この素晴らしい世界にリリカルな魔導師を!   作:ゴマフアザラシ

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めぐみん・ザ・リッパーについては漫画でしか知らないので、おかしな点が有っても気にしないで下さい。


妖刀の有効利用

切り裂きシャック――凄まじい腕を持つ稀代の剣士と呼ばれ、夜な夜な街に現れては主に女性に斬りかかって恐怖に陥れた犯罪者である。

しかし、なぜか斬られた女性は傷一つなく、服だけを斬り裂かれていたらしい。当初は凄腕の変態と思われていたシャックではあるが、後にある事実が判明した。

まあ真相は、魔力を消費して物だけを斬り裂く刀だったわけだが、それが分かる前に刀を持っためぐみんが”先生”なんて呼ばれて調子に乗って、色んなものを斬って歩いた挙句に刃が通らないカエルに戦いを挑んで呑まれたりもした。

そのシャックの妖刀のついて、なぜか俺達の元に冒険者ギルドから指名で依頼が舞い降りてしまった。

 

「何だろうな? 今回の依頼ってのは」

 

「あの刀使ったのってめぐみんだっけ? だったらめぐみんに何かして欲しいんじゃないかな」

 

「わ、私はやりませんよ! あの時の私は出来心で爆裂魔法から浮気をして、カエルに呑まれたのですから」

 

カズマと俺がめぐみんの方を向いて依頼内容について話していると、あの時の事を思い出したらしいめぐみんが、少し慌てた様子であった。

ギルドのカウンターで受付のお姉さんに声を掛けると、

 

「ああ、来て下さいましたか。では依頼内容について説明いたします」

 

 

 

 

 

「……なあカズマ、どう考えても今回って冒険者への依頼じゃないよな」

 

「まあな……、まさかまた土木作業をやる羽目になるとは思わなかった」

 

依頼は、とある場所までの道にある大岩や倒木と言った障害物を妖刀で細かく斬って作業員が運びやすいようにして欲しいといった内容だった。

 

さて、この”駆け出しの冒険者の街”アクセル、最近はその名に似合わずに様々な大きな事件が立て続けに起こっていた。魔王軍幹部デュラハンのベルディア襲来、一国を滅ぼした機動要塞デストロイヤーの迎撃、そして、これまた魔王軍のなんちゃって幹部である地獄の公爵バニルのダンジョン占拠である。

そのうち二つは俺達が原因のような気もするが、そこは気にしないで置こう。

 

機動要塞デストロイヤー――これは完全に破壊されたとはいえ、子供達に妙に人気があったらしく、遥々はるばるアクセルを訪れデストロイヤーの破片を拾って子供にプレゼントするお父さん達がよく酒場で目撃されていた。これに目をつけた役場の観光担当者は、”デストロイヤーの破片探索ツアー”なんてのを企画しているくらいである。

 

この世界の人たちも結構逞しいなと思う今日この頃だったりする。

 

話を戻すと、ある場所というのはベルディアが陣取っていた廃城と、バニルが居座っていたキールのダンジョンであり、そこまでの道の舗装のための障害物撤去である。

デュラハンのベルディア、魔王軍幹部であったとはいえ生前は相当名のある騎士だったらしく、彼を慕う騎士や騎士見習いが廃城を訪れて冥福を祈っているらしい。

 

……頭を転がしてウィズのスカートの中を覗いていたのは、言わない方が良いだろう。というかあの日記、回収しておいた方が良いんじゃないか?

 

そしてキールのダンジョン、長らく謎だった貴族の令嬢をキールがさらった理由が明らかになり、恋人達の観光スポットとなっている。とはいえ、ダンジョンまでの道のりでモンスターに襲われる危険があるため、その護衛のクエストが最近発注されているそうだ。

一度そのクエストを受けたらしいダストやキースは、酒場で涙ながらに愚痴っていたが。なんでも、ダスト達が護衛してる目の前でも二人っきりの空間を作っていたとか。

 

俺が壁抜きでダンジョン内キールの部屋の前まで真っ直ぐ道を作ったのも良かったようで、そこにアクアの魔法陣の効果も加わり、モンスターが近寄らない真っ直ぐ進むだけの安全な観光地としてのダンジョンになりつつある。

アクセルの役場としてもこの際、観光名所として廃城やダンジョンを有効利用して収入を得たいという事らしいが、そのための予算がそこまで多くないらしく、こうして俺達のような冒険者にも道の整備のための依頼が回ってきたらしい。

 

「アクアの湖浄化の時も思ったけど、これって言わば公共事業だよな。何で50万エリスなんて格安で依頼が出てるんだ? 確かに冒険者にとってはいい収入になるかも知れないけど」

 

「確かに……言われて見れば、その通りですね。もっと予算があっても良いはずですが……」

 

「どうせ、あの領主がピンハネでもしてるんだろ。好き放題やってそうだしな」

 

確かにカズマの言う通りかもしれない。実はもっと予算があるけど最低限必要な分だけしか出さないで、あとは自分の懐にって事か。証拠は無いけどやけに信憑性は高いな。

 

