この素晴らしい世界にリリカルな魔導師を!   作:ゴマフアザラシ

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めぐみんの実家でのひと時

魔王軍の襲撃でグリフォン像の前へと訪れた俺達ではあるが、魔王軍はまだ遥か彼方で里の魔法使い達も魔法が届く距離まで敵が近づくのを待っているようだったが、

 

「あの程度ならば、私の魔法一発で十分です! みんなは下がっていてください!!」

 

名乗りをあげたのはめぐみん。ここで爆裂魔法を使う気だろう。俺達や里の仲間達に下がるように指示していた。

 

「我が名はめぐみん! 究極の破壊魔法を喰らうが良い!」

 

高らかに名乗りをあげて、始めたのは爆裂魔法の詠唱。それを固唾を飲んで見守っていた面々は、

 

「めぐみん! かっこいい! かっこいいよ!!」

 

「あれは俺が鍛えた生徒だから! 俺が教えた事をちゃんと生かしてくれたんだな……っ!」

 

「長き修行の旅から帰ってきた力を、今……解き放つんだ……っ!」

 

などと、集まっていた紅魔族の人達が凄まじく盛り上がっていた。そして、めぐみんが詠唱を終えると、

 

「『エクスプロージョン』ッッ!!!」

 

轟音と共に放たれる爆裂魔法。その威力たるやこちらに向っていた魔王軍の殆どを消し飛ばし、余波ともいえる衝撃波がここまで猛スピードで駆け抜ける。その中で、

 

「あんた達、早く逃げなさい! あれはまともに喰らったら一溜りもないわ。次弾は来ないから落ち着いて後退しなさい」

 

おそらくリーダーであろう、胸元が大きく開いたドレスを纏った人間にしか見えない美女が部下に指示を出していた。

とりあえず、今回の襲撃はめぐみん一人でどうにかなったが、集まっていた人達はポカンとしていた。そのうち周りからは、

 

「さ、里一番の天才が……ネタ魔法使いに……!」

 

などと言った声が聞えていた。紅魔族の間では本当に爆裂魔法はネタ魔法らしいが、あの言い分は無いと思い、声のした方をキッと睨み付けていると、

 

「すいません。少し魔力を分けてもらえませんか?」

 

爆裂後で魔力を使い切っためぐみんが、そうお願いしてきたのでカズマのドレインタッチを経由して魔力を渡した。すると、

 

「我が名はめぐみん! アークウィザードにして爆裂魔法を操る者、そしていつか爆裂魔法を極める者……! ネタ魔法使いと言いたければ言いなさい! 私は爆裂魔法で最強の魔法使いとなります!!」

 

声を高らかにそう宣言していた。そこまではっきり言ったんなら、俺が出る幕なんて無いと思い、黙っていた。その内、グリフォン像前に集まっていた人間はそれぞれの職場や配置に戻って行ったので、今度はめぐみんの実家に挨拶に行こうとの話になり、歩き出そうとした時に、

 

「あなただったのね、めぐみんを占なった時に見えたのは。時間があったら私の所に来なさい。占なってあげるわ」

 

突然俺達……というか俺に話しかけてきたロングヘアーの整った顔立ちのお姉さん。めぐみんやゆんゆんも美少女と言って差し支えないが、この人は別格かもしれない。

 

「ええっと。あなたは?」

 

「ああ……ごめんなさい。我が名はそけっと。紅魔族随一の占い師にして上級魔法を操る者……!」

 

もうお決まりになっている紅魔族式名乗りから発せられる名前からして、この人がアルカンレティアで話題になった紅魔族の占い師らしい。俺に何か気になることでもあるのだろうか? まあ、少し落ち着いたら、そけっとさんの家に行ってみるのも良いかも知れない。

 

「じゃあ私はあるえに一言ありますので、こっちに行きますね」

 

確かあるえってのは、あの小説を書いた人だよな。だったら……。

 

「ゆんゆん、やれ」

 

真剣な顔でコクリと頷き、俺達と別れたゆんゆんであったが、その15分後に作家志望の少女の悲鳴が周囲に木霊していたらしい。

 

「さっきの啖呵、格好良かったな。めぐみんは男前だ」

 

「女性に言う言葉ではないかもしれませんが、褒め言葉として受取っておきますよ」

 

さっき、めぐみんがネタ魔法使いと呼ばれた際の話をしながら、歩いていた。そうしていると、こぢんまりとした木造の平屋に辿り着き、玄関のドアをノックすると。出てきたのは、めぐみんをそのまま小さくしたような女の子だった。この子が噂のこめっこだろうか……?

