この素晴らしい世界にリリカルな魔導師を! 作:ゴマフアザラシ
……緊急警報!? 何だ? デストロイヤーはもういないはず……。魔王軍幹部にも手を出してないし、何があった!?
「ウィズ、この辺りにはデストロヤーみたいのがまだいるのか?」
「い、いえ……そんなのは聞いた事もありません。そもそも住民の避難指示なんて天災でもない限りあるはずが……」
警報を聞いたウィズもうろたえている。この様子ではアクセルで緊急警報が発令されるのは、そうそう無いらしい。前にミツルギが王都だと定期的に魔王軍の襲撃があると言っていたが、ここは駆け出しが集まる街。そんなのがあるわけが……まあ、あるかもしれないが、近くに原因になりそうな魔王軍幹部がいるとは聞いた事がない。
ただ今いるウィズ魔道具店は
考えを巡らせているとバニルがこちらを向いてニヤニヤしながら、
「中々面白おかしい状況になっておるな。なに、貴様らがいればどうにでもなろう。とはいえ、この店が消滅するのは我輩としても本意ではないのでな、一つだけ忠告しよう。貴様らの仲間の黒衣の少女と合流するが吉。それが事態を打開する鍵となろう。後はせいぜい全力を尽くすが良い。脱がし魔魔道士よ」
だから、誰が脱がし魔だ! あれは故意でやったんじゃねーんだよ!! ……と、バニル今なんつった!? 黒衣の少女って……。
なのはも同じ想像をした様で、二人で顔を見合わせていた。みんなの状況はどうだろうかと思い、屋敷に戻ると……、バリアジャケット姿のフェイトが屋敷にいた。俺たちが戻る少し前に屋敷に着いたらしい。
「フェイトちゃん!? 何で……」
「お前がここにいるのと、緊急警報は無関係じゃないな? 何があった?」
おそらく、俺となのはだけでなく、ここにいるカズマ達も同じ考えだったようだ。不安そうな表情で、フェイトを見ていた。
「……落ち着いて聞いてね。実はこの近くで、あるロストロギアの反応が検出されてる。その対処のために、私もここに来たのだけど……」
「ちょっと待て! そんな反応があるんなら何で、今まで分からなかった?」
「余程、巧妙に隠されていたか……、何らかの理由で反応が出なかったんだと思う」
俺たちの会話にこちらの仲間たちは理解が追い着かなかったらしい。全員が目を見合わせた後、カズマが、
「おい、何言ってるか全然わからん。もっと分かるように話してくれ」
「アクセルの近くに物凄い危険物があって、そいつが緊急警報の原因らしい。今回はみんな避難した方がいい。これは俺の本業の方の仕事だ」
それを聞いてカズマ達は驚いた表情をしていた。今度はダクネスから、
「逃げろとはどういう事だ? 私達、冒険者はギルドに向かうのが筋だ。それに私にはこの街を守る義務がある!」
「言った通りの意味。これに関してはみんなを巻き込めない。……それでフェイト、状況は?」
「こちらで観測した結果だと、植物の様なものが急成長しながら周りを浸食してるみたい。ただ……反応も急だったから、現地の人達ならもっと詳しい情報が聞けるかもしれない」
……って事はギルドに行って情報を集めた方が良いってことか。
そして、ゆんゆんも含めギルドに着いた俺たちではあったが、今までにない異常事態であるらしく、皆大声をあげて、状況を確認している最中であった。いつも受付をしているお姉さんが説明をしているらしく、それに耳を傾ける。
「現在、エギルの木と思しき物体が、急速に巨大化しながら周囲を浸食しています! こ、こんな事例は初めてで……何でも良いので知っていることがあったら、教えてください!」
エギルの木――森に悪影響を与える植物であり、養分にしているのは土壌や太陽光だけでなく、周りの樹木にも根を伸ばしその養分を吸い取る森にとっては疫病神ともいえる存在。時には人間や動物も捕まえて養分にすることもあるらしい。その厄介さから冒険者ギルドでは、エギルの木の伐採は高難易度のクエストに分類されている。
「そ、それに、あの辺りのエギルの木は全て伐採されているはずなのに、まるで一度死んで甦ったみたいに活動しているんです!」
……なんだよそれ、アンデッドか!? こっちの魔法は死者蘇生もできるけど、蘇らせた上で、こんな強化するとかありえない。やっぱりフェイトの言っていた通り……。もしかして、雪精や冬将軍の様子がおかしかったのもコイツのせいか……!?