そして現場に着いた俺達ではあったが、誰が妖刀を使うかで相談していた。

 

「私は絶対にやりませんからね! この妖刀を使うとまたカエルに呑まれそうですし……」

 

今は冬でカエルはいないが、めぐみんは妖刀でカエルに斬りかかって、逆に呑まれた時の事を思い出したらしい。

 

「私もパ〜ス。女神たるこの私が、妖刀なんていかがわしい物を使うわけにはいかないわ」

 

どうやらアクアも乗り気ではないらしい。そうしていると現場作業をしている親方らしき人から、

 

「おっ、来たな。カズマじゃねえか、しばらく見ない間に随分有名になったらしいな!」

 

「親方、お久しッス。その節はお世話になりました」

 

「冒険者ギルドから作業にぴったりの人材よこしてくれるって話だったが、お前のとことはな。あの刀を使うためのアークウィザードの魔力とソードマスター級の剣技を持ってるヤツなんてそうそういないと思って諦めてたんだが」

 

土木作業の親方はどうやらカズマの知り合いらしい。カズマとアクアが冒険者を始めたばかり頃、日銭を稼ぐために街の外壁の補修をしていたそうだ。

それはともかく、親方の言葉にメンバー全員の視線が俺へと集まった。

 

「アークウィザードの魔力と……」

 

「ソードマスター級の剣技を持っている者……」

 

めぐみんとダクネスがそれぞれ俺をジッと見ながら、呟いていた。続いてカズマから、

 

「つまり、この依頼は実質お前を指名だったわけだ。頑張れよユウ!」

 

……なんかなあ、便利屋みたいになってるのは気のせいかなあ。そういえばミッドにいた時も、”稀少技能(レアスキル)保有者とかスタンドアロン魔導師は結局便利アイテム扱い”ってはやてがぼやいてたな。前者ははやて、後者は俺だけど。そういえば特別捜査官でもないのに”うみ”も”陸”も行ったり来たりしてたな。俺って本局所属のはずなのに……。

 

「じゃあ兄ちゃん悪いがよろしく頼む。岩を細かくするのと倒木は木材にしたいから切り揃えてくれ。これが、そこらへんのアークウィザードじゃうまくいかなくてな」

 

考え込んでいても仕方ないので、親方の指示通り障害物を片っ端から妖刀でぶった斬っていく。シャックの妖刀――確かに生物には刃が通らないらしいが、障害物を斬る場合はありえないくらいの切れ味で両断していく。

中級魔法を使う案もあったらしいが、万が一作業員に被弾する事を考えた場合、妖刀を使った方が安全なのでこの方法になったらしい。

そうして障害物を取り除いていき、キールのダンジョンの前まで来た時に、

 

「奇遇であるな、どこにいても自分の扱いがあまり変わらぬと悩んでおる小僧よ。それが不服であれば、そこのネタ種族の娘のように爆裂魔法でも習得すればよかろう。だが貴様の場合、スキルポイントが圧倒的に足りぬがな!」

 

人をおちょくるのが大好きな仮面の悪魔が、キールのダンジョンの前で露店らしきものを開いていた。売っているのは……武器か?

 

「……なんでお前がこんなとこに居るんだ? 出会い頭に人をからかいやがって。悪いがお前に構ってやる時間はない、今は仕事中だからな……」

 

「なに、我輩が占拠していたダンジョンが観光名所となっていると聞いたのでな。土産物と冒険者向けの験担ぎの武器を販売していたのだ」

 

露店の看板には”ウィズ魔道具店 キールのダンジョン支店”と書かれていた。土産物はともかく武器は……?

 

「おいバニル、何で俺のファルシオンの外見だけ似せたワンドと剣が売られてるんだ!?」

 

「貴様は魔王より強いと言われる元幹部バニルさんの残機を減らした凶悪魔道士である。その魔道士と似た武器を使いたいと思う者もおるだろう。我輩の思惑通り、なかなかの売れ行きとなっておるぞ、あの時散々挑発して討ち取られた事を感謝せねばな! 桃色髪の幼女に対して可愛さ百倍になってしまった親バカ魔道士よ」

 

だから誰が親だ! いつも通りおちょくりやがって。どうせ斬れないし、腹いせにバニルを妖刀で叩いとくかと思い刀を振るうと、いつもは高笑いしながら魔法を受けているバニルが、刀に当たらないように大きく動いて避けていた。

 

「……バニル、何でそんなに大げさに避けた? いつもなら腕の一本くらい構わずに斬らせるのに」

 

「…………」

 

俺の問いに対してバニルは無言であった。確かこいつは”物”だけを斬る刀だっけ……って事は、

 

「なあ、こないだ訓練してる時にウィズから聞いたんだけど、ここにいるお前って厳密には”生物”じゃないんだってな。確か本体は地獄にあるとか……お前の場合はその仮面に精神を憑依させてるってとこか?」

 

「あのおしゃべり店主めが! 余計な事ばかり言いおって!!」

 

どうやら俺の推察は正しかったらしい。この際だ、色々試してみるか。

 

