この素晴らしい世界にリリカルな魔導師を! 作:ゴマフアザラシ
気にせず読んで頂ければ幸いです。
「……こ、この状況は……一体?」
俺が目を覚ますと、部屋にはアクアとウィズ以外が揃っており、そこにいる全員が俺の周りで雑魚寝している状態だった。
……な、何があった!? カズマはともかく、めぐみんとダクネス、ゆんゆんまで……。
「おい、みんな起きろ! 何でここにいるんだ!?」
みんなの体を揺さぶりながら、声を掛けると、
「ん……、お前……何とも無いのか?」
目を擦りながら俺の様子を伺うカズマであったが、一目見て安心した表情をしていた。
「カズマ、何でダクネス達までここにいるんだ!?」
「お前がうなされて、おかしな事言ってたから来てもらったんだ。後でちゃんと礼言っとけよ?」
カズマが言うには、宿に帰ってからずっとアクシズ教の教義だの、女神エリスに対する悪口などをうなされながら何度も繰り返していたそうだ。あまりにも苦しそうだったので、3人にも部屋に来てもらい、看病ではないが一晩中付き添ってもらっていたらしい。
……昨日のアクシズ教団本部……か。
――我々は日夜、邪悪なるエリス教徒の魔の手から民を守り……。
――あなたの拳は紛れもなくアクア様から授かったもの……! その恩を返すために今こそアクシズ教へと……。
記憶の断片を思い出し、呼吸が荒くなり震えていた俺に、
「深呼吸です! ゆっくり吸って……吐いてください!」
めぐみんが背中を摩りながら、落ち着くように促していた。
数分後、何とか平静を取り戻し、
「みんな……昨日はずっと付いていてくれたんだろ? 本当にありがとう!!」
「私こそ、何もせず見送ってしまい、すいませんでした……。まさか、あれほどの重傷を負うとは夢にも思わなかったもので……」
「昨日の事は、無理に思い出さない方が良い。ところで、うわ言であったご褒美というのを、ぜひ私に教えてくれないか?」
「良かったです! あのまま変な事ばかり言い続けたらどうしようかと……」
めぐみん、ダクネス、ゆんゆんが少し涙目になりながら、俺の手を握ってくれた。
その後、アクアとウィズも起きたらしく、各々の部屋で着替えをした後で一階にある食堂へと向かった。この食事、結構な高級食材を使っているらしく、その辺りに詳しいダクネスが色々解説しながらではあるが、全員おいしくいただいた。食事を済ませ、食堂から出た時、
「……あの人」
聞き覚えのある女の子の声。そちらを振り向くと、なぜかここのところ毎日顔を合わせている二人組――戦士風の男と紫色の髪の女の子の姿があった。
「おはようございます。同じ宿ですから会いやすいとはいえ、本当に縁がありますね」
「少年、昨日は只ならぬ気配だったが、体は大丈夫か?」
俺が変態……もといゼスタさんに連れ去られる場面を見ていたので、この人も心配していたらしい。
「宿に帰ってからは、うなされていたらしいです。まあ今はこの通りですが」
そう答えると、男の厳格な表情がほんの少しではあるが、緩んでいるように見えた。
そして、みんなも一緒に宿の廊下で立ち話をしていると、男が何やら思案し、
「すまないが、今日一日この子を預かってはくれないか? これから人と会う約束があるのだが、できれば連れて行きたくはないのでな」
と、男から同行している女の子を預かってくれないかと頼まれた。
……三行半を突き付けられた奥さんとの離婚調停中で娘さんを会わせたくないとか、奥さんがギャンブルで借金を作ってしまったから、娘さんを遠ざけたいとか……だったら嫌だなあ。それともこの人……昨日俺の……。
嫌な想像が頭の中を
「じゃあ今日はどうしようか? ええっと……」
「あ、ルーって呼んで」
女の子はルーちゃんという名前らしい。これで紅魔族的な名前だったらどうしようかと思ったが、杞憂だったようだ。部屋に到着し、今日はどこに行こうかをみんなで相談していたのだが、
「……すまん、誰か
と、ルーちゃんを呼び、部屋の化粧台の前に座らせた。見ると、後頭部に少し寝癖が付いている。子供なので、まだ自分で直すのは慣れてないのかも知れない。
「女の子なんだから、身だしなみはちゃんとしないとな。せっかく長くて綺麗な髪なんだし」
何となく出た言葉ではあったが、
「あの男、自然体で幼女を口説いてますよ! 私はあんなの言って貰った事はありません……」
「天然女
「そもそも、なぜ髪をとかすのがうまいのだ? 手馴れている感じがあるのだが……」
めぐみん、アクア、ダクネスが、ルーちゃんへの一言をツッコんでいた。何気に失礼な3人である。まあ、そこまで目くじらを立てても仕方ないと思い、髪をとかし終えた後、
「髪型はこのままで良いか? それなりに色々できるけど」
「……ん、このままでも良いけど……色んなのも見てみたい」
大人しい子ではあるが、やっぱり女の子らしくオシャレに興味があるらしい。
「……何でそんなのまで出来るんだよ?」
今度はカズマからである。
「……そこら辺は察してくれ。まあ、髪結いなんて何年かぶりだから、誰か代わりにやるか?」
