この素晴らしい世界にリリカルな魔導師を!   作:ゴマフアザラシ

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蠢く者達、そしてオーク戦

カズマ達がウィズのテレポートでアルカンレティアに到着すると、早朝だというのに街の広場に人だかりができており、やけに賑やかになっていた。

 

「ねえ、カズマ。お祭りかしら? ちょっと寄って行きましょうよ!」

 

「あのなあ……。急いで紅魔の里に向かった方が良いだろ」

 

カズマは呆れ気味にアクアに注意していたが、

 

「まあ待て。もしかしたらユウも立ち寄っているかもしれん。聞き込みをしても良いのではないか?」

 

「確かに……もしかしたら、テレポートでここまで来た私達の方が早いかもしれません。少し街を散策しませんか?」

 

ダクネスとめぐみんの言う事も、最もだと感じたらしい。全員で聞き込みを行っていると、

 

「あっ……! サトウさんも、こちらへいらしたんですか。やはりこの発表を聞きに?」

 

「あの………今、カズマさんも……って?」

 

セナが、人だかりの中のカズマ達を見つけて話しかけていたが、ゆんゆんが違和感を感じたらしく、問いただしていた。

 

「ええ、昨日の夜にアサマさんともお会いしました。私の手配した宿に泊まっていたのですが、もう発ったみたいですよ。お礼を書いた置手紙もありましたし」

 

「早っ!? テレポートも使ってないのになんて移動速度よ……」

 

「前にデストロイヤー偵察のクエストを受けた時も、結構なスピードでしたが、あれでも全速力では無かったようですし、この位は可能なのでしょう」

 

これは急いだ方が良いかも知れない。と、ここにいる全員がの意見が一致した様だった。すぐにアルカンレティアを出て、後を追おうとしていたところ、

 

「おや。これは皆さん、こんなに朝早くからどういたしました?」

 

アクシズ教団最高司祭ゼスタである。その姿を見てアクアはともかく、他は身構えてしまっている。

 

「ええ……実は――」

 

唯一まともにゼスタと話せるであろうアクアが事情を説明すると、

 

「ふむ、彼ならついさっき飛んで行かれましたが。まだ30分も経っておりませんので、急げば間に合うかもしれません」

 

「ったく。早すぎだろ! 飛んで行ったんじゃ追い付けねーぞ!!」

 

カズマが慌てながら、アルカンレティアから出ようとすると、

 

「ちょっと待ちなさいって! これから、この私の活躍が大々的発表されるらしいから、もう少しここにいましょう!!」

 

「アクア、ここは先を急ぎましょう。それについては、仕方ありませんので諦めてください」

 

「なんでよー!? 私だってチヤホヤされたいの! ねえ、ちょっとだけだから!!」

 

我儘を言うアクアに対して、半ば引きずる形でアルカンレティアを後にする一行であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

空から森を抜けた直後、街道沿いの道の真上を飛行中、デバイスからの警告があった。

 

『マスター、地上に敵性反応……これは……!?』

 

珍しく戸惑っているような様子のデバイスに対して。

 

「どうした?」

 

『反応、ガジェット。数は20機』

 

なっ……!? なんでここにガジェットが……!? いや今はそれは良い。こいつらがここにいるって事は、もしかしたら、『レリック』も?

 

地上に降りて見据えるのはI型と呼ばれるカプセルの様な外見の機動兵器。何度か相手をした事はあるが、様子見で、単発での射撃を行う。

 

『Shoot Barret』

 

放たれた魔力弾は、ガジェットに命中する寸前で搔き消され、消滅していった。

 

……やっぱりAMFか。普通に戦ってたんじゃ埒が明かないだろうが。

 

AMF――『Anti Magilink-Field』と呼ばれるフィールド内の魔力結合・魔力効果発生を無効にする魔法防御である。その効果から、魔導師にとっては相当厄介な防御ではあるが、

 

「よし、氷結変換での氷塊か氷柱での攻撃を主軸でいく。サポートは頼む」

 

どんな防御だろうと、攻略法はある。AMFは魔力結合を阻害するので、例えば小石を高速で撃ちだす。または、落雷による破壊。そして俺の場合は氷による射撃で破壊を試みる。

 

『了解』

 