俺、なのは、フェイトの3人が目を見合わせ、
「高町二等空尉、浅間准空尉はこちらの指揮下に入ってもらいます。異論はありませんね?」
形式的なものだろうが、緊急事態ということで一時的にフェイトの指揮下に入る旨の確認があり、もちろん俺たちは頷いて承諾した。
「それで、どうするの? 話を聞いた限りだと、もう広範囲に浸食してるみたいだけど……」
「これ以上、浸食する前に跡形もなく消し飛ばすのが……最善手だけど……」
「じゃあ、俺たち3人のブレイカーで一気にやるのが手っ取り早いか」
ここは手加減なんてせずに、原因になっているものを無にするのが一番の方法だろう。それに関してはフェイトも反対する気はないようだったが、
「悠にはそれよりも、浸食を抑えて欲しい。成長している最中で撃って残骸が残ればそこからまた浸食が始まるかもしれない。艦で観測結果の報告を聞いた時に必要になるかと思って、これを借りて来たんだ」
フェイトが俺にそれを手渡した。まさかコイツをまた見る羽目になるなんてな。
「……何で、俺にこいつを使わせようなんて考えるんだよ!?」
「こないだシグナムが、みんなに自慢げに話してたよ。大丈夫! 悠ならきっとできるから。それとこれは伝言……、“今の君なら問題ないだろう。もし失敗しても、こちらでどうにかするから思い切りやれ。”だって」
「昨日私だって、バインド抜け出すのに苦労するくらいの練度だから、発動は難しくないって。それにこの中であの魔法を使えるとしたら、ゆーくんだけだからね?」
なのはも同意見の様だ。確かにそれが確実な方法かもしれないが、一つ問題がある。
「仮に俺が成功したとしても、集束砲撃つだけの魔力は残んねーぞ。いくら消耗した状態で撃てるつっても限度があるからな」
本当なら、みんなには避難してもらって、事が済んだら戻ってくるのが良かったんだが、ここは協力してもらうのが確実か……。
「……みんな、すまない。今回の件に関して力を貸して欲しい。目標を消し飛ばすには俺達だけじゃ火力が足りない」
俺から投げかけられた言葉にみんなは……、
「私は構わないが……、火力と言うからには、必要なのはめぐみんか?」
ダクネスは一番に協力を申し出たが、彼女の言う通り一番必要なのは、集束砲に匹敵する火力を持つ爆裂魔法だ。
「はやてちゃんから聞いてたけど、その子の魔法なら火力は申し分ないの?」
「ああ、まだ色々問題はあるけど、このままいけば将来は一撃の威力なら誰にも負けないって位にはなる」
なのはからの問いに答えた俺ではあったが、
「…………」
めぐみんは無言であった。何故か心ここに在らずといった感じになっている。様子がおかしいと感じたカズマから、
「どうしたんだよ? いつもなら“我が爆裂魔法で粉々にしてくれる!”なんて言って名乗り出るだろ!?」
「そ、その……」
めぐみんは何かを言おうとしていたが、少し震えながらギルドの外へ出ていってしまった。
「……今日はまだ爆裂撃ってないはずだよな? 何かあったか?」
俺の言葉に全員、何も知らないといった素振りを見せていた。もしかしたら、めぐみんの協力は得られないか……と考えていると、
「……足りない分は、わたしが補うからこのまま3人でやろう。めぐみんちゃんの様子もおかしかったし、今は迷ってる暇はないよ!」
覚悟を決めた様な表情のなのはであったが、何を考えているか大体想像が付く。おそらくブラスターを使う気だ。調整中だと聞いていたが、お構いなしって事か。ブラスター――術者とデバイス双方の限界を超えた自己ブースト。当然、体への負担は凄まじいものとなる。フェイトも俺と同じ想像をした様で、
「なのは!」
「やめろ! それなら浸食は抑えずに俺も集束砲を使って……」
フェイトと俺が同時に止めようとしたが、
「二人共、これが現状で最も成功率が高い方法だよ? それに使うのは最後の一撃だけだから、そんなに心配しなくても大丈夫!」