 

「ほう、めぐみんの妹か? 随分と可愛らしい子だな」

 

ダクネスがその子を見て顔を綻ばせている。

 

「こめっこ、ただいま帰りましたよ。良い子にしていましたか?」

 

やはり、この子がめぐみんの妹らしい。こめっこは俺達をジッーと見て固まり、驚いた様子だったが、

 

「おとうさーん! 姉ちゃんが男ひっかけて帰ってきたー!」

 

確かこの子、エリオやキャロと同い年と聞いていたが、どこでこんな言葉覚えたんだろう? ちょっとお話して矯正しておかないと将来が心配になる……。

 

めぐみんの実家の居間にて、アクアはこめっこにコップを使った芸を披露し、ダクネスはそれに食い入っている。その一方で、

 

「……家の娘が日頃からお世話になっているそうだね。それについては心から感謝する」

 

厳しい顔をしながら、俺達をジッと見るめぐみんの親父さんだった。隣にはどことなくめぐみんの面影がある長い黒髪の綺麗な女性。先ほどの自己紹介で名前が判明したひょうざぶろーさんとゆいゆいさんだ。

 

……何で俺の知り合いのお母様方は、こう若々しい人が多いのだろう? 偶然にしてはできすぎているが……?

 

「……何を考え事してるんだ? お前は」

 

カズマが不思議そうに俺を見ていたので、

 

「すいません。そちらの方は、めぐみんのお姉さんではありませんよね?」

 

と、口に出してしまった。

 

「あら、口の上手な方で。娘からの手紙の通りでしたね。あなた方の事は良く存じておりますよ……。家の娘が大変お世話に……」

 

「失礼しました。郷里の友人の母親が娘さんと姉妹に見えるくらいなもので、つい……」

 

ペコリと頭を下げて謝罪すると、今度はめぐみんの父親――ひょいざぶろーさんから、

 

「……で、キミは家の娘とはどのような関係なんだね?」

 

カズマが、既に三度目となる質問を投げかけられていた。

 

「……何度も言いますが、ただの友人で仲間です」

 

カズマも三度目となる同じ答えを返すと、ひょいざぶろーさんはもう我慢の限界と言った感じで、ちゃぶ台をひっくり返そうとして、ゆいゆいさんに必死に止められていた。ちなみにめぐみんはさっき俺が魔力を分けたが、それだけでは足りなかったらしく、部屋の隅に敷かれた布団の上で眠っている。

その後、カズマがアルカンレティアで買った饅頭の詰め合わせをお土産として差し出すと、夫婦で奪い合いを始めてしまった。その横で、

 

「食べ物!? ねえそれ、固い食べ物!? いつも食べてる、薄めたシャバシャバのおかゆとかじゃなくて、ちゃんとお腹に溜まる物!?」

 

こめっこから聞き捨てならない言葉が聞えていたので、

 

「あの……失礼を承知で伺いますが、いつもどの様な食生活を……?」

 

さっきまで饅頭を奪い合っていた二人が俺の方を向き、

 

「その……家はそこまで裕福ではないもので……こめっこの言っていた通りでして……」

 

ゆいゆいさんが恥ずかしそうに、そう答えてくれた。

 

「こめっこちゃん……。ここにいる間はお兄さんが、お腹いっぱい食べさせるからね。何でも好きなのを言ってくれ」

 

「ホントに!? ねえ、お肉でもお魚でもお菓子でもいいの!?」

 

「ああ、どんと来いだ!!」

 

