この素晴らしい世界にリリカルな魔導師を! 作:ゴマフアザラシ
「……だ、誰か……俺に魔力を分けてくれ……」
アルカンレティアに到着したのは良いものの、一晩中アンデッド
「カズマ……」
「お前たちの結界で消えかかってるウィズの方が先だ」
ウィズは昨晩張った結界のせいで体が透けており、昇天しかかっている状態だった。カズマがドレインタッチで生命力を分けようとしていたが、それをやると俺の分は残らないだろう。
「めぐみん……」
「頭のおかしい爆裂娘の魔力なんて胸焼けしますよ? もしかしたらボンッとなるかもしれません」
昨日のゾンビ襲撃時に叩き起こした時の言葉を覚えていたらしい。にこやかではあるが、今日一日くらいは反省してください。といった雰囲気である。
「ゆんゆん……」
「……ユウさんは、あんな事言う人じゃないと思ってたのに……」
走り鷹鳶が友達になりたそう、なんて言ったのは大失敗だったようだ。悲し気な瞳で俺を見つめていた。
「……アクア」
「とうとう来たわ! 水と温泉の都アルカンレティア!」
話すら聞いちゃいねえ……!?
「あ、あの……あの方は大丈夫でしょうか? 護衛でもないのに、昨夜は結界を張り続けていらしたのですよね? 顔色が悪そうですが……」
今回馬車で旅行者や様々な荷を運搬していたリーダーだろう。パーティーにすら見捨てられそうになっているというのに、申し訳なさそうな表情で俺の体調を気遣ってくれていた。
「ああ……あいつ魔法使いなのに体力ありますから大丈夫です。少し休めば回復しますから」
営業スマイルのカズマが即答していた。いくら報酬を受け取るのが心苦しいからって、それは無いだろ。
「……すまん、ダクネス、肩貸してくれ……」
「ああ、わかった。しかし、疲弊した者に容赦なく追撃を加えるとは……カズマ、お前はやはり……ンッ……!」
ダクネスが顔を赤くしながら拳を握って震えていた。正直肩を借りたくない。
「報酬を受け取らないというのでしたら、せめてこちらをどうぞ。私が経営している宿の宿泊券です。あなた方のおかげで、あれだけのモンスターに襲われても目立った被害がありませんでしたので、この位安いものですよ!」
と人数分の宿泊券をカズマに手渡していた。しかも数日分の上に食事まで豪華になっているらしい。流石に何度も断り続けるのは、かえって失礼になりかねないので宿泊券に関してはありがたく使わせて貰おう。との意見で一致した。
ダクネスに肩を借りながら全員でアルカンレティアの街を歩いていると、
「アルカンレティアへようこそ! アクシズ教入信信者からは、病気が治っただとか宝くじに当たっただとか芸がうまくなっただとか、様々な実体験を聞くことができるんですよ。あなたも入信してみませんか? そこの顔色の悪そうなお兄さん、アクシズ教に入信すれば体調も良くなりますよ。どうでしょうか!」
道端での勧誘である。もしかして俺が一番弱ってるかと思って声かけてきたのか……? つーか胡散臭すぎる勧誘だ。
「今、ちょっとそんな余裕ないもんで……。またの機会にさせてもらえませんか?」
「これはいけませんね! アクシズ教団が運営する保養施設の予約をしましょう。ここにお名前をお願いします」
と、差し出された紙にさらさらと名前を記入する。
「同志よ! あなたに女神アクア様の加護があらんことを!」
勧誘の女性は満足そうな顔をして俺たちの元から立ち去って行った。
「おい、さっきの……”アクシズ教団入信書”って書いていたぞ? いいのか……」
