この素晴らしい世界にリリカルな魔導師を!   作:ゴマフアザラシ

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爆裂指導とデュラハン襲来

 ゾンビメーカー討伐クエストの次の日、ギルドに集まり、俺たち……というか俺は4人からの質問に答えていた。

 

「まず、改めて自己紹介から。名前は浅間 悠、そして、こいつが俺のデバイスのファルシオン」

 

 そう言って、トランプほどの大きさのカードをテーブルに置いた。

カズマ、アクア、めぐみん、ダクネスが待機状態であるカード型のデバイスに注目すると……、

 

『皆様、ファルシオンと申します。以後お見知りおきを』

 

デバイスからの挨拶に4人とも驚いた様な、それでいてどことなく興奮したように。

 

「……すっげー!? マジで喋った……」

 

「本当にこれって特典じゃないの?」

 

「どういった仕組みなのだ……これは?」

 

「……ああ! かっこいいのです。これが、あの杖になるのですか?」

 

 ……だから特典ってなんだよ?

 

 そこらへんは後でアクアに聞くとして、さらに話を続ける。

 

「ファルシオン、デバイスモード」

 

『了解しました。マスター』

 

 俺の指示でカード型から片手用の杖、俗に言うワンドの形状に変化する。銀色を基調としつつも、核と言える部分の鉱石の様なパーツはエメラルドの様な深緑であり、取っ手の先の部分にはカートリッジが搭載されているので弾丸が見え隠れしている。

 

「「「「おお!」」」」

 

 4人全員が驚きの声を上げていた。

 それはそうだろうな……。トランプ位のカードが杖になるなんて普通は想像しないだろう。

俺だってレイジングハートのセットアップを初めて見たときは、相当驚いたからな……。

 

「みんなの反応も分からなくないけど、俺のいた所ではこれが一般的だったんだ。魔法使いの武器だからって杖とは限らないし、剣やハンマーの形状をしたものもあった」

 

 アームドデバイスの説明については、また今度でいいだろう。そしてデバイスから、カートリッジを取り出した。

 

「これがカートリッジって呼ばれてるもので中に圧縮魔力を込めて、それを消費することで瞬間的に魔法の威力を上げたりできる」

 

 この説明にめぐみんが興奮気味に食いついた。

 

「魔法の威力上昇ということは、私の杖に同じものを付けたら爆裂魔法の威力も上がるのですか?」

 

「……お前の頭の中は爆裂しかないのか?」

 

 俺もカズマと同じツッコミが思い浮かんだが、その質問に対して答える。

 

「……理論上は。ただ俺だと、ここの武器にカートリッジ組込むなんて技能は持ってないし、仮に可能だとしても、やめておいた方がいい」

 

 デバイスマイスターの資格なんて持ってないし、あったとしても、ここでデバイスが造れるわけはないんだよな。

 

 そんな事を考えながら、カートリッジシステムの説明を続ける。

 

「さっきの説明だけだと便利な機能に思うかもしれないが、使い過ぎると術者やデバイス……、杖に負担が掛かって、負傷や破損の元になる。しかも大きすぎる魔力を制御しきれずに暴発する危険性もある。……爆裂魔法が暴発なんてシャレにならないだろ?」

 

 その説明にめぐみんがシュンとした表情で、

 

「……そうですか。少し残念です……」

 

 ……どう見ても、少しどころじゃないくらい残念がってる……か。そこまで爆裂魔法にこだわる理由は何だろう?