そうして、ガジェットを順当に撃破していったが、物陰に隠れていたらしい複数体が残った機体と共に俺を取り囲んでいた。

 

……なるほど、取り囲んでAMFの濃度を上げるか。確かにこれなら魔法を使うのは厳しくなるが、さて……。

 

目を一瞬閉じて集中し、魔法を展開する。しかし、AMFの濃度が上がっているためか、相当な消耗となってしまっている。なので、

 

「ファルシオン、モードリリース。展開はバリアジャケットのみ」

 

デバイスに指示を出し、そのままガジェットの一体に向かって全速で駆ける。AMF影響下であるため、移動系魔法も阻害されるが、あちらが攻撃する前に接近し、

 

――ヒュン

 

ぴよぴよ丸で一閃。斬撃を受けた機体は真っ二つになり活動を停止していた。その後、同様に残っていた機体も全て、斬撃による物理的な破壊で全滅させた。

 

この刀、やっぱり使えるじゃないか。コイツ量産できないかな? けどまあ、騎士しか使わないだろうし、使用者の魔力が大きければ斬れ味も増すらしいけど、どのくらいの魔力から対ガジェットに使用できるか不明確だしなあ……。っと、状況を伝えておかなきゃな。

 

この世界にガジェットが出現した旨の報告を行い、今回の戦闘での消耗からこの場で野営を行う事にした。

 

 

 

 

 

この戦闘場所のはるか彼方。視認する事が困難な岩場の奥深くにて。

 

「すっごいなあ……! あれだけの数を一人で物ともしないなんて」

 

「お嬢様や騎士ゼストの言っていた魔導師ね。まああんなオモチャじゃあ相手にはならないわ」

 

水色の髪の少女に、茶髪に眼鏡をかけた少女がそう答える。

 

「……どうする? 今のうちに始末しておくか?」

 

「それは後回しで良いでしょう。この世界の調査員の行方が知れなくなれば、それこそ管理局が大挙して押しかけるでしょうし。私達の目的を最優先で行きましょう」

 

銀髪で眼帯を付けた小柄な少女の質問に対して、笑顔のままその言葉を口にする眼鏡の少女。

 

「……? あのバリアジャケット……どこかで?」

 

「名の知れた人だし、どこかで見たのかも知れないわね。通信阻害も行っている事ですし、私達もそろそろ目的地に向かいましょう」

 

茶髪のロングヘア—を後ろで束ねた少女が、魔導師に対して疑問を持ったようだが、構わずに4人とも目的地へ向かって行った。

 

 

 

 

 

野営の準備をして、辺りが暗くなる頃に一度仮眠を取っておこうとすると、

 

『マスター、動体反応検知。ご注意を』

 

……またガジェットでも出てきたんだろうか? そう思いながら周囲を見渡すと、

 

「うわっ! またか……!?」

 

そういえばそうだった。俺はなぜかアンデッドに好かれやすい体質だったよ。こんな場所に一人でいたら、そりゃあゾンビが寄ってくるか。……はあ。さてどうするか……。ドッカンドッカンぶっ放したら、他のモンスターも寄ってきそうだし、殴って浄化させるのは……、腐った体にパンチとかあんまりしたくない。だったら、またぴよぴよ丸に働いてもらうか。

 

本来なら仏さん斬ったりするのは遠慮したいところではあるが、背に腹は代えられない。手足だけ斬って動けなくしようか、と考えていたところで、

 

「『ターン・アンデッド』ッ!」

 

聞き覚えのある声と共に、周囲が輝きゾンビ達が見る見るうちに浄化されていった。声のした方向を向くと、アクア達だけじゃなく、アクセルにいるはずの人間が全員この場に集まっていた。

 

「……どうして皆してここに?」

 

「ツンデレみたいな事を言い出したロリっ娘と、ゆんゆんがどうしてもって言うから追っかけてきたんだ。ついでに俺は、お前を一発殴りに」

 

「誰がツンデレですか! 私はただ、こめっこが心配なだけです!!」

 

めぐみんの発言はともかく、何で俺がカズマに殴られなきゃならないんだ?

