この素晴らしい世界にリリカルな魔導師を! 作:ゴマフアザラシ
・訓練校についてはオリジナル設定を用いています。
・オリキャラがでます。
名前はアクティ・ファレル
近代ベルカ式AA+の騎士、使用しているのは短剣型アームドデバイスのヴィルベルヴィント。
ボクっ娘で大食いの主人公より一つ年上という設定です。
ミッドチルダにある第4陸士訓練校。”陸上部隊”や”陸上警備部”の隊員を養成するための訓練校の一つである。前線に出る武装隊員の育成のみならず、通信科や整備課なども存在するので、そちらを経て部隊のバックアップとして武装隊で働く者も多く見られる。
俺やなのは、フェイトもこの訓練校の卒業生であり、学長が元教導隊であるためか、生徒が卒業間近になると、あるイベントが彼らに対して行われる。
所変わって、冒険者の街アクセル。
「うーん……」
居間で腕を組みながら、ひたすら唸っている俺であった。先日、アルカンレティアからアクセルに帰って来たばかりだというのに、少し面倒事が舞い込みそうになっていた。
「何だ? その様な難しい顔をして。悩みがあるなら話してみるといい」
居間でソファーに座りながら、新聞を読んでいたダクネスが、俺の様子を見て心配になったようだ。
「……実は、ちょっと面倒臭い話が来そうでさ。まあ断ろうかとは思ってるんだけど」
「お前が面倒とか、珍しいな。何なんだ?」
カズマも心配していたようで、俺の方を向いて首を傾げていた。
「俺が昔、在籍してた訓練校から、在校生を二人面倒見てくれって言われてな。指導者はもう一人来るし、そこまで大変じゃないけど、何かあったら困るし」
「学校に通っている生徒ですか。何のためにここへ?」
学校という単語に興味を示したのか、今度はめぐみんからの質問である。
「そこの学長の方針でな。卒業が近くなると、学校の出身者の仕事場に行って、現場を肌で感じて来いって送り出すんだ。一週間程度だけど」
「つまり、短期間の研修ってわけね。いいじゃない、その位」
アクアの言う通りなんだけど、ここに来させるのはどうかってのもある。もし戦闘込みなら、アクセルあたりでも訓練生にはキツイかも知れないし、指導もしなきゃいけない。どんなのが来るかは分からないが、結構な手間になってしまう。それに、
「実を言うと、俺の所に来たいってヤツがいるとは思わなったもんで、今回は無いと
「……? 分かりませんね? どうしてそう思っていたのですか?」
「バニルの野郎が前に見通してたろ。”講師で招かれた学校で生徒縛り放題にした”って。だから俺の所にくるヤツなんて、よっぽどの馬鹿か、根性あるヤツか、ダクネスみたいな性癖のヤツかのどれかだろうし」
ちなみに、ここ数年は、その研修での一番人気はなのはで、毎年抽選が行われるらしい。教導隊で訓練した後は、げっそりになるそうだが。
「つまり、変なヤツが来ても困るって事か。どんなのか分かるか?」
「女の子二人だな。13歳ともう一人も13歳……いや、もうすぐ14歳か。それと指導者で来る俺より1つ年上の教官、そっちも女だ」
それを聞いたカズマが、目を輝かせて、
「俺も協力するから、是非受け入れようじゃないか! 幸い屋敷の部屋には余裕あるし、一週間位なら大丈夫だろ!!」
訓練生を受け入れるべきと力説していた。
「ねえ、カズマったら、女の子って聞いてやけに張り切ってるわよ」
「まったく、顔を合わせて鼻の下を伸ばすのが目に見えるようです」