なんて口走ってしまった。

 

「ちょっと! ユウの親バカが発動したわよ! 他の家の子なのに……」

 

「まあ、良いではないか。基本的に子供好きなのだから、境遇を聞いて放って置けなくなったのだろう」

 

アクアから失礼な言葉が聞えてきたが、ここはスルーする。

 

「……こめっこはやらんぞ」

 

「心配しなくても、そんなつもりはありません。このくらいの年の子が、お腹すかせちゃダメだと思ってるだけですから」

 

こめっこは饅頭を頬張っているが、今度はゆいゆいさんから、家の娘と一緒になるのは借金返してからのほうが言いのでは……、などと言い出してカズマがお茶を噴出したりしていた。どうやらめぐみんが両親に宛てた手紙の内容から、そう思ったらしい。何が書かれていたかというと。

 

「娘を全身ヌルヌルにして楽しんだり……、一緒にお風呂に入ったり、ソファーで昼寝していると、スカートの中身を体育座りしながらジーッと観察していたり、ちょむすけに娘の下着を持ってくるように躾けようとしたり……と、そんなセクハラは日常茶飯事な間柄で……」

 

カエルの粘液や風呂入ったのは良いとして、後半は完全なセクハラじゃねーか!?

 

「……カズマ……お前、めぐみんをロリとか言っといて、そんなのやってたのか!? ロリマって呼ばれても反論の余地がねーぞ!」

 

ゆいゆいさんの様子を見るに、まだまだ色々書かれていたらしいが、聞くのが辛くなってしまったんだろう。カズマは何も言わずに土下座していた。すると、ひょいざぶろーさんが俺を見て、

 

「……それともキミの方がそういった関係なのかね?」

 

「何で俺が……?」

 

なぜか今度は俺の方に矛先が向いていたので、即座に否定しようとしたが、

 

「自分をお兄ちゃんと呼べと言ったり、メイド服を着せて楽しんだり、嫁にいけなくしてやると言ったり、娘を拘束して、ご飯を食べさせるなどどいった発言を……」

 

い、いや……それは……嘘ではないですが……。

 

「全部事実じゃないか。ご両親の前で隠し事なんてしないよな?」

 

満面の笑顔のカズマであったが、目が怖い。

 

「大変、申し訳ありませんでした……」

 

俺もカズマに続き、土下座して許しを請うしかない状況となっていた。その後、めぐみんのパーティーでの活躍や、カズマの借金の話になった際にバニルに売り払った知的財産権で三億エリスが入ってくるなどと言って、めぐみんのご両親が大声をあげて驚いていた。俺はカズマが三億一括払いか、月々の利益還元かは聞いていなかったので、

 

「なんだ、結局そっちにしたのか。まあカズマらしいと言えばらしいけど」

 

「……ああ。なあ……やっちまったか?」

 

「どうだろうな? ただ……さっきまでと態度がな……」

 

ひょいざぶろーさんとゆいゆいさんはカズマにもこの家に住んで貰った方が良いとか、手狭なのでリフォームした方が良いなどといった話をしていたが、カズマが屋敷に住んでいるのを教えると更に二人の目が輝いていた。

 

「……なあ、フォローできないか? このままだと嫌な予感が……」

 

カズマが俺に耳打ちしてきたので、うまく説明する事にした。

 

「ええとですね。屋敷と言っても、現状は少し事情があって無料で借りるだけなので、カズマの持ち物ってわけじゃないんです。それと三億エリスに関しても、そこからまた商品開発しようとしてるみたいなので、自由になる分はそんなに無いみたいですよ」

 

前半に関しては本当、後半は口からでまかせではあるが、これも一つの手だろう。二人とも納得してくれたらしく、ひょいざぶろーさんが立ち上がろうとするとコロコロと何かが転がっていたので、それを拾うと、

 

「……カートリッジ? なんで……」

 

「これは、ある方からの注文されたもので、特注で作っている魔道具だが」

 

俺とカズマが思わず顔を見合わせ。

 