 

「しかし、追いつけて良かった。存外に移動速度が速かったので、合流は紅魔の里になるかと思っていた」

 

「この辺りで一悶着あってな。まさかこっちに来るとは思わなかった」

 

ダクネスが安心したような表情で俺に話しかけると、

 

「ユウさん! カズマが!! 鬼畜外道になったの! バニルが可愛く見えるくらいの悪魔だわ!!」

 

なぜかアクアが大泣きして、カズマを罵っていた。理由を聞くと、森を抜けている最中に安楽少女というモンスターをカズマが討伐したらしい。この安楽少女、通りかかる旅人に対して強烈な庇護欲を駆り立てる行動をとり、自身から離れなくした後で、最終的に衰弱死させて養分にするのだそうだ。

俺は空から森を抜けたので、安楽少女に遭遇はしなかったが、全員、安楽少女に対して攻撃できずに、その場から立ち去ったそうだ。その後、カズマが一人戻り討伐したら、みんなから非難の雨あられだったらしい。

 

「まったく、大人しく待ってればいいのに。まあいいや。めぐみん、ゆんゆんちょっと」

 

二人を手招きして呼び寄せて、

 

「最近、紅魔の里の辺りで変わったゴーレムが出没するとか、聞いた事ないか?」

 

それを聞いた二人は、顔を見合わせ、何の事だ? といった雰囲気で、

 

「いえ、私は手紙が来た事はありませんし……。ゆんゆんは?」

 

「私も聞いた事はないです。どうかしましたか?」

 

二人共、ガジェットには覚えが無いらしい。なら何でアイツらが……?

 

その後、カズマが買ってきてくれたアンデッド除けの魔道具のおかげで、そいつらが寄ってくる事が無くなったので、後は交代で朝まで見張りを……という話になった。とりあえず、最初はカズマとめぐみんが見張りをする事になったのだが、交代の時間よりも少し早くに目が覚めてしまった。そうしていると、

 

「きゃあああああ!!」

 

当然、めぐみんの悲鳴が周囲に響き渡り、モンスターかと警戒してしまったが、

 

「……何やってんだ? お前ら」

 

カズマがめぐみんの眼帯を引っ張っていたり、スティールをするような動作で指を怪し気に動かしていたり、めぐみんの顔に落書きしようとしていたり……と、よくわからない状況になっていた。

 

「……このロリっ娘が見張りの癖して、寝てたのが悪い。これは正当な罰だ」

 

……心配して損した。ここはモンスターもいるような場所なのに、こうも騒がしいとか。けど、この騒がしさでどこか安心してる俺もどうかとは思う。

 

「そろそろ交代の時間だろ。二人共少し休めって」

 

カズマとめぐみんにそう告げると、

 

「俺は徹夜は慣れてるから、このままでいい」

 

「私もさっきので完全に目が冴えてしまいましたので、交代はいりません」

 

とはいうものの、俺も眠れなくなりそうだと言ったら、3人で見張りをする事で話が落ち着いた。

 

「みんなが寝る前にカズマにも聞いていたのですが、ユウのいた国ではどんな仕事をしていたのですか?」

 

カズマの話は明日の準備をしながらだったので、あまりよく聞いていなかったが、俺の話か……。

 

「基本的には、色んなところに出向いて捜査の手伝いするのが、最近やってた事だな。悪い人捕まえたり、逆に何かの事情がある場合は、それを聞いてどうにかできるんなら、手助けしたり」

 

「「……ほう」」

 

カズマとめぐみんが同時に、感心したような声を漏らす。

 

「けどな……。俺な……、なんか知らないけど、管轄外の地域にまで呼ばれたりするんだよ」

 

主に地上とか地上とか地上とか……。曰く、地上部隊のトップが、前科持ちやレアスキル持ちを嫌っているからとか、俺を地上に引っ張ろうとしているとか聞いた事がある。

 

「……お前の仕事場ってブラック企業なのか?」

 

「ぶらっくきぎょう?」

 

「従業員を道具として、こき使って禄に休みも与えない会社の事だ」

 

……人手不足って点ではそれに近いんだよなあ。まあ、ちゃんと休みはあるし、福利厚生もしっかりしてるけど。

 

「カズマではそこで働くのは難しいかもしれませんね。生活が生活ですし」

 

「確かに、俺じゃお前のとこの職場は無理そうだ」

 

絶対に無理とは思わないけどな。普通に起きて、出勤しての内勤なら……それでも無理そうな気がする。

 

「そういえばバニルが、お前はまかり間違えばロリコンになるって言ってたぞ。もしかしたら10歳くらい年の離れた女の子に追い掛け回されるとか」

 

「なんだよそれ!? つーかアイツの言う事なんて信じなくていい! 大体、俺が宴会部長とか呼ばれるのが想像できるか?」

 

あの野郎は、なんでこんなのばっか言ってくるんだ、ホント。帰ったらどうしてくれようか……!