「えっ? ああ、名前のとこバニルって書いて、住所もウィズ魔道具店にしてるから大丈夫。あの手の勧誘でよく使ってた方法だ。あの野郎は少し困らせるくらいで丁度いい」
俺の一言に一同、驚愕の表情を浮かべていた。
「何て事するの! 私の信者にあんな悪魔を加えるのは絶対にダメよ! ちょっと行って事情を説明してくるわ。アクシズ教のプリーストとしてなら話を聞いてくれるはずだから。カズマ、私の荷物お願いね」
「私もアクアが心配なのでついて行きますね。私の分の荷物もお願いします」
アクアとめぐみんが抜け、俺達は宿に直行した。途中でアクシズ教への勧誘があったが、そこは何とか切り抜けて……というか、また偽名を使わないようにカズマとダクネスがうまくやってくれていた。
「いらっしゃいませ! 旦那様からお話は伺っております! どうか、ごゆるりとおくつろぎください!」
もらった宿泊券に書かれた場所へ行くと、立派な店構えの洋風のホテルであった。どうやらこの街で一番大きな温泉宿らしく、街有数の温泉も引いているらしい。宿の従業員に案内され部屋に着くと、その場に崩れ落ちるように座ってしまった。
「俺は、せっかくだし夕飯の時間まで外をうろついて来ようと思うんだが、お前らはどうする?」
ウィズはまだ、結界の作用で浄化しかかってる状態。あとは俺とダクネス、ゆんゆんだが、
「……俺はここで寝てる。まともに歩ける気がしないから。けど、できれば歴史書とかギルドに行って、この辺りの生息モンスターの情報とか持って来てくれると助かる」
「私はカズマについて行こう。アクセル以外の街をあまり知らないのだ」
「私は温泉に入ります。せっかく温泉地に来たんですから」
……と、返答して、カズマとダクネスが部屋から出ようとした時に、
「すまない。あと、栄養剤的なポーションでも買ってきて欲しい。流石に消耗しすぎたかもしれない」
それに対してカズマは快く引き受けてくれた。
「その……店主さんと二人っきりで大丈夫ですか?」
ゆんゆんも年頃なので、その手の心配も分からなくはないが、カズマから、
「ああ、コイツなら女友達が一人で遊びに来ても手を出さないような奴だから、心配ないって」
「……カズマ、はやての事言ってるんなら、お前は手を出せるんだな? アイツに手を出すって事は……あの人達とも家族になるかもしれないって意味だぞ?」
カズマの顔が見る見る青ざめていく。何を考えたかは大体想像が付くが……。まあ、シグナム姐さんが来た時が一番おっかなかっただろうな。俺だっておっかなかったし……。
カズマとダクネスが外出し、ゆんゆんが温泉に入りに行った後、目を
数時間後、
「目が覚めましたか? 相当消耗していたみたいですけど、私の魔力を少し分けておきましたから」
仰向けのまま目を覚ますと、そこには正座しながら俺の首元を触って魔力を送っているウィズの姿。どうやらドレインタッチで魔力を俺に渡していたらしい。全快とまではいかないが、普通に歩けるくらいまでには回復していた。
「ウィズ……ありがとう。っていうか回復速いな。リッチーってのはそういうもんなのか?」
「私の場合、よくバニルさんからお仕置きされて慣れてますし」
……やられ慣れてるってのも、なんか痛い話だよな。……俺の言えることでも無いかも知れないけど。
「ウィズのおかげで動けるようにはなったけど、これから街を散策ってのは時間的に厳しいし……温泉でも入りに行こうかな」
