この素晴らしい世界にリリカルな魔導師を!   作:ゴマフアザラシ

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これが最終章になるので、独自設定てんこ盛りになると思われます。


魔導師の帰還編
王女様からの手紙と魔道具店の繁盛


事の発端は、一通の手紙だった。ダスティネス家に届けられた王家の紋章と第一王女の名前が記された手紙。それは、第一王女との食事会の中で、カズマの活躍について聞いてみたいなどと言った内容であった。カズマ、アクア、めぐみんがそれに賛成している中、ダクネスだけは、

 

「こんなものは辞退しよう! 第一王女のアイリス様に何かあれば首が飛ぶ。礼儀作法なんて知らないだろう? そんな堅苦しいのは嫌だろう? な? 辞退しよう?」

 

貴族であるが故か、このメンバーの誰かが無礼を働いて問題になる事を懸念している様だった。

 

「お前も賛成だよな?」

 

カズマがさり気に俺の方を向いて、自分の意見に賛同するように促してきたが。

 

「俺はダクネスに賛成。というか、これはお前が一番嫌いな厄介事の類だ。無礼もそうだし、それこそ権力で好き放題やるような人なら、気分次第でどうとでもされる。市中引き回しの上、打ち首獄門とか」

 

「いや、待て! 流石にそこまで理不尽ではない! 権力で好き放題というのはありえん。と、ところで……、市中引き回しと打ち首は想像できるが、ゴクモンとはなんだ?」

 

「落とした首を晒される事だけど」

 

普通に答えてしまったが、言っちゃいけない事だったと後悔してしまった。

 

「く、首を落とされて……、その上、死して辱められるとは……! くっ……!」

 

その場面を想像して火照っている変態は、どうにかならないだろうか……。

 

「……ユウって、意外に文科系みたいに見える時があるんですけど。図書館にもちょくちょく行ってるでしょ? 獄門の意味なんて、よく知ってるわね」

 

「……俺みたいな文学少年捕まえて、何言ってんだ?」

 

ため息交じりでそう言うと、その場のメンバーと、稽古終わりで屋敷で休んでいたゆんゆんまで、微妙な表情で、

 

「お前(ユウ)(ユウさん)みたいな文系がいるか(いません)(いないわよ)!?」

 

とてもとても失礼な発言をしやがりましたよ。

 

「お前はどう考えたって体育会系じゃねーか!」

 

いやまあ……。カズマの言う通り、所属してるの所のイメージでそう思うのも無理ないが……。

 

「裁判の時だって、法律本読み漁ってたし、歴史書とか読むのも結構好きだし、スクロールの作り方だって本読んで覚えたし。……どうだ? どっからどう見ても文系だろ?」

 

「……魔法と剣と格闘ができる文系は、文系とは言いませんよ!? まだ私やゆんゆんの方が文系ではないですか!」

 

そんなん言われたって……。めぐみんは爆裂系だと思うが……。

 

「……今、おかしな事を考えませんでしたか?」

 

「気のせいだ。大体、元の場所じゃ、資料探すのも大変だった時期があったし。今でも大変な区画もあるけど」

 

「何だ? 図書の数が膨大な図書館だったのか?」

 

ダクネスも王女様の会食の件を忘れてしまったのか、俺の話の方が気になっているようだ。

 

「……それもあるけど、古い友人がそこで司書長やってるんだが、昔、整理の手伝いしたりしてな。そこの図書館ってのが……、下手なダンジョンよりダンジョンしてるんだよ、これが」

 

「「「「……へっ!?」」」」

 

まーた変な事言いだしたよ……こいつ、みたいな顔を全員にされてしまった。

 

「未整理区画の本棚の奥から迷宮が出てきたり、書物防衛のゴーレムとか霊体が跋扈(ばっこ)していたりと――」

 

「それ図書館じゃないですよね!? ダンジョンそのものですよね!?」

 

「驚くのは分からなくは無いけど。まあ、そんなのだから、本一冊探すにも戦闘能力が必須でな。なんせ、何が起こるかわからない場所だし」

 

