この素晴らしい世界にリリカルな魔導師を! 作:ゴマフアザラシ
王女様との食事会を明日に控えて、各々――ダクネス以外はワクワクしているかもしれないが、俺はというと、
「……めぐみんかゆんゆんに頼みたい事があるんだが」
「珍しいですね? 私に頼み事とは」
「私でも良いんですか?」
二人共、不思議そうな顔で俺の方を向き、何事かといった雰囲気だったので、意を決して、
「俺の代わりに表彰されてくれないか?」
その一言と共に、全員が揃っていた居間がシンと静まり返り、
「今更、何を言っているのだ! お前はああああああ!!」
「痛いよう、ダクネス。その握力、リンゴくらいなら握り潰せるんじゃないかな? 肩が痛いからマジで止めて!」
カズマの要請でメイド服を着ているダクネスが、俺へと掴みかかり大声を上げていた。
「お前なあ……。ダクネスが怒るのも無理ねーぞ」
「どうしたのよ? おめでたい話じゃない」
カズマとアクアでさえ呆れていたようだった。無理も無いだろう。
「あまり、顔が売れるのもよろしくないだろ。俺はいつまでも、ここにいるわけじゃないし。ゆんゆんにスクロール製作叩き込んでも良いかなって。それにめぐみんにだって表彰される資格はあると思う」
俺以外の全員が首を傾げていた。スクロール製作を教えようかと考えているゆんゆんはともかく、めぐみんはなぜといったところだろう。
「何せ……、めぐみんは俺の師匠だからな。師匠を差し置いて表彰されるなんて、とてもとても……」
「言ってる意味が分からん」
カズマが即座にツッコんでいたが、理由を説明する。
「めぐみんは俺の爆裂の師匠だからな。俺の爆裂魔法のスキルはめぐみんから学んだものだ。そんな爆裂魔法が使えない俺よりも、めぐみんの方が相応しいと思う」
「わ、私は……いつの間にか、ユウの師匠になっていたのですか!?」
「ああ! そうだ! めぐみん師匠!! ついでにゆんゆんは俺の教え子みたいなもんだから、孫弟子だ! あのスクロールは、めぐみんの実家に伝わる秘伝って事にしてだな」
ワナワナと震えながら驚愕の事実を知ってしまった様なめぐみんに対し、ゆんゆんは、
「違うから! 私とめぐみんはライバルだからね!!」
慌てながら必死に否定していたのであった。まあ、その理屈で言えば、一番上はウォルバクさんなんだけど。
「というわけで――」
「そんな理屈、通るわけが無いだろう!!!」
両腕で掴みかかり、グラグラと揺られてしまったのであった。
「そこは、ダスティネス卿の権力と筋力でうまく調整してさ」
「権力はともかく、筋力は関係ないだろう!!」
「もしかしたら、その素晴らしい筋力に免じて許してくれるかもしれない」
「そんなわけあるかああああああ!!!」
やっぱり、口車ではどうにもならないか。仮面でも被って謎の魔道具職人にでもなろうかな?