 

 めぐみんの暗い雰囲気を尻目に今度はダクネスから、

 

「ユウ、昨日の感じだと相当戦い慣れてる様だったが、元の場所では何をやっていたのだ?」

 

 ……そうきたか、まあ当然と言えば当然の疑問だ。

 

「悪いがそれについては詳しくは話せない。警察みたいな、それなりに堅い職業……とだけ言っておく」

 

 流石に”他の次元世界から来ました。” なんて言えるわけもなかったが、ダクネス自身も思うところがあったのか、それで質問を終わりにした。

 

「警察ってことは公務員でしょ? かたや公務員、かたやヒキニート、どうして同い年で、ここまで差がつくのかしら? プークスクス……」

 

「……うるせーぞアクア! お前こそ、あまり役に立ってないくせに何言ってやがる!!」

 

 ……カズマとアクアが喧嘩を始めてしまった。

 カズマだって冒険者なんだから昔はどうあれヒキニートでは無いと思うんだけど……。

 そうこうしているうちに、アクアから、

 

「それじゃあ、私から質問ね。ユウ、あなた死んだことはある?」

 

「……おい! その質問はストレートすぎだろ! ここに来る前に自分に会った事はあるかって聞けよ!」

 

 アクアとカズマがまた変なやり取りをしているが、アクアの質問の意味が分からない。……死んでたらここにいるはずはないんだが。

 

「何言ってるかは分からないが、死んでたらここにいるはずないだろう? まぁ昔、仕事中にヘマして意識不明になったことはあるけど……」

 

「じゃあ、どうやってここに来たのよ! 女神たるこの私の導きなしに……ムグッ……!?」

 

 カズマがアクアの口を押さえて、黙らせようとしている。またアクアが自分のことを女神だのと言っているが、気にしないでおこう。

 

「まぁ、分かりやすく言うと、ランダムテレポートに巻き込まれて気が付いたらここにいた。それで同僚が俺を見つけるまで、ここで冒険者しながら生活してるってとこだ」

 

 この世界に来てから、魔法の事は一通り調べたが、その説明で良かったようだ。特にめぐみんは爆裂魔法しか使えないとはいえ、魔法使いだからかすぐに納得してくれていた。 大体質問が出尽くしたのか、みんな黙ってしまった。そんな時、

 

『冒険者のみなさん。先日のキャベツ狩りの報酬を支払います。受付へお並びください。』

 

 ギルド内に嬉しい臨時収入を告げるアナウンスが響き渡った。

 

「キャベツ狩りの報酬だってさ。みんな並ぼうぜ」

 

 俺の言葉に全員が席から立ち、報酬について胸を躍らせながら受付へ向かった。

 

 

 2時間後、うちのメンバーだけでなく、冒険者ギルドの冒険者全体がキャベツ狩りの報酬でホクホクしている顔を見せているにもかかわらず……。

 

「……アクア、レタスだってパリパリでさっぱりして……、おいしい野菜だよな……?」

 

「そうよ、ユウ。これはね……私達が悪いんじゃないの。レタスの価値が分からない周りが悪いのよ……」

 

 俺とアクアはうな垂れながら席に着き、暗い雰囲気で会話していた。

その様子を見たダクネスだったが、俺達に直接事情を聞く気にはなれなかったようで、隣のめぐみんに対し、小声で。

 

「あの二人はどうしたのだ?」

 

「……なんでもアクアとユウの捕まえたキャベツには、レタスが多く混ざっていたそうなのです」

 

 ……そう、めぐみんの言うとおり俺とアクア捕まえたキャベツの大半はレタスだった。そのため、誘導型射撃魔法や捕獲魔法で100玉は捕まえたと思っていたキャベツ狩りの報酬は20万エリスほどだった。アクアは分からないが、俺はレタス85玉、キャベツ15玉の内訳であり、がっかりすぎる内容となってしまっていた。

 ちなみにアクアは俺より低く報酬は5万エリスほど。俺は装備に金が掛からないので全額生活費に当てることができるのが救いだが、アクアは酒場にツケがあったらしく、金を貸して欲しいとカズマに泣きついていた。

 カズマの報酬は100万エリスほど。確かカズマは幸運のステータスが高いって聞いてたけど、冒険者に幸運って重要じゃねーか! チクショウ!!