 

「……あの、ユウのご両親はどんな人ですか? あまり聞いた事が無かったもので」

 

「ああー。うん、もうとっくに空の上だ」

 

「「……えっ!?」」

 

まるで世間話するかのような感じで言ってしまったが、二人共明らかに動揺しているように見えた。重い話だと思われたのだろう。

 

「職業は俺と同じだな。んでもって、任務中に……」

 

「そ、そうでしたか……。もしかしたら……とは思っていましたが……」

 

「まあ、それを知ったのも、職業の事聞いたのも本人達からじゃなくて、人づてだけどな。俺には何にも教えないで……さ」

 

どうしても重い雰囲気になっちゃうよなあ……。どうしよう……。

 

「もし、ここでアンデットになって出てきたら、思いっ切りぶん殴るな。こっちの気も知らねーで……って」

 

それを聞いた二人は、ドン引きしているような顔だった。うまい事和めば良かったんだが……、なかなか難しい。まあ、ここにるわけは無いんだけどさ。ちゃんと墓だってあっちにあるし。

 

それからも色々話しているうちに夜が明け、全員が起床して、目的地に向かって進路をとっていると、だだっ広い平原が姿を現した。カズマと俺が、様子見で先行するとの事で進んで行ったが、前方に人影。あちらの方も俺達に気付いたらしく、ゆっくりとこちらへ近づいて来た。

 

「こんにちは! ねえ、男前なお兄さん達。あたしといい事しないかい?」

 

それはオークと呼ばれるモンスター。繁殖力旺盛で、他種族とも交配可能なメジャーモンスターである。目の前のオークは雌であるらしく、こちらを誘っている。俺もカズマも特殊な趣味は無いので、当然。

 

「お断りします」

 

「オークいける人なら知ってるんで、その人連れて来ましょうか? その代わり、ここを通してください」

 

と、目の前のオークの提案を却下し交渉しようとしたが、そんなのであちらが諦めるはずもなく、こちらに襲い掛かって来たので、カズマが応戦。初級魔法とドレインタッチでオークを戦闘不能にした。すると、みんなが近づいてきて、オークに関する説明を行った。

 

オークの雄はとっくの昔に絶滅しており、今のオークは各種族の優秀な遺伝子を兼ね備えたオークとはいえないモンスターらしい。ちなみに他種族の雄を捕まえると、それはもう凄い目に遭わせるらしい。しかもオークを倒してしまったカズマは、優先的に狙われると説明があった。なので、

 

「……なんかオークが大挙して押しかけてきたな。飛んで逃げるか?」

 

「そうだな、そうしよう! 幸い俺達以外に男はいないから狙われはしないだろうし」

 

カズマを捕まえて、飛ぶ前に牽制で砲撃でも撃っておくか。と思い、カートリッジロードを行った。

 

 

 

 

その光景を見て俺達だけじゃなく、アクア達まで固まっていた。俺がこの世界に来る時に元々持っていたカートリッジはガジェットとの戦闘で使ってしまったので、ウィズから受け取った方の”この世界で作られたカートリッジ”を使用したところ。

 

『マスター、魔法使用に深刻なエラー発生。そして、予期せぬプログラムが発動』

 

……うん。そんなのは分かってる。問題はこの状況をどうやって切り抜けるかだ。

 

「ふ、二人共……それは何だ? 新しいプレイの一環か? で、できれば私にも……!」

 

俺とカズマの様子を目の当たりにしたダクネスが、悪い癖を出してしまったらしい。なぜなら、これからオークの大群が来るというのに、

 

「何で俺までバインドで身動き取れなくなってるんだ!? 早く解いてくれ!!」

 

「知るか! エラーが発生してこうなっちまったんだ。少し待ってくれ!」

 