「分かった。せめて仮面被るくらいは良いだろ?」
「ダメに決まってるだろう!!」
だよね。いっそ、賞状だけ送ってくれれば良かったんだが。
「ただ、スクロール製作は誰かに教えておきたいと思ってる。ノウハウはあった方が良いだろ? 買えば済むけど、自分で造った方が安上がりだし。ゆんゆんとめぐ……、カズマとか」
「おい! 今、私の名前を言いかけて、カズマにした理由を教えてもらいましょうか!」
ここはスルーして欲しかったなあ、めぐみんよ。
「……人には、向き不向きってのが存在するんだ。難しい事は考えず、めぐみんはもうそのまま突っ走れば良いと思う」
「つまり、私では魔道具製作は不向きだと!」
「だって、ボンッとなるし。……気分転換に少し歩いてこようかな」
そうして街の外に向かおうとしたところ、
「私も行きましょう。まだ今日は爆裂を撃っていませんし、さっきの話の続きをしましょうか……」
めぐみんも付いて来ることになってしまった。街の外の爆裂場所へと着き、
「いい加減、機嫌を直して欲しい。別にボンッとなるのは仕方ないし、今更魔力制御を覚えるのも難しいだろ?」
「だったらお父さんと同じ事をするとか、やりようはあるでしょう!!」
「そうだけど、結局造れても、その日は爆裂撃てなくなるんじゃないか?」
少しいじけた様な感じでムッとしていた。その後、日課の爆裂を撃ち、めぐみんをおんぶしていると、
「……一度聞いてみたかった事があります。聞いていいですか?」
「小説の内容以外なら。それ聞いたらスリープで眠らせる」
背中の少女は少し苦笑しながら、
「ユウは私の爆裂を一度だって使えないと言った事はありませんでした。最初に見せた時も、”魔法を使って一撃離脱なら結果は出せる”と。それに、私の爆裂ならこれから先、誰にも負けないくらいになると言ってくれました。なぜですか?」
「最初の時は、言った通りだな。どんなのでもやり方次第ってだけ。次のは、俺もそうだったからかな」
「ユウも……ですか?」
めぐみんが困ったような感じだったが、続けて、
「小説読んだなら知ってるだろうけど、はっきり言って周りに比べたら、劣ってるどころの話じゃなかった。それでも……、そんな俺でも信じてくれた人達がいた。だったら、出来る限りでも応えなきゃダメだろ? それに……」
「それに?」
「めぐみんだって爆裂覚えるのに、相当頑張っただろ? 理由があるって言っても、スキルポイント50ポイントも使って、その上毎日爆裂撃ってるんだ。そこまで努力してるヤツなら信じて当然ってな」
そこまで聞いためぐみんが、腕にギューっと力を入れて、まるでしがみ付いているような感じになっていた。
「……まあ、ベルディアの城に黙って撃ってたのと、デストロイヤー偵察の時は、結構頭に来てたけどなあ……!」
「そ、それはすいませんでした! 今でも、悪かったと思ってますから!!」
今となっては良い思い出かなあ……? そういえばベルディアも俺を魔王軍に誘ってたっけ。人間でも良いとか結構適当だよな、魔王軍も。すると今度は、
「……あの、やっぱり……元の国に帰るのですか?」
「そりゃあ……。命令次第だろうけど、いつまでも、ここにってわけにはいかないだろうな」
「そうですか……、もし……、行かないでと言えば、残ってくれますか?」
後半は消え入りそうな声で聞き取れず、すぐにめぐみんは眠ってしまった。
そして次の日、ダスティネス邸にて、食事会用の服装に着替えた俺達ではあったが、
「……しかし、どうしてお前は、こう……タキシードとか妙に似合うんだ?」
「……そこら辺は、お嬢様ん家の人達とか、
元々、硬い職業ではあるのでそんなもんだと思う。隣の控室でアクアが腰のあたりがブカブカとか言ってる傍で、
「……何というか、ストンと落ちます。胸も腰も大きすぎます」
多分、ダクネスのドレスはめぐみんには大きすぎるのだろう。しかし、
「えっ!? 私は丁度良いけど……。痛いっ!? めぐみん止めて! 髪引っ張らないで!!」
ゆんゆんにはぴったり合うらしい。うん、多くは語るまい。疲れた様な表情のダクネスと、アクア、めぐみん、ゆんゆんがドレスに着替えた姿を見て、
「お疲れさんだな。今からそれだと、終わってから寝込むんじゃないか?」
「そうならない様に、気を付けてくれると助かる……」