実際にその通りなので、反論できない。コイツに無茶させるしかないなんて……結局昔から何も変わってないってのか……、俺は。
「結局めぐみん抜きでやる気か? お前……顔が強張ってるけど、どうしたんだ?」
カズマが不安げな表情で、俺のところへ来たので作戦を説明すると、
「おい、それ……大丈夫なのか!? お前の話だとなのはさんって昔……」
「今はこれが一番成功率の高い方法だからな……本当ならこんな事させたくは……」
「私、めぐみんを探してきます! 絶対に連れて来ますから!!」
俺達の話を聞いていたゆんゆんが意を決したような表情で、ギルドから全力で走り去っていった。カズマもめぐみんの探索に志願し、街の中へ消えて言った。
Side カズマ
まったく……めぐみんは、何で今回に限って逃げるような真似をしたんだ? 確かにそのモンスターは現状でもデストロイヤーより規模がデカくなってるって話だけど、めぐみんだってデストロイヤーを破壊している。今回はユウの奴の知り合いだっているんだから、そこまで深刻じゃないはずだ……と考えながら、街を探索していると、大声を出しているゆんゆんと、それを黙って聞いているめぐみんがそこにいた。
「めぐみん、戻るぞ! いいか……今回ばかりはお前の力が必須なんだ! いつも通り爆裂で吹き飛ばせば良いだろ!!」
「カズマ……私は……爆裂魔法を撃つのが怖いのです……」
「何言ってるんだ!? お前から爆裂取ったらロリしか残らないだろ!」
爆裂を撃つのが怖いなんて、明日には槍が降ってくるんじゃないかと思うほどの発言をしためぐみんに対して、構わず手を引きながらギルドへ連れ戻そうとしたが、頑なに動こうとはしなかった。
「……私は紅魔の里にいた頃、天才と呼ばれ一人で何でもできると思っていました。しかし爆裂魔法を習得して一人ではやって行けない事がわかりました。その時、絶対に仲間を大切にしようと心に誓ったのです……」
めぐみんが、昔話を語りだした。逃げ出した事と関係があるのか? 続けて、
「……ですが、ユウは違います。冒険者カードの初期スキルポイントが0だった事を考えても才能なんて無いのはわかります。けどユウは私とは違い、仲間のためにあそこまで強くなった人なのです。前に子供の姿になった時の様に泣きそうになって挫けそうになっても、それでも歯を食いしばって今の力を手に入れた筈です」
確かにアイツは俺らより早く起きてほぼ毎日鍛錬に費やしている。今の実力だってミツルギみたいなチートなんてものじゃ無いのは俺にだって分かる。
「私が爆裂魔法を習得したのは、夢を叶えるためです。……ですが仲間を大切にすると誓ったはずなのに、実際には一日一発しか撃てない手の掛かる魔法使いでしかありません。……確かに爆裂魔法を習得してから、それなりに苦労はしてきました。けど私は結局……自分の爆裂魔法の為に仲間を欲しただけで、本当は仲間なんてどうでも良かったのではないかと……そう考えると、自分の爆裂魔法が軽いものの様に感じてしまって……怖くなってしまいました。これならカズマの言う通り中級魔法を習得すれば良かったのではないかとさえ思うほどです」
つまり、アイツと自分を比べて劣等感に苛まれてるって事か……!? こんな時だってのに! 今度は隣にいたゆんゆんが、激昂した様子でもって、
「……いい加減にして! めぐみんが爆裂魔法を習得した時の事……忘れたなんて言わせない! それじゃあ私が中級魔法習得したのを無駄にするつもり!? そんな事を言うならもう二度とライバルなんて呼ばないから! めぐみんの馬鹿あああああ!!」
紅魔の里にいた頃、二人の間には何かあったのだろう。本来上級魔法を習得して一人前って言われる紅魔族のゆんゆんが中級魔法を習得したのは、めぐみんが関係してるのか?