ゆんゆんも表情が硬くなって、俺を見ている。ありえないものとして映っているのかもしれない。司書の資格取ろうかな? フリーパスはあるが……。

 

「でだ……、その会食の件はどうするんだ? さっき言った通り、俺は遠慮したい。偉い人の相手とか疲れるし」

 

ダクネスが俺を見て困った顔をしている。これに関しては、俺と同意見のはずだが……。

 

「……そ、そのだな。落ち着いて聞いてくれ。お前には別件で、会いたがっている人物がいるのだ。それがその……、アイリス様の側近なのだが……」

 

「……はあ。バツが悪そうだけど、俺が断るのはマズいって事か? 別件ってのは?」

 

「う、うむ……。それがだな――」

 

ダクネスの説明では、王女様はカズマの冒険譚を聞きに、その側近とやらは、最近王都に出回り始めたスクロールの製作者を探しているらしかった。その製作者ってのは俺なわけで、どういう経緯かは分からないが、それがその人の耳に入ったらしい。

 

「……特注で何か造れとか?」

 

「……いや。王都では定期的に魔王軍が攻めてきているのは知っているな? だが最近、被害が眼に見えて減っているそうだ。その原因というのが、お前がバニルに卸した雷誘導スクロールのおかげらしい」

 

バニル曰く、凶悪さが滲み出た対軍仕様でトラップ型のスクロール。それ単体では然したる効果は無く、天候操作や雷の魔法が無ければ、ただの紙切れになってしまうものである。

 

……フェイトやエリオの魔力だと、どうなるか試してみたい。まあそれはいい。

 

「被害が減ってるなら、良かったな。それで用件は?」

 

「お前が魔王軍との戦いに貢献しているという事で……、感状を送りたいと……。その会食の場で、アイリス様から……」

 

そういう事か。定期的に攻められている状況じゃ、人的、物的被害は勿論、参加した冒険者への報酬なんかを考えると、それこそ莫大な金額が動いているはず。予算なんてのは限られているし、あのスクロールでその辺がかなり改善されたのかもしれない。

 

「……つまり、ダクネス……というかララティーナとしては、会食は避けたいが、その表彰はして貰わなきゃマズいと?」

 

「う、うむ。おい! 今、しれっとララティーナと呼んだか? それは止めろ! 今度呼んだら、私の鍛錬の結晶である握力が牙をむくぞ!!」

 

「一応、貴族としてのダクネスに確認を取ったつもりだったけど……。分かったよ、ららぴん」

 

「あだ名も止めろおおおおお!!」

 

ダクネスがあだ名を呼ばれて、羞恥心に悶えながら叫び声をあげている一方で、

 

「……ダクネス、アイツは表彰されるのに、俺達が立ち会えないなんて……、そんな理不尽ありえないよな?」

 

「そうよ! そんなおめでたい席なら、私の宴会芸で盛り上げなきゃ!」

 

「宴会芸はともかく、今まで苦楽を共にしてきたのですから、私達も列席すべきです!!」

 

カズマ達は鬼気迫る表情で、表彰を口実とした会食をダクネスへと迫っていた。

 

「……マズったな。そんな大事な話なら、後でこっそり教えてくれれば良かったのに。もう引っ込みが付かなくなるぞ」

 

「……うう。分かった! 頼むから無礼は働かないでくれ! 私にできる事なら何でもするから!」

 

 

 

 

その翌日、王女様との会食を一週間後に控えていたが、

 

「それじゃあ、王女様一行が来るまでの一週間。色々と家事を頼むな」

 

今、ダクネスは俗に言うメイドさんの格好をしている。しかもどう考えても丈の短い服である。絶対にわざとだな、カズマめ。

ダクネスがこんな格好しているのは、王女様に無礼を働かない条件として、カズマがやらせているのだ。

 

「では、何をしようか。とりあえず、カズマのズボンの股間部分にお茶でもこぼして、それを慌てながら拭けばいいのか?」

 

……ダクネスはメイドを何だと思っているのだろう? つい、口を開いてしまい、

 