いつもの悪いクセが出ていないダクネスってのも、新鮮だ。いつもこうならどれだけ助かる事か……。
「ねえ二人共、これだけの美女揃いなんだからちょっとくらい褒め称えて崇めてみたって、罰は当たらないわよ?」
「はいはい綺麗綺麗。そんな事よりもお姫様だ」
カズマは王女様の方が気になるらしい。
「宴会芸の神様と爆裂の神様とドMの神様と、……普通の人……だな?」
「私だけ普通の人!? 他は神様なのに!?」
ゆんゆんだけ、神様じゃ無かったので仲間外れにされたように感じたらしい。
「私は宴会芸じゃなくて、水の女神様!!」
「良いじゃないか。注文通り、神様って誉め称えて崇めてるし」
なんやかんやでパーティー用の会場に向かった俺達ではあったが、ダクネスが無礼を働かない様に釘を刺していた。その中に在ってめぐみんのみ、
「めぐみんに関しては……。今から身体検査をさせてもらうっ!」
「ままま、待ってくださいダクネス、なぜ私だけ!? 身体検査も何も、先ほど同じ部屋で着替えを……! 二人が……見てます……?」
目の前で身体検査というもみ合いを始めてしまった、ダクネスとめぐみんをカズマはガン見していたが、俺は……、
「早く終わらせろよ? 王女様とやらを待たせるのもマズいだろ」
努めて冷静に、ダクネスに早く終わらせるように促していた。
「お前……何でそんなに冷静なんだ?」
「この手のスルースキルは鍛えられてる。
早くしてくれないかなーなどと考えながら、一応視線を外していると、
「とっとと調べれば良いでしょう! ええ! 確かに隠していますとも! これで良いですか!!」
めぐみんがプンスカ怒りながら、モンスター除けの煙玉と、開けると爆発するポーションを胸元から取り出し、ダクネスに手渡していた。
そして、晩餐用の広間に入ると、そこには使用人が数人控え、テーブルの奥には純白のドレスを着た少女が座っていた。いかにもお姫様といった風貌である。その横にはお付きだろうが、おそらくは黒いドレスの魔法使いと白いスーツの戦士系の女性の姿もあった。
ダクネスから挨拶を促されるとアクアから……、
「アークプリーストを務めております。アクアと申します。どうかお見知り置きを。……では、挨拶代わりの一芸披露を……」
いち早く会食の危機を察したダクネスがアクアの腕を掴み、制止させていた。その後のめぐみんもスカートの中に隠していた黒マントを肩に掛けて、派手な挨拶をしようとして、ゆんゆんに止められている。
ダクネスが俺の方を向いて、とりあえず場を繋いでくれと、アイコンタクトで訴えていたので、
「お初にお目に掛かります。アークウィザード、アサマユウと申します。この度は、お招きいただきありがとうございます」
俺の名前を聞いて王女様が隣の白スーツの女性に耳打ちし、
「あなたが王都で噂になっている魔道具の製作者ですね。最近、魔王軍の王都襲撃による被害が減っていると聞きます。此度はその褒美を渡すための場でもあります。……そう仰せだ」
あー、うん。まあこんなもんだろうな。王族ってのはこうなんだろう。ダクネスが色々と特殊すぎるんだ。怒らせちゃいけないよな。昔のベルカの王様は拳一つで無双した人もいるって言うし。もしかしたら、この王女様もそんなんできたりして……。
「噂では魔法だけではなく、剣も扱えると聞き及んでいますが本当ですか? ……と仰せだ」
「魔法も剣も少々嗜む程度です。私の友人には敵いませんので」
俺とお付きの白スーツさんを介した王女様との会話を聞いていた面々は、
(ねえ、ユウさんたら少々って言った!? 絶対間違ってるわよ!)
(まあ待て。あの程度、
(つまりはユウの真似をすれば良いのですね? 任せてください!)
後ろの方で、ヒソヒソコソコソと何かを言っている。続けてめぐみんが、
「我が名はめぐみん! 最強魔法、爆裂魔法を少々嗜むも――」
そこまで言いかけて、俺の背中に隠れる様にしてダクネスに口を塞がれたのであった。
俺、ダクネス、ゆんゆんが目を合わせると、
(ここはマンツーマンで抑えるぞ! ゆんゆんはめぐみん、ダクネスはアクア、カズマは大丈夫だと思うから、そこは臨機応変に)
お互い、目だけで意思疎通が可能になるくらい切迫してしまっていたらしい。すると、今度はカズマが。
「チェンジ」
お前もかあああああ!!
