この素晴らしい世界にリリカルな魔導師を! 作:ゴマフアザラシ
……めぐみんさんは恐ろしい。というか調子に乗ってしまった俺も悪いのだが、このところ立場が逆転しているような気がする。
「……娘に叱られる日が来るとは……!」
俺の隣では、めぐみんのお説教で感無量になっている父親の姿があった。
嬉しいのか!? あんな形相で叱られたのが嬉しいってのか!? この人もドMなのか!?
そんな俺の驚きを見透かしたように、ひょいざぶろーさんが、
「ユウさんにも 娘ができれば分かるようになる。父親にとっては夢の一つの様なものだ」
「……分かりたくありません」
酔い潰れた挙句、娘にお説教とかどこの駄目親父だよ。そんなんなってたまるか。
「……ですが、俺の件はともかく、ひょいざぶろーさんの魔道具製作はどっかで矯正しないと、老後は大変になりますよ? 昨日だってなんだかんだで、奥さん、娘さんに苦労かけてるのが申し訳ないと――」
「そ、そんな事を言っていたのか、ワシは!? 全く覚えていないのだが……」
「酒が入って本音が出たんじゃないですか? そう思ってるなら、最低ラインの収入を得ないと」
「……だがな、昔から普通の魔道具を造ろうとすると、どこかしらに不具合が出てな。だったら、何らかの効果を足した方が良いかと思って、今の状態に落ち着いたのだよ」
それが、工房で見た魔道具の数々か。説明書を見た限りでは。
――閉じ込めた者を逃げられずに、どんな攻撃も通さない上、効果が一か月近く持続する結界。
これは確かに高性能の物の様に聞こえるが、閉じ込められたら最後、内部の人間には手出しができなくなるため、餓死させる危険を伴う。……バニル辺りなら余裕なんだろうが。
――嘘発見すると、対象の動きを封じて、ついでに喋れなくする魔道具。
嘘ついてる時点で、疑わしいのは分かるが、喋れなくしたら取り調べに差し支える。
こんなんばっかだから、ここの家がこの惨状になってるのか。
「話を伺っているうちに、色々思いついたので、後でちょっと試してみましょうか? もしかしたら、普通に制作できるかもしれません」
「しかしだな……。今までのやり方を変えるのは……」
「……そんなのは言わせませんよ。昨日、俺に好き放題言っておいて、自分を棚に上げるのは許しません」
俺の雰囲気に気圧されたらしい、ひょうざぶろーさんは、
「……もしかして、昨日の件、根に持っているのかね?」
「まさか! 俺の方こそ、人様の家のお父様に”くたばれ! クソオヤジ!”なんて言ってしまいましたしね。どうせだったら、もう言いたい放題言ってやろうと思いまして」
ひょいざぶろーさんに向かって、にこやかにそう宣言した俺を見たアクアとカズマは、
「絶対、根に持ってるわね」
「……そうだな。ああなったら、逆らうのは無理だ」
「私が眠らされている間に何があったのだ?」
そんな中、ゆいゆいさんに眠らされていたため、一人話について行けないダクネスであった。
「あんまり不甲斐ないと、こめっこちゃんは俺が面倒見る事になるかもしれませんし」
「こめっこは嫁にやらんぞ! あの子はまだ7歳だ!!」
「誰が嫁に貰うって言いましたか! 一人立ちできるまで、生活を支援するってだけです!!」
全く、最近はこの手の話題が多くなってる気がする。めぐみんやゆんゆんならともかく、こめっこに手を出したら、ガチペドロリコンって言われても不思議じゃないだろうに。
俺とひょいざぶろーさんの何気ない会話を聞いていたゆいゆいさんが、何やら考え事をしながら、
「……悩む必要なんて無かったですね! 家には娘が二人。それをカズマさんとユウさんにくっ付ければ、我が家は安泰……」
まだ諦めて無かったんですね、ゆいゆいさん。というか、こめっこまで巻き込む気ですか!?
