この素晴らしい世界にリリカルな魔導師を!   作:ゴマフアザラシ

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今回は試験的に太字を用いております。


シルビア戦、その後

「カズマ! 傷は浅いぞ! しっかりしろ!!」

 

俺は必死にカズマの肩を掴み揺らしながら、正気に戻るように訴えかけていた。傷は深いに決まってる! 剣の騎士と暴力シス……ではなく、教会騎士団でも指折りの実力者のコンビだ。シスター・シャッハはよく自分を”非才の身なれど……”とか言っているが、あなたの様な非才がいるか!? とツッコんでやりたい。そんな事したら、後が怖いけど……。

 

今、お前が言うなって聞こえた気がしたが……?

 

「はっ……!? お、俺は一体……!?」

 

「気が付いたか。俺はどれだけ寝てた?」

 

何とか正気に戻ったらしいカズマに、俺が意識を失ってからの事を尋ねると、

 

「あれから三日経ってる。こめっこも無事だからな」

 

どうやら、本当に一件落着らしい。安心して気が抜けると同時に、周りを見渡すと、

 

「めぐみんちだよな? みんなは?」

 

「アクアとダクネスなら、あれから里の修復を手伝ってた。めぐみんとゆんゆんは、あの姐さん達と一緒に、里の周りの巡回とかしてる。みんな心配してたから、あとで礼言っとけよ? お前の看病だって交代でやってたし」

 

そうなのか……。確かに今回は無茶しすぎた。未完成とはいえ、最後の切り札のリミットブレイクまで使って、その後、すぐさま戦闘。それで、この程度で済んでるんだから、まだ幸いと言うべきか。

 

重い体を引きずりながら、カズマと共に家の外に出ると、

 

「……カズマ、……紅魔の里、燃えてたよな?」

 

「そうだな」

 

「俺、三日間眠ってたんだよな?」

 

「うん。そうだよ」

 

目の前にあるのは信じられない光景だった。思わず、

 

何で当たり前の様に、復興してるんだ!? 紅魔の里は!?

 

大声で叫んでしまった。そこは、紛れもなくシルビアによって蹂躙される前の紅魔の里であった。まるで、俺だけタイムスリップしたような感覚に陥ってしまう。

カズマの説明によれば、瓦礫は魔法で吹き飛ばされ、岩盤から切り出された建材は一時的にゴーレムへと変えられ建設現場まで歩いて行き、召喚魔法で呼び出されたらしい六本腕の悪魔が大工道具をそれぞれの腕に持ち、ありえない速度で復興したらしい。

カズマ曰く、俺が昏睡状態でなかったら、悪魔にちょっかい出していた可能性があるため、それに関しては良い方向に転んだとの事だった。

 

……これって、もし逃げてても、三日でどこでも紅魔の里ができるって事だよな? 一人で熱くなっちゃった? いやいや、それでもあの『魔術師殺し』が厄介なのは変わらないし、シルビアが他で被害を出す事も想定できたし……。

 

自分が結構、恥ずかしい事しちゃったかな。などと心の中で、悶々としていると。

 

「おお! 目が覚めたか。『星の刃を携える者』……!」

 

……今何と?

 

紅魔族の一人が俺を見つけると、中二的な二つ名で呼ばれてしまった。

 

「カ、カズマ……今のって……」

 

「格好良い二つ名が付いて良かったな。『星の刃を携える者』」

 

な、なな、何で、どうして……?

 

「そりゃあ……あれだけの事を紅魔族の前でやれば……な?」

 

俺の動揺を見透かした様なカズマが少しばかり、からかいながら説明をしてくれた。また別の紅魔族が俺を見つけると、

 

「体調はどうだ? ゆっくり休むと良い。『万象を断ち斬る者』」

 

今度は、『万象を断ち斬る者』なんて呼ばれてしまった。俺が羞恥心で震えながら真っ赤になっている横では、カズマが必死に笑いを堪えている。

 

「俺がこれなら、これからカズマを『下着を強奪する者』って呼ぶ!」

 

「なんだよそれ!? 自分はセクハラですって言ってるようなもんだろ!!」

 

「実際強奪しただろーが!! 六回連続で全部!!!」

 

まさか……リミットブレイクでシルビアの『魔術師殺し』をぶった斬った結果がこうなるなんて……。

 

カズマとしょうもない言い合いをしながら大声を上げていると、

 

「目が覚めましたか……! これで一安心です……」

 

「ユウさん……。良かった……」

 