「めぐみん、さっきアイツがなんて言ったか覚えてるか?」
「……えっ!?」
俺からの唐突な質問にうろたえるめぐみんであったが、そのまま言葉を続ける。
「アイツな……このまま行けば、お前の爆裂は“誰にも負けない”って言ってたろ? アイツは多分俺やお前より、ずっと沢山のものを見てきてる。そのアイツにそこまで言わせたんだ。それを嘘にする気か? もしそうなら、めぐみん……お前は本当に仲間を大切にしない奴になっちまうぞ! それで良いのか?」
めぐみんの肩を掴み、まっすぐに目を見てそう口にした。
Side ユウ
現地に到着した俺たちは、その光景を見て愕然としてしまった。成長を続ける木々に浸食され、飲み込まれていく大地と森。その範囲もうはデストロイヤーの全長どころじゃない、このまま成長を続ければ、アクセルや他の街だって飲み込んでしまう可能性がある。もう一刻の猶予もないか。
「みんな、作戦通りでいくよ。私となのはは攻撃で浸食を食い止めつつ、悠のチャージの時間を稼ぐ。悠は魔法を撃って木の成長を完全に止めて……」
「その後は、わたしとフェイトちゃんが手加減なしで全部吹き飛ばす!」
作戦内容はこの通りである。後はもうやるだけだが……、
「アクア、ダクネス、何でついて来たんだよ?」
「今回はお前が要になると聞いたのでな。ならば私はお前を守るまでだ。デストロイヤーの時のように無駄とは言わせんぞ?」
「アンデッドもどきの木なんて私がケチョンケチョンにしてあげるわ! ユウは魔法使うまで無防備だって話だし、ダクネスは攻撃が当たらないしね」
ダクネスはデストロイヤーに立ちはだかろうとしたのを、無駄と言われて気にしていたのだろうか? アクアも珍しくやる気を出している。
「二人ともありがとう。俺も全力を尽くす」
そう言うと、二人は微笑を浮かべて俺に背を向けて木の方を向いた。その更に前ではなのは達が飛行しながら、樹に攻撃を加えているが、効果は芳しくないのが見て取れた。
本来、この魔法は今の俺に使えるものじゃ無い。……けど、ここでアレを食い止めなきゃ、この辺り一帯が浸食され尽くされて、アクセルも壊滅する。……だから。
「力を貸してくれ! デュランダル!!」
フェイトから受け取った白いカード、それをデバイス状態にして稼働させる。“氷結の杖デュランダル”、極大氷結魔法がセットされた管理局内でも有数の処理速度、そして氷結魔法に絶対的な強化を施すことのできるデバイスである。
デュランダルは7年前とは異なる部分があり、氷結魔法回路や魔力貯蔵機構の強化、処理速度の上昇、そして俺自身の周りには盾の様なリフレクターが浮遊していた。これらはおそらく、極大氷結魔法を少しでも使いやすくするための措置なのだろう。
そっと目を閉じて集中し、詠唱を始める。
「悠久なる凍土 凍てつく棺のうちにて 永遠の眠りを与えよ」
デュランダルを目標に向け、
「凍てつけ!!!」
『Eternal Coffin』
冷気を伴った魔力が猛スピードで巨大化した木に直撃し、跳ね返った魔力をリフレクターが受け止めて再照射させていた。効果範囲は狭くなっているものの、確実に対象を凍結させるための改良らしい。その冷気は巨大化した木を文字通り永遠の眠りに
「あの……広大な範囲に
「何よこれ!? とんでもない魔法じゃない! ちょっとユウ大丈夫!?」
……これがエターナルコフィンの魔力消費量か。強化された氷結魔法補正、内部の貯蔵魔力、リフレクター全て使ってようやく発動できた。
消耗から思わず地に膝を付いてしまっていたが、今は俺よりもなのは達に決めてもらわないとな……。
「なのは、フェイト……あとは頼む……!」
二人が目を見合わせ、最後の攻撃に移ろうとし、
「ブラスターシステム……」
なのはがリミットブレイクを発動させる寸前、
「真打登場……!」
迷いの無い表情のめぐみんがカズマ達に連れられて、俺たちの元に到着した。
「心配をかけてすいませんでした。ええ、やりますとも! ここで敵を
そうして、めぐみんは自分の冒険者カードを取り出し、俺に向けて。
「見ていてください! 先ほどのユウの言葉、今すぐ証明してみせます!」
冒険者カードの操作を終えためぐみんが高らかに、