「もしかしたら、私と緊縛について語り合える人間が……!」
女性陣については、呆れたような物言いであった。ダクネスについては何も言うまい。
結局、カズマに押し切られる形で受け入れる事になってしまった。そして、当日。
「お久しぶりです、准尉。アクティ・ファレル曹長、到着いたしました」
「遠路お疲れ様です。そこまで形式ばった話し方はやめましょう。というか、そんな話し方されると、対応に困る」
アクティ・ファレル——近代ベルカ式、陸戦AA+の騎士にして、地上部隊のエースの一人。ランクこそ俺には劣るものの、一対一ではほぼ互角の実力の持ち主でもある。
長い亜麻色の髪を三つ編みにしているのだが、本人曰くクセっ毛なので、こうしないと落ち着かないのだそうだ。ちなみに、10歳の頃、訓練校で知り合ったのだが、当時は実力が近いという理由でよく組まされていた。
そして、彼女の後ろにいる訓練生に目を向けると、
「ス、スバル・ナカジマ訓練生です! よろしくお願いします!!」
「ティアナ・ランスター訓練生です。一週間お世話になります」
敬礼しながら、訓練生二人が挨拶をしている。ショートカットの娘とオレンジ色の髪をツインテールにしてる娘である。二人共、訓練校で講師をした際に見た顔だ。
「そんなに硬くならないように。今からそれだと、身が持たなくなるからな」
「「は、はい!!」」
まあ、緊張するなっていうのも無理な話か。今日は移動のみだし、明日までゆっくりしてもらおう。
「じゃあ部屋案内して! 凄い屋敷だよね。ボクの部屋ってどんなの?」
さっきまでとはうって変わり、出会った頃の口調になってしまったアクティである。
「オメーは砕けすぎだ。先輩として示しが付かないだろうが!」
訓練校で出会った当時から、謎の人懐っこさがあるアクティだったりする。そのおかげで、俺や3ヶ月の短期コースだったなのはやフェイトともほとんど初対面で打ち解けている。とりあえず、3人をそれぞれに割り振った部屋へと案内し、自己紹介を終えた後、居間でくつろいでいる。
「しかしまあ、俺のとこ来る訓練生がいるとは思わなくて、ほとんど準備してなかった……」
「ああー。今年話題になった、訓練生拘束事件? 確かにアレのせいで、希望者なんてほとんどいなかったしね」
そのほとんどいない希望者が、今来ている二人らしい。
「お前、何やった!? 拘束事件って」
カズマが少々引きながら、それについて質問してきた。事件って言われるほどのものじゃないと思うんだけど……。
「いや……ほら。設置型も含めたバインドの使い方と、対処の仕方教えようと思って、ここにいる二人含めて20人位だったかな。俺に触れたら課題クリアって事でやったんだけど……」
結果は20対1でも俺の圧勝。リミッターは付けてたし、その場から一歩も動かなかったにも関わらず、訓練が終わった後は、周りに捕縛された訓練生が転がっていましたとさ。ちゃんちゃん。
「悠は、教導隊方式でやり方がちょっと荒いしね。高町ちゃんのとこにも、たまに手伝いに行ってるでしょ?」
「まあな。アクティこそ教官資格持ってなかったか? わざわざ俺のとこ来なくても、お前一人で足りそうなもんだけど」
と、二人して雑談していたところ、
「あの、高町って……教導隊の高町二尉ですか?」
「ん、そうだけど? ああ、有名人だからな。知っててもおかしくはないか」
ショートカットの方のスバルと名乗った娘が、突然口を開いた。何か目が輝いてるような……?
