この素晴らしい世界にリリカルな魔導師を! 作:ゴマフアザラシ
そけっとの占いが終了し、俺はアクアの夕飯のリクエストのために、森に入って山菜採り等を行ってから、めぐみんの実家への帰路に着いた。
「ただいまー。山菜採ってきたぞー!」
採ってきたのは主に、たらの芽やフキノトウだったりする。フキノトウはともかく、たらの芽は採ろうとしたら、木の幹の棘が鋭くなったりして、結構苦労した。まあそこは、うまい事魔法を使ってどうにかしたが。この世界の野菜は色んな意味で恐ろしいと思ってしまう。
春野菜と山菜の天ぷらはアクアだけでなく、ひょいざぶろーさん達にも好評であった。風呂も入り、後は寝るだけといったところでだったが。
「ゆいゆいさん……。今日は普通に寝せて下さい」
「あら……。確かに昨日みたいになっても困りますしね。でしたら、お二人のうちのどちらにするかは、めぐみんに決めて貰いましょうか」
全然、困ってないじゃねえか!? しかも諦めるつもりも無しか!?
「お母さん! また魔法を使って無理矢理なら、私はゆんゆんの家に今すぐ行きます!」
めぐみんの考えももっともだろう。昨日の件に関しては俺も感情的になってしまった部分があるので、強くは言えないが、いくらなんでも焦りすぎな気がする。それとも、既成事実を先に……って考えているんだろうか?
「カズマ……頑張れ。俺はとっとと寝る」
「そうか……分かった。お前の気持ちは確かに受け取った!」
カズマがノリノリでめぐみんとの同衾を申し出ていたが、
「私を無視して勝手に話を進めないで下さい! お母さんも同性同士で固めるという考えは無いのですか!?」
めぐみんの言う通り、それが一番まともな方法なのだが、昨日はそれをやろうとして騒動になっている。
「選ばれなかった方は、こめっこと一緒になりますので心配はないですよ」
むしろ心配だらけです。後ろではひょいざぶろーさんが騒いでいるのだが、どこ吹く風のゆいゆいさんであった。どうしようかと悩んだ結果、ある結論に達したので。
「分かりました。ではめぐみんには変身魔法で、こめっこちゃんと見た目同じくらいになってもらいましょう。実年齢はともかく、見た目七歳なら間違いも起きないでしょうしね」
それを聞いたカズマは、不意を突かれたような表情をしながら、
「……なら、今回はお前に譲るな。お前なら、子供の相手は慣れてるだろうし」
「……カズマったら凄い残念そうな顔してるわよ」
「ああ、この世の終わりの様な顔だ……。そこまで楽しみにしていたとは……」
そんな話をしていた俺達に対して、めぐみんから。
「だから、なぜどちらかと一緒という結論しかないのですか!?」
多分これ以上、どうにかしようとすれば昨日の二の舞になる。それだけは避けたい。ゆいゆいさんを眠らせれば良いんだろうが、あちらもソレを想定しているらしく、特に俺に注意を払っている様子であった。ひょいざぶろーさんもそうだったが、紅魔族は一筋縄ではいかないという事らしい。
「……分かった。俺もカズマもその気がないなら、恨みっこ無しでじゃんけんで決めようか」
「負けた方が、めぐみんと一緒だな。言っておくが、俺、じゃんけんで負けた事ねーから」
カズマもその案で同意をしたのだが、
「……なぜ、私と同室になるのが罰ゲームの様に扱われているのでしょうか……」
めぐみんは一人、複雑な表情を見せていた。
「ただでさえ幸運の低いお前が、俺に勝てるのか?」
「見くびらないでもらおうか。運が無いからといって、今まで手をこまねいていたわけじゃない。奥義の一つを見せてやる……!」
カズマが自慢げに、自分の幸運値とじゃんけんについて語り、俺が反論している周りでは、
「あの男、また下らない奥義を出す気ですよ! 一体いくつ持っているのですか!?」
「でも、肩揉みは私もやってもらったけど、アレは良かったわ!」
「そ、そうなのか……!? 注文で激痛が走るようにはできないだろうか……」
これからやるのを下らないだのと言われた挙句、ダクネスが新たなプレイを構築しそうになっていた。
俺とカズマがお互い一瞬目を合わせ、
「「最初はグー……」」
グーを出した後にお互い手を少し上げ、
「「じゃんけん……」」
その光景を見たアクア達は驚愕の表情を浮かべていた。
「な、何よ……あれ!? ユウったら、手を下ろしながらグー、チョキ、パーを瞬時に変えてるわ!?」
「た、確かにこれは凄い! 相手はどの手を出すか戸惑うはずだ!」
「それはそうですが、もっと別方向で努力するべきだったのでは!?」
めぐみんから失礼なツッコミが聞こえたが、運の無い俺が編み出したじゃんけん攻略法である。相手がどの手を出すかを迷わせ、ギリギリまで観察した後で、自身が勝てる手を出す。素早い手の動きと、これまで鍛えた動体視力の成せる業である。ズルではない……はず。
だが、カズマは落ち着いた様子スッと目を閉じ、
