この素晴らしい世界にリリカルな魔導師を! 作:ゴマフアザラシ
「めぐみんの誕生日が近いって?」
「はい……。お祝いをしたいんですが、どうしたら良いか困ってます……」
いつもどおり屋敷の庭で稽古をつけていたゆんゆんから、もうすぐめぐみんの誕生日でる事を聞かされた。そういえば、めぐみんがあと少しで14歳になるとか言ってた気がする。それならゆんゆんの言う通りお祝いをしたほうが良い。
「だったらプレゼントでも渡せば良いだろ? 俺も何か用意しないとな……。それとも、ここって誕生日にプレゼント渡す習慣は無いのか?」
「……いえ、そんな事はないんですが、……そ、その今まで他の人の誕生日会に呼ばれたことが無くて……」
確かゆんゆんはその性格のせいで紅魔の里でいつも浮いてたって、めぐみんから聞いてたな。どんな事するかはなんとなく分かってても、実際にやった事は無いから不安になっているらしい。
ともあれみんなにも相談してみるとしよう。
「なあ、みんな……、もうすぐめぐみんの誕生日らしいんだけど、どうする?」
「どうするたって、そんなのはお前の方が慣れてるんじゃないか? あんな可愛い幼馴染がいて、誕生日プレゼント贈ったことくらいはあるだろ」
カズマが言う通りで慣れてるかどうかは分からないが、確かに誕生日プレゼントなら渡した事はある。こないだのはやての誕生日にはたぬみみでも贈ろうかと思案して、なのは達に必死に止められたりはしたが……。それはともかく、
「……なあ、めぐみんってどんなのが好みなんだ? 言っちゃ悪いがアイツ、花より団子どころか花より爆裂だろ。下手にアクセサリーとか贈っても喜ばない気がしてな……」
「そ、それは流石に言い過ぎなんじゃないかしら? 年頃の女の子なんだからアクセサリーとかでも良いかもしれないでしょ」
「つっても、めぐみんが付けてるアクセサリーってたら眼帯くらいしか思い浮かばないんだけど……」
俺の言葉にアクアがうーんと唸りながら、困った顔をしている。
「別に物でなくても良いのではないか? 例えばユウのいた所のでも祝い場の料理やそこまで特別なものでなくても、普段作らない様な料理でも作ってみては」
ダクネスの意見も悪くないかもしれない。別にプレゼントに拘る必要は無いんだから、料理ってのも良いかもしれない。誕生日か……だったら、
「じゃあ久々にケーキでも焼いてみようかな。飾りつけも結構豪華にしたりしてさ」
そう言った瞬間カズマが、
「……お前、ケーキなんて焼けたのか。料理が得意なのは分かってたけど、男なのにそこまでできるのか?」
「一番古い付き合いの友達の実家が喫茶店でな。今の仕事着く前から入り浸ってたから、色々教えてもらってた。菓子職人直伝だからそれなりに自信はあるぞ」
ダクネスも何か思い当たるフシがあったようで、こちらを見て、
「……どおりで紅茶やコーヒーの淹れ方がうまいと思ったら、そういうことだったのか。淹れ方が本職のソレだったので気になってはいたのだが」
貴族のダクネスはその辺りは、何だかんだで分かるらしい。普段の言動からは想像つかないが……。
ともあれ方針は決まったので、材料集めのために街に繰り出した。小麦粉、卵、砂糖、生クリームを買った後、青果店へ赴き果物を調達した。冬の時期の果物なのでそれなりに値は張ったが、めでたい日なのでこの位は良いだろう。青果店の店主曰く、反撃されないように気をつけろとのことだった。何の話だ?