「我が名はめぐみん! アークウィザードにして爆裂魔法を操る者、そしていつか爆裂魔法を極める者……!」
その様子を見ていたなのは達も安心したような表情であるのが、遠目からでもはっきりと分かった。めぐみんが来たので、ブラスターを使う必要がなくなったらしい。あちらもめぐみんの魔法にタイミングを合わせるつもりのようだ。そして、
「全力全開、スターライト……」
「雷光一閃、プラズマザンバー……」
「エクス……」
なのは、フェイトとめぐみんがそれぞれ目標に向かって魔法を撃ち出す。
「「ブレイカーッッ!!」」
「プロ―ジョンッッ!!」
三人同時に放たれた魔法は、巨大化した樹木をこの世から完全に消し去っていた。そして先程めぐみんから放たれた爆裂魔法だが、もう俺では敵わない程の途轍もない威力へと変貌していた。おそらく冒険者カードを操作していたのは、爆裂魔法の威力上昇にスキルポイントを注ぎ込んでいたかららしい。
しかし、三人の魔法とは別に、見覚えのある爆発が樹の中から上がっていた。
あれは、一年前の火災と同じ……って事は、あの中にあったのは……!? この場所にある筈の無い
俺の様子を察したのかフェイトが近づいてきて、
「あまり気に病まないで……。これは悠の責任じゃないから」
魔力を使い果たし、倒れる寸前になっている俺に対して心配しながら、そう言った。
そんな事はわかってる。……けど、
「……俺なら大丈夫だ。それと済まないが、俺のデバイスを本局のメンテナンススタッフに預けてくれ。改良プランはもう入れてある」
自身のデバイスをフェイトに手渡すと、魔力を限界まで使った反動からか急速な眠気が襲い、そのまま倒れるように眠ってしまった。
「めぐみんとほぼ同時に倒れたな……。魔法一発使って眠るとか、こいつらは兄妹か」
「そう言うな。二人ともあれ程の魔法を使ったのだから、今日の所は勘弁してやれ」
「そうよ! カズマったら自分が活躍できないからって妬いてるの?」
そんな声を聴きながら、次に目を覚ました時には日付が変わっていた。
数日後、ギルドではある意味お決まりになっている大宴会が行われていたが、俺は隅で一人うなだれていた。
「浮かない顔だな。どうした?」
「……みんなに話しておきたいことがある」
話しかけてきたダクネスにそう返し、今回の事件についての説明をメンバーに行った。
「つまりアレか? 今回はお前の所の犯罪者があんな無茶苦茶やらかしたってのか?」
「……ああカズマ、その通りだ。あの木の中にあったのは、ここにはない筈の物で、それを何らかの形で利用していたんだと思う。……端的に言えば、俺がここに来てしまったせいでもある」
この世界はまだ見つかったばかりで、一般人に知れ渡っているわけじゃない。関係者以外では違法渡航者……しかも今回は管理局の情報がリークされていた可能性が高い。
俺からの真相となる話を聞いた面々ではあったが、
「……お前は馬鹿か? 別にお前のせいでも何でもないだろ。アクアなんて洪水起こして街に被害出したってのに、悪びれもせずに居座ってるんだ。その太々しさを少し見習え!」
「カズマの言う通りですよ。いいですか、悪い事をする人はどこに居ても同じ事をします。むしろ今回はそれを防げたのですから、胸を張って良いのです!!」
「ああ、これは誇って良い事だ。胸を張れ!」
カズマ達はそんなの気にするなと言わんばかりの勢いで俺を元気づけようとしていた。引き合いに出されたアクアは少し不機嫌そうではあったが、ギルドで騒いで酒を飲んでいるうちに、気にならなくなった様だ。
「そうだ、フェイトさんからお前が起きたらコレを渡してくれって。忙しいみたいだな、二人してすぐに帰ったし、色々やることができたってさ」
「これってデュランダル……なんで?」
「お前の杖を預かる間、コッチを使えって。元の持ち主からの許可も貰ってるらしいから気にするなって言ってたな。それと似たような事が起きるかもしれないから、元の任務は後回しでしばらく周辺を警戒しろってさ。あと俺達にもできる限りお前に協力して欲しいって」
カズマからデュランダルを受け取ると、
「先日の事件の功労者として、カズマさんのパーティーに特別報酬が出ています」