見回りを終えたらしい、めぐみんとゆんゆんが俺の顔を見て、安心した表情を見せていた。めぐみんはなぜか俺のぴよぴよ丸を持っている。

 

「すまないな。心配をかけたみたいだ」

 

後ろには、姐さんとシスター・シャッハの姿もある。双方、特に姐さんは厳しい顔をしてはいるが、どことなく、ホッとしたような感じだ。やはり心配をかけていたようだ。

 

「お二人共、特にシスター・シャッハはご無沙汰しております。教会騎士団のあなたがどうして……」

 

「それについては、ロッサが戻って来てからにしましょう。もう少し早く動けていれば、良かったのですが……」

 

ロッサというのは、あの声の主で大型犬の魔法の使い手だろうか? 少なくとも、俺らの様な戦闘要員には見えないが……。

 

俺達が挨拶と雑談をしていると、通りすがりの紅魔族の一人が、

 

「見回りご苦労様。『ネタ魔法使い』と『白き外套の先導者』」

 

どうやら、めぐみんとゆんゆんも二つ名が付いてしまったらしい。めぐみんはそのままというか、爆裂魔法=ネタ魔法をそのまま二つ名にされてしまい、ゆんゆんは、自警団を率いてシルビアと戦ったところから付いた二つ名らしい。

めぐみんは怒りから、ゆんゆんは恥ずかしさから、それぞれ震えていたが、

 

「何で私だけ『ネタ魔法使い』ですか!? ユウもゆんゆんも格好良い二つ名が付いたというのに……!? しかもシルビアに止めを刺したのは、私ですよ!」

 

確かに大殊勲を上げたのはめぐみんだし、いくらなんでもあんまりなので、

 

「だったら、俺が二つ名つけてやるから」

 

「例えば……どんなでしょう?」

 

少しだけ期待に胸を膨らませためぐみんが、俺を上目遣いで見ていたので、

 

「そうだな……。『爆焔の妖精』なんてどうだ?」

 

ダクネスのあだ名呼びを考えるに、下らない物かもしれないといった疑惑もあったらしいが、紅魔族的には結構まともな二つ名なので、目を輝かせていた。しかし、

 

「そ、それでは……少し、子供っぽ過ぎますね……。妖精と言うのは……」

 

どうやら、悪くはないが”妖精”の単語が気に入らなかったらしい。だったら、

 

「じゃあ、『破壊の魔女』」

 

めぐみんがボーっとしている。もしかしたら、脳内で『破壊の魔女』のフレーズがリピート再生されているのかもしれない。

 

「そ、それも良いですが、もっと他にはありませんか? わ、私としては候補がいくつか欲しいのです!」

 

もしかしたら、紅魔族の琴線にふれる二つ名が、まだ出てくるかもしれない。そう思ったのだろう。なので、

 

「俺の一番のお勧めは……」

 

「お勧めは……?」

 

めぐみんが真剣な表情をしながら、ゴクッと喉を鳴らしている。

 

「『爆裂ロリータ』だな。けど、この三つはなぜかウィズの方が似合いそうな気がして……。爆裂はともかく、ロリじゃなああああああ!?」

 

めぐみんが突如、ぴよぴよ丸を抜き放ち、俺へ向かって唐竹割りを仕掛けて来ていたので、パシーンと両手の掌底で刀身を挟んで、それを必死で止める。

 

「真剣白刃取り……! 初めて見た……」

 

カズマは感心したようなセリフを言っていた。ぴよぴよ丸は人体は斬れないが、こんな公衆の面前で半裸を晒すとか、絶対に御免被る……!

 

「ちょっと待て! そもそも何でめぐみんがぴよぴよ丸を持ってるんだ?」

 

「私は爆裂しか使えませんから、ユウの作ったスクロールと、鞘付きのぴよぴよ丸で巡回に参加していたのですよ! これでもカズマよりはステータスが高いですから」

 

そうだったのか……。めぐみんが巡回とか爆裂散歩の一環かと思ったが、違っていたらしい。カエルに呑まれたトラウマで、ぴよぴよ丸持つの嫌がってたのに。

 

「めぐみん、俺だって何の考えも無く、あんな二つ名を提案したわけじゃない。ちゃんと理由がある!」

 

「一応、聞いてあげますよ! しょうもない理由なら承知しませんが」

 

その割に、ぴよぴよ丸に込められている力は全然緩んでいない。

 