「おいカズマ! メイドさんがそんな丈の短いメイド服なわけないだろう! それじゃあ似非メイドだ! メイドの名を語った別の何かだ!!」

 

「お、お前……いきなり何を……!?」

 

カズマが俺の発言に少々引き気味になってはいたが、今度はダクネスの方を向き、

 

「ダクネス! そんなのをわざとやるメイドなんて、いるわけないだろうが! それともアレか? ダスティネス家のメイド採用基準はドジっ娘なのか?」

 

「そんなわけあるか! 当家を何だと思っているのだ!?」

 

「お前を見てると、そうとしか思えねーんだよ! ファリンさんしか採用されないのか? お前の実家は!」

 

聞きなれない人名を不思議に思ったらしいカズマが、首を傾げながら、

 

「ファリンさんて……誰だ?」

 

「友達ん家のおっちょこちょいなメイドさんだけど……」

 

「ド、ドジっ娘メイドが……実在してるだと……!? 架空の存在じゃなかったのか……!?」

 

羨ましい者を見るような感じで、自分も会ってみたいといった表情をしていた。

 

「……これ以上、場を混乱させないで下さい! 収集がつかなくなる前に行きますよ」

 

「行くってどこに?」

 

「決まってます! 一日一爆裂です!!」

 

 

 

 

 

半ば無理やりめぐみんに引っ張られた俺は、ゆんゆんも同行する形で爆裂へと赴いていた。そこはアクセルから遠く離れたとある岩場。めぐみんの爆裂は威力が大きすぎて、この位離れないと轟音と衝撃波でアクセルに被害が出てしまう。

 

「『エクスプロージョン』ッ!!!」

 

もはや厄災レベル、戦略兵器とも言える魔法へと変貌してしまった爆裂であった。一撃の威力だけならば、間違いなくこの世界最強だろう。以前、これを見たウォルバクさんもあり得ないものを見ていた様な感じで、冷や汗をかいていた。

 

「おーい。生きてるか―?」

 

「見くびらないでもらいましょうか……。少し休めば歩くくらいはできます。ですが、できればおんぶを……」

 

「あーはいはい。ヨイショ……っと」

 

爆裂後で魔力を使い果たしためぐみんをおんぶして、とある場所に向かっている途中、

 

「……理不尽だ。俺は正しいメイドさんを示そうとしただけなのに、追い出されたみたいじゃないか……。めぐみんにだって、あんな丈の短いの着せなかったろ?」

 

「お遊びでやってるのに、真面目に指摘したら、引かれるに決まってます!」

 

「男には譲ってはいけない一線ってのが存在するんだ。こないだ、めぐみんに最終奥義を使った時の様に……!」

 

背中におぶさっている少女はため息をつきながら、

 

「格好良い事を言ってますが、どうでも良いですよね!? 絶対に使い方が間違ってます!!」

 

俺の発言を真っ向から否定していた。そして、

 

「ユウさん……、最近の言動で驚かされる事ばかりです……」

 

半ば、うつむいて残念な人間を見ている様なゆんゆんであった。

 

「大体、こないだグリグリやった時だって、あの言い分だと妻子がいるのに、めぐみんに手を出した最低野郎になるだろうが。里で変な噂が広がってなきゃ良いけど……」

 

「お、思い出させないで下さい!! あっ……あれは確かに地獄でした……。下らない奥義と言ってしまって、すいませんでした……」

 

ようやく理解したらしい。アレを喰らった人間は皆、一様に同じ事を言ってしまう。それだけ恐ろしい最終奥義なのだ。ちなみに最初の犠牲者はヴィータで、十歳の時のケンカの最中にやっている。あの生意気な顔が涙目になっていたのは……、俺がイジメてる様に見られてしまって、説教喰らってしまったが。

ふと背中のめぐみんと、横を歩いているゆんゆんに目を向けると、

 

――あなたの人を遠ざけてしまう部分は、少なくともその方々を大切に思っているからですよ。ですので、そこからは目を逸らさない下さい。

 