 

 後日、ダクネスとめぐみんは装備を新調したと言うので、クエストに行きたいと言い出したのだが……、普段は所狭しと並んでいる依頼の紙が数枚ほどしかなかった。しかも張られている依頼書はどれも高額クエストばかり……。

 ギルドの職員さんに聞いた所、魔王軍の幹部が街の近くの小城に住み着き、その影響で弱いモンスターが隠れてしまったのだそうだ。

 

それを聞いたアクアが、拳を握りそいつをただではおかないといった怒りを見せながら。

 

「全く……! 何でこのタイミングで引っ越してくるのよ! 幹部だかなんだか知らないけど、もしアンデッドなら見てなさいよ!」

 

「ああ、そうだなアクア。俺もアンデッドって聞くとムシャクシャするし、キャベツ狩りの八つ当た……補填で退治もいいかもな!」

 

俺とアクアの会話を聞いたカズマが、信じられない者を見るような目で。

 

「何お前ら同調してるんだよ! それにユウ、何でそんなに攻撃的になってるんだ!?」

 

「……カズマ……アンデッドって聞くと無性に攻撃したくならないか?」

 

俺の言葉を聞いたカズマがあいれないものを見るように。

 

「なるわけねーだろ! お前までめぐみんやダクネスと同じで、中身が残念な『アンデッド絶対殺すマン』か?らしくねーぞ!」

 

「紅魔族は売られた喧嘩は買う種族です。私のどこが残念なのか聞こうじゃないか!」

 

「まさかここで言葉攻めとは……! もっと罵ってくれ!」

 

めぐみんとダクネスがカズマの言葉を受けてそんな事を言い出した。結局、この日はクエストに行かず一日ギルドに居ただけであり、馬小屋に帰ってもやる事がないので、カードゲームをして一日が終わってしまった。

 

 しかし……、戦闘になれば我慢する自信はあるけど、カズマの言うとおり何でアンデッドって聞くとこんなにイライラするんだろう?

 

 次の日、しばらくクエストに行けなくなった俺たちは各自で行動することになった。

 アクアはバイト、ダクネスは実家で筋トレ、俺とカズマ、めぐみんはというと、めぐみんの日課である一日一爆裂に付き合っていた。

 

「もうこの辺でいいだろ。適当に魔法撃って帰ろうぜ」

 

「駄目なのです。街から離れた所じゃないと、また守衛さんに叱られます」

 

 またって事は、一度街の近くでやって叱られたのか……?

 

「しかし、爆裂魔法撃って帰るだけだったら、カズマだけでもいいだろ? 何で俺まで連れてきたんだ?」

 

「ユウには私の爆裂魔法を見て欲しいのです。昔、ある人に教わってからは独学だったので悪い所があったら言って欲しいのです」

 

 なるほど、前に一度見ただけで爆裂魔法を修得可能になったってことを、随分買われているらしい。

 指導者ってガラじゃないけど、教導隊でアシスタントはしたことあるし、その位なら構わないか……。

 もし、めぐみんがなのはの教導受けたら、爆裂撃てないで逃げ出しそうだけど……。

 

「爆裂魔法が撃てない俺の意見でいいなら、色々アドバイスくらいはできるけど?」

 

「それで構わないのです! 思ったことがあったら何でも言ってください!」

 

 そうして爆裂魔法を撃つ場所を探していると、遠く離れた丘の上に廃城らしきものが見えた。

 

「アレにしましょう! あの廃城なら、盛大に破壊しても誰も文句は言わないでしょう」

 

そうして、めぐみんは詠唱を始め、杖の先に爆裂の魔力が迸っている。詠唱を終えて一呼吸置き。

 

「『エクスプロージョン』ッ!」

 

 盛大に廃城へと爆裂魔法を撃ち込んだ。廃城と爆裂が激突した轟音がこちらにまで響き渡っている。

 

「……ど、どうでしたか?」

 

「……うーん。集中力が足りてない。一日一発しか撃てないんだから余計なことは考えず、自分のことは爆裂魔法を撃ち出す発射台だと思ったほうがいい」

 