この家での一番の難関はゆいゆいさんかもしれない、少しゲンナリしながらそう考えていると、
「すいませーん! 神刀の使い手は、ご在宅ですかー!」
聞き覚えのある男の声が玄関の方から聞こえて来たので、そちらへ向かう。
「ぶっころりーではないですか。ニートが朝早くから珍しいですね」
「ニートって言うな! 頼まれてた魔道具の件で来たってのに、いきなりそれかよ……」
どうやら、訪ねてきたのは靴屋のせがれのぶっころりーらしい。魔道具の件って言ってたから、カートリッジの魔力補充が終わったのだろう。
「わざわざ持って来ていただいて、ありがとうございます。結構な数でしたけど、こんなに早く終わるとは……」
「こっちは遊撃部隊のみんながいるからね。何せ時間を持て余してる人間ばかりだし」
……最後の一言が無ければ、素直に関心出来るんだけどなあ。
ぶっころりーに魔力補充の代金を支払うと、
「じゃあ、俺はこれで失礼するよ。これからちょっと用事があって……」
来たばかりだというのに、そそくさと立ち去ろうとするぶっころりーに対し、めぐみんが。
「……また、そけっとにちょっかい出すつもりですか? あまり、しつこいと嫌われますよ?」
「俺をストーカーみたいに言うなよ! 最近は結構、良い雰囲気になる時があるんだからな!」
確か……、そけっとってのは、この里の占い師だよな。俺も時間ができたら占うとか言われたが……。
「めぐみん、あんまり失礼な事言うなって。当人たちの問題なんだから」
「ユウは、ぶっころりーが何をしたか知らないから、そう言えるのです。かくゆう私も相談に乗った事がありまして……」
それは、めぐみんがまだ紅魔の里で学校に通っていた頃。ぶっころりーに好きな人が出来たという事で、相談をされたらしい。相手は、里一番の美人と呼ばれるそけっとで、どうすれば好かれるかを考えたのだそうだ。
めぐみんの案は、そけっとがモンスターに襲われているところを颯爽と現れて救出するというものだったそうだが、その際、ぶっころりーのインフェルノでモンスター諸共、そけっとを焼いてしまいそうになったらしい。
「……好かれるどころか殺しかけてるな。大丈夫だったか、それ?」
「そけっとも超一流のアークウィザードですし。防御しましたので無傷でした」
「まあ……でもさ。今は良い雰囲気になってるんだから、良かったじゃないか。あるえの小説のネタにでもできそうだし」
俺からの意外な一言に、カズマ達は視線をこっちに向け、
「小説のネタって何かしら? ちょっと教えて頂戴」
「ニートが里一番の美人と付き合うまでのラブストーリー。キャッチフレーズは”
アクアからの質問に答えると、
「ロマンチックの欠片もねえ!?」
カズマが思わずツッコでいた。
「でも、インパクトは無いか? キャッチフレーズは」
それを聞いた面々は、少々呆れ顔になっていた。
「そういえば、そけっとさんから時間ができたら自分の家に来いって言われてたんだよな。丁度良いから、行ってみようかな……」
「お前が占いとは……。そういったのは信じないような気がしたのだが」
「アルカンレティアの件も当たってたし。面白そうだから占ってもらおうかと思って」
ダクネスが意外に思ったらしい。俺を見て不思議そうな表情を見せていた。ちょっとだけ気になることがあるので、占ってもらいたいだけである。
めぐみんに案内されて到着した店は、一見普通の家の様に見えるが、扉には『開店中』の文字。中に入ると、淡い紫色の布が所々にかけられている。その中で、一人椅子に座り静かに佇んでいる美女の姿があった。
「あら、いらっしゃい。何を占って欲しいのかしら?」
微笑を浮かべながら、そけっとさんが俺に問いかける。別に俺が占って欲しいって言うとは限らないのに……。
「占い師をやっていると、悩みのある人間は何となく分かるようになるのよ」