受付のお姉さんからカズマへの呼び出しがあった。
「お前が行け。今回のMVPはどう考えてもお前だからな、賞金受け取ってこい!!」
カズマに背中叩かれ前に行くと、なぜかお姉さんは申し訳なさそうな表情を浮かべていた。
……あ、これは見覚えのあるパターンだ。できればこのまま退散したんだけど……。
「そ、そのですね、変質したエギルの木を消し飛ばした時……その余波で各所に被害が出ていまして、他のお二方の魔法の被害はそれほどではないのですが、めぐみんさんの爆裂魔法の余波で、森林や通路、用水路その他の土地や施設、建物が爆風で広範囲に破壊されています……」
お姉さんから手渡された紙に目を通す。カズマ達もその額が気になったらしく、そっと覗き込んでいた。
「弁償金額……5億2千万エリス!!!?」
ベルディア戦での洪水被害とは比べ物にならない程の請求金額が俺達に舞い降りてしまった。原因となっているめぐみんは、バツの悪い顔をしていたが、
「さ、ささ、流石はスキルポイント全てを費やした我が爆裂魔法……! 標的だけでなく、周囲にもこれ程の破壊をもたらすとは……!」
「おい、いくらなんでもやりすぎだろ! どうするんだコレ!!?」
「わ、私は悪くありませんよ。ユウとカズマが私を信じた結果ですから、これは二人にも責任があるのです!!」
カズマとめぐみんが言い合いをしていたが、先日の事件での報酬が3億エリス、そしてまだ支払われていなかった冬将軍の討伐の2億エリス、それでもまだ2千万エリス足りない。
これは、また借金生活に逆戻りかと思っていたが、
「お困りのようだな、借金魔道士よ。良い話があるのだが、お一つどうか?」
突如ギルドに現れたバニルが俺を見つけて商談を始めるなどど言い出した。
「汝の制作したスクロールだが、知的財産権を吾輩に売らぬか? 最初のものはもう吾輩が所有権を持ってはいるが、他に関しても売却するが良い。本来は3千万エリス以上の価値はあろうが、生憎と我輩……現状2千万エリスしか支払えぬのでな。この場で借金を無くしたいのなら、今すぐ取引といこう。それに貴様の様な運の無い小僧は、借金なんぞ残すと後々尾を引くだろうて」
……こいつ、絶対タイミング見計らってここに来やがったな! もしかして全部掌の内だったのか!?
「なに、吾輩が見通したのは貴様らが借金を負う場面である。しかし、今回の貴様の悪感情は素晴らしかった。事件の真相から、弁償の発覚、そして今の吾輩との商談。まさかこの短い時間でここまでの悪感情を発するとはな。これからも吾輩を楽しませるが良い、金運ゼロ魔道士よ。フハハハハハ!!!」
バニルの高笑いを聞きながら、俺がプルプル震えていると……、
「お、落ち着け! 差し引きゼロになっただけ良いと思うんだ。前の4千万エリスの借金に比べたら天国だろ!」
「そ、そうですよ! ええ、あの時、冬将軍を討伐していたのが役に立ちました。だからここで暴れないでください!!」
「う、うむ。ギルド内で冒険者が暴れるなど、あってはならない事だ! 愚痴なら屋敷で付き合うので、ここは我慢しろ!!」
カズマ、めぐみん、ダクネスが俺を止めようとする一方で、
「あの悪魔……随分好き放題やってくれたわね……! いいわ! あの凄い氷の魔法で氷漬けにしてしまいなさい!!!」
アクアだけは止める気はなく寧ろ煽ってきた。
「ふむ、何なら今やるか? 先日、幼馴染を脱がせてしまった際、見てないと言いつつ、実はかなり際どい部分まで見えていた男よ」
俺の中で何かがキレる音が聞こえた……。
「悠久なる……」
「「「やめろおおおおお!!!」」」
アクア以外の3人が俺にしがみついて止めている一方で、バニルは満足そうな雰囲気でもって悠々とギルドから立ち去っていった。
デュランダル
ご存知氷結の杖。作中で登場しているのは、A's劇場版と同じものです。ここでは初出から7年経っているので、氷結補正強化、処理速度上昇、魔力貯蔵量増加、リフレクター追加の改良型という設定です。主人公がエターナルコフィンを使うと魔力切れ起こして、めぐみん張りにぶっ倒れます。元の持ち主に比べるとまだ未熟って事でしょうね。