昏睡状態から目覚めた後に、言われた事を思い出してしまった。

 

「……いつの間にか、増えちまったもんだなあ……」

 

思いがけなく呟いてしまった。魔法を覚えてから、これまでを振り返ると大切だと思える人達が、普段考えているよりもずっと多い事に気付かされてしまう。それを見たゆんゆんが。

 

「どうしました? 遠い目をしてます」

 

「んー。いや、二人もそうだけど、みんなにはシルビアの時、色々心配かけちまったと思ってな。ほんと、もうちょっとやり方もあったろうに」

 

「結局、シルビアを倒せたのですから、良いではないですか」

 

まあ、そうなんだけどな。アレに関しては、カズマがライフルについての記述を見つけてきたのが大きいし、それが無かったら、リミットブレイク使う決心も付かなかった。その後のめぐみんの爆裂がなきゃ詰んでいた可能性だってある。アクアの魔力を貰ってなかったら、動けなかったし、ダクネスに関しては文字通り体を張って守ってくれた。

 

「世話になりっぱなしだったなあ……」

 

「今日は一段と殊勝ですね。あの小説の生意気な子が大人になると、こんなのになるのですか」

 

小説ってのは、あるえの書いた『紅魔族英雄伝』の外伝だよな。これは放ってはおけない。

 

「忘れろ。あんなのは、はっきり言えば、子供の頃おねしょしたって言われてる様なもんだ。俺からすれば、恥ずかしすぎるんだよ!」

 

「恥ずかしがる事はありませんよ? 格好良いではないですか。周りに比べて力は劣りますが、少しずつ成長していっている姿は、中々です。私のお気に入りのセリフは――」

 

「それ以上言うな! っていうか、紅魔族(めぐみん)に格好良いとか言われると、微妙な気分になるんだけど……」

 

「なにおう! せっかく褒めたというのに、そんな態度を取りますか!? でしたら、こうしてくれます!」

 

おんぶされたまま、肩を思いっ切り握ってきためぐみんであった。意外に握力が強いらしく、メキメキ音を立てている気がする。

 

「最近、爆裂娘じゃなくて暴力娘になってきてるよな? ゆんゆんもそう思うだろ?」

 

「めぐみんは……昔からこうですから……」

 

つまり、暴力娘がランクアップして爆裂娘になってしまったと。そんなこんなで、目的地に到着すると、丁度目的の野郎が外で掃除をしていたので、めぐみんを下ろしソイツに向かって……、

 

「『ゴッドブロー』ッッ!!!」

 

魔力付与のパンチ、俺のはゼスタさん曰くゴッドブローらしいので、それを目標の遥か彼方を打ち抜くイメージで繰り出す。拳が光って唸り、奴を倒せと輝き叫んではいたが……。

 

「華麗に脱皮! フハハハハハ! 残念! 貴様の行動など、とうの昔に見通しておったわ。昏睡魔道士よ」

 

ちっ……! 外したか。まあいい。

 

「あっれー? 紅魔族の展望台の名前をパクった見通す悪魔(笑)のバニルさんじゃないですか。こめっこちゃんの危機知ってた癖して、ちゃんと喋らなかったり……。ああ、そうか! (笑)だから、全部見通せなかったんですね? 怒りから、ついゴッドブローが滑っちゃいました。てへっ」

(訳:俺の周りで下らねえ真似したら、承知しないって言ったよな? 良いから仮面の二、三十は黙って割らせろ!)