どうやら、占い師の勘らしい。そんなに顔にでやすいかなあ……。
「俺もそうだけど、みんなはどうする?」
「俺はいいや。これから大金が入って来るし、悩み事なんて無いも同然だからな!」
カズマは、特に困った事はないらしいので、占いはしないらしい。
「私もパース! 出来れば今日のおかずは、春野菜の天ぷらにして欲しいって位ね」
ちゃっかり今日の献立のリクエストをしているアクアであった。春野菜か……。森の中で採ってこようかな。
「私も遠慮します。前に一度占ってもらいましたし」
そういえば、そけっとさんが俺を見た時に、そんなの言ってた気がする。
「私は……どうするか……」
ダクネスはお悩み中らしいので、
「じゃあ、俺からやってもらうよ。その間に決めれば良いだろ」
そういったわけで、俺から占ってもらう事にした。そけっとに向かい合って座り、
「何を知りたいのかしら? そちらの人達に聞かれて困る事なら個室もあるわ」
「ああ……。いや、そこまでは良いです。そうですね……。漠然としてますが、未来でどんな生活してるか、でいいですか?」
そう言うと、そけっとは水晶玉に手をかざし、集中し始めた。すると、水晶玉が淡い光を放ち。
「これは……子供? 娘さんかしら……。その子と遊んでるわね。ちょっと見てみる?」
水晶玉を見ると、十歳前後の子供と遊んでいる俺らしき姿があった。顔は見えていないが、魔力光と体格から自分だと分かる。興味を示したらしいカズマ達も近づいて来て、
「子供の方の顔も見えないな。髪が長いから女の子みたいだけど……」
「金髪の子ね。……けどこれ、何やってるの?」
「な、何かの訓練でしょうか? 魔力の玉をその子に向かって撃っていますが……」
めぐみんが少々引き気味で、水晶玉を見つめていたが、
「これは多分、キャッチボールだな」
「「「「……へっ!?」」」」
その場の全員が、素っ頓狂な声を上げていた。ちょっと誤解があった様なので、説明をする。
「正確にはディフェンスの訓練だけど。この子、格闘でもやってるのかな?」
「……それはキャッチボールって言うのか?」
カズマが信じられない者を見る目で、俺にそう言ってきたので、
「ソフトコートシェルで怪我しないようにしてるし……。俺となのはは、これをキャッチボールって呼んでる。それこそ魔法覚えたての頃から、お互いに撃ち合って――」
「それはおかしいです! どう見ても遊びの弾数に見えませんよ!」
めぐみんも冷や汗をかきながら反論してきたが、
「相手の子も楽しそうに口元が緩んでるし、割とうまく防いでるから慣れてるっぽい」
そう言うと、後ずさってしまった。
「何だったらカズマもやってみるか? うまく防げると結構面白いぞ」
「できるかあああああ!!?」
自分には絶対に無理だと大声を上げてしまったカズマであった。そして、その映像も終わり、次の映像が映し出されるとアクアが、
「今度はその子はいないわね? けど……」
そこに映っていたのは、さっきの子と同じ髪の色の女性。こちらも顔は見えないが、髪は長く、なのはと同じサイドポニーにしている。バリアジャケットらしき服装なので、魔導師か騎士なのだろう。その女性と何やら話している俺であった。
「……さっきの子と同じ色の金髪って事は、もしかして……、この
カズマが驚いた顔で俺の方を向いて、羨ましいそうな視線になっていた。
「金髪でしかも巨乳の嫁なんて……、お前ってやつはあああああ!?」
カズマが、ひときわ巨乳の部分を強調して俺の胸倉を掴もうとしていたので、
「ちょっと待て! いきなり掴みかかるんじゃねえ!」
「うるせー! あんな美人達と子供の頃から一緒で、しかもあの人達じゃなくて他とくっつくって、どういう事だ!?」
そんなのは知らない。文句言われたってどうしろってんだ……!?