そして屋敷への帰路に着こうとしたときに、ゆんゆんがトボトボ街中を歩いていたので、声を掛けると、
「……あっ、ユウさん買い物ですか? もしかしてめぐみんの誕生日の……」
「そういうゆんゆんこそどうしたんだ? 今夜は屋敷に来るって言ってけど、元気が無いな。何かあったか?」
「……いえ、プレゼントに何を贈ったらいいか困ってまして、私、友達に誕生日プレゼントなんて渡した事なくて……。気に入らない物を贈っちゃたら”今まで散々勝負しておいて私の好みも分からないのですか”って言われそうな気がして……」
……ぼっちもここまで拗らせてると大変だな。その時のノリでどうにかなりそうなもんなんだけど。
「だったらケーキはゆんゆんが作るか? 作り方なら教えるからさ」
「……えっ!? いいんですか? でもユウさんの贈り物は……」
「俺は他にやってみたいことがあるから、別にいいよ。ちょっと警察署で申請してこなきゃならないけど」
それを聞いたゆんゆんは嬉しそうな顔をして、同意してくれた。とりあえず屋敷に行く前に警察署に寄って、ある申請を行なっていた。
「……では使用に関しては、ギルドからの街へのアナウンスが終了してから行なってください。それ以外での時間帯での使用に関してはペナルティが課せられますので注意してください」
「ええ、分かりました。少しお騒がせするかも知れませんが、よろしくお願いします」
警察署の受付で申請を終えて帰路に着こうとした時に、俺の姿を見つけたセナが声を掛けてきた。
「……あっ、アサマさん。あの……お伺いしたい事があるのですが……」
裁判が終ってから俺達への態度が軟化したセナではあったが、珍しく困ったような表情をしていた。続けて、
「最近……冬将軍の目撃例が多発していまして、何か心当たりはありませんか?」
「誰かが雪精を狩まくってるのでは? 少なくとも俺達はここ最近クエストは行っていませんし。その辺りの情報ならギルドで聞いてみた方が良いと思いますよ」
……冬将軍か。雪精討伐で現れた彼らの王でカズマは首を斬られ絶命し、俺は一撃で気絶させられた、おそらくこの世界最強の一角と言っても良いかもしれない存在。温厚なので雪精を討伐したとしても武器を捨てて土下座すれば見逃してくれるはずだが……。
「いえ、それでしたら先ほどギルドへ確認しまして、ここ最近雪精討伐を請け負ったパーティーは無いという事でした。今のところ目撃例だけで被害が出ていないので、そこまで切迫しているわけではありませんが、何か分かった事があったら情報を提供してください」
セナからの要望に同意し、ゆんゆんと共に屋敷へ戻った。
屋敷内の厨房でケーキをゆんゆんと作っていたのだが、生地を仕上げるまでは順調だった。問題はその後で青果店から購入した果物が曲者だった。いちごは種を眼球目掛けて飛ばしてくるわ、みかんも果汁を掛けてくるわ、桃も抵抗してゴロゴロ転がっている。たまに体当たりしてくる始末だ。
青果店の店主が言ってたのはこの事だったのかと納得してしまったが、どうやら果物は新鮮さを保つために生きた(?)まま売られていたらしい。そうしている内に、いちごの種とみかんの果汁が目に、桃の体当たりが腹へ同時に入ってしまい、
「上等だ! テメェら覚悟しろよ。どうやってもケーキの飾り付けにしてやるからな!!」
「ユウさん落ち着いてください! 下手に力を入れると潰れちゃいますから、
ゆんゆんの言葉で何とか冷静さを取り戻したので、落ち着いて果物の急所に切れ込みを入れて一気に
……なんか、果物じゃなくて魚を
そして、最後のいちごを
「いち……いちぃ……」
いちごが小刻みに震えながら、俺を見て声を出しながら泣きそうな表情をしていた。自分も他の果物たちと同じ目に遭うのが分かっているのだろう。
「そ、そんな目で見ないでくれ……。別にお前に恨みがあるわけじゃ……、すまない!!」
目を瞑りながら、いちごに止めを刺して、
「……ゆんゆん、生きるって大変なんだな……」
「ユウさん、前にめぐみんは可愛いモンスターを躊躇無くやりましたから、それに比べたら……」
おそらく、ゆんゆんもさっきの俺と同じ気持ちだったんだろう、慰めてくれていた。というかめぐみんって結構容赦無いんだな……。
微妙な雰囲気になりながらケーキの飾り付けを進めていると、
「あら、面白そうな事してるわね。私も飾りつけ手伝うわ!」
「アクア何する気だ? あんまり変な事はしないで欲しいんだけど……」
「変な事なんて失礼ね! いいから私に任せなさい!!」
アクアが自信満々にそう言うと、砂糖を熱し始めてできたものは……、
「スッゲー……、これは確かにめぐみんのケーキだ……」
「こんなに細かく作り込めるものなんですか? もう食べるのがもったいないですよ……」
俺とゆんゆんが出来上がったケーキを見て素直に感心してしまった。ケーキの上には飴細工で作っためぐみんの像、しかも爆裂魔法を撃つ構えをしており、今にも撃ち出しそうな雰囲気を醸し出している。
「アクアって芸術関係で凄い才能があるよな、いっそコッチで食っていったらいいんじゃ……」
「フフン、認めてくれたのは嬉しいけど、芸事ってのは気が乗った時にやるものよ! 強要されて嫌々する芸なんて芸じゃないわ!!」