「でしたら、私も行きます。準備しますね」
と、ウキウキ顔のウィズであった。温泉好きであるらしく、嬉しそうに入浴セット一式を用意していた。そういえばゆんゆんも温泉に入っているはずだが……、まだ戻ってきていないらしい。まあ、女の子の長湯は珍しい事でもないか。
浴場の入口に到着すると、男湯と女湯の他に混浴がある。流石に混浴はないかーと思い、男湯の方に向かおうとしたのだが、
「さっき聞いたら混浴の方のお風呂、とても広いらしいですよ」
と、ウィズが当り前のように混浴へ向かって行った。こっちの人は気にならないのか? いや、少なくともめぐみんとダクネスは混浴なんて入ろうとはしないだろう。……って事は、
「……なあ、ウィズってもしかして、そういうの気にならないくらいのご年ぱ……」
「20歳ですよ。リッチーになった時点で年を取りませんから」
「そ、そそ、そうですよねー。は、20歳ですよねー。じゃあ俺はこっちに行きますので……」
ニコニコしたウィズに言い知れぬ恐怖を感じた俺は、声を震わせながら逃げるように男湯へ向かった。
あれは……昔シャマル先生に実年齢聞いた時と同じ笑顔だった。あと一歩踏み込んでたら、リンカーコア抜き取られるか、まことしやかに囁かれているシャマルビームならぬウィズビームで消し飛ばされそうな雰囲気であった。
脱衣所で服を脱ぎ、一応気を付けることは無いのかと思い、注意書きを一読。マナー自体は地球とそう変わらないらしい。その中で、
『異性のお子様のご入浴は9歳までとさせていただきます』
との一文があった。条例か何かで定められているのだろうか? まあ、昨今では珍しい規則でもないので気にする必要はないか。
浴場へ入ると、まだ早い時間だからか人はまばらであり、ほぼ貸し切りに近い状態であった。だからといって、いきなり温泉に浸かるのはマナー違反。しっかり体を洗ってから湯へ向かう。
「ああ~」
思わず、声が出てしまう。足を伸ばしてお湯に浸かれるのは本当に気分がいい。何気なく周囲を見渡していると、一目で分かる位に全身が鍛えられた屈強そうな男と紫色の長い髪とまとめている6~7歳の女の子が並んで温泉に入っていた。
男の方は戦士系の冒険者だろうか? にしても、子連れの冒険者というのも珍しい。そんな事を考えながら、そちらを見ていたのが、男の方がこちらへ近づいて来た。もしかして不審者と思われてしまっただろうか?
「こちらを見ていたが、何か用か?」
「あ……いえ。気分を害されたのでしたら、申し訳ありませんでした。お子さん連れの冒険者ってのも珍しいと思いまして。相当鍛えていらっしゃいますよね?」
「嗜み程度だ。君もかなりの使い手と見たが、冒険者なのか?」
嗜み程度って……どう考えてもそこら辺のモンスターなら、瞬殺できそうなオーラを纏っている。かなり謙虚な人なんだろうなあ……。
「ええ、連れは街の観光に出てまして。俺はお恥ずかしながら、昨日ここに来るまでのモンスターの襲撃でバテてしまって、こうして休養中ですね」
男と少しばかり雑談していた。入手困難なレアアイテムを探しているらしく、知人からアルカンレティアに良い温泉があるから、骨休めに行ってみてはどうか……と勧められたそうだ。
「温泉っていいな……。母さんが帰って来たら一緒に入りたい」
いつの間にか、女の子もそばに来ていたらしい。何気ない一言ではあるが、立ち入ったらいけないような感じだ。この人、奥さんに三行半でも突き付けられたんだろうか?