「……けど、これでバニルの言が嘘っぱちだって証明されたな」
それを聞いた一同、一斉に俺の方を向き、みんなの代表としてダクネスから、
「何を気にしていたのだ? 占って欲しいなどと言ってたから、気になってはいたが……」
「あの野郎、俺がロリコンになるなんて見通しやがったからな。帰ったら、見通す悪魔(笑)って呼んでやる!」
勝ち誇っている俺の見て、今度はめぐみんから、
「……もしかして、気にしない振りをして、相当気になっていたのですか!?」
「十歳近く年の離れた娘に追い掛け回されるとか言ってたらしいけど、知り合いの中では、キャロとこめっこちゃんしかいないからな。キャロに手を出すなんてありえないし。もしこめっこちゃんだったら、どうしようかと……」
納得したような、それでいてバカなヤツを見る目のみんなの中にあってアクアから、
「あのね。ロリコンでも、それは恥ずかしい事じゃないわ。犯罪に走るのは許せないけど、そこに愛があればいいの。手を出せる年齢になってからなら、何の問題も無いんだから」
アクシズ教の教義だろう。相変わらずとんでもない教えだが、俺がそんなのになるわけは無いので、聞かない振りをしておこう。そして、もう一度水晶玉に目を向けると。
「……虹色の魔力光?」
この魔力光の特徴はどこかで……? なんだったっけ? あんまり思い出したくない場所で聞いた気が……。
「……? どうしました? 突然、考え込んで……」
「この女性、魔力の色が珍しいから、見とれてしまって……」
そんな雑談をしていると、そけっとが真剣な顔をして。
「これは、あくまで可能性の一番高い未来だから、これからの行動次第では、この通りにならないかも知れないから、そこは覚えて置いて欲しいわね」
「つまり極端に言うと、その人と出会っても、いきなり……、”俺の嫁!”とか言って抱き着いたり、ストーカー行為なんてした日には、こうならないって事ですね?」
「ま、まあ……極端に言えば……ね?」
俺はそんなのする気は無いけど、一応確認として例を挙げてみたが、その認識で間違いないらしい。
「しかし、それなら最初から、自分の未来の恋人か伴侶でも占ってくれと言えば良いと思うのだが?」
「そんなの……、ド直球すぎて恥ずかしい! ところで、ダクネスは占ってもらうか決めたのか?」
先ほど、占ってもらうか決めかねていたダクネスに問いかけると、
「うむ。私の伴侶が理想のダメ人間であるかを占って欲しいのだが……」
それを耳にした全員が静まり返り、
「「「「それは止めよう!」」」」
ダクネス以外が同じ考えに至ったらしい。もしダクネスの理想通りなら俺達がダメージを喰らい、そうでなければダクネスが意気消沈する。どっちにしたって悪い方向にしか転がらない気がするので、納得しかねているダクネスをどうにか説得し、店を後にした。
――7年後、ミッドチルダ高町家にて。
「セイクリッド・ハート! セーット・アーップ!」
ヴィヴィオが元気良く、見た目ウサギのぬいぐるみであるデバイスを掲げてセットアップを開始する。
「やったあー!」
大人姿になったヴィヴィオが万歳しながら喜んでいる横で、フェイトは力が抜けたようで、その場に崩れてしまった。どうやら、聖王化に酷似した大人姿になれる事をなのはから聞いていなかったらしい。それは俺もなのだが……。
「あれ? パパは驚かないね? どうして……」
「ヴィヴィオ……。俺はな、その位はお見通しなんだ。聖王化と違うのも分かってる」
したり顔で、ヴィヴィオに説明している胸中では。
やっべえええええ! 紅魔の里で占ってもらった時、一瞬でもヴィヴィオが自分の嫁になるかもとか考えてたなんて、口が裂けても言えねえええええ!!
動揺を悟られないように必死に取り繕っていた。どうにか誤魔化そうと、フェイトの方を向き、
「フェイト、そこはな……、涙目になって腰抜かすところじゃなくて、”ヴィヴィオちゃんが不良になっちまっただー!”って叫ぶとこ……、ぶへらっ……!?」
全てを言い切る前に、なのはのツッコミが俺へと炸裂する。
「な、なのはさん……。年々ツッコミが重くなってる気がするんですが……!? ツッコミは重くするんじゃなくて鋭くしないと、そのうち死傷者が出そう……」
「ゆーくん以外にはやらないから問題ないない。はやてちゃんもドツキ漫才ってジャンルがあるから、大丈夫だって言ってたよ」
ニコニコ顔で俺へと説明するなのはであった。
「思えば、ヴィヴィオが六課に来た頃から、二人のツッコミがきつくなってた気がする……」
「……それは、”パパが一人なのに、ママが二人……! 昼ドラチックなドロドロの様相を呈している……!”とか言ってたからでしょ!」
フェイトがすかさず反論するが、その時はなのはが右脇腹へ肘打ちを、フェイトが左足を踏んで俺の言葉を遮っていたりする。当のヴィヴィオは小さい頃だったので覚えていないらしい。
六課から現在に至るまでの、きつーいツッコミの数々を思い出し、頬に涙を伝わせながら屋内へと戻る俺であった。
占いで出たヴィヴィオの魔力光に関しては、帰り道で思い出してカズマが言ってたのと違う事に気付きます。なので、もう一度占ってもらおうかと悶々としているとか……。
すぐに思い出せなったのは、聖王教会のシスターシャッハにボコられた経験があるからでしょう。
この主人公。StSではともかく、ViVidでは三枚目のギャグキャラにしかならなそうだ。