との問いにみんな顔を見合わせながら、最終的に全員こっちを向いて俺の方をジッと見ている。俺が本当にできるのか興味津々といったところなのだろう。
「どうだ? ゆんゆんとお揃いの、一部編み込んでおさげにしてみたけど……」
「……本当にうまいわね。他にどんなのできるの?」
食らい付いて来たのはアクア。そういえばアクアも少し変わった髪型だ。本人曰くチャームポイントで、頭の上に輪っかを作る結い方である。
「今度はダクネスとお揃いだな、ポニーテール。けど、これはやめとこう。ダクネスみたくなったら、将来が不安だ」
「まさかここで攻めて来るとは……くっ! 子供の前だというのに……!?」
俺の一言に、思わず身を震わせるダクネス。こんなだから心配になるってのに……。
その後もサイドポニーやツインテール、浴衣に似合う夜会巻きなども試してみたが、結局ルーちゃん本人がいつものが良いと言って、左右の髪の一部だけ束ねたロングにした。
「しかし、器用というか……、変わった特技を持っていますね」
「これはこれで、やってると結構面白いんだよな。髪型一つで全然印象が変わるし」
一通り終えて雑談していると、ゆんゆんが。
「そういえばめぐみんは髪を伸ばしたりしないの? 紅魔の里にいた頃から、そんな髪型だったけど」
「フッ! 気にした事もありませんね。確かに母は髪が長いですが、別にこのままで良いと思っていますよ。それよりも今の私は爆裂魔法を極める方が大事ですから!」
爆裂魔法ねえ……っと、そういえば……。
「なあ……めぐみんって誰から爆裂魔法教わったんだ? 確か爆裂はアークウィザードでも誰かから教わらなきゃならないって言ってたよな?」
まだ、めぐみんがパーティーに入ったばかりの頃、彼女自身が言っていた事である。
「私がまだ子供の頃、魔獣に襲われた事があったのですが、たまたま通りがかった魔法使いのお姉さんが爆裂魔法で、その魔獣を撃退したのですよ」
その時の、圧倒的な暴力と絶対的な力の虜になってしまっためぐみんは、他の魔法を覚える気が無くなってしまったらしい。そして、めぐみんが冒険者になったのは、そのお姉さんにお礼を言い、自分の爆裂魔法を見せたいのだそうだ。
私の爆裂魔法はどうですか――と。
「そのお姉さんですが、爆裂魔法もさることながら、胸も大きかったのです。お姉さんは言いました。大魔法使いになれば私の様になれる……とも」
つまり、めぐみんが言うには自分の目的の他に、爆裂魔法を極めた大魔法使いなら巨乳になれると。なんか凄まじい解釈の違いがある気がするが……。
「お前なあ……、そんなのあるわけないだろ……ってどうした?」
カズマが顎に手を当てている俺を見ていたので、
「いや……めぐみんの説は統計学的に見て、俺も否定できなくてな。いっぺんはやてにお説教喰らったが、あながち間違いとも言えないんだよ」
「ええ、ユウの友人達を見て増々確信が持てました! このまま行けば、私はゆんゆんが泣いて謝る程に成長していくはずです!」
そんな俺たち二人の説を真っ向から否定する様子でカズマが、
「おい、ゆんゆんより年上のめぐみんがこれなんだぞ! そんなの夢に決まってるだろ!!」
「なにおう! 数年後に後悔しても遅いですよ、カズマ! その時は、ゆんゆんと一緒に泣いて謝ってもらいます!!」
カズマとめぐみんが口喧嘩を始めてしまったので、どうしたものかと思いながら二人を見ていたのだが、
「……じゃあ、試してみるか?」
「「……えっ!!?」」
カズマとめぐみんだけでなく、その場にいた全員が一斉に俺へ視線を向ける。
「試すってどうするの?」
「身体強化の一種で、数年先の自分の姿になる魔法があるんだけど、やってみるか? まあ結局自分のイメージだから、その通りに成長するかは分からないけど。発動と制御は俺がやるから、めぐみんはイメージだけすればいい」
「時を待たずに、この場で証明できるとは……! いいでしょう、お願いします!!」
めぐみんは絶対にやってやるといった表情で俺へと近づいてきて、
「じゃあ、年齢は俺やカズマと同じか少し上くらいをイメージしてくれ」
コクリと頷き、目を
「「「「……おお!!」」」」
一同、目を見開いて驚嘆の声を上げる。そこにいたのは16、7才といった感じで身長も伸び、表情からも幼さが消え、黒髪を腰まで伸ばした美少女。しかし……、
「どうですか? 謝るなら今のうちですよ?」
フフンと鼻を鳴らしながらドヤ顔のめぐみんではあったが、全員が彼女のある一点を見つめている。めぐみんもそれに気づいたらしく、その部分――胸をポンポンと触った後、プルプル震えながら、
「どういう事ですか!? この魔法失敗していませんか! こんなのは何かの間違いです!!」
「魔法は成功してるって。おかしいな……? イメージだから真実はどうあれ、その通りになると思うんだけど……。髪の話したから無意識にそっちをイメージしちゃったのかも……」
少し涙目になり俺に訴えかけるめぐみん。遺伝子に刻まれたナニカが作用したんだろうか?