「温泉か……。出やすい場所ってのはあるらしいけど、ちゃんと調べないと掘るのは大変らしいよ。けど自分の家に温泉が出たら、ホテルとかできそうだね」
「うん。頑張ってみる」
この子、物静かな雰囲気だけど、結構ぶっ飛んでるかもしれない。普通だったら、どこかの温泉に入りに行くのを考えるけど、掘るのを頑張ってみるって……。
しばらくして温泉から上がった俺が部屋に戻ると、みんな戻って来ていたらしい。……が、ダクネス以外がどこか疲れてるような気がする。
「……お前ら、どうしたんだ? ……って何となくわかった。勧誘攻めで疲弊してるみたいだな」
「……ああ、明日は宿から出たくない。この街は色々おかしい」
「アクシズ教徒怖いです。紅魔族並に恐れられているのが理解できました。前はアクシズ教団でお世話になっていたので、勧誘されなかっただけなのですね……」
めぐみんを見ると、服のポケットには大量の入信書。おそらく無理やり捻じ込まれたのだろう。それだけで、かなりの修羅場となっていたのが容易に想像できた。
「あっ! 頼まれてたポーション買ってきたからな。ここに置いとくぞ」
カズマがポーションをテーブルに置いていたのだが、そこを見るともう1本ポーションの瓶があり、”疲労回復・滋養強壮ポーション”と書かれていた。多分カズマも勧誘攻めで疲れ果てて買ってきたんだろう。
「……俺は風呂に入ってくるから」
どことなーく誰かについて来てほしそうなカズマではあったが、誰もついて行かなかったので、仕方なく一人で行ってしまった。ポーションを一つ取って、自分の下着を取りに俺達に割り当てられている部屋へ移動した。
「俺もこれ貰おうかな。せっかく買ってきてくれたし」
ポーションを手に取り、一気に飲み干すと、
アレ? 何かみんなして突然デカくなったような……?
俺がみんなを見ているのと同様、部屋にいた女性陣全員が信じられないといった表情で俺を見つめていた。
「ちょっと! またユウが小っちゃくなったわよ!?」
「しかも前より体が小さいです。さっきのポーションはもしかしたら……」
「もしかして、私のお店にあった試供品でしょうか? 先方は改良してみたと言っていましたが、どう見ても5年以上年齢が若返っていますね。もしかして間違えて渡してしまったのかもしれません……」
えーと、みんなの反応を見ると、どうやら俺は小さくなったらしい。前にそのポーションを飲んだ時は、若返っている間の記憶が全くなかったのだが、今回はちゃんと自分が16歳である事を自覚している。
「これは……確か時間が経つと元に戻るが、その間はどうする? というか……このままで良いものか……」
「確か小さくなってる間は、記憶もそこまで遡るんですよね? だったらまず、私達の事を説明しないと……」
このポーションは、カズマがウィズ魔道具店でバニルから購入した物である。前回とは違い、約7~8年若返るだけではなく、その間の記憶もしっかり残っているという品だ。コイツを飲んで若返り、女湯で潜伏スキルを使って息を潜める。万が一、パーティーメンバーや他の女性客に見つかっても”子供だから”という理由で見逃してもらえる隙を生じぬ二段構えの作戦であった。などどいった事実は露知らず、この場にいた全員が俺に自己紹介した後に、不安にしないよう細心の注意を払って、今の状況を説明していた。ちなみに服は子供用の浴衣を着ている。
「やっぱり、こうなっても落ち着いていますね。この年くらいから仕事をしていたというのは、本当なのでしょう」
「うむ、理解が早くて助かる。大人しくしていれば、何の心配もいらないからな」
……前の時も状況を聞いて、取り乱す事なく落ち着いていたらしい。みんな、今回もそうだと思い込んでしまったようで、その場にいた全員、安心したような表情をしていた。
「では、私達も風呂に入りに行くとするか」
「そうですね。温泉に浸かってゆったりして、街での出来事を忘れたい気分です」
女性陣全員が風呂に行く準備に取り掛かっていた。さっきまで風呂に入っていたウィズが俺の方を向き、
「ユウさんはどうしましょう?」
「俺なら留守番で良いよ。みんなで行って来て」
まあ、ここは何もしないで部屋で本でも見てるのが良いだろう。そのうち元に戻るとか言ってたし。
「でも一人にしておくのも心配ですね。私達が戻って来たら迷子になっていても困りますし」
めぐみんは俺が勝手にあちこち動き回るとでも思ったのだろう。心配そうな雰囲気を醸し出していた。妹がいるので、その辺り気になるんだろうか?
