互いを見据えている。
(分かってんだろーな? これは”戦技披露会”だぞ、熱くなるなよ)
(なのはと姐さんみたくなってたまるか。そう思うんなら、少し加減してくれ……)
(フン、腑抜けた攻防しやがったら容赦なくブチ抜くからな!)
(……ったく、加減してくれるのか、してくれないのかどっちだよ)
俺達二人が念話で話しているうちに、準備が整ったらしく後は開始の合図を待つばかりとなっていた。
実況から俺達の紹介を終えた後、
「カートリッジ制限なし。制限時間25分一本勝負! 試合……」
俺とヴィータがお互いに構えを取り、戦闘態勢に入る。
「開始!」
試合開始の合図と共に、ヴィータが小型の鉄球を出現させる。誘導型射撃魔法『シュワルベフリーゲン』である。バリア貫通や着弾時炸裂といった効果がある魔法なので直撃した場合のダメージは相当なものとなる。
対して俺は炎熱を付与した魔力弾『フレイムバレット』を自身の周りに展開させる。
お互い誘導弾を避けつつ、そして自分の間合いに入ったものは防御、または迎撃しながら、差し合いをしていた。双方の誘導弾が衝突、迎撃されて少なくなったのを見計らい、ヴィータが更に四つの鉄球を打ち出す。そして対抗する俺は一発のみ光弾を出現させる。
『Stinger Snipe』
迫る鉄球を自身は空中で避けつつ、スティンガースナイプの光弾を操作しながら鉄球を一箇所に集めるように駆けて行く。そして四発の鉄球が一点に交差した時に俺の光弾を当てて、全て破壊した。続いて、
『Snip Shot』
弾丸加速−−”スナイプショット”のキーワードを受けて、魔力を再チャージした光弾がヴィータに高速で突撃していくが、
「しゃらくせぇ!」
グラーフアイゼンの一撃によって、ヴィータに届く前に完全に破壊されてしまった。
まあ、この程度で当てられる相手なら苦労はしないか……。
「今の射撃戦ご覧いただけたでしょうか! 高町二尉、最後の攻防ですが……」
「ヴィータ准尉の誘導弾の軌道を計算したうえで一箇所に集め、一撃で全てを破壊、返す刀で狙撃を行なっています。射撃戦では弾数のみが勝負を分ける要素ではないという事です。浅間准尉の誘導弾操作も注目すべき点ですね」
実況からの質問に解説するなのはであるが、何気に板についている。
まあ、射撃戦はこんなもんだろ。さてさて、次はあちらさんお得意の近接戦だ。気を引き締めないとな!
デバイスを近接戦形態にして、正眼に構える。ヴィータもアイゼンを振りかぶり、こちらに猛スピードで突進してきていた。
「先ほどの射撃戦とはうって変わり、双方飛行技術の粋を結集した近接戦が繰り広げられております! 接近戦を得意とする真正騎士にどう対抗するか、注目していきましょう!!」
などと実況席で盛り上げてはいるが、ヴィータとアイゼンの攻撃は一撃受けるごとに衝撃で吹っ飛ばされそうになる。なんとか打点をずらしてクリーンヒットしないようにしてはいるが、芯で受けてしまえば防御ごと叩き潰されてもおかしくは無い威力である。何度も鍔迫り合いをした後、距離をとってお互いを見据えていると……、
「グラーフアイゼン、ロードカートリッジ!」
『Raketen form』
グラーフアイゼンの”ラケーテンフォルム”、ハンマーヘッドの片方がスパイクヘッド、もう片方がロケットの噴射口に変形する強襲用の形態である。噴射口が火を噴き、こちらに向かって真っ直ぐ突っ込んでくる。
「ラケーテン……ハンマアアア!!」
ヴィータが俺に激突する前に、
「ファルシオン、ロードカートリッジ!」
『Round Shield Plus』
『ラウンドシールド』をカートリッジで強化し、ヴィータの攻撃を受け止めてはいたが、やはりそこはベルカの騎士の突撃。シールドが粉々に破壊されが……、
「おおっとこれは!? 防御を突破されたと思われた浅間准尉、一瞬の内に攻守が入れ代わっています。シールドが破られた瞬間に何があった!!?」