「それを注文したのは、アクセルで魔道具店を営んでいる長い髪の美人じゃないですか?」

 

「む……ああ。そうだが」

 

もう確定らしい。カートリッジはこの家で作られていたようだ。

 

「あんたかああああああああ!!!」

 

「カズマ! 落ち着くんだ!! 気持ちは分かるけど、ちゃんと使う前にテストしなかった俺も悪いから!!」

 

「あんたのせいで俺は……俺達はオークに大切なものを奪われそうになったんだ!!」

 

ひょいざぶろーさんに掴みかかりそうになっているカズマを羽交い絞めで何とか止めようとしていると、

 

「ひょいざぶろーさん、今ある分は私が全て買い取ろう。あなたは素晴らしい魔道具職人だ! これは正に天啓……!」

 

今までアクアの芸に目を奪われていたダクネスだが、急に話しに加わったと思ったらありえない提案をしていた。ここに来る途中の仕打ちが余程気にいったらしい。

その後、何とかその場を治めて、夕飯の買出しへと赴いていた。

 

「……えっと、なんでひょいざぶろーさんが付いて来るんでしょうか?」

 

「キミは里に初めて来たのだろう? 案内くらいは必要だと思うが」

 

「兄ちゃん、このお肉買って良い!? いつも切れ端でスジがいっぱいの一番安いお肉がほんの少しだけど、今日は綺麗に切り揃えてるのでも良いの!?」

 

俺やひょいざぶろーさんと一緒に買い物をしているのはこめっこであった。さっき、お腹いっぱい食べさせると約束したので、ワクワクして付いてきてしまったらしい。というか、この子の言葉を聞くと涙が出てくる。普段どんな食生活してるんだ、ホント。

 

「良いよ。今日は大人数だから沢山買おうね。鍋だから大抵の物は入れてもいいし」

 

「だったら、ちょむすけも入れて良いの!? お肉が増えるよ!」

 

「ちょむすけは……精肉すると、食べれる部分がほんのちょっとだと思うし、まだ早い……かな?」

 

めぐみんからは聞いていたが、本当にちょむすけはこの子に喰われそうになっていたらしい。アイツも中々苦労してたんだな。

 

ひょいざぶろーさんがなにやら考えながら俺の方を向き。

 

「しかし、キミがあの魔道具の使い手だったとは。どうだった? ワシが造った物は」

 

「え、エラーが出ましたけど、その……、ひょいざぶろーさんの魔力とは相性が良くなかっただけみたいです。なので、魔力は入れないままで、送っていただければ助かります。魔力補充はこちらでやりますので……」

 

「そうか……。そういえば、あのポーションはどうだった? 若返りはワシとしても会心の作だったのだが」

 

……一回目は覚えてないんだけどな。二回目は……絶対に喋っちゃいけない。墓まで持って行かなくては……!

 

「そ、その……どうと言われましても……記憶が無いもので答え様が無くて……」

 

「確か……試供品で渡した分は記憶は無くならないは――」

 

「ひょいざぶろーさん!! このお酒なんてどうですか! 無茶な要望を聞いていただいたんですから、俺が買いますよ! この位はさせてください!」

 

「ほ、本当に良いのかな!? こんな良い酒は今まで買ったことが無いが!? いやーお世話になりっぱなしだなあ。ユウさんには」

 

何とか話をはぐらかす事に成功したが、その後もこめっこが、あれも食べたいこれも食べたいなどと言って結構な量を買ってしまい帰宅する事になった。その途中、

 

「ところで、娘は魔法の件でも色々世話になっていたようだ。改めて礼を言わせてくれ」

 

「……お二人は、めぐみんの爆裂魔法の事は……?」

 

「ああ、知っていたとも。もっともそれが分かったのは、雪解け前だったが」

 

雪解け前って事は、エギルの木の事件の辺りか。それまではご両親にも秘密にしてたのかな?