「ああ……。この子、高町二尉が憧れの人で、写真も持ち歩いてるんです。ホラッ、あんまり恥ずかしいとこ見せない!」
ティアナがスバルの様子について、解説しながら注意していると、
「ふーん。高町ちゃんの話聞きたいんなら、丁度良かったね。なんせ悠は、出身地も同じで、実家まで近所だし、それこそ面白い話しなんてわんさか出てくるよ!」
「本当ですか!? 是非聞かせてください!! 9歳でもうAAAランクだったとか、次元犯罪事件止めたとか、破壊不能って言われてた危険な兵器を完全破壊したとか……」
「流石にそれは嘘でしょ。どういう9歳よ」
ティアナがまたしてもツッコんでいたが……。それ、全部本当なんだ。信じられないかも知れないけど。
「そうそう、あとハラオウンちゃんがチビッコ連れて訓練校来てた時に、ボクもかち合って、チビッコに悠の昔話したら、すっごく喜んでたよ! 可愛かったね、あれは」
「アクティ……今なんつった?」
俺の昔話……か。俺は話した事は無いから、どうせヴィータ辺りが面白おかしく教えたんだと思ってたが、どうやら違ったらしい。
「だから、悠の訓練校時代の話を……」
「犯人はお前かあああああ!!」
叫び声と共にアクティの頬を引っ張り、喋れなくして、そのまま。
「そのおかげで、エリオが危ない目に合うわ、俺はフェイトにお説教されるわで散々だったんだ!!」
「ふぁひふふほ!? ふぁはほふも!!」(なにすんの!? なら、ボクも!!)
今度は俺のほっぺたを引っ張りながら、抵抗するアクティ。お互いまともに喋れない状態だというのに、言い合いを続けている。
「ふぇめえ! ふほのほうひほぁふへんふえふぁへえ!!」(てめえ! 人の奥義パクってんじゃねえ!!)
「ほへほほひっふぉはほふひはほ!? ひひはへんふぇはひへ!」(これのどこが奥義なの!? いい加減放して!)
「ほっひほほ、ははへほ! ほふふへはほ!!」(そっちこそ放せよ! 年上だろ!!)
「ひうほほふはへんふぁいうぇほ! ほほはへはひ!!」(悠の方が先輩でしょ! 大人げ無い!!)
会話が成立しない様で、なぜか成立している俺達。そんなのを見て、
「高町二尉の所は抽選で外れたけど、怖い人じゃなくて良かったねえ」
「こ、この人が本局の実力者……? 本局、地上部隊問わず、捜査部の切り札とか言われてる人……なの?」
スバルはともかくティアナが疑惑の眼差しを向けている。確かに、子供っぽいケンカしてる二人にしか見えないよな、これ。
「この男、仕事中以外は大体こんなですから、気にしない方が良いですよ」
「ああ、ところでだ。その拘束事件とやらを詳しく教えてくれないか? どういった状況でやられたのかを詳細に!」
ウチのメンバーも人見知りするような連中じゃないのが幸いだったのか、すぐに打ち解けた様で、緊張も解れた様子だった。その夜、
「すまないな。街の外まで付き合わせちまって。リハビリついでに体動かしたかったんだ」
「しっかし、悠をそこまで一方的にコテンパンにするって……。今だと高町ちゃん達でも難しいでしょ。どんな使い手よ?」
「槍使いの騎士だな。バインドを腕の振りだけで壊すわ、デバイスは半壊させられるわで、完全に俺の負けだった」
雑談はこの程度にして、双方構える。久々に目にしたアクティの゛ヴィルベルヴィント゛。ナックルガード付きの大ぶりな短剣型のアームドデバイスである。二人で、近接戦闘で10分程度打ち合った後、
「流石だねえ。ミッド式でここまでの近接戦闘こなせるのなんて、どれだけいるんだか」
「こっちは結構、しんどいけどな。お前等みたいのと近接だけでやってられっか。……っと、ちょっと隠し玉行くぞ」
それに応えて、防御態勢を取るアクティ。デバイスを変化させ、出力は抑えめで一足飛びで斬りかかると、驚いた様な、あり得ない物を見る感じで、