「……そうですか。確かに、見られているということで、少し緊張していたような気がします」

 

 そんな俺たちの会話を聞いたカズマは、

 

「……さっぱりわからん」

 

首を傾げていた。 ともあれ、こうして俺たちの新しい日課が始まった。

 

ともあれ、こうして俺たちの新しい日課が始まった。

 

「『エクスプロージョン』ッ!」

 

「魔力の圧縮が足りてない。もっと一点に集中するように!」

 

「『エクスプロージョン』ッ!」

 

「着弾点がずれてる。もっと狙いを絞って!」

 

「『エクスプロージョン』ッ!」

 

「雨降ってるくらいで集中を乱さない!」

 

「『エクスプロージョン』ッッ!」

 

「撃ち出す時は一気に魔力を放出する!今の時間の半分で!」

 

 俺たちは、どんな時でも廃城のそばに毎日通い、めぐみんは爆裂魔法を放ち続けた。俺たちのそばで、毎日爆裂魔法を見続けていたカズマも、その日の爆裂魔法の出来が分かるまでになっていた。

そして……、

 

「『エクスプロージョン』ッッッ!」

 

「今日のは、なかなかいいんじゃないか。どう思う、カズマ?」

 

「確かにいい感じだな。爆裂の衝撃波が、ズンと骨身にするかの如く響き、それでいて肌をなでるように空気の振動が遅れてくる」

 

 カズマはまるでワインの批評のような詩的な表現で、爆裂魔法を評価していた。確かに俺の評価は論理的になりすぎる傾向があるから、あんな感じの評価もいいかもしれない。言われた方も、嬉しいだろう。

 

「……しっかし、あの城は丈夫だな。アレだけ爆裂撃ち込んで、入り口付近に大穴開いただけだし」

 

「いいではないですか。どうせ誰も居ない廃城です。ユウのアドバイスがなかったら、城も原型を留めていたままだと思いますよ?」

 

「俺は爆裂魔法の出来はわかるようにはなったけど、アドバイスはできないからな。あの大穴は俺たち3人の努力の結晶ってわけだ」

 

俺、めぐみん、カズマが一日一爆裂の成果である大穴の感想を口にした後、3人で顔を見合わせ、

 

「「「ナイス爆裂!」」」

 

『Nice Explosion!』

 

 突如会話に参加したファルシオンに驚きながらも、爆裂魔法の話題に華を咲かせつつアクセルに戻った。

 

 

次の日、アクセルの街に緊急アナウンスが響き渡った。

 

『緊急! 緊急! 全冒険者の皆さんは、直ちに武装し、戦闘態勢で街の正門に集まってくださいっっ!』

 

 緊急アナウンスに従い、バリアジャケットを纏いデバイスをその手に持った俺は、街の正門前に向かった。すでにカズマ達も到着していたらしく、彼らと合流すると、目の前の怒りを発していたモンスターを凝視する。

 

 そこには首なし騎士、デュラハンが凄まじい威圧感を放ち、佇んでいた。

 

……強い! ……ウィズと対峙した時程じゃないが、戦闘はなるべく避けた方がいいな。でも、やっぱり攻撃したい……。こう、瞬時に魔法ぶっぱしてしまいたい衝動に駆られてしまう……。こ、ここは……我慢しなければ……!

これ程のモンスターが駆け出しの街に何のようだ?

 

 デュラハンの出方を伺いつつ警戒を強めていると……、

 

「……俺は、つい先日、この近くの城に越してきた魔王軍の幹部の者だが……」

 

デュラハンが怒りに震えたような声でさらに続ける。

 

「まままま、毎日毎日毎日毎日っっ! おお、俺の城に毎日欠かさず爆裂魔法を撃ち込んで城の入口に大穴を開けた、頭のおかしい大馬鹿者は、誰だあああああー!」

 

 魔王の幹部はそれはもうお怒りだった。

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