「言っては何だが、大人姿のめぐみんは美女で、ロリなんてとても呼べない。つまり、『爆裂ロリータ』は今から、一、二年しか使えない期間限定のありがたい二つ名にいいいいいい!?」

 

「そんなありがたみなんて、必要ありません! このまま服を斬り裂いてくれます!!」

 

ここで刀身を離すと俺の服は一刀両断で、真っ二つである。そんなのをさせるわけにはいかないので、

 

「誰か助けて! めぐみんにひん剥かれてお婿に行けなくなる! この二代目シャック止めて!」

 

「そうなったら、ユウの下腹部には”聖剣コールブランド”と書いてあげますよ。いつかのカズマの様に……!」

 

俺達の下らない争いを疲れたような目で見ていたカズマではあったが、

 

「……止めなくて良いんすか?」

 

「アレは九歳の昔から、概ねああだ。数年前にもヴィータにおかしなあだ名を付けて、取っ組み合いの喧嘩になっている。まあ、アレがあの態度をとるのは、お前達を信頼している証でもあるが」

 

その場の全員がヤレヤレといった感じであった。その後めぐみんが疲れ果て、刀を押し付けるのを諦めるまでそれは続いた。

 

「言っとくが、俺は半病人だからな! そんなのに斬りかかるとか、どうなんだよ!?」

 

「半病人なら半病人らしく大人しくしてください! なぜ、口を開けばおかしな事ばかり言うのですか!?」

 

ぴよぴよ丸を取り上げ、いまだにめぐみんと言い合いを続けていたが、

 

「気が付いたみたいだね。いや、良かった。状況は大体聞いていたけど、僕の要件を済ませて良いかな?」

 

白いスーツで長身、緑の長髪の男性であった。いつの間にか、こちらに合流していたらしい。

 

「ええっと……?」

 

「これは失礼。僕はヴェロッサ・アコース。本局の査察官をしている者だ。君の事ははやてやクロノから、よく聞いているよ」

 

差し出された手を握り握手を交わすが、何というか、雰囲気が軽い割に油断ならない感じのする人である。

 

「査察官って……」

 

「詳しい話は、屋内でしようか」

 

めぐみんの家に戻る間、彼について色々と教えてもらっていた。本局査察官であり、クロノ、はやてとは旧知の仲。古代ベルカ式のレアスキル保持者であるらしい。あの『猟犬』と呼ばれていたのも、それのようだ。

 

めぐみんの実家の一室。ミッドから訪れた三人に、俺とカズマ達全員が集まっていた。

 

「……あの、もしかしたら、今の俺って……、微妙な立場になってますか?」

 

「察しが早くて助かる。最近の報告と、”ここ”で頻発している事件について、簡単に言うと君にスパイ容疑が掛かっていた」

 

やっぱりか……。そりゃそうだよな。発見されたての世界で、あちら側の連中が事件を起こしてるんだ。どっかで情報がリークされていたにしても、俺が連中に情報を横流しした……と、考えるのが自然と言えば自然だ。

 

「それはおかしいです! そうだったら、ここまで無茶するはずないじゃないですか!!」

 

意外にも一番に声を発したのは、ゆんゆんであった。

 

「まあ、落ち着いて。状況的にはそうなってても仕方ないし、ちょっとした手続きみたいなもんだから」

 

ゆんゆんを宥めて、査察官の説明に耳を傾ける。

 

始まりは、最近になって定期連絡が途絶えた事らしい。日時からすると、丁度ガジェットに襲われたあたりだ。何らかのトラブル、または自ら姿を眩ました。そういった憶測が飛び交っていたそうだ。トラブルならまだ良いが、もしそうでなければ……、という事でアコース査察官の幼少の頃から護衛を務めていたシスター・シャッハと、もし俺が抵抗した場合のストッパーとして、元上官である姐さんが同行したという事だった。

 

「君がいるはずの屋敷にも、誰一人いなかったからね。どこに向かったのかを聞きまわって、ようやく近くに来たと思ったら、火の手は上がっているし、聞けば子供が一人行方不明になっているというから、急遽、僕達も探索に参加したというわけさ」

 

「定期連絡は行っていたはずですが……?」

 

「それについては、君が眠っている間にデバイスの記録を確認させてもらった。どうやら通信阻害をされていたらしい」

 

マジですか。ガジェットに見た事ない攻撃方法の刺客。しかもご丁寧に通信阻害までしてたとか……。

 

「まあ、僕が出向いたのは、友人(クロノ)妹分(はやて)の頼みだったのが大きいけどね。二人共、君が裏切るなんてありえないって言い切ってたし。それに……」

 

まだ何かあるんだろうか?