「……真実って時に残酷ね……」
「……ああ。人間知らない方が良い事もあるんだな……」
笑うわけでなく、顔を伏せているアクアとカズマ。これは笑われるよりキツイかもしれない。とりあえずフォローしなくては……。
「ほら、美女になるのは決定事項みたいだし、世の中には例外ってのが常に存在するから……」
「それは慰めてませんよね!? 暗に諦めろって言ってますよ!!?」
俺のフォローは逆効果だったらしい。変身を解いた後、部屋の隅で膝を抱え、暗い雰囲気のめぐみんであった。すると、
「私もやってみたい」
俺達の様子をずっと見ていたルーちゃんではあったが、さっきの変身に興味を持ったらしい。
「良いけど、ある程度魔力ないとできないよ?」
「大丈夫。魔力はあるから」
どうやらこの子、魔法使いの素質があるらしい。だったら別に良いかと思い、ルーちゃんの肩に手を置き、魔法を発動させると、
「「「「……おおー!!!」」」」
またしても、みんなからの驚きの声。そこにいたのは、ルーちゃんをそのまま大きくした様な13、4歳の少女。こちらも美少女と呼んで差し支えない容姿である。だがしかし……、先ほどのめぐみんとの違いは、
「ルーちゃんは結構ありますね。見た目は私やめぐみんと同じくらいの年みたいですけど……」
ゆんゆん程ではないが、胸部にははっきりとした膨らみが服の上からでも見て取れる。
「―――――――――――ッ!!!?」
声にならない声を上げて追加ダメージを受けてしまっためぐみんに、掛ける言葉が見つからない俺達であった。
その後、傷心のめぐみんのご機嫌を取るために、カズマを連れて一日一爆裂に連れて行き、爆裂を撃たせた後で俺の魔力とデュランダルの貯蔵魔力をカズマのドレインタッチでめぐみんに渡し、2発目の爆裂を撃たせたり……と。そこまでして、ようやく通常状態へと復帰しためぐみんを宿へと連れて帰ると、もう夕方になっており、夕食と入浴程度の時間しか無くなっていた。
宿で夕食を取り、みんなで浴場へと向かう。
「じゃあルーちゃんはお姉さん達と女湯行ってきな」
と、女性陣にルーちゃんを頼もうとしたのだが、
「一緒がいい」
俺の浴衣を掴んで離そうとしない。気に入られてしまったんだろうか? なら男湯連れてくかーと考えていたところ、
「ルーちゃん、こっちのお風呂は男でも女でも入って良いんだ。お兄さん達とこっちに行こう」
満面の笑顔のカズマがルーちゃんを連れて混浴へ行こうとしている。
「カズマ……恐ろしい子……!」
「子供をダシにして堂々と混浴へ行くとは……」
「混浴に入るまでは予想していましたが……私達の目の前でそれを行うとは思いませんでした」
女性陣全員が驚愕の表情を浮かべていたのを見たカズマは、更に、
「どうせなら、みんなで一緒に入ろうぜ! 俺達は今日一日ルーちゃんを頼まれてるんだ。この子をしっかり守ってあげるためには、全員同じ場所にいた方がいいだろ?」
うわーすげー。大義名分作って全員で混浴に入ろうとしてやがる。半ば呆れてしまっていると、
「まったく、レディに対しての物言いではありませんね。さあこちらへ来てください」
ルーちゃんの手を引いて女湯へ連れて行こうとするめぐみんに対し、
「レディを名乗るなら、せめて昼間くらいまで年を取ってからにしたまえ!」
カズマが挑発混じりに、めぐみんに対して子供だと言わんばかりの態度を取っている。
「今、子ども扱いしましたね!? 分かりました。カズマが私を女として見ていないのであれば問題ありませんね! 一緒に入りましょう!!」
完全に頭に血が上ってるめぐみんである。どうにか止めようと二人に声を掛けようとしていると、クイクイっと浴衣を引っ張られ……、
「行かないの?」
ルーちゃんはもう混浴の方に行く気らしい。もうちょっと待ってねと言ってから、カズマとめぐみんに、
「お前らもちょっと落ち着けって……とりあえず俺はこの子から目を離さないから、そこまで心配いらない」
二人を引きはがしたのだが、めぐみんが俺を呼んで少し離れてから耳打ちをしてきた。
「……お願いできますか?」