ドヤ顔のアクアであったが、この飴細工を追加してくれたのは本当に良かったと思う。今夜は良いパーティーになりそうだ。
ケーキの他にも、いつもより豪華な食事も用意して食卓に並べてパーティーが始まった。
「「「「めぐみん誕生日おめでとー!!!」」」」
ケーキに蝋燭を14本立てて、火をつけて部屋を暗くした後でめぐみんがそれを吹き消す。その後はアクアの宴会芸をしたり、カズマやダクネスがプレゼントを渡したりして盛り上がっていった。
「そういえばお前はプレゼント無いのか? 何か用意してると思ったんだけどな……」
カズマが俺に対してそう言った直後、
『これからアクセル上空に魔法が撃ち込まれます。敵襲ではありません。繰り返します……』
ギルドからのアナウンスが街中に響き渡った。
「おっ! 来たか。みんな外に出てくれないか? 面白い物見せるから」
そうして全員で屋敷の庭に行き、
「何やる気だよ? さっきのアナウンスはお前がらみか?」
「上空へ魔法とは一体……?」
カズマとダクネスは何をするのか気になっているらしく、こちらを見ながら興味津々と言った感じで質問をしてきた。
「砲撃魔法平和利用バージョン、スターライトブレイカー花火だ!」
「花火は夏にやるものですよ。確かに空に向かって打ち上げはしますが、それは虫を追い払うためのもので……」
めぐみんの説明によると、こっちにも花火はあるらしいが地球のそれとは用途が違うらしい。まあ違う世界なんだから常識も違っていて当然なんだが。魔力散布は昼間のうちに済ませていたので後はやるだけだ。見た目を派手にするだけで威力は控えめにするので数発撃つ事ができる。
「魔法で俺のいたとこの花火っぽくするだけだし、打ち上がった花火を見るってのも良いもんだぞ」
「何それ、面白そう! 私にも一枚噛ませなさいな!!」
アクアがノリノリで協力を申し出てくれた後、詠唱を始めて、
「『ヴァーサタイル・エンターテイナー』!」
何やら俺に対して支援魔法を掛けてくれた。
「……アクア、これって何の魔法だ?」
「芸達者になる魔法」
……芸達者ってアークプリーストにはそんな魔法もあるのか。今はともかくどこで出番があるんだ、そんな魔法? まあいいやちょっと試してみるか。
魔力を集束させて、一発目を空に向かって打ち出すと、ドォーンという音と共に花火の形をした魔力が円状に広がりながら消えていった。
……砲撃を花火っぽく成型するのが凄く楽に出来るようになってる!? 今ならどんな花火でも打ち上げる事ができる!! 俺に不可能は無い!!!
ちょっと調子に乗っているように思えるが、それだけの手ごたえを感じる一発だった。オーソドックスな円状に広がるものから、柳や椰子のような形、一つの花火の中にいくつもの小さい花火が咲く”小割り”と呼ばれるものを披露していると、
「すごく綺麗……魔法でこんなのができるなんて……」
「ああ、これは凄いな……思わず見入ってしまう」
ゆんゆん、ダクネスも気に入ったらしく空を見上げて次の花火が打ち上がるのを待っている。そして最後の花火を打ち上げると……、
「おお! 今度はめぐみんの顔の花火か〜。 これは見栄えがあるな〜!」
カズマも絶賛してくれた。
「ユウ、今回は魔法の効果もあったけど、あなた宴会芸の素質があるわ! その内『花鳥風月』習得したら?」
……宴会芸の素質って何だよ? アクアの見立てが本当だとしても、もうちょっとこう魔導師っぽい素質の方が良いだけど……。
「みんな……今日は本当にありがとうございました。この日の事は一生忘れません! みんなの誕生日も教えてくださいね? ちゃんとお祝いしますから!!」
めぐみんは少し涙目になりながら深々と頭を下げて俺達にお礼を言っていた。花火が終った後、屋敷に戻りまた食卓を囲んで談笑しながら一日が終った。
おまけ
−7年後、ミッドチルダ八神家道場
「ねえ、はやてえもん……」
「なんだい、ゆう太くん」
俺とはやてがお互いをどっかのアニメキャラの様に呼び合っている。
「俺がミウラのインターミドルの壮行会に呼ばれるのは良いんだ……けど」
今俺はさっき言ったとおり八神家道場の壮行会に呼ばれて子供達や旧知の仲のみんなと話をしていたのだが……、
「何で子供達に宴会芸見せてるんだ、俺は!?」
「だって悠君、機動六課の終身名誉宴会部長やし。部隊長権限で任命したから間違いないよ〜」
何だ……その貰っても、これっぽっちも嬉しくない役職は!? いつの間にそんなのに任命されてんだ!!? あれか、六課解散の模擬戦の後で花見しながら宴会芸披露したのが悪かったのか!!!?
「ところで……何で私がド○えもんみたいに呼ばれとるん?」
「だってはやてのデバイスって四次○ポケットっぽいだろ。色んな魔法出てくるし」
「確かに四○元ポケットっぽいな〜、って何でやねん!!」
ビシィっと俺へとツッコミが入り、会場全体から爆笑が巻き起こった。
宴会芸スキル――『花鳥風月』とタメを張るはやてのノリツッコミ恐るべし……。
果物についてはアニメのキャベツやスピンオフからの勝手な想像です。
SLB花火
無印SSであったらしい。私自身聞いたわけではないので、どういった内容かは分かりませんが……
宴会芸スキル覚えてミッドに戻っていますが、みんなで集まると披露するのでViVid年少組からは面白い人と思われているとか……という設定だったりします。