この素晴らしい世界にリリカルな魔導師を! 作:ゴマフアザラシ
①セクハラ多数
②ハートマン軍曹は偉大です。ですが見苦しい部分は○で表現しています。
③古代ベルカの皆さんごめんなさい
「もう少しで……! あら、よりにもよって、ここであなた達と出くわすなんてね! さすがねえ! 部下の陽動には引っかからず、アタシの目的に気付いて探しに来たって事かしら?」
カズマやめぐみんと家から出ると、なぜか目の前には傷ついたシルビアがいた。前の時とは違い、ドレスの他に灰色のコートを羽織っている。
「何度も何度も懲りずに攻めて来て、恥ずかしくないんですか?」
「な、何言ってるのよ!? 先日は、良い男だと思ったけど随分な物言いね、あんた」
部下を囮にする程、戦力差があるんならとっとと諦めれば良いものを。とそんな事を考えていると、
「そっちの子は部下に爆裂魔法を撃ち込んでくれた子ね……。お礼をしようかしら……」
シルビアがめぐみんに鋭い視線を向けると同時に、俺とカズマがめぐみんを隠すように立ちはだかると、
「そっちの子、少し顔が赤くなってるわね? もしかして取込み中だったかしら? それは悪い事したわねえ」
挑発的なシルビアのセリフを聞いたカズマが、めぐみんの顔をチラッと見て、
「……おい、もしかしてお前、一昨日、工房で肩もみしてたって言ってたが、そうじゃなくて今日も……?」
あーもうさ、キレていいよね、俺。いい加減この手の話はうんざりになってきた。ゆんゆんから始まり、オーク、ゆいゆいさん、そしてシルビア。もう嫌だ。
「てめえら! 揃いも揃って、春だからって
「……ユ、ユウ!?」
突然、口調が荒くなった俺を見て狼狽えるめぐみんであった。
「ごっ、ごめんなさ……」
つられたのか、シルビアも俺に向かって謝罪をしようとしていたが、続けて、
「ふざけるな! 大声出せ! ○○落としたか!」
「お、お前……いきなりどうした……!?」
おそらく、日本で言ったら放送禁止用語になる単語を口にしているので、カズマまでドン引きしていた。
「謝れば良いってか!? 貴様は最低のうじ虫だっ! ダニだっ! この世界でもっとも劣った生き物だっ!」
「ちょっとあんた、このアタシを叱りつけるとはいいど――」
「ああんっ!? パパの○○がシーツのシミになって、ママの○○に残ったカスがテメエだろうが!」
とシルビアに怒鳴りつけている横では……、
「ユウさんったら、お下劣……」
「こっ、この罵りは……新感覚だぞ!? くっ……!」
いつの間にか合流していたらしいアクアは後ずさり、ダクネスは顔を紅潮させながら拳を握っていた。急いで来たらしく、鎧は着ていない。
「こ、こめっこには、と、とても聞かせられません……」
めぐみんの言う通り、確かに子供の教育上良くないよな、これは。とりあえず、溜飲も下がり落ち着いたのを見計らったらしいカズマが、
「な、何だったんだ!? さっきのは……」
「無重力の図書館で見つけた『古代ベルカ式罵り口調新兵訓練編』だけど?」
「意味わかんねえ……」
そんな事を言いながらも、カズマがポカンとしているシルビアに斬りかかるが、相手はちゅんちゅん丸の刃を素手で受け止めていた。
「……これが魔剣? ていうか剣の腕もお粗末だし。……ねえあなた本当にミツルギなの?」
剣っていうか刀使うんなら、鍛錬しておけば良いものを。これじゃあバレるかな? と考えていたところ、
「それとも、あなたの方がミツルギかしら? あの剣技は見事だったわ。ソードマスターって聞いてたけど、魔法剣士だったなんてね」
今度は俺をミツルギと勘違いしているらしい。丁度いいからそれを利用させて貰おうかと思い、