「「……ポンッ!」」
俺はチョキ、カズマはグー。勝敗は見ての通り俺の敗北であった。
「……なん……だと!?」
「そんなのがあるんなら、運を天に任せれば良い。なんだったら、五回勝負でもいいぞ」
「後悔するなよ……!」
一分後、三回連続で負けて床に伏している俺であった。
「お前の言った通り、恨みっこ無しだ。じゃあ後は好きにしろよ」
確かに自分から提案した勝負ではあるので、反論の余地は無い。一応、確認として、
「……本当にこれで良いか? 選択権はめぐみんにあるからな」
「……はあ。構いませんよ。ユウとはデストロイヤー偵察でも二人っきりでしたし、その時も何もありませんでしたから」
ため息をつきながら、渋々納得しためぐみんであった。そうして、めぐみんの部屋の前まで来ると、
「ではごゆっくりー……」
ゆいゆいさんに、まるで押し込められるかのように部屋へと入らされて、
「『ロック』」
さも当然のように鍵をかけられてしまった。部屋の中を見ると布団は一つだけ。思わず、
「……一昨日もこうだったのか?」
「はい……。カズマも親御さんの許可を貰ってるからと、私が目覚めた時にはすでに布団の中にいて……」
その後は、部屋の窓から脱出してから工房で俺に会って、ゆんゆんの家に向かったと。
「まあいいや。それじゃあ俺はこれでお
そうして、窓から外に出ようとしたのだが、
「……開かない」
ゆいゆいさんも一昨日の轍を踏む気は無いらしく、予め窓にもロックをかけていたらしい。
「めぐみん、壊して良いか、これ?」
「ダメです! 私が風邪を引いてしまいますし、明日が大変になります!」
跳躍系とか覚えてれば、この位わけなく抜け出せたけどな。跳躍系か……。双剣使いのシスターさんは元気だろうか……。
どうでも良いことを思い出しながら、さてどうするかと少しばかり考えた結果、バリアジャケットを展開し。
「俺はコイツ着て、部屋の隅で寝るから。おやすみ」
「は、はあ……。良いのですか? 私としては安心ですが……」
「前に言わなかったか? こいつは温度変化にも対応してるから、冬場の馬小屋でもこれで寝てたって」
めぐみんがそういえばそうだった、みたいな顔で納得して、布団に入ってから十分程経ったあたりで、
「やっぱり、こっちに来て下さい! 見てる私が寒くなりますから」
「お構いなくー」
「そっちが良くても私が気になります! これでは本当に罰ゲームですよ!」
などと言って布団へ強引に引っ張られてしまった。すると、
「……全然冷えてませんね?」
「だから言ったろ? お構いなくって」
カズマ辺りなら、誘ってるなどと言って半分からかうだろうが。まあ、あいつなら、本気で手を出すのは無いだろうけど。そんなのだったら、とっくの昔にどうにかなってるだろうし。
「嫁入り前の娘さんが、男を強引に布団に入れるとか、お兄さんは心配になるな」
「憎まれ口叩かないといられない病気ですか? それとも緊張でもしているのですか?」
そりゃあねえ。子供の頃ならともかく、この年齢で年の近い女の子と一緒の布団って、緊張するなって方がおかしい。
「……ああ、こないだカズマをロリマって言っちまったが、俺もロリに目覚めたらどうし、……目が攻撃色だ! おいやめろ、こんな近くで暴れるな!」
軽い冗談のつもりだったのに、本気で怒っているとは思わなかった。
「まったく、最近は口を開けば私をロリだの慎ましいだのと、もう少しデリカシーを持った方が良いですよ!」
「よく言うだろ? ロリって言われてるうちが華だって。温泉でなった大人姿の年齢だと、流石にそうも言われないだろうし」
「言いませんよ! 次から次へとよく口の回る人ですね。逆に感心します……」
大声を出しながら呆れかえるめぐみんであった。
「しかし、里に来てからは、いつもよりテンションが高い気がします。イタズラっ子っぽいですし、お父さんとも喧嘩したり……」
「……ま、最初は下手したら、里が全滅してるかもって思ってたからな。本当はお前等と合流した時に、無理矢理にでも帰らせようかとも思ったし」
「……帰らせる……ですか?」
「……身内の遺体とか、焼かれた故郷なんて見たいのか、お前は? まあ、そんなの言ったら余計意固地になりそうだから、黙ってたけど」
驚いたようにハッと目を見開くめぐみん。結果としては族長さんの誇大表現な手紙ではあったが、あの時はその可能性だって否定しきれなかった。
「私達を置いて行ったのも、そういうわけですか。ですが……」
少しだけ言い淀んでいるめぐみんだったが、意を決したように、
「あなたのそういった部分は、ご両親に似てしまったのですか? 何も言わずに、自分だけ遠くに行って……、待たされる人間の気持ちを一番良く分かっているはずなのに」
「いきなり何言って……」
それ以上は、言葉が続かなかった。似てるって……、何で否定できねーんだ、このっ!?