 

「僕がすんなり来れたのは、地上部隊(おか)のトップが、特にこちらに意見しなかったのも大きいかな。いつもなら、自分の所のを寄越すとかって言ってきそうだけどね。いやあ……、君がいろんな場所に顔を出してるのが、良い方向に転がったよ、今回は」

 

俺達の話を聞いていたこちらの面々は揃って、頭の上に?マークを浮かべていた。特にアクアは一人で船を漕いでいる。彼女にとってはあまりにも、難解な話だったらしい。

 

「つまり……、どういう事だ?」

 

「簡単に言うと、疑惑はあるけど、そこまでひどい状態じゃないって事。そういえばさっき、容疑が掛かっていたって……? なぜ過去形ですか?」

 

カズマからの質問に答えるついでに、俺もおかしな言葉使いに気がついたので、目の前の男に対して問いただすと、

 

「言葉通りの意味さ。君が眠っていた間に、僕の仕事は終わってるからね。僕のもう一つのレアスキル『思考探査』で、必要な情報は引き出しているよ」

 

……聞くからに、なんか……こう、恥ずかしい秘密とか、筒抜けになりそうなレアスキルだなあ……。けど、眠ってる間に全部終わってたとか、緊張して損したような気がする。

 

「特に、ユウを拘束もせずにいるという事は、無罪という意味で良いのでしょうか?」

 

めぐみんからの問いに、穏やかな表情で首を縦に振る査察官であった。

 

「あの後倒れて、ずっと目を覚まさずにいたからな。アクアが治療したが、お前の惨状に驚いていた。たいした負傷でもないのに、ここまでの疲弊はあり得ないと」

 

ダクネスが真剣な表情で、俺の疲労についての質問をしてきたのだが、思わず目を逸らしてしまう。

 

「せ、説明しなきゃ……ダメかな? あれはただの切り札って事で……、それに、あれはその後に無理やり戦闘したのが効いてて……」

 

「「「「ダメだ(です)!!」」」」

 

一度見せてしまったので、ちゃんと説明しないと納得しないらしい。リミットブレイクについての説明を渋々ながら行うと、

 

「つまりは……一時的に限界突破して、能力以上を引き出すって事か? けど、負担は凄まじいと」

 

カズマは理解してくれたらしいが、冷や汗をかいていた。まあ、どこかのブラスター程じゃないけど。

 

「そ、その通りです。はい……」

 

「私やゆんゆんには、散々危険な無茶はするなと、口を酸っぱくして言っていましたよね?」

 

「そうだけどねー……。は、ははは……。ゴメン! いやまあ……無茶するとこうなるよっていう手本って事で……」

 

紅魔族の二人、特にめぐみんが刺さるような視線で俺を見ている。

 

「まあ二人とも、そう責めてやるな。ところで……。私にもそれは可能か? そこまでの負担というのも一度経験してみたいのだが……」

 

「だったら、ひょいざぶろーさんに見た目が変わらないけど、重さが3倍くらいの鎧でも作ってもらえ」

 

「そ、それは良いかも知れん! めぐみん、早速ひょいざぶろーさんに確認してみたいのだが……」

 

ダクネスはどうもドMの習性か、体の負担の方に目が行ってしまったらしい。

 

「じゃあ……、俺はちょっと散歩でもしてくるよー。体動かしたいしー」

 

この場には居づらいので、逃げる様に部屋から出ると、

 

「私達も行こう。久々に話もしたいしな」

 

姐さんとシスター・シャッハまで同行することになってしまった。この二人と一緒とか、気が抜けないじゃねーか、コンチクショウ!

 

「悠……」

 

「はいい……!?」

 

名前を呼ばれただけで、思わず背筋がピンと立って声が上ずってしまう。変な容疑かけられたのとか、ぶっ倒れた事とか、何か言われるだろうか……。

 

「そこまで緊張する必要はない。今回の件、後で良いので、彼らにも逃げずにちゃんと説明してやれ。皆、お前の目が覚めるまで、各々で動いていたからな」

 

「俺が倒れている間に何が……?」

 

「おさげの娘もそうだが、眼帯の方も、また襲撃者が現れるかもしれないと、私達について回っていた。特に、眼帯の方は巡回では自分は役に立たないかもしれないと言って、お前の刀まで持ち出していたからな」

 