「……ねえ、悠ってバカなの? 何であんなの思いつくの? まだ出力控えめだったし、非殺傷設定だから良いけど、そうじゃ無かったら、バリアもヴィルベルヴィントも壊されて、ボク真っ二つだったよ!?」
「いや……一応、ずっと前からイメージだけはしてたんだけど、
「魔導師だったら、大人しく中衛、後衛やってれば良いでしょ! わざわざ前に出て、あんなの……。確かに当たれば勝てるけど、リスクだって相当だよ? 集束砲あれば良いでしょ!」
隠し玉を見せたら怒っているのか、心配しているのか、言われたい放題言われている俺であった。まだまだ煮詰めるところはあるのは分かってはいるが、ここまで言わなくても良いんじゃないかなあ……。
「それでもさ。これから先、俺には必要になると思う。どんな攻撃も防御も打ち砕く一撃ってのは」
「分かってたけど、頭良い癖して、すっごいバカだ。ボクがいる間は、時間が許す限り訓練には付き合うから、もう少しちゃんと使えるようにしよう。でないと危なっかしすぎるから」
「……ううっ。感謝する……」
頭を抱えながら、隠し玉について批判しながらも協力してくれるアクティであった。見せたら心配してくれるとか、本当に申し訳ないと思う。
次の日から昼間は訓練生たちの指導。夜はアクティとの訓練を並行して行っていた。
「誘導弾で死角を狙うのも悪くないけど、直射型でもこうやって、うまい事相手を誘導するのも一つの手だから、どっちも覚えておくと、幅が広がる」
ダクネスを的にしての、射撃講座である。
「あ、あの、あの方……あれだけ撃って大丈夫ですか……?」
「問題ない。凄まじく硬いし、俺だってアイツを落とすのは全力出さないと無理だからな」
少々、というか、かなり引き気味になっているティアナであった。スバルは近代ベルカ同士という事で、アクティが主に指導している。また他の日は。
「二人共、災害担当やるつもりなら、救助訓練やってみるか。爆裂撃った後で、動けなくなっためぐみんを、キールのダンジョンの奥に放置しての救助活動って事で」
「一人で放置されるのは、いささか危険だと思うのですが、訓練ならそこまでする必要はないでしょう?」
今のキールのダンジョンは魔法陣のせいで、モンスターは近寄らないとはいえ、一人で放置されるのは嫌らしい。
「だったら、カズマを護衛につければ良いな。ダンジョン奥で動けないまま二人っきりだ。臨場感が出るだろ?」
「……だったら是非私にしてくれ! 暗闇の中、一人孤独に放置プレイとは……! 願っても無いシチュエーションだ!!」
ダクネスが自分がやるなんて言いだしたが、そこは何とか抑えてもらい、訓練を行った。そして、夜は街の外にて、
「ほら! 常にカウンターを警戒しないと、やられちゃうよ!! 一撃必殺は良いけど、自分が殺されちゃ意味ないからね!!」
主に自身の近接戦の訓練を行っている。容赦無しで打ちこんでくるので、服で隠れてる部分は痣だらけになっていたりする。
「遠慮無しでやりやがって……! 後で覚えてろよ」
「愛の鞭だって。後になって、痛めつけられる位で良かったって思うよ。じゃあ次行こう!!」
一通り、訓練を終えて屋敷に戻ると、
「毎日飽きないよな。今日のデートはどうだったんだ?」
「カズマ、こんだけボロボロになるデートがあるか。俺はダクネスじゃねえ!」
こんな色気の無いものはデートなんて認めない。絶対にだ。
「じゃあ、ボクは先にお風呂にっと……。覗かないでよ!」
三つ編みを解き、フワッとしたロングとなったアクティが風呂に向かった後、カズマがよそよそしい。
「……言っとくが、覗こうものなら五分刻みで斬り裂かれても知らねーぞ」
その言葉にビクッとして動きを止めるカズマ。何考えてたか分かるのもどうかとは思うが。
「やはりアクティも相当強いのですか?」
「だな。近接だとはっきり言って俺より上だ。空戦適性は低いけど総合的には大体互角かな」