「バニル、ちょっと仮面斬らせろ。どうせその仮面が破損した所で残機とやらで直ぐ復活するんだろう? 仮面の文字が”Ⅱ”から”Ⅲ”になるだけだから別に良いだろうが!」

 

「ええい! そんな下らん方法で残機を減らされて堪たまるか! 華々しく散るどころか唯の笑いのネタではないか!!」

 

バニルが本気で焦っているようだ。実はこの妖刀結構使えるんじゃないか? 前の主人が変態なだけで、変な風評被害が付いている気がする。

 

「あーら、地獄の公爵様とも有ろう方が、そんなナマクラ刀一つ怖いなんてお笑いね! プークスクス。ユウ、その刀には私の名において”悪魔殺しの神刀”の称号を与えるわ!!」

 

「碌に働きもせずに 惰眠を貪っているだけの穀潰しプリーストよ。我輩に効果があるというだけで”神刀”などと嘯きおって。これだから神というのはタチが悪いのだ!」

 

アクアがバニルを挑発して色々言い合っている。もう止めるのも面倒なので、このままやらせておこう。

 

「おおーい兄ちゃん、ここに石像作りたいからこの大岩の形を整えてくれねぇか?」

 

親方から注文が入り、即座に大岩の前に行って岩の形を整えていく。この岩は生前のキールと貴族の令嬢を模した石像にするのだそうだ。流石に刀だけでは彫刻はできないと思われたが……、

 

「……なんで、刀一つでここまで精密な石像を作っているのですか!?」

 

「あ、いや……なんかできそうな気がしたからやってみたんだけど、なんでだろう?」

 

めぐみんの疑問ももっともだと思う。普通石像って刀で作るものじゃないよな? というか自分がこんな事できるなんて初めて知った。

 

「あら? ユウ……あなた、めぐみんの誕生日の時の魔法の効果がまだ残ってるわね。ダンジョンの魔法陣もそうだけど、私達の魔力って相当相性が良いわよ、普通ここまで効果が持続しないんだから。やっぱりユウはアクシズ教徒になるべきよ!」

 

いつの間にかバニルの元を離れていたアクアが俺の疑問に答えていた。めぐみんの誕生日の時って、確か芸達者になる魔法だっけ? なんでだろう……あまり用途の無さそうな魔法なのに結構役に立ってる。

 

「自分の意外な能力に戸惑っている曲芸魔道士よ。見通す悪魔が宣言しよう、汝は未来において”宴会部長”と呼ばれるとな!」

 

今度はバニルまでこっち来たよ。つーか”宴会部長”ってなんだ!? 未来の俺は一体……。いや、嘘だ、嘘に決まってる!

 

その後、バニルもこの刀に斬られるのはマズイらしく、いつもに比べるとおちょくり具合が軽く感じた。とりあえず、依頼は全て終了し冒険者ギルドへ報告へ行くと、

 

「報告承りました、お疲れ様です。実はこの妖刀なんですが、どなたか所持者になって頂きたいという案が出ていまして……」

 

ギルドのお姉さんの話では、またシャックみたいな変質者がこの刀を狙ってしまう可能性があるので、腕の良い冒険者に譲って有効利用して貰いたいということだった。

 

「だったらユウで良いんじゃないか? コイツならおかしな使い方はしないだろうし」

 

「確かにな、何だったら部屋に飾っておくだけでも良いだろう。私としては、その刀であられもない姿にして欲しいものだが……」

 

カズマとダクネスがすぐさま俺を推薦していた。というかダクネス、お前の望みどおりの事をすると、俺は変質者扱いだからな?

ともかく、新しい所持者という事で妖刀に銘を刻む事になったのだが、どんな銘にするかを悩んでいた。

さっきアクアが”悪魔殺しの神刀”なんて言ってたから、それにちなんだものにでもするか。例えば……”童子切安綱”とか”鬼切 ”、”九字兼定”なんてのも良いかもしれない。

俺が目を瞑ってうーんと唸りながら悩んでいると、

 

「ぴよぴよ丸」

 

いつの間にかめぐみんが刀を手にとって銘を刻んでいた。つーかさっき何つった!?

 

「めぐみん、俺の聞き間違いじゃなきゃ”ぴよぴよ丸”とか言ってなかったか?」

 

「ええ、この刀は”ぴよぴよ丸”です。かっこいい名前でしょう?」

 

どうやらもう手遅れらしい。こうして切り裂きシャックの妖刀改め悪魔殺しの神刀――”ぴよぴよ丸”の所持者となってしまった俺であった。




ちょっとだけStS


ティアナ「その刀ってAMF関係なく斬れるんですか?」

ユウ「ああ、コイツは物だけを斬れる刀だからな。対AMFに良いかと思って部屋から引っ張り出してきた」

スバル「へえ……、銘はなんて言うんですか?」

ユウ「……ぴよぴよ丸」

フォワード陣「「「「……えっ!?」」」」

ユウ「本当はもっとかっこいいのを付けたかったんだけど、色々あってな……」

フォワード陣((((お、教えて欲しいけど、怖くて聞けない……))))
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