 

「それは勘違いというものだ。展望台はネタ種族が吾輩の名を使っているに過ぎず。そして吾輩は全てを見通していたとも。しかし小僧、どこぞのチンピラプリーストに似てきおったな? アレの真似事だけは、止めておくのが吉と出ておるぞ」

 

そんな俺達の会話を見ていた紅魔族の二人は……、

 

「……ユウさん、私とシルビアの間に割って入った時は、あんなに凛々しかったのに……」

 

「限界突破でシルビアに致命的なダメージを与え、こめっこを助けるために、倒れるまで無茶した男と同一人物とは思えません……」

 

シルビア戦、そして先ほどの会話との落差についていけなかったのだろう。微妙な表情で俺を見つめていた。

 

「して、何用だ? 貴様のパーティーの昼夜逆転しておる小僧も来ているが」

 

「……新商品が出来たから、値踏みを頼む」

 

そうして、ウィズ魔道具店の中に入ると、そこにはバニルの言った通りカズマ達もおり、冬の間に開発した商品について、お披露目を行っていたようだ。ここの世界ではライターは、相当便利であるらしく、その場の全員が称賛していた。その一方で、

 

「風の魔法を武器に纏わせるか……、悪くない。こちらは、ウインド・カーテンの範囲を狭めて盾替わりとして使うアレンジか。小手にでも仕込んでおけば、便利であるな。少し待っていろ」

 

バニルが奥に引っ込んで行って、カズマ達と雑談していたのだが、

 

「いつも商品を考えていただいて、ありがとうございます! これでカズマさんの便利アイテムも売れたら、お店も赤字にならないかもしれません」

 

……っていうか、俺のスクロールって結構な価値だったよな? カズマの億単位には届かないだろうけど、それで赤字が減らない経営ってどうなんだよ?

 

「……表情で大体分かるけど、それは言わない方が良いわ。あなたのスクロール……雷誘導だけど、天候操作を補助する護符とセットで売り出して、王都で在庫切れになる位らしいけど、お金が入った傍から変なアイテムを仕入れて来ちゃうのよ」

 

俺の様子を察したウォルバクさんが丁寧に解説してくれた。

 

あのスクロールが一番の安値だったはずなのに、そんなのやってるあたり、それも見通してやがったか!? ボロ儲けじゃねえか。

 

すると、商品の値踏みが済んだバニルが現れたので、

 

「おい、てめえ! 随分と嘗めた真似してくれたな? 使い手を選ぶから、安値だったんじゃねーのか?」

 

「フハハハハ! 貴様もよく使う手ではないか? 全てを語らず、説得力を持たせるなど珍しくはあるまい、キワモノ魔法を使うキワモノ魔道士よ」

 

今度はキワモノかよ!? ここは、抑えないと……! それともう一つあった。

 

「……バニル、コイツなんだが……」

 

ある物をバニルに見せると、ヤツにしてはよそよそしく、俺を店の隅に呼び寄せ、

 

「……小僧、これをどこで手に入れた? スキルアップポーションなど……」

 

「こないだまで、紅魔の里で休養してたからな。あんまり暇だったんで、作り方教えてもらったんだ。材料はアクセルじゃ手に入りづらいから、この店で取り寄せて貰って、製品にするのもありだと思ったんだが……」

 

「……それは止めろ! あの店主に見せれば、 ”これは良いものです! 私の店で全て引き取ります!”……と言って、駆け出しの街では売れもしない高価なポーションを買い取り、赤字を生んでしまうのでな。吾輩にこっそり渡すか、そうでなければ貴様のパーティーの小僧にでも売るがいい。あの小僧であれば、それこそ大手を振って使用するであろう」

 

……な、なるほど、良いものが必ずしも売れるわけではないという例だ。

 

「……天然って……時に恐ろしい事をしでかすよな……」

 

「うむ、貴様にも経験があろう。例えば年齢一桁台の時に、金髪の小娘が男湯に突撃――」

 

思い出したくない事を口走っているバニルに、思わず拳を握ってアッパーカットを仕掛けようとしたが、当たり前の様に、体を土くれにされて無効化されてしまう。このままでは腹の虫が収まらないので、

 

「あっ、そうだ! ”ここ”って大豆が逃げ回るから高価なんだよな? だったら俺の伝手で味噌と醤油を大量発注して、この店で売ったらどうだ? ついでに店名も『ウィズ味噌醤油店』にすれば良い」

 

「おお! それは妙案であるな! ならばそれと共に、未成熟な大豆(枝豆)も持ってくるが良い! クリムゾンビアに合う珍味と評判である。フハハハハハ!!」

 