俺とカズマがどういうわけか、発動してしまったバインドで身動き一つとれなくなってしまったからだ。……なんという事でしょう。

 

「なーに? 集落に運びやすいようになってるじゃない。そんなにあたし達の所に行きたいの? ならすぐに行きましょう!!」

 

俺達を見たオークたちは喜び勇んでいる。そりゃあそうだろう。カモがネギ背負ってる状況である。彼女たちからすれば、天からの贈り物みたいなもんだ。

 

「「うわあああああ!!」」

 

思わず悲鳴を上げてしまった俺とカズマ。っていうか、バインドブレイクできない。さっきのエラーで魔法が発動できなくなってるのか? とその時、

 

「『ボトムレス・スワンプ』!」

 

泥沼の上級魔法でオークを沈めるゆんゆん。それでも倒せたのは一部だけなので、

 

「ゆんゆん、ライト・オブ・セイバーでバインド斬ってくれ! 頼む!」

 

そうして、俺達二人共、抜け出したのは良いもののオークもまだ俺達を諦めていないらしい。念のため、魔法を使えるか試したが、さっきのカートリッジのせいで、なぜか使用不可能になってしまっている。デバイス曰く、数時間で元に戻るらしいが、そんな悠長な事は言っていられない。そんなのを考えていると、

 

「あら、あなた紅魔族ね。そういえば、最近魔王軍が攻めてるみたいだけど……」

 

俺達を狙っていたオークの一体が、ゆんゆんを見ながらそんな言葉を口にしていた。魔王軍が攻めてきている……それは分かってる。なのに……、

 

――……すまない。君のお父さんとお母さんを守ってあげられなかった……。

 

何で、あの時のグレアム提督の言葉が頭を(よぎ)るんだ……!? けど早く紅魔の里に行かないと……。

 

そう考えてから、自身の現状を把握するために初級魔法のクリエイトアースを発動させた。俺の手からサラサラと土が零れ落ちている。

 

……ミッド式は使えないが、こちらの魔法は使える。あと俺が持っているのは、生物には刃が通らないぴよぴよ丸とバニルに卸したのと同じスクロール。なら……。

 

「……『ブレード・オブ・ウインド』」

 

風の刃を発生させる魔法。それを発動させてからぴよぴよ丸をオークに突きを刺す。それを見ていた面々は、

 

「ぴよぴよ丸が……オークに刺さってる? なんで……!?」

 

アクアは信じられない物を見るような眼であった。

 

「ちゅんちゅん丸じゃないよな?」

 

カズマは自分の刀を使っているかと思い、腰の獲物を確かめている。

 

「生物は斬れない妖刀が……なぜ!?」

 

ダクネスも驚愕の表情を浮かべていた。

 

「……アレは風の魔法を……刀にまとわせている……のですか?」

 

めぐみんは俺が何をしたのか即座に理解していた。

 

「あれって、魔法のアレンジ……!?」

 

ゆんゆんも俺がアレンジスクロールを制作しているのは知っているので、俺の行動は理解できたらしい。

 

「へえ……! でも残念。この程度だと、あたしは倒せないわよ。あなた、いい男ね。気に入った。意地でも連れて帰るわ」

 

目の前のオークが何かを口走っているが、刀を突き刺したまま、

 

解放(リリース)

 

俺の一言で、オークの体の内側から風の刃が炸裂し、周囲に血肉を飛び散らせながら、そのオークは絶命した。

それを見ていた他のオーク達もカズマだけではなく、俺も最優先のターゲットにしたらしいが、

 

「……退()け!!」

 

取り出したのは、バニルに卸した雷を誘導するスクロール。それをぴよぴよ丸に突き刺し、オーク達のど真ん中に投擲する。すかさず、フリーズバインドでオーク達の足止めを行い、

 

「『ライトニング』ッ!!」

 

中級魔法の落雷の魔法。それを空一面に展開。その数、優に30以上。放たれた雷は全てスクロールに誘導され、何重もの雷を一気に受けたオーク達はその動きを全て止めていた。

 

「……うそ、あれだけのオークを中級魔法だけで倒すって……」

 

アクアを始め、その惨状を目の当たりにして茫然としていた、みんなであったが、

 

「おい! やったな……!?」

 

俺の顔を見て、怯えるような様子のカズマであった。

 