なるほど、めぐみんがぴよぴよ丸を持ち出していたのは、そういうわけだったか。杖よりは接近戦で使えそうだし、爆裂以外の魔法はスクロールでって事か。

 

「それにだ……。相も変わらず、不器用な部分があるな、お前は」

 

「それって……どういう……?」

 

不器用とか……、覚えが無いんだが……。

 

「シグナム、そこから先は私が。これでもシスターですから、お任せください」

 

コホンと咳払いした後、穏やかな顔のシスター・シャッハが俺へと向かって。

 

「あなたが彼らを置いて一人でこの場所に向かった事や、無茶をした事……。それについては、あなたの過去に起因しているのは、何となくではありますが、分からなくはありません」

 

紅魔の里に来てから良いだけ、色々言われたからな。めぐみんもひょいざぶろーさんもダクネスも……。

 

「ですが、あなたの人を遠ざけてしまう部分は、少なくともその方々を大切に思っているからですよ。ですので、そこからは目を逸らさない下さい。それは恥じるべき事ではありませんから。そして、できればほんの少しで良いので、歩み寄ってあげて下さい」

 

思わず聞き入ってしまっていた。ここは無視してはいけないところなのは自分でも分かっている。

 

「いきなりそうしろと言っても、無理があるでしょうから、少しずつで良いのでそうして頂ければ幸いです」

 

「……前向きに努力します」

 

多分、今の自分は恥ずかしそうな顔をしながら、顔が真っ赤になってるんだろうな。なんて思いながらではあったが、変わんなきゃならないのかなと感じてしまった。

 

「ふっ……。これでまだ腑抜けていたら、ただでは置かんところだ」

 

姐さんとシスター・シャッハの二人揃って鉄拳制裁ですね。分かります。

 

「あっ……、そうだ! 実はそちらの耳に入れておきたい事が……」

 

そうして、そけっとの占いで見えたカイゼル・ファルベの持ち主について、二人に教えたのだが、

 

「聖王の系譜の魔力光ですか……。貴重な情報ですね。騎士カリムにも報告しておきましょう」

 

少しばかり驚いていたようだったが、占いと一笑に付したりせずに、真剣に耳を傾けてくれた。

 

「そういえば……、シグナムから聞きましたが、子供と遊ぶのが好きだとか」

 

確かに、あっちにいた頃はよくエリオの所に行ってたけど、それがどうしたんだろう?

 

「この先、時間がある時で構いませんので、教会系列の孤児院で子供達の遊び相手をして頂けませんか?」

 

「その程度なら……、本当に余裕がある時になりますが……」

 

それで、良いですよ。とニコニコ顔で了承してくれたシスター・シャッハであった。

散歩も終わり、めぐみんの家に戻ると、

 

「めぐみん、ちょっとこれを見てくれないか。ついさっき書きあがった 『紅魔族英雄伝』の外伝なんだけどね。ああ、外伝となっているのは、主人公が紅魔族ではないからなのだが」

 

「ほう、ではちょっと拝見します」

 

あるえが家を訪れていたらしく、出来上がった小説をめぐみんに見せていた。俺も横でその小説を読んでいったのだが……、

 

「……ど、どういう事だ!? これ……ほとんど……、俺の経験談じゃ……!?」

 

小説の内容は、俺がまだストレージを使ってた頃、または訓練校や武装隊時代などの内容をこちらの世界に合わせたような文章が記載されていた。はっきり言って恥ずかしいのを通り越して、泣きたくなってくる。

 

「ああこれかい? そちらの剣士さんから、色々聞かせて貰ってね。それはもう、面白い話しばかりだったから、『外伝』という形で主人公のモデルにされてもらったよ!」

 

即座に姐さんの方を向いて、問いただそうしたところ、

 

「そ、そうだったのか? お前の昔話を聞きたいと言うから、教えたのだが……」

 

まさか三日間寝ていただけでこうなるなんて、夢にも思わなかった。ど、どうしよう……。

 

「あるえ……、大人しく、その小説を渡してもらおうか……。でなければ、思わず泣き叫ぶほどの最終奥義が炸裂する!!!」

 

「ま、まさか……ゆんゆんにあれを教えたのは……」

 

恐怖に顔を歪めるあるえであった。ゆんゆんにやられた際の痛みを思い出したらしい。

 

「勿論、俺だ! 『バインドこめかみグリグリ地獄』のオリジナル……。ゆんゆんとは比べ物にならないからな……!!」

 

バインドの準備に取り掛かろうとした時だったが、

 