「……だったらどうする? 俺の魔剣と打ち合う度胸はあるか? 言っておくが――」
「ぴよぴよ丸です。それは由緒正しい悪魔殺しの神刀ですよ? グラムなんてどこの馬の骨とも分からない魔剣と一緒にしないでください」
「……はっ!? 何よそれ? そんな名前の悪魔殺しの武器なんて聞いた事無いんだけど!?」
俺の刀の名付け親が、自慢げにぴよぴよ丸について説明を行っていた。まあ、嘘じゃないんだよな。実際バニルの本体である仮面もぶった斬れるし。
「けど、あなた達、二人共ミツルギじゃないのね。なぜ偽名を使ったのか理由を教えてくれないかしら?」
「……俺の名前は佐藤和真だよ。偽名を使った理由は、お前らに名前を知れたら、指名手配とかかけられそうだったからだよ」
それを聞いたシルビアがツボに嵌ったらしく、大笑いしながら、ちゅんちゅん丸ごとカズマを自分の所へ引き寄せていた。丁度、シルビアの胸に顔を埋める形になってしまったカズマであった。妙に嬉しそうにしていたが、あれは仕方ないと思う。とシルビアがこちらを向き、
「どうせだったら、あなたも来なさいな。大歓迎よ?」
「俺の好みにニアピンだが……。悪女じゃなくて、もうちょっとこう……慈愛に満ちた……、痛ってええええ! いきなり杖で突くんじゃねえ!?」
「戦闘中に下らない事を言わないでください! 男というのは、これだから……!」
さっきの自室でのやり取りを思い出したらしいめぐみんが、俺の背中を杖で突きながら、刺さるような視線を向けていた。その後、シルビアはカズマに盗賊スキルのバインドをかけて人質にして貰っていくと言ったので、
「……カズマ、すぐに助けてやる。ちょっとくらい痛いのは我慢しろよ? カートリッジの制限も解消されたし、遠慮なしでやれるからな」
その一言で、俺が何をしようとしているのか察したらしいカズマは、自分の顔をシルビアの胸の谷間に埋めながら、ジタバタ暴れまわっていた。と俺の周りに展開された魔力弾を見たシルビアが、
「ちょ、ちょっと……!? まさかこの男ごとアタシを撃つつもり!? 人質がどうなっても良いの!? ……んんっ!? 暴れないで……。体が火照っちゃうわ……」
「カズマ、大人しくしてろ。シャープシューティングは苦手じゃないが、暴れられると、多少狙いづらくなる」
そして、シルビアに魔法を撃ち込んだのだが……、
……魔力が拡散した!? これってAMFと同じ……。
シルビアに撃った魔法が、魔力の塵になってしまい、それを見て、
「へえ……。このコートはそういうアイテムだったのね。貰った時は胡散臭かったけど、良いものを手に入れたわ」
シルビアが何かに納得したような雰囲気で俺を見つめていた。息が苦しくなったとかのカズマの抗議を聞いたらしく、今度はカズマの後頭部に胸を押し付けるような形になってしまったが。
……理由は分からないが、AMFを展開してるなら、この世界の魔法を使うか……? それとも近接でやり合うか……。どっちにしてもカズマを盾替わりにされたらマズいな。
カズマを助け出す算段を考えながら、
「カズマ……、ちょっと待ってろ。今助けるから」
「お構いなく」
意外な一言に、その場に固まる俺達であった。俺達を見つめながら続けて、
「おいお前ら、最近俺に対して随分とおざなりな扱いじゃないか。ユウは俺ごと撃とうとするし、ダクネスも何だよ? めぐみんの両親への紹介は!? 最近の扱いの悪さから、うっかり魔王軍に寝返っちゃおうかなーと思うとこだよ?」
カズマごと撃とうとしたのは悪いとは思うが、手っ取り早く行きたかっただけだ。このまま文句聞き続けるのも面倒だし、殴って気絶させとくかな?