「人と接するのを怖がってるって……、アイツが!?」
その部屋にいたのは、カズマ、アクア、ダクネス、そしてこめっこ。こめっこは流石に眠くなったらしく、スヤスヤと可愛い寝顔を見せている。
「ここに来る前にアルカンレティアに寄ったでしょ? その時に
「いや、おかしいだろ! アイツは、人と話すのが苦手な訳でもねーし!」
カズマはあり得ないと、即座に否定する。すると、
「正確には、”死”を怖がってるって……、自分じゃなくて、近くの人間が死ぬ事に対して怯えてるって言ってたわ」
「そりゃあ……、そんなの誰だって同じだろ?」
そんなのは当然と言わんばかりであるカズマではあったが、何かを思い立ったらしいダクネスから、
「ふむ。思い当たる節が無いわけではない。例えばカズマが冬将軍に殺された時、真っ先にヤツへと斬り掛かって行った。あの時は、ただ頭に血が上っていたと思っていたが……」
アクアとカズマは聞き入っていたが、続けて、
「それに、ハンスに源泉の管理人が喰われたと知った時の雰囲気は、普段とは違い過ぎていたからな。死に過剰に反応するというのも、あながち間違いであるまい」
「それは……そうかもしれねーが、人と接するのが怖いってのとは違うだろ?」
今度はゼスタとの会話を思い出したらしい、アクアから、
「ユウの場合、自分に深く接しようとする人間程、無意識に壁を作ってるって。ええっと……、いつ別れが来ても良いように、さり気なく距離を取ってるみたいに見えたらしいわ」
「言われてみれば……、族長さんにゆんゆん勧められた時も、迷わないで即答で断ってたし……、少しくらいは動揺しても良さそうなもんだけど……」
月明りのみで薄暗い部屋の中、めぐみんの深紅の瞳がまっすぐに俺を見つめている。
「いや……待て。ちょっと落ち着こう! 何してんだ? そういう雰囲気はカズマと出せって。俺とカズマの二者択一ならアイツの方が絶対良い。多分カズマはずっと近くに居てもらえるぞ? 浮気とか心配なら、そんなのが嫌いな、お説教要因のお姉さん方なら沢山紹介できるしな」
「話を逸らさないで下さい。あなたの考えは分かりましたが、私達がどれだけ心配していたのか、少しでも考えた事はありましたか?」
俺の動揺を他所に、めぐみんがまるで子供を諭すように語り掛けていた。
「ユウが強いのは知っています。ですが、一人で危険な場所に行って、帰って来ないなんて事だけはやめて下さい。約束できますか?」
めぐみんの真剣な眼差し。目を逸らしたいのに、絶対にしちゃけないと思わせるものがあった。
「……努力はするけど、絶対なんてのは約束できねーぞ」
「……今はそれで構いませんよ。肝心な時に、自分を蔑ろにする悪い癖さえ自覚してくれれば……ですが」
疲れた。スッゲエ疲れた。少し話しただけだってのに、何でこんなに疲労感が襲ってるんだか……。
「……話が終わったんなら、俺は布団から出るか。頭冷やしたい」
「駄目です……。今日一晩はここに括り付けておきます。少し反省してください」
そう言って、めぐみんが俺にぴったりと体を寄せて来た。体で感じるめぐみんの温もりと、頬を撫でる吐息に思わず、
「ひょいざぶろーさーん! お宅の娘さんに襲われるー! ライト・オブ・セイバーで襖ぶった斬って来てくださーい」
大声で、ひょいざぶろーさんに助けを求めてしまった。
「いきなり何を言うのですか!? 役得ですよ!? ここは黙って眠っておけば、それで良い所ですよ!」
「すまんな。バニルの言う通りになるわけにはいかないんだ。数年後のめぐみんならまだしも、俺がここで
呆れたような表情で、少しの間無言になっためぐみんが、何やら思案した後で、
「……後学のために聞いておきますが、ユウの好みの女性のタイプを教えて貰えませんか?」
俺の好みの女性か……。ならやっぱり。
「いつかの夢で出て来たみたいな、髪が長くて、胸が大きくて、女神様みたいな包容力のある人かな」