「空戦適性ですか……。あの……、やっぱり教官は最初から、そちらの適性も高かったんですか?」
ティアナは最終的には空に上がるのが目標とか聞いたので、それも興味があるらしい。
「浮くのは簡単だった。けどその後だな。……俺の場合は、最初レイジングハート先生が凄まじくスパルタでした」
授業受けながらのイメージトレーニングだったが、魔法に関してはあれで普通だと思ってたよ、当時は。
「ちなみに、どんな訓練だったんですか?」
スバルも興味を持ったらしい。この子も空戦適性は低いとは聞いているが、後学のためにやってみるのもいいかもしれない。
「二人共、仮想での訓練やってみるか?」
二人共、お願いしますと言ったので、目を瞑ってもらいトレーニングに入ると、5分後。
「も、もう終わりにしてください……。お、お願いします……」
「ぎ、ぎもちわるい……」
両名、顔を青くしてギプアップ。まあこんなもんだろうな。
「なら、俺もやってみるか。これでも数々の激戦を潜り抜けてきたんだ! 空飛ぶ訓練くらい楽勝だ」
女の子達の前でカッコいいところを見せたいらしいカズマが、自分もやると言い出したので試してみると、5分後、
「!!!? !!?」
口を抑えながら、全速力でトイレへ向かってダッシュしていた。多分、吐きたくなったはずだ。
「な、何をやったのだ!? あれほどの嘔吐を引き起こすとは……!」
足固定して立ったままジェットコースター乗ってた方が、まだマシってくらいのマニューバだからな。普通はああなる。そんなこんなで、数日後、明日で研修も終わりになるという時に、街に緊急アナウンスが鳴り響いた。
『緊急クエスト! 緊急クエスト! 町の中にいる冒険者の各員は、至急冒険者ギルドに集まってください!』
緊急クエスト? 一体何が……。
「なあ、これなんだ?」
「決まってるじゃない! キャベツよ、キャベツ!! 今の時期なら春キャベツね!!」
……普通のキャベツが飛ぶから、春キャベツが飛ぶのも分かるが、いちいち戦わないと食べれないのか、ここのキャベツは。
今のアナウンスに、?マークを浮かべているミッドチルダの3人。一応解説することにしたところ、アクティから、
「ふーん。じゃあさ、勝負しない? 明日で帰るし、レクリエーションって事で」
キャベツ飛ぶのは別にいいやといった感じのアクティだった。他の2人は、ありえない事を聞いた様な顔だったが、納得はしてくれたらしい。
「ボク達と訓練生の一人ずつで組んで、どっちがキャベツの撃墜数が多いのかを競うってのは?」
「良いだろう。ただ勝負ってのもつまらないから、どうする?」
「負けた方が、今日の夕食を奢るって事で、どう? 久々にお腹いっぱい奢ってもらうのも良いかも」
この大食い女め。今まで自重してたのを見ると、ここにいる間は猫被ってたな。
とりあえず、キャベツ狩りは俺とスバル、アクティとティアナで組んでの勝負となった。そのまま、打ち合わせを行う。
「よし、とりあえず進路は俺が確保するから、ダッシュして届く距離まで近づいて思いっ切り殴れ! それで行ける」
「は、はい! 何とかやってみます!!」
戸惑いながらも元気な声で返事をするスバル。一方、
「じゃあボクが逃がしたのを、片っ端から撃っていって! そこまで数は多くはならないと思うけど」
「りょ、了解しました!!」
ティアナが後衛からのサポートに徹するらしい。そして、熱くなっている俺達を見た面々は、
「アイツはなんでこう……どうでも良い勝負事には熱くなるんだろうな?」
「まあ、意外に子供っぽいところも悪くありませんよ。カズマは参加しますか?」
「俺はもう少しで大金が手に入るし、やらない」
カズマは不参加。めぐみんもさっき爆裂撃ってしまったので、参加せず。
「では、私は最前線でキャベツ達の攻撃を受け……、いや冒険者達を守っていよう!」
「みんな頑張ってねー。キャベツの保存なら私に任せて!!」