実況だけでなく、会場がどよめいていた。普通はシールド破られたら一巻の終わりと思うだろうが、解説のなのはは冷静に分析していたようだ。
「シールドでヴィータ准尉の勢いをある程度殺して、そこから更にカートリッジロードで剣型の魔力刃に炎熱による加速を付与。一瞬だけ威力を拮抗させた後、受け流しながら反撃に転じていますね」
「つまりシールドが破られる事を想定したうえでの攻防だったと……」
流石は戦技教導隊のエースオブエース、ちゃんと全部見えてたようだ。つっても、このまま接近戦だけやってたら結局押し切られるんだけどな。やっぱり真正騎士の近接戦闘能力はスゲーわ……。
(……やるじゃねーか。いなされるまでは分かってたけど、反撃されるとは思ってなかったぞ)
(子供の時からお前とアイゼンにどれだけ叩かれたと思ってんだ? この位できねーと、俺は今頃ここにはいねえ)
念話で話しかけてきたヴィータではあったが、珍しく感心していたようだった。
(……さて、そろそろか)
(……そうだな。あとは射撃、近接関係無しでやるとするか)
そうして、俺は魔力弾を展開、ヴィータは再度アイゼンを振りかぶり、こちらの出方を伺っている。双方睨み合いを続けているが実況から、
「ええとですね。今回の模擬戦は開始15分までは射撃戦、近接戦それぞれの戦技の披露、残り10分はそれら全てを含めた戦闘を行なうそうです」
実況の言うとおり、今のところ予定通りに進んでいる。俺は射撃とバインド主体でヴィータを接近させないように動き、ヴィータは自分の得意な間合いに入ろうと突撃を繰り返している。
「相変わらず、うざってぇバインドだな……」
設置型の不可視のバインド――『ディレイドバインド』と誘導弾で近づかせないように動き回ってはいるが、ヴィータもすぐさまバインドを破壊して接近しようとしている。
……これでアイツはバインドを最も警戒してくるはず。相手からは見えないバインドだからな。けど……、
ヴィータの動きが一瞬止まった隙に、カートリッジロードを行い、自身が制御できる限界まで魔力弾を展開し、一斉に撃ち出して弾幕にする。ヴィータは迎撃、防御しようとしているが、その間に高速移動で一気に距離を詰めて斬撃を叩き込もうとしたところ、紙一重で避けられてしまった。しかし、
「……あ、帽子が……」
俺の斬撃で騎士甲冑の帽子が斬れてしまったらしく、その帽子が落ちながら魔力のチリになって消えていってしまった。ヴィータを見ると目の色が変わっている。
これはちょっとヤバイかも……。
そう思った瞬間、
「アイゼン!!!」
ヴィータの呼びかけにアイゼンがカートリッジロードを行い、ハンマーヘッドが巨大な六角形へと変化する。グラーフアイゼンのフルドライブ、”ギガントフォルム”である。正直あれで一撃でもまともに喰らえば、その時点で撃墜される。こうなったらコッチもやるしかない。
「ファルシオン、フルドライブ!!!」
こちらもデバイスをフルドライブにして迎え撃つ。とはいえ、まともにぶつかってはこちらが負けるのは目に見えているので、攻撃を避けつつ設置していた『ディレイドバインド』で絡め取った後すぐに、
「
無数の魔力弾と飛翔型の魔力刃、全力の砲撃を一気に叩き込んだ。ここまで来ると手加減なんてできるはずも無く全力で撃ったのだが、騎士甲冑が一部破けながらもなおヴィータは突撃してきた。よく見ると目の焦点があっていない、おそらく意識が無い状態のはず。それでも真っ直ぐ突っ込んできていたが、俺自身も大技を繰り出してしまったため、硬直してしまい防御が間に合わなかった。なんとか直撃は避けたものの、それでもなお想定外のダメージを受けてしまった。
ヴィータも意識を取り戻したようだったが、目の色は変わっていない。すぐに人の頭ほどの大きさの鉄球を取り出し俺に向かって打ち出してきた。『コメートフリーゲン』――巨大な鉄球による破壊と爆散破片で一軍を殲滅可能な魔法である。
何とか避けようと体制を整えていたが、ヴィータを見ると空中で制止し、
「轟天……爆砕!!!」
そこまでやるか、テメェ……!?