 

「知っての通り、爆裂魔法はネタ魔法なんて呼ばれているが、娘がそれを選んだのならワシは何も言うつもりは無い。唯一の心配は、そんな魔法使いを必要とするパーティーに出会えるかどうかだった」

 

確か会ったばかりのめぐみんは、どこのパーティーも拾ってくれないなんて言って、無理矢理カズマに詰め寄ってたっけか。

 

「だが……、ユウさんやカズマさんは邪魔者扱いせずに、その上、娘の爆裂魔法はこれから先、誰にも負けない位になると言ってくれたと。そう手紙に書いていたよ。めぐみんの嬉しそうな顔が目に浮かぶようだった……」

 

……もしかして、あの時スキルポイント全部つぎ込んで爆裂魔法強化したのって……俺のせいか!? だったらマズイ事しちゃったかなあ……。だったら。

 

「……すいません。お願いがあるんですが……」

 

ひょいざぶろーさんに、とあるお願いをして家に到着した。そして夕食時、めぐみんはまだ眠り続けているにも関わらず、気にも留めずに家族全員で鍋にがっついている。

 

「兄ちゃん、兄ちゃん! あのご飯も食べて良い?」

 

「あれは、姉ちゃん(めぐみん)が起きたら食べる分だから……。まだこっちも沢山あるし、デザートもあるからね」

 

こめっこが目を付けたのは、台所に確保しておいためぐみんの分の夕食。簡単なおにぎりやおかずだが、無いよりは良いだろう。夕食後、一足早く風呂をいただき、

 

「じゃあ、俺はこっちに行くから。ひょいざぶろーさん、すいませんが、仕事場を使わせていただきます」

 

「ああ……。あまり根を詰めすぎないようにな。毛布も持って行きなさい」

 

そんな会話をしていた俺達を見て、

 

「どこに行くの? もう寝るだけだと思ってたけど」

 

アクアが不思議そうな顔で俺に尋ねてきた。

 

「……ん。ちょっとこの家の魔道具の工房にな。俺は今日はコッチで寝るから」

 

そうして魔道具の工房で、ある意味お決まりとなっているマジックスクロールの作製を行なっていた。魔道具の製作は引火や爆発などの危険もあるため、自宅の離れに工房を持つ者も多いのだそうだ。スクロールをいくつか作り終えて、あと5、6個作ったら寝るか。と考えていた時に、工房の窓を叩く音が聞えてそちらを見ると、パジャマ姿のめぐみんの姿。何で外から……などと考えていてもしょうがないし、春先とはいえ夜はまだ冷えるので、すぐに窓を開けて中に入れる。

 

「どうしたんだ? 窓の外から入ってくるとか、下手すれば泥棒と間違えられるぞ」

 

「いえ……。部屋には獣がいますので、ゆんゆんの家に泊めて貰おうと思ったのですが、工房の明かりがついていたもので、気になって覗いたらユウがいたのです」

 

説明を聞くと、俺が工房に篭っている間に、ゆいゆいさんがカズマの財産に目が眩んでめぐみんと一夜を共にさせようとしたらしい。裕福ではないのは分かってたけど、そこまで金に困るような状況なら魔道具製作は副業にして、冒険者として依頼を受けるなり、素材を集めて売り払った方が金になると思うのだが。

 

「あ……、そうだ。簡単な食事は作っておいたから、食べたらどうだ? 台所に置いてある」

 

爆裂魔法で魔力を使い切り、さっき起きたばかりなら腹が減っていると思い、そう言うとすぐに台所に向っていった。ゆいゆいさんに見つかるといけないので、物音を立てずにおにぎりを持って戻って来て、がっついていた。

 

「……ご馳走様でした。ところで……なぜ工房に?」

 

「見ての通りスクロール作ってた。あのさ……」

 

ちゃんと謝っておかないといけないと思い、めぐみんの方を向いて、

 

「その……エギルの木の時、不用意な事言って悪かった。俺のせいで貴重なスキルポイントを全部爆裂魔法につぎ込んだんだろ?」

 

「はあ……。お父さんにでも聞いたのですか? そんな事で悩んでいたとは……。それについては気にしないでください。どんな理由であれ、選んだのは私ですから」

 