嫌味言ってるってのに、ダメージにならないのも困りこんだ。俺とバニルのお互いに牽制し合いながらのピリピリした会話を見ていた面々であった。

 

「良いの? このままだとあなたの店、魔道具店ですらなくなるわよ?」

 

特に、この店の従業員であるウォルバクさんは、ウィズに対し心配そうに語り掛けていた。

 

「二人共やめてください! 喧嘩はダメですよ!!」

 

ウィズが俺達の間に割って入り、引き離していた。何とか俺も落ち着いて、テーブルでお茶を飲んでいると、

 

「話を聞いてると、あなたも無茶苦茶ね? 魔法が効かない兵器を魔法で斬っちゃうなんて……。お伽噺の勇者もたった一人で魔王を倒したって言うけど」

 

「ウォルバクさん、その言い分だと俺が常識知らずみたいに聞こえるのでやめてください。って……その話だと、魔王って倒されているのか?」

 

俺の一言に、カズマ以外の全員が驚いた表情をしていた。

 

「……知らないのですか? 有名な昔話ですよ。たった一人で魔王を倒して、その後に魔王になった少年の話です」

 

めぐみんが丁寧に解説してくれたが、どうも解せない。

 

「……なんで、ソイツは魔王になったんだ? そんな必要ない筈なのに」

 

静まり返る店内であった。その中にあって、ウォルバクさんが口を開いたが、

 

「あなた……本当に何者? それは――」

 

その言葉を遮ったのは、今は魔王軍幹部ですらないバニルであり、

 

「知りたければ、魔王軍幹部にでもなれば良い。空席はある故、貴様ならば魔王も嫌とは言うまい。そのキワモノ魔法であれば、今の魔王城の結界ならば斬り裂けるであろう。かつての店主の様にな」

 

何だろう? 幹部じゃないと知りえない何かがあるのだろうか?

 

この話題はするなと言った雰囲気の幹部二人と元幹部一人。店内も話しづらい雰囲気となってしまったので、それに関しては、ここで終わる事とした。

 

 

 

 

後日、新商品売り出しに合わせて様子を見に、またしてもウィズ魔道具店に足を運んでいたが、今までにない人だかりができていた。アクアが宴会芸で客を取っていまい、図らずとも営業妨害をしてしまっていたが。

 

「笑いが止まらんとはまさにこの事! 見ろ、まだ閉店までかなりあるにも拘わらず、今日の分が尽きそうだ、改めて礼を言うぞ!」

 

ライターにおまけの仮面、そして冒険者はスクロールと今日一日でどれだけの売り上げが見込めるか……、バニルの言う通り、素人目で見ても笑いが止まらない程だろう。俺達の取り分、特にカズマに関しては金額も多いので、時間が掛かるとの事で、なぜか量産型バニル仮面を貰ったのだが、俺がそれに触れた瞬間。

 

「……壊れたけど、不良品か、これ?」

 

「小僧……? 貴様……!」

 

バニルが何かを察したような感じだったが、何だったんだろう?

 

「さて、この場にいるとアクアが営業妨害を始めそうだから、退散するか。帰りにまた爆裂でも……」

 

めぐみんがバニルと何かを話していたようだった。人だかりで内容までは聞こえていなかったが。

 

 

 

 

「あの小僧の視界に入らぬ間に、チラチラ様子を窺っている姿は見ていて鬱陶しいので、さっさと大人にしてもらうなり、暗がりに連れ込むなりするがいい。何せあの小僧、今まで無意識に棚上げにしていた分、親愛と情愛の区別がついておらん」

 

「い、いい、いきなり何を言うのですか!? 悪魔の言う事に翻弄されるつもりはありませんよ!?」

 

突然のバニルから気になっている事を言われて、傍目から見ても動揺している爆裂娘であった。

 

「……目覚めた小僧を見て、抱き着きたかったにも拘らず、おかしな二つ名を付けられて斬りかかり、看病の間にちゃっかり添い寝をしていたネタ種族よ。それは吾輩にとってはどうでも良いが、そうしなければ貴様には勝ち目は無かろう。何せ、小僧の郷里には理想のタイプとやらに近い金髪の少女がいるのでな」