その言葉を口にした瞬間、背筋に凄まじい悪寒を感じ、思わず布団から飛び出てしまった。
「な、なんだ!? 今の……。無詠唱で爆裂撃たれるイメージが浮かんだぞ!? その剣呑な殺気しまえって!」
マジで殺されるんじゃないかと思う程の、めぐみんの気配に動じてしまってはいたが、
「素晴らしいです……。この状況で、何の臆面もなくそこまで言えるとは、大したものです……」
更に、突き刺さるような威圧感がめぐみんから放たれていたので、説得を試みる。
「ここ、安心するとこじゃないのか!? 手を出される心配ないって……」
「……ええ、そうでしょうね。それはその通りですが、即答されると、それはそれで複雑な気持ちになるのですよ」
そんなの知るか! 主張はちゃんとしないと、後で面倒になる場合が多いんだからな!
「……少しばかり、レクチャーしてあげましょう。でないと将来、大変な事になりますよ?」
「おい、何教えるってんだ? 拳握ってるけど、どう考えたって拳で教わる類のものじゃ無いよな!?」
「そこまで分かっているのなら話は早いですね。では、覚悟してください……!」
その後、十五分間、ひたすらめぐみんの攻撃を避け続けていたのだが、
「い、一向に当たりませんね……。私を簡単に取り押さえるくらいはできそうですが……」
攻撃し続けて疲れて来たのか、肩で息をしているめぐみんであったが、相変わらず鋭い視線を向けていた。
「自慢じゃないが、俺の幸運値の低さは伊達じゃねえ! めぐみんを取り押さえた拍子に覆いかぶさるようになってしまって、そこに見計らったようにゆいゆいさんが現れて、済し崩されるのだって考えられるんだからな!」
「本当に自慢ではありませんよ! それに……」
さっきの一言が何故か気に障ったらしいめぐみんが更に、
「何でいちいち、私の神経を逆撫でする様な事ばかり言うんですか!? 済し崩されるのが不運などと……。いくら私でも女のプライド位ありますよ!」
だから、そんなの知るかってんだ!? ……って、この感じ……!?
家の外で、何かが壊れるような音が聞こえて、意識をそっちに向けていると、めぐみんが拳を突き立てようとしてきたので、それを受け流して、相手がバランスを崩した隙に足を払う。
「……えっ!?」
驚いた顔をしながら、倒れこみそうになっているめぐみんの背中を掴み、そのまま外の様子を伺っていると、
「そ、その……、これは突然どうしたのですか!? わ、私としては……予想していませんでしたが……!?」
俺の腕に寄り掛かりながら、少し顔が赤くなっているめぐみんに対して。
「静かに。外で何かが破壊されてる音がした」
と説明したのも束の間。
『魔王軍襲来! 魔王軍襲来!! 既に魔王軍の一部が、里の内部に侵入した模様!』
魔王軍襲来を告げるアナウンスが里中に響き渡っていた。その直後、
「ええっとですね……。できれば……続きは敵襲が終わった後にしてくださいませんか?」
襖が開き、俺達の様子を見たゆいゆいさんが恥ずかしそうに、目を逸らしながら遠慮がちにそう告げた。自分の娘が顔を赤くしながら男の腕に寄り掛かってれば……なあ。
「違います! 誤解ですので、そこは勘違いしないで下さい!!」
ゆいゆいさんへはその一言のみで、カズマ達と合流して家の外に飛び出したのであった。
この主人公、おせっかいで世話焼きな癖して、距離を縮めようとする人には壁を作るっていう凄まじく面倒臭い人格を形成してます。これが無ければ、とっくの昔にミッドの三人娘の誰かとどうにかなってたんだろうなあ。
なので、その性格を気にしないでグイグイ来られると、最早太刀打ちできなくなります。(65話のルーテシアルートがいい例です。もっともあの場合は、ロリコン呼ばれるのが嫌で逃げてますが、時間の問題です)
流石に三年後は少しずつではありますが、改善されてます。というかプライベートでははっちゃける。