ダクネスは参加になるかは分からないが、前線には出るらしい。アクアは捕まえたキャベツの保存係を買って出ていた。
そして、キャベツ狩りが開始された。俺はティアナと同じ位置で、スバルへと射撃支援を行っていたが、
「でりゃああああ!!」
気合と共に、スバルがキャベツを一撃粉砕。
うーん。キャベツ達、あれで攻撃力高いってのに臆することなく飛び込んで行けるか。あの子自身の防御力も悪くない。
一方、最前線でキャベツをスパスパ斬っていたアクティに、死角からキャベツが激突しそうになっていたので、援護をするかとデバイスを構えたところ、アクティの姿がフッと消えてしまった。他の場所に目をやると、まったくの別方向で群がるキャベツ達を一網打尽にしていた。
……ティアナっつたか。射撃と幻術でのサポートね。粗削りだけど、相方の動きをよく見てる。陸士も良い若いのが育ってるな。
「ねえ、あの二人、親の仇みたいにキャベツ落としてるわ……」
「チート持ちが二人いるようなもんだからな。あのくらいできるんだろ」
「爆裂魔法を撃てれば一網打尽にして、私がトップになれるのですが」
俺達のキャベツ狩りの感想は人それぞれだったらしい。そして、キャベツ達が過ぎ去った後の撃墜数は、
アクティ&ティアナチーム 208玉、ユウ&スバルチーム 226玉
これだけ、見ると俺達の勝ちだと思われた……が、完全に忘れていた。自身の幸運の低さを……。正確には、
アクティ&ティアナチーム 208玉(キャベツ154玉、レタス54玉)
ユウ&スバルチーム 226玉(キャベツ46玉、レタス180玉)
である。そりゃそうだよな。春キャベツがあるんだから、春レタスだって飛んで来るよな……。
圧倒的な大敗を喫した俺はギルドの食堂へと行き、約束通り食事を奢る破目になってしまった。
「じゃあ、この唐揚げ10人前お願い! あと、サラダも特盛で!!」
もう遠慮しないと言わんばかりの勢いでアクティが注文し、料理がテーブルに運ばれたそばから、がっついている。
「ど、どこにあんなに入るの? あの子の胃袋ってブラックホール!?」
「初見だと驚くよな。俺だって、初めて見たときは開いた口が塞がらなかった」
アクティの食事量を間近で見てしまったアクア達が、呆れたような顔をしていた。
「そっちの二人も、遠慮せずに食べな。さっき言った通り、奢りだから」
「本当に良いんですか? その……あたしも結構食べる方で……」
年頃の女の子が、よく食べるなんて思われるのは恥ずかしいだろうか? スバルが顔を伏せて困っている。アクティ並の大食いなんて、そうそういるわけないから、食べるっても可愛いもんだろ。そう考えて。
「気にするなって。訓練生に奢るくらいの給料は貰ってる」
「じゃあ、あたしも唐揚げ12人前とサラダ特盛2皿、それとご飯も特盛で!」
……なん……だと!?
料理がテーブルに運ばれて来ると、物凄い勢いで皿に盛られた料理が姿を消していく。アクティ、スバル共にそれでだけでは足りないらしく、ありえないスピードで追加注文を行っていた。
「……あ、あの、本当に大丈夫……ですか?」
「お、おお、男に二言はナイヨー。ハ、ハハハ……」
青ざめている俺を見て、ティアナが心配になったらしいが、もう引くに引けなくなっている。
「せめて、俺達は自分の分は払うか……」
「そ、そうね! そのくらいしましょう!!」
こちらのメンバーは自分で代金を払うような話で一致していた。
その後、二人はオーダーストップが掛かるまで食べ尽くし、俺は支払い金額を見て一言。
「すいません……。今日はもうお金おろせないんで、明日で良いですか?」
「あの姉ちゃん達、良い食べっぷりだったからな。少しまけといてやる」
酒場のマスターのご厚意により、まけて貰ったものの、スクロール売却の臨時収入がかなり消し飛んでしまったのであった。
次回からは、5巻分に行く予定です。