などど、俺の思案を他所に、ダクネスはかなり動揺してしまった様で、謝りながら勲章を授与するなどといった発言をしていたが、カズマは意にも介さずに誠意を見せろとか言っている。シルビアに付いて行かないように、ちゃんと謝れと。
メイド服を着ろだの、甲斐甲斐しく世話しろだの、ミスしたらお仕置きでネコミミとネコシッポを付けて扇情的なポーズを取らせるだのと言っていた。よし、付き合ってられない。
「ダクネス、そんなに悪いと思ってるなら、今すぐカズマの所に行け。サポートしてやる」
ダクネスにそう言うと、今度はカズマの方を向いて、
「カズマ……、そんなにそのポジションが良いんなら、もっと良い事してやる……!」
と俺がカズマに向かって何かをしようとしてるのを、
「……ちょっと! 何する気かしら? 悪い顔してるわよ?」
「黙って見ていましょう。あの顔の時は、とんでもない事を考えていますから、下手に手を出せば巻き添えを食います」
アクアとめぐみんから凄まじく失礼な発言が聞こえて来たが、無視してダクネスに『フローター』を掛ける。対象に浮遊効果を与える魔法である。そのまま、
「カズマの顔目掛けて逝ってこい!」
「えっ!? ああああああああ!!?」
ダクネスを全力で蹴り飛ばして、カズマとシルビアに突撃させた。仲間を全力で蹴るなんてのは、想像していなかったらしいシルビアは回避できずにそのままダクネスと激突する。その光景とは……、
「……ねえ、あれ……狙ってやったの?」
「勿論」
カズマは前方にダクネス、後方にシルビア、その両者のたわわな胸を顔の前後に埋める形となっていた。表情は見えないが、おそらく喜んでくれているに違いない。縛られているが手を見ると、サムズアップの形になっている。
シルビアも意外な光景に動けなくなっているが、その隙に高速移動で背後に回り込み、ぴよぴよ丸で斬撃を加える。
「くっ……! まさかこんな手を使うなんて……!」
攻撃を受けてしまったシルビアがカズマを放して、俺の方を向き直るも一瞬。今度は縦一文字に斬撃を加えて、着ているドレスとコートを斬り裂いた。
結果、シルビアの胸ははだけていてしまい、地肌が見えている。健全な青少年には思わず目を逸らしたくなる光景ではあるが、視線が行ってしまったのは他の部分だった。
象――哺乳綱ゾウ目(長鼻目)ゾウ科の総称であるが、この世界で象さんなんて見たことは無い。人体のある部分の比喩として用いられる事もあるが、少なくとも、目の前のシルビアには無い物だと思い込んでいた。
シルビアがカズマの方を向き直ると、そちらの方向には女性陣もおり、
「きゃあああああああ!!」
「うああああああああ!!」
「……ふっ」
思わず悲鳴を上げるめぐみんとダクネス、そして鼻で笑ってるアクア。
あれ? アクアだけ反応が淡白だ。もしかして、アルカンレティアで言ってた通りで、結構お年を召されてるんだろうか?
「カズマより大きい……」
目を覆いながらも指の隙間から見ているらしいダクネスが、そんな事を呟いていた。見た事あるのか?
「え、ええと……。すいません?」
一応、謝った方が良いかと思い、シルビアに頭を下げると。
「大胆ねえ。体を斬らずに服だけ斬るなんて……。それともソッチの趣味でもあるのかしら?」
人を変態みたいに言うんじゃねえ。万が一でもカズマを傷つけない様にしただけだっての。
「……あんた、も、もしかして……、お……とこ?」
カズマが震えながらシルビアを指差し、真っ青になっている。
「アタシ、キメラだから。あなたの大好きな胸は後から合成して付けたのよ?」
その言葉に茫然としたカズマを再びシルビアが捕まえて、
「カ、カズマ……、仕方ないんだ、これは仕方ない。男だったらそうなってしまうんだ。気をしっかり持ってくれ!」
心ここに在らずのカズマを何とか元気付けようとしたが、良く聞こえていないようだ。そうしているうちにシルビアが、
「あなた本当にいい男ねえ……。そっちの彼もだけど、一緒にいるだけで、胸も下半身もキュンキュンきちゃうわ」
「シルビアさんシルビアさん。気のせいか、俺のケツに象さんが当たってるんですが」
カズマ……、その質問はしちゃいけない。きっとお前は後悔する。そう思っていたのも一瞬、
「あててんのよ」
その言葉と共にカズマは気を失った。
……好都合だ。さっきのシルビアの発言から、AMFはあのコートから展開されていたらしいが、それは斬り裂いた。気絶してるから下手にカズマに暴れられる心配も無い。
「ロードカートリッジ」
ファルシオンを近接形態――剣型の魔力刃を展開し、シルビアへと斬りかかる。