『ギガントシュラーク』――グラーフアイゼンのギガントフォルムから繰り出されるヴィータ最強の一撃。鉄球を避けようとアイゼンで叩き潰されるってことか、なら……。
「A・C・S起動! ……ドライブ!!」
A・C・S――瞬間突撃システムでヴィータに猛スピードで接近する。途中、鉄球が肩を掠め、勢いが多少衰えはしたが、『ギガントシュラーク』発動前に一撃を叩き込む。それで相手が怯ひるわけは無く、
『Load Cartridge』
カートリッジロードを行い、突撃槍のようになっているデバイスに大出力の炎熱を纏わせ追撃を行なう。
「ブレイズファング!!」
炎熱を付加した魔力刃で全力の攻撃を行なったが、なおも撃墜する気配はない。激突の瞬間バリアで防御していたようだ。防御に徹した時のヴィータの硬さは相当なものとなる。とはいえ両者衝撃で後方に飛ばされてしまった。
そしてヴィータがフルドライブ状態のまま、突っ込んで来た。『ギガントハンマー』、ギガントフォルムで打撃を行なうだけの攻撃であるが、バリア、フィールド破壊効果があり、単純であるがゆえに攻撃力が高い。
「ハアアアアアア!!!」
俺は叫び声を上げながら、『ラウンドシールド』三層を張りヴィータを止めようとしていたが、苦も無く突破されていく。
集束砲や砲撃はチャージできない、即興でバインドをしたところですぐに壊される、射撃では威力が足りない、だったら……
(カートリッジ全弾ロード、炎熱付与もいらない。ありったけの魔力を込めて、ぶった斬る!!!)
デバイスに指示を出してシールドが突破されたタイミングで全力の斬撃を繰り出す。グラーフアイゼンとファルシオン双方激突した衝撃波が試合会場を駆け抜けていく。
俺とヴィータはまたしても、それぞれ後方へ吹っ飛ばされたが、まだ両者意識がある状態だった。
シールドと斬撃で威力の大半を相殺して、なお競り負けるか……。けど、ここまで来て負けたくは無い!
その気持ちはあちらも同じであるらしく、双方ボロボロになりながらも最後の一撃を叩き込もうとして接近し、攻撃がお互い当たる寸前で、
「試合終了です!」
試合終了を告げるアラームがなり、結果は引き分けとなった。本当のことを言うと、立っているのもやっとの状態になっていた。このまま続けてたら、おそらくは俺の負けになっていただろう。
実況と解説も途中からどうしたら良いか分からなくなってしまった様で、試合後にリプレイをしながら細かい解説を行なっていた。
「……といった感じになってしまってな、制限時間に助けられたようなもんだ。結果としては引き分けだけど、限りなく負けに近い引き分けだったな」
戦技披露会での様子を聞きたがっていたカズマ達ではあったが、
「さ、ささ、最後の方、もう殺し合いじゃねーか……」
「よ、よく二人とも無事だったものです……」
「ああ、だが私を二人の激突の間に置けばどれだけの痛みを味わえるのだ……。想像しただけで……ハァ……!」
「あ、あなた達って本当に人間!?」
カズマ、めぐみん、ダクネス、アクアがドン引きしながら俺とヴィータを見ている。
「今、思い出してもあの集中砲火と斬撃は何だったんだよ!? あたしを殺す気だったのか!!?」
「俺は悪くない! 帽子壊されてブチ切れたヴィータが悪い!! そんなに大事なウサギなら騎士甲冑につけてるんじゃねえ!! お前こそ、俺をペシャンコにする気だったろ!!!?」
「ならここで決着つけるか、テメェ!!」
またしても口喧嘩を始めてしまった俺とヴィータを見て、
「また始まっちゃた……。もう飽きるまで放って置きましょう。これでも昔よりは良くなった方だし、会ったばかりの頃は魔法抜きで取っ組み合いの喧嘩してたから……。そうだ! 今日は私がお夕飯作ろうかしら」
それを聞いた俺達は喧嘩中だったにも関わらず、目を見合わせて、
「先生え! いつもお世話になっているんです! そんな事は俺に任せてゆっくり休んでください!!!」
「そうだ! コイツから聞いたんだけど、こっちのチェスって面白いらしいぜ。あたしと勝負しねーか?」
そうして、シャマル先生はヴィータに背中を押されて居間から去って行った。
「……あの二人……息ぴったりだな……」
「喧嘩するほど何とやらという奴でしょうか……」
カズマとめぐみんは、何故か納得したような表情を浮べていた。
ネトゲでカズマと知り合いではありますが、お互い気付いていません。
カズマは彼を社会人で年上だと思っていて、彼は地球人がこのすば世界にいるわけないと思っています。これに関しては単なるお遊びなので、深く考えないでいただけると嬉しいです。
階級に関しては結構適当です。ヴィータに関してはStSより一つ下にしてます。
ただ地球と管理局の准尉って階級は少し意味合いが違う気がする。
ブレイズファング
近接専用の魔法。炎熱を纏わせた魔力刃での斬撃、彼なりの紫電一閃もどきです。