「乗った。けどちゃんとタオルは巻いとけよ? そうじゃないと、いくらなんでも目のやり場に困る」
「安心してください。私だってそこまで慎みが無いわけではありません。しかしユウもイタズラ好きですね」
お互いニヤッと笑って準備に取り掛かる。とりあえず、カズマを先に混浴へ行かせて少し時間が経ってから、俺もルーちゃんと一緒に向かう。脱衣所で筋肉質で背の高い男がいたが、ちょうど風呂から上がってきたところだったようだ。体を洗い、温泉に浸かっているカズマに近づき、
「なあカズマ、賭けをしないか? これからめぐみんがここに来るけど、お前が迫られても動じなかったらお前の勝ち、そうじゃなきゃ俺の勝ちって事で」
「いいぜ。俺は
よし、言質はとった。後はめぐみんを待つばかり。珍しく俺達だけじゃなく、もう一人ここに入っている人がいるようだが、迷惑にならないように離れておこう。……と、その時、入り口の扉が開き、入って来たのは……。
「聞いてねーぞ! なんだあれ!? 反則じゃねーか!!」
「えー? 拙者、魔法を使わないなんて言った覚えはないでござるよ。ニンニン」
その場のノリで
カズマからも距離を取り、そちらへ近づくめぐみんを見守っていると、
「……カズマ、言われた通り、レディになって来ましたよ?」
カズマの隣に着いためぐみんが声を掛ける。
「は、はいっ!!?」
……すっげー動揺してる。声が上ずって背筋をピンと立ててるとか……。ヤバい、面白い! めぐみんが念話使えたら、ここから指令を出せたんだけどな……。笑いを堪えながら、二人を見ていると。
「私も大人になった方がいい?」
「あれは単なるおふざけだから、マネしない方が良いかな」
ほんわかとした空気の俺とルーちゃんを他所に攻勢に出ているめぐみん。
「そんなに緊張しなくても良いですよ? 私はまだ子供ですから」
「そ、そうだな!? ああ……そうだよな……ハハハ……」
めぐみんに大人の余裕が見えるのは、気のせいだろうか? 姿だけとはいえ、成長したのが影響しているのかも……。カズマじゃないが、あの状態で迫られたら、ああなっちゃうよなあ。
それを見ていたもう一人の女性客は、
「仲が良いわね? 恋人同士かしら?」
「「違います!」」
即座に否定するカズマとめぐみん。お姉さんはめぐみんの方を見て、
「あなた……紅魔族ね。私が魔法を教えた紅魔族の子は元気にしてるかしら……。あなたより2、3歳年下だと思うけど……」
俺達も近づき話を聞くと、どうやらこのお姉さんは魔法使いらしい。つい数時間前、似たような話を聞いた気が……?
めぐみんは驚いた表情でそのお姉さんをジッと見ている。おそらく俺と同じ想像をしているはずだ。
「あの……教えた魔法ってのは?」
今の俺達が一番疑問に思っている事だ。めぐみんは聞きたくても、どこかで怖がっているのだろう。顔が強張っている。
「普通はあまり使い所の無い魔法で……、爆裂魔法って言うんだけど、知ってる?」
ルーちゃん以外の一同が確信した。その中でめぐみんは……、
「……あ、あなた……は……!?」
驚き以上に嬉しさが勝っているのだろう。目に涙を浮かべながら、小刻みに震えている。俺へと視線を向けて、おそらく魔法を解けと言っているようだ。魔法を解き、めぐみんが本来の姿に戻ると、
「ずっと……あなたを探していました……。あの時、あなたに教えてもらった魔法を……私の爆裂魔法を見てもらえませんか?」
お姉さんもめぐみんが大人の姿に化けているとは思わなかったようで、元の姿に戻っためぐみんを見て、自分が爆裂魔法を教えた子だとようやく理解したようだ。
俺達を他所に昔話に花を咲かせる二人。思わぬ形ではあったが、旅の目的を果たしためぐみんとそれはもう楽しそうに語らっていた。
そして、お姉さんも含めて風呂から上がり、脱衣所から出たその時、
「ああーっ! ウォルバクさん! ウォルバクさんですよね!!」
自分の古い知り合いとバッタリ会った……といった感じのウィズが、お姉さんに対して突然大声を上げていた。
ここからどうやってウォルバク様生存にするか、まだ思案中だったりします。