とは言うものの、爆裂魔法をあれだけ強化ができるほどのスキルポイントなら、もしかしたら他の魔法を覚えるつもりがあったんじゃないかと思ってしまう。

 

「それで、その事と工房でスクロール作っているのと、何の関係があるのですか?」

 

「いや……ほら、そろそろめぐみんも爆裂以外の攻撃手段があっても良いかなーと思って……」

 

「つまり、自分のせいで爆裂魔法しか使う気が無くなった私に対して、補填のつもりですか」

 

言いづらい事をキッパリと言ってくれるな。めぐみんはたまに考えを見透かされるので侮れない。

 

「なんだ……その……概ねそんな感じかな?」

 

「まあ良いでしょう。スクロールなら私だけではなく、カズマやダクネスでも使えますし、何らかの保険があるに越した事はありませんから」

 

もしかしたら、爆裂魔法しか使う気が無い自分にそんな物を持たせるな。と、怒り出すかとも思ったが、そうではなかったようだ。この話はこれで終わりかと思ったが、今度はめぐみんから、

 

「……お母さんも困ったものです。まさかカズマと一緒に寝せようとするとは……」

 

「それに関してはともかく、カズマの場合は……冒険者引退して良い人見つけるのも悪くないと思うけどな。どう考えたって、戦闘には向いてないだろ、あいつ」

 

大金も手に入るし、前の似非セレブになってた時じゃないが、カズマの場合は商売で食って行った方が本人にとっても良いと思う。すると、めぐみんから、

 

「ユウはよくそうやってカズマには言っていますが……」

 

めぐみんが何かを言い淀んでいる。マズイ事でも言ってしまったんだろうか?

 

「……でしたら、ユウ自身はどうなのですか? 危険な仕事は辞めて、魔道具を製作して暮らせば、戦わずに済みますし食べるにも困りませんよ」

 

意外と言えば意外な一言であった。そんなの考えた事も無かったけどな。

 

「俺は良いんだ。戦うのも無茶するのも仕事の内だし……ってどうしたんだよ?」

 

「少し呆れてしまっただけです。まったく、もしかしたらカズマ以上に厄介かもしれません」

 

めぐみんが何を思っているのかは分からないが、どう考えても良い印象ではないようだ。

 

「私はそろそろ、ゆんゆんの家に行きます。しかし、工房で魔道具を作っている姿が、私のお父さんと被りましたよ」

 

「……今、お父さんって言ったか?」

 

「ええ? 言いましたけど……」

 

聞き間違いであって欲しかったが、当然ながらそうではなかったようだ。めぐみんに近づき、頬っぺたを引っ張り喋れなくして、

 

「お前まで俺を”お父さん”呼ばわりするのかあああ! せめて”お兄さん”って呼んでくれ! まだそんな年じゃないし、子供がいるわけじゃないんだからな!!」

 

「いひいひ、ふっははひぁひぁひへふははい! ほぉほうはんふぇほひひひぇひぁひぁひふえふは!!」(いちいち、突っかからないで下さい! お父さんでも良いではないですか!!)

 

何で二つしか年の違わない娘にも、お父さんみたいなどと言われなければならないのか……。

 

その後、めぐみんを解放し、彼女はゆんゆんの家にまっすぐ向っていったが、そこで、

 

「エライ目に遭いました。ゆんゆん、ユウに”お父さん”は禁句です! 頬っぺたを引っ張る以外にも、いくつか下らない奥義があるようですから」

 

「な、何があったの? あんまり聞きたくは無いけど……」

 

「くすぐられたり、肩を揉み出したと思ったら、あまりにも気持ち良すぎて動きたくなくなったりと……。アレはヤバイです……。抵抗できなくなります」

 

そんな会話をしながら、床に就いたらしい。




肩揉みスキルは子供の頃、周りの大人相手にやってたのが昇華されたような感じです。
あるえはこめかみグリグリやられたはずです。ゆんゆんに伝授した主人公を見たらどんな反応するやら……。
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