「まあ待て。その位許してやれ。そちらの方にも悪気があったわけではないだろう」

 

姐さんが俺を宥めようとして来たので、思わず。

 

「元はと言えば、姐さんが口を滑らせたせいじゃないですか!?」

 

文句を言っておきたいが、今回世話になった手前、そこまでする気にはならない。なので、

 

「あるえ、そこはな、名前をサトウカズマにして、神様からチートを授かった、俺TUEEEEで魔王軍を蹂躙する物語が良いと思う。間違っても俺にしないでくれ。そうしなかったら……分かるな?」

 

「整体師さん、私は不当な暴力に屈するわけにはいかない! 例えこの身が砕かれようとも……。あっ……! 今のセリフは良いかもしれない」

 

あるえよ……。この状況でそこまで言えるお前さんも、相当な人物だ。

 

「……いっそ、そうだったらどれだけ良かったか……」

 

カズマが小声で何かを呟いていたが、何の事だろう?

 

もう埒が明かないと思い、いっそ小説を破り捨てようとしたのだが、あるえがまるで部屋の隅で震えているウサギの様な、何とも言えない瞳になっていた。小説を破ろうにも破れずに、

 

「うわああああああ!!!」

 

叫び声を上げながら、家の外へ走り去ってしまった俺であった。

 

「……あ、あいつがガチで涙目になって、叫び声を上げるの……初めて見た……」

 

「あとで……迎えに行きましょう。この小説は良いと思うのですが……。恥ずかしいものなのでしょうか?」

 

「う、うむ。病み上がりでもあるし、また誰かに襲われないとも限らん」

 

その後、俺を迎えに来た三人の説得により、ようやくめぐみんの実家に戻れたのであった。

ちなみに、査察官殿はこめっこにも『思考探査』を行ったらしく、接触した四人は特徴を公開され、指名手配されたらしい。




めぐみんに提案した二つ名は、『スパイラル 〜推理の絆〜』の竹内 理緒のものです。
ウィズの方が似合いそうと言ったのは、中の人が同じだからです。



ちょこっとだけViVid Strike! ~孤児院に遊びに行った結果がこれだよ!~

その日、朝早く起きて、ランニングや素振りなどの稽古を行っていると、

「あっ……! パパ、おはよう!」

「おう、おはよう。ヴィヴィオもアインハルトも早いな」

軽く挨拶を済ませると、見慣れない人物が一人。吊り目でポニーテール、年はヴィヴィオより少し上くらいだろうか?

「そっちは……ノーヴェのとこの新人さんかな?」

「は、はい! フーカ・レヴェントンと申します!」

少しばかり、緊張している雰囲気のフーカであった。初対面だと、仕方ない部分があるので、

「じゃあ、お近づきの印って事で……。ホイっと……!」

拳を軽く握り、次に出てきたのは小さな花。宴会芸スキル『花鳥風月』の有効利用である。ちょっとばかり驚きながらも、笑顔になってくれたので良かったと思いながら、ヴィヴィオ達と話していたのだが……。

「ああっー! 孤児院に来てた芸人さんじゃ!」

突如フーカが何かを思い出したらしい。ってか芸人さん? 確かに数年前、孤児院に行った事はあるが……。
どうやら俺を芸人さんのボランティアだと勘違いしていたらしい。流石にがっくり来てしまい、

「は、はやては”八神司令”なのに……!? 俺だって警備部のチーフの一人なのに……。芸人さんなんて……」

近くの電柱に手を付いて、項垂れてしまっていた。そんな様子を見て、ヴィヴィオとアインハルトが色々、説明してくれたらしい。

「きょ、局員さんだったんですか!? す、すいませんでした! わしはてっきり……」

「会長が仰るには……”世界人口全部でケンカ強い順に並べたとしても、かなりの上位にくる方”だそうです……」

なおも落ち込む俺を見て三人とも、

「私の祝勝会でも見事な芸でしたし、いつも楽しませていただいてます!」

「そ、そうだよ! 六課の終身名誉宴会部長は伊達じゃないから! 一説だとパパの宴会芸は管理局でも右に出る人はいないって……」

「昔、リンネもそれはもう楽しんでましたから! わしだって見とれてしまいまして……」

『断空』のU-15チャンピオン、『神眼』のカウンターヒッター、数か月後に『神撃』に足を踏み入れ始めると言われる少女に慰められている、Sランク魔導師(24)という、異様な光景が展開されていたのであった。
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