「……すまん、やりすぎたかも知れない。少し、頭を冷やしてくる」

 

みんなから離れて、大きな木の木陰で精神を落ち着かせていると、

 

「さっきは悪かったな。お前が無茶苦茶なヤツだって、よく分かってたのにさ」

 

どうやら、俺を心配したらしいカズマが、迎えに来たようだ。

 

「誰が無茶苦茶だ。言っとくが、最初に倒したオーク以外は、かなり際どいけど生きてるぞ。襲い掛かって来たんだから、そこから生き残るかどうかまでは知らない。それより、早く先を急ぐか」

 

そうして、アクア達の元に戻り、紅魔の里に向かって歩みを進めるのであった。




主人公が使っていたブレード・オブ・ウインドは、木刀などに風の刃を纏わせて斬れるようにするアレンジです。『解放(リリース)』のキーワードで風の刃を展開して一回きりの飛び道具としても使用可能。


ギャグが少ないのでもう少し。前回バニルが見通した未来についてです。
注意:これは数あるルートの一つで、未来で必ずこの通りになるわけではありません。

時間的にはViVidで主人公23歳です。

「カズマ! 匿ってくれ!! 潜伏で……早く!!」

「なっ!? どうしたんだ?」

久しぶりにカズマの元を訪れたが、遊びに来たのではなく、とある人物から隠れるためである。冒険者ギルドにいるカズマを見つけて即座にカウンター裏に身を隠す。

「どうやら……流石にここには来ないみたいだ」

「おい、久々に顔見せたと思ったらなんなんだ?」

「……い、色々あってな」

カズマは説明を求めたが、話すと面倒になりそうなので、黙秘を貫くことにした。
……と、俺達の目の前に羽虫が一匹。
すると、すぐに冒険者ギルドの扉が勢いよく開き、

「見ーつけたっ!」

「えーっと。召喚虫使うのは反則じゃないかなあ?」

「だって、最近わたしを見ると、すぐ逃げちゃうんだもの」

俺を追ってきたのは、ルーテシアであった。初めて会ってから早7年。もう14歳で性格も信じられないくらい明るくなっている。

「いや……ほら、気持ちは嬉しいけど、ルーテシアが大人になる頃には、俺はもういいおじさんだし……。それにゼストさんも草葉の陰で泣いてると思うよ?」

「ゼストなら大丈夫! むしろ喜ぶから!! なんせ一緒にいた頃、悠さんを褒めちぎってたし。一度戦ってから、彼はなかなかの男だって」

ゼストさん……なんて置き土産しやがる!

「メガーヌさんだって、反対するでしょ?」

「ママなら頑張って来なさいって」

良いのかよ! 後で文句言いに行きたいけど、結局そこにはルーテシアもいるんだよなあ……。

「……それに、昔はあんなに優しくしてくれたのに……」

ルーテシアの一言に、ギルド内の視線が一斉に俺へと集まる。

「一緒にお風呂入ったり、わたしの髪を長くて綺麗って褒めてくれたり」

「ちょっと待て! それはお前がこんな……ちんまい頃だろうが!」

手を使って、その当時の彼女の身長を表現したのだが、周囲からはヒカルゲンジケイカクとか聞こえてきてる気がする。

「ふぅ……。あのな、俺を追いかけるよりも、もっといい人がいると思うから――」

真面目に説得を試みようとしたが、あちらから、

「それにね。この世界だと14歳から結婚できるから、ここだと何の問題もないのよ!」

うわー。もうぶっ飛んでます、この娘。初めて会った時、温泉掘るとか言ってたの思い出した。どうしたものかと思っているとバニルが現れ、

「フハハハハハ! 久しいなロリコン魔道士よ。吾輩の見通した通りになったようで何よりである! 娘よ、この男にはひたすら押すのが吉。そうすれば、遠からず観念するであろう」

「ええ! 八神司令もそう言ってました」

お前まで噛んでるのか、はやて。

「ねっ! 教会の偉いおじさんから、式は是非こちらでって言われてるし、これから下見に行きましょう」

そうして、ルーテシアに引っ張られ、俺が去った後の冒険者ギルドでは、

「最近の若い娘は積極的ねー」

アクアが遠い目で、何かを悟ってしまった様な雰囲気だったそうだ。
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