「カズマの顔を知ってたら、男湯に行かせても良かったけど……。もういっそ一緒に連れて行きましょうか!」
……えっ!? ちょっと待てアクア! これでも俺は中身16歳だからな!! そっちは分かってないかも知れないけど、年齢的にマズイって!
「大丈夫だから! アクア、俺はどこにも行かないでここにいるから!!」
「子供だからって年上の人を呼び捨てはダメよ? ちゃんと”さん”をつけなさい」
顔を近づけ、右手の人差し指をピンと立てて、メッ! っといった感じで俺を叱っているアクアであった。いや、そうじゃ無いんだ。俺は、
「俺は大人だから、一緒に入れないって!」
「……その年でも仕事をしていたのですから、大人と同じ責任があるのは分かりますが、今は仕事中ではありませんし、そこまで気にする必要はありません。では、行きましょう」
俺の言葉をおかしな方向に勘違いしためぐみんが、俺の手を握って風呂場へ連れて行こうとしていると、
「本当に一緒に入るの? ユウさんだよ? 男の人だし……」
ナイス、ゆんゆん。どうにか周りを説得してくれ!
「まったく、こんな子供に裸を見られた程度で、”お嫁に行けなくなった”などど騒ぐつもりではありませんよね? だとしたら自意識過剰もいい所です。こうなっている間の記憶は無いのですから、恥ずかしがる必要はありません」
「めぐみんこそ、ちゃっかり手を繋いで……、こめっこちゃんが懐かしくなったの? もしかしてホームシック?」
「ユウは今でこそあんなですが、聞くと子供の頃は危なっかしかったそうですし、怪我でもされたら一大事でしょう! それと我が妹は紅魔族随一の魔性の妹、逞しく日々を過ごしているはずです」
めぐみんとゆんゆんが言い争っているうちに、部屋から退散しようと試みたが、
「コラッ! 逃げるな!!」
ダクネスがヒョイっと俺を抱き上げてしまった。こんなに軽々と持ち上げられるのは結構傷つく。離してくれとジタバタしていたが、そこはダクネスの筋力である。今の俺の力では敵うはずもなく、息を切らしながら抵抗を止めてしまった。
「小動物を見てるみたいで、和みますね。あのユウさんにもこんな時期があったなんて」
ウィズが頬に右手を当てながら、うっとりとした顔で俺を見ていた。こうなったら、バインドで全員拘束して、ちゃんと説明しないと……と思い、魔法を使おうとしたのだが、
……魔法が発動しない!? もしかして魔法を覚える前まで若返ってるのか!!?
抵抗する手段も無く女湯に連れて行かれ、半ば無理やりひん剥かれた俺ではあったが、はっきり言って目のやり場に困る。もう視線は下に向けて、隅でじっとしてみんなが風呂から上がるのを待つしかない。もう手枷足枷をされて、拘束されている囚人と同じ気分だ。
俺があまりにも動かないので心配になったのかもしれないが、ゆんゆんが近くに寄って来ていた。というか、マジでマズいです! ちょっとゆんゆんの方に視線を向けるだけで、めぐみんとは比べ物にならないものが浮かんでいるのが、見えてしまいます。ゆんゆんは何やら思案して、
「ねえ、ユウくん。もう一回”ゆんちゃん”って呼んで貰っていい?」
俺を完全に子供だと思っているゆんゆんではあったが、前回あだ名で呼ばれたのが密かに気に入っていたらしい。流石に普段の俺にはこんなの頼んだりはしないはずだ。
「ゆ、ゆんちゃん?」
それを聞いたゆんゆんは少し顔を赤くしながら、プルプルと震え、
「か、かか……、可愛い!!」
「ん゛んんんっ! ん゛ん゛ん゛ん゛ん゛っ!!!?」
俺を全力で抱きしめて離さない。それだけならまだいいが、ゆんゆんの決して小さくは無い胸に顔を