 

その時の会話を思い出したらしい、めぐみんは爆裂魔法の詠唱を――

 

 

 

 

「何やってんだ! 爆裂は決まった場所の決まった時間って、いつも言ってるだろ!」

 

「と、止めないで下さい! この悪魔は……!」

 

何言われたかは分からないが、どうせおちょくられてしまったのだろう。

 

「だったらその内、コイツを爆裂すればいい。めぐみんは爆裂撃ててレベル上げ、俺は普段の溜飲が下がる、バニルは破滅願望が叶えられる。誰も損しないからな」

 

いまだ納得していないめぐみんを半ば引きずる形で、店を後にしたのであった。




結局、めぐみんはこうなってしまった。けど、イチャイチャはあまり無いかもしれない……。
ミッド勢だと、リリカルでやれになっちゃうし。
しかし、うちの主人公も残念部分を前に押し出すと、ほんとに残念だw

おまけは、バニルさんの言ってた男湯突撃です。フェイトさんについては勝手な想像です。

~A′s編 男の子は辛いよ~

その日、珍しくカズマと銭湯で湯に浸かっていたのだが、

「なあ……、お前ってさ、あの人達と風呂入った事あるのか? 子供の頃からの知り合いなんだろ?」

何でそんなのを、と思ったが言わないと、それはそれで質問攻めに遭いそうだったので。

「なのはは、まあ……、兄妹みたいなもんだから、4、5歳辺りだったら普通にな」

ここは姉弟ではなく兄妹、ここ重要。なになに? 妹にアッパーカット喰らって空中一回転した情けない兄になる? それでも譲れんのだよ。

「はやては……真夏にみんなして、偶然出払ってる時に、風呂入りたいって駄々こねられて……。当時アイツは車椅子だったから、介助だよな」

カズマの俺を見る目が、お前はギャルゲーの主人公か!? といった感じだったが、我慢はしているらしい。

「……フェイトさんは?」

「…………」

「何で目を逸らす?」

これは聞かないで欲しい。というか、あまり思い出したくないのだが……。

「言え! ここは男しかいないからな。心配するなって!」

渋々ながら、その状況を説明することになった。


あれは、みんなで海鳴のスーパー銭湯に行った時の事だ。思えばフェイトの元の家――テスタロッサ家での生活を考えると、ありえない話じゃ無かった。
身だしなみについては、噂の山猫の使い魔さんやアルフ辺りが気を使っていたのだろうが、如何せんテスタロッサ家は女所帯。
特に羞恥心に関して、感覚が知識に追い付いてなかったのだろうな。と今になって納得している。その結果が……、

「悠、一人でしょ? クロノもユーノも今日はいないし、仲間外れみたいだから一緒に入ろう」

「ここ、男湯だから! 男性用だから!!」

バスタオル一枚巻いて、髪を下ろしたフェイトさんが男湯に突撃しやがりました。当の本人は、頭に無数の?マークを浮かべながら、

「11歳以下なら女の子も入って良いって。一緒に行こう」

※海鳴ではこれが公式です。

その後、子供用の露店風呂に入ったものの、なんだかんだでフェイトに引っ張られて、女湯に行く破目になってしまったのであった。ていうか、女湯のみんな、ちょっとは気にして欲しかったです。小学生組はともかく、姐さんやシャマル先生も一緒だったので、目のやり場に困ってしまったのであった。
(そして、機動六課の海鳴出張にてキャロが歴史を繰り返す。)



「ってな事があって――」

「てめええええ! 羨ましすぎるだろうがああああああ!!!」

突然、大声を上げて掴みかかるカズマであった。

「こっちは針の筵だったんだよ! そんなに羨ましいってんなら、今すぐ女湯に投げ込んでやらあああああ!!!」

銭湯で俺とカズマの喧嘩が木霊し、周りのお客さんに注意を受けるのに、そう時間はかからなかった。
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