「ちょ……!? やっぱり人質がいてもお構いなしなの? あなたってそういう人間?」
「人聞きの悪い事は言わないで貰おうか! 悪いが逃がさない。まあカズマを持ったままなら、動きも鈍るだろうけどな!!」
シルビアは慌てながらも、その場から逃走しようとしていたが、
「強引なのも悪くないわね。どう? この男は離すから、この際あなたでも良いのよ?」
「ロック!」
シルビアの言葉を無視して、バインドでカズマごと動きを封じる。そしてそのまま砲撃の体勢へと移っていると、
「ねえ……。いつもより動きが良くない?」
「た、確かに……。杞憂が無くなって思い切り戦っている様に見えます」
「制限がなくなった……と言っていたが、これが本来の実力なのか?」
女性陣は少しばかり驚いていたようだったが、今までカートリッジの弾数に制限があったため、ある程度は加減せざるを得なかったってだけである。
「何よ……これ!? このバインド、盗賊のものでも魔法使いのものでもないわ。あなたは一体……!?」
「ファイア!!」
狼狽えているシルビアを他所に砲撃を撃ち込もうとしていると、俺の足元にスローイングナイフが刺さり、黄色の魔法陣らしきものが展開していた。これはマズいと直感し、すかさず後ろへと飛び退くと、そのナイフが轟音を立てて爆発し、煙を上げ視界を遮った。その煙が晴れた後には、シルビアとカズマの姿は忽然と消えていたのだった。
「……ちっ。逃げられたか。周囲に反応は?」
『カズマさんの生体反応は追えます。しかし、先ほどの攻撃の主は姿を消しています』
この際、さっきの爆発の件は後回しだ。まずはカズマを追わないと。
「”……ちっ。逃げられたか。”……なんて完全に悪役のセリフよ?」
「からかうなよ。早くカズマを追うぞ。人質だから殺されることは無いと思うが」
アクアを諌めていると、めぐみんから、
「人質ごと撃とうとした人間の言う事ではありませんよ」
「俺の魔法は非殺傷設定があるからな。あれも駆け引きのうちだ」
普通なら言う通りなんだろうが、そこは大目に見て欲しい。
「しかし……、調子が戻って来たな。心なしか動きにキレが出ていた」
「ペース配分だの、色々考えなくても良いからな。ムッツリららみい」
「誰がムッツリだ! というか私のあだ名をいくつ考えたのだ!?」
ざっと三十くらい……なんて言おうものなら、全部忘れろと言って締め上げられそうだから、黙っていよう。
軽口を叩きながら、カズマの生体反応を追って全員でそちらへ向かった。その途中、
「最初にカズマが捕まった時、ユウの魔法が掻き消された様に見えましたが……」
「……多分、AMFだな」
「えーえむえふ?」
疑問形になっているめぐみんに対し、AMFの説明を行うと、
「また、きな臭くなってきたな。ユウの所の悪者が連中と手を組んだのか?」
「可能性はあるが……」
にしたって、コートをAMF展開できるようにするとか、並の技術じゃない。後ろには誰がいる?
「でも……魔法が使えなくなるんだったら、マズいんじゃない?」
「それは俺の使う魔法だけな。効果範囲外でこっちの魔法使えば良いし、ぴよぴよ丸もある」
アクアも心配になったらしく、俺の方を向いて不安げな表情を見せていた。
「まあ、まずはカズマとシルビアだ。そっちに関しては、後で里の人達にも色々聞いてみよう」
みんなにさり気なく注意を促し、カズマを追っていた。
紅魔の里郊外の森の中。
「なかなか、勘の良い人物だ。あのタイミングで無傷とは」
「でも、シェルコートは壊されちゃったかあ……」
「またドクターに作って貰えばいい。気にするな」
銀髪の少女と水色の髪の少女が会話しているすぐ傍で、
「目的地が同じなのは意外だったけど、あの魔導師にうろつかれると面倒ですし、せいぜい時間稼ぎをしてもらいましょうか。さっき届いたばかりの情報もあるし、あわよくば始末しておきましょう」
「良いのか? それは後回しと聞いていたが?」
「能力以外にも、あのタイプは厄介よ? ムードメーカーになれる人間の影響は、自身が思ってるよりずっと大きいものなの。ドクターの目的のためにも……ね」
指揮官らしいメガネの少女が見つめるモニターの先には、魔導師の姿がはっきりと映っていた。
しかし、うちのシャックの妖刀は悪魔の始末やAMF対策、セクハラまでできる万能武器になってしまった。活躍しすぎだろうか?
ハートマン軍曹というか、ふもっふネタは、王都編で同じように冒険者鍛えて、攻めてきた魔王軍を恐怖に陥れるといった構想もありましたが、流石にやりすぎなのと主人公の性格には合わなそうなので、こっちでやりました。