「何をしているのですか!! 弱体化している内に、その凶悪な胸部装甲で窒息死させて師匠超えを果たすつもりですか!!」
「えっ!? ああ!! ごめんね! 苦しかったよね? 大丈夫だった……?」
「は、はい……何とか大丈夫です」
ゼーゼーと荒い呼吸を繰り返しながら、呼吸を整えていると、
「図らずとも、大きければ良いというわけでは無いのが、証明されましたね。また同じ事をしでかしたら、紅魔族随一のショタコンを名乗ってもらいます!」
「何でショタコン!? あだ名で呼んで貰っただけなのに!」
「その程度で男の顔を自分の胸に
ここは、何食わぬ顔で二人から離れるのが賢明だろう。その後もみんなが上がるまで風呂の隅でじっとしていた。というか……風呂に入るだけで命の危険に晒されるなんて思ってもみなかった。
よし、もうこうなったら元に戻るまで子供の振りをしていよう。そうしないと、ゴットブローに爆裂魔法2発と上級魔法を喰らった上でダクネスにぶっ殺される。今の俺は魔法を覚える前の子供だ……、そう自分に言い聞かせなければ、地獄(物理)を見る。
風呂場から上がると、ちょうどカズマも上がって来たらしく脱衣所の入り口で鉢合わせてしまった。
「あ、あの……この人は?」
俺がカズマを指差し、初対面の様な雰囲気を出していると、カズマは驚いた様な表情をしていた。
「ああ、カズマさん。もしかしてうちの店からポーションを購入しましたか?」
「あ、ああ……。体力回復用って聞いてたけど……、これって?」
ウィズがこれまでの顛末を説明し、カズマは俺をジッと見ていたが、俺は子供の演技を続けていたので、何やら騙されたといった顔で一緒に部屋へと戻った。精神的に相当疲弊してしまった俺は、自分の部屋に戻ると泥のように眠ってしまい、次の日、目が覚めると体は戻っていた。
「なあ、昨日の事覚えて無いよな?」
「一回目の風呂に行った後から記憶が無いんだけど……、もしかして酒でも飲んでたか、俺?」
目覚めたカズマが一番に発した言葉である。何故か俺から見えない様に、すすり泣く声が聞こえていたが、そっとしておこう。
今回に関しては、運が良かったか悪かったかは皆様の解釈にお任せします。
ちょこっとだけStS
「つまり、周りが女ばかりで居心地が悪いと?」
「そこまでは……、ただ何となく身の置き場のない時が……」
機動六課……メカニックはそうでもないが、特にフォワード陣は女性が多い。多感な時期のエリオがその辺りを気にして相談したかったらしい。
俺は慈愛に満ちた表情でエリオの肩にポンっと手を置き、
「素晴らしいじゃないか。女の子ばかりの空間! 俺もお前くらいの年じゃ疎ましく思った事もあったけど、そこはそれ。そのうち慣れる。今振り返るとあれは本当に良いものだった……! お前ももう少ししたら分かるようになる」
「は、はぁ……」
どう返事をして良いかわからないといったエリオではあったが、なぜか冷や汗を垂らしていた。俺のすぐ後ろで、
「へぇー」
「……ふーん」
「ほーう」
分隊長2人と部隊長の冷え切った声が聞こえる。まるで故障した人形の様にギギギッと首を回して振り向くと、満面の笑顔の3人の後ろに魔王と死神と獰猛な狸の顔をしたキメラのオーラがはっきりと浮かんでいた。もしかして、俺にしか見えてない?
「部隊長補佐兼交代部隊隊長、ちょう分隊長達と一緒に部隊長室行こか。女の子ばかりの空間やから嬉しいやろ?」
俺はまるでMIB(メン・イン・ブラック)に捕まった宇宙人のごとく、なのはとフェイトに片腕ずつ拘束され部隊長室へ引きずり込まれていった。
今回後書きはStSパロの内容をほぼ使っています。そっちの方ではクロノがやられてますが……。