「少し失礼します。すぐに戻って参りますので」
内心ビクビクしながらも、笑顔を取り繕ってカズマを広間の隅に引っ張って行き、
「何やってんだ? おかしな事言うと、後でグリグリするぞ? 下手な事したら、街にいられなくなるかもしれないってのに」
「なんだありゃ!? 『わたくし外の世界に憧れておりますの! 是非ともあなた様の冒険譚を聞かせてくださいまし』みたいのを期待してたのに、何が会食したいだ」
どんだけ幻想抱いてたんだよ!? お前ってやつは……。
何とかカズマを説得して、その場に戻ると表彰が始まった。
「此度の貴殿のベルゼルグへの貢献に対し、王室より感状並びに一級技工士達による杖を贈ります」
白スーツさんから感状と杖を受け取って下がったものの、ダクネスに耳打ちし、
「なあ、この杖ってさ。人にあげたり、売ったりしちゃまずい奴だよな?」
「当然だ。そんなのが知れたらどうなるか想像つくだろう?」
そりゃそうだ。戦ってる最中に壊れたならともかく、譲渡とか売却なんて知れた日には、王室の顔に泥を塗りかねない。っていうか、杖は間に合ってるんですけど……。ぴよぴよ丸の鞘入れれば、計4本になるよ。
今日一日分の疲労が一気に降り注いでしまった様な感覚に襲われたが、まだ会食が残っている。全員が席に着き、
「あなたが、魔剣の勇者ミツルギの話していた人ね? さあ聞かせて、あなたの話を、と仰せだ」
カズマはシルビアとの戦いについてを語っていたが、俺がやった事については意図的に伏せてもらっていた。理由は、『抜剣』の事を知られて、見てみたいなどと言われても困るからだったりする。まだ未完成の上、魔力刃を構築しようにも、この場では無理だからだ。
そして、普段どんな生活をしているのかといった話題になると、カズマ曰く、昼間は英気を養い、夜になると人知れず街を巡回しているなどと話していた。まあ、間違ってはいないな……うん。
アクアやめぐみんが色々とツッコんではいたが、白スーツさんは今度は俺の方を向き、
「あなたはどのような生活を。と仰せだ」
俺の方は忘れていて欲しかったなあ……。と思いつつ、
「朝早くに起床し、基礎的な訓練、その後同居人の朝食を作り、昼間はこちらのゆんゆんの稽古。それが終わると夕飯の買い出しに出向いて、住み家に戻ると夕食作り……。というのが基本的なスケジュールでしょうか……」
「……ねえユウさんて、主夫?」
「……私も手伝う時はありますが……、手際が良すぎて……」
ツッコむなら当番表の通りにやってください。特にアクア。
その後、歓談も一通り終わり、これで一安心かと思われたが、白スーツさんが一言。
「まさかお二人共、魔剣の勇者ミツルギ殿に勝った事があるとは……。無礼ですが冒険者カードを拝見させていただけないでしょうか。後学のために参考にさせて頂ければ……」
「俺は構いませんが、あまり参考にならないかもしれませんよ?」
「それはなぜでしょうか?」
もう興味津々といった様子の白スーツさんであった。
「俺の場合、魔剣を警戒して相手の攻撃が届かない場所で魔法を撃ちましたから。もし相手の間合いで戦っていたら、どうなっていたか分かりません。そちらの方々も魔法使いと戦士系だとは思いますが、それぞれ御自分の得意な距離はありますよね? お二人が戦った場合、状況によって勝敗も変わる筈ですよ」
「な、なるほど……。確かに、私では参考にならないかもしれませんね」
「まあ、ミツルギの間合いの外でしたので、卑怯と言われても仕方ありませんが」
こんな所だろう。王都で活躍しているミツルギの名前も貶めずに、うまく収めるには。
(……最初、空飛んだり、魔法陣を足場にしたりで、楽して勝とうとしてたわよね?)
(純粋な剣の腕はどの程度でしょうか? ソードマスターになれるのは知っていますが……)
(そういえば、稽古でちゅんちゅん丸を使っているのは見た事があるが……。剣技自体の比べ合いというのは、知らないな)
なーんか隣の連中がまたヒソヒソ話してるよ。
今度はカズマの方にその話が行ったが、最弱職という事で冒険者カードを見せるのを拒否していたが、段々話が大きくなり、仕舞にはカズマへ嘘吐き男などといった罵倒が飛び交う始末。めぐみんが怒りに任せてダクネスの三つ編みを引っ張っていたが、ケンカを仕掛けずに我慢している様だった。
「よく我慢したな? 今回は、何かあったらお兄さんに任せなさい」
「私一人だったら我慢なんてしませんが、ここで暴れたらダクネスが困るじゃないですか。それと、子供じゃないんですから、頭を撫でないで下さい」
子供扱いされたのが気に障ったんだろう。顔を赤くしながらそっぽを向いて怒っているような感じだ。
その場のダクネスが、立ち上がり王女様に頭を下げ、
「……先程の嘘吐き男という言葉を取り消していただけませんか? この男は大げさに言ったものの、嘘は申しておりません。それに、最弱職ではありますが、いざという時には誰よりも頼りになる男です」
ダクネスの言葉にいきり立つ白スーツさんであったが、そんな中、王女様が、
「……謝りません。嘘ではないと言うのなら、そこの男にどうやってミツルギ様に勝ったのかを説明させなさい。それができないと言うのなら、その男は弱くて口だけの嘘ッ!?」
王女様が無言のダクネスに頬を引っ叩かれて、その言葉が遮られてしまっていた。それに激昂した白スーツさんが剣を――
「あっ! ダッ、ダメ……! えっ!?」
切羽詰まった声の王女様は、一瞬で安堵の表情に変わっていた。
「なっ……!?」
「失礼。せっかく頂いた杖を、この様に使うのは本意ではありませんでしたが……。罰ならば受けますので、どうかご容赦を」
白スーツさんは身動きが取れず、それ以外の全員も固まっていた。それもそのはず、白スーツさんの首元には、さっき貰ったばかりの杖の先端部分が突き付けられていた。杖を剣のように使っただけだが、もし剣なら刃が首元にあるのと同じ状態である。
「……嘘。全然見えなかったんですけど……」
ポカンとしている中、一人呟いていたアクアであったが、俺は杖を引き、
「ダクネスなら腕を落とされることは無いだろうが。まっ、刃傷沙汰はな」
そのまま、王女様の方を向き。
「王女様。先ほどカズマを嘘吐き男と仰いましたが、俺自身、この場で一番戦いたくないのはカズマですよ。この場の誰よりも厄介な人間です。職業、スキルや数値で測れないものもあるのですよ」
一度、ダスティネス邸で戦った事があるが、あの時はハンデありとはいえギリギリ勝てたみたいなもんだった。幸運の高さからなるスティールや狙撃、そしてドレインタッチ。それを効果的に使う運用。どれをとっても厄介だった。
「……よし分かった。ここまで仲間が庇ってくれて教えないわけにもいかないだろ――」
「まあ、待てって。王女様、先ほどの罰の代わりとして、冒険譚ではありませんが、俺の昔話などどうですか?」
喧嘩を売ろうとしていたカズマを制止し、王女様の方に向き直り、席に着く。昔話――その響きに惹かれたらしい。全員が興味津々といった感じで再び席に着いていた。
「あれは……魔法の訓練校に通っていた頃ですが、俺の友人達はそれはもう優秀で三ヶ月の短期コースでの卒業だったんです。その直前、そこの学長と友人の二人が模擬戦をする事になったのですが、それに俺も参加しまして、結局は2対2になりました……」
さっき、白スーツさんに剣を振らせなかったのが効いているのかもしれない。全員無言で聞き入っている。
「ランク……では分かりづらいと思いますので、そうですね……。その友人達は二人共レベル50、学長はレベル40、俺は15といったところでしょうか」
まあ、一概に測れはしないだろうが、前に俺の冒険者カードのステータスが伸びていないのを、アクアに見てもらった時の見立てだとこんなもんだろう。
「ねえ、あの娘達って、その時に今のユウと同じくらいの強さって事だけど、天然チート? ありえないんですけど!」
「10歳でレベル50とかありえねー!? まだアイツの方が可愛げあるじゃねーか」
アクアとカズマがなにやら話している。どんなのかは大体想像つくが。王女様に続けて、
「それで、どちらが勝ったと思いますか?」
「えっ!? それはその……レベル50の二人組の方じゃ……」
王女様の答えに対して首を横に振り、
「勝ったのは俺と学長の方でした。俺の方は……まあ、学長の指示に従っていた部分が大きいのですが」
先程までなら、俺も嘘吐き男と罵られるだろうが、王女様は感心したように耳を傾けていた。
「負けた二人組も、そこまでやられるとは考えてなかったと思います。その時に、学長が二人に言ったのは……」
――あなた達は本当に強いわ。その年でAAAランク。魔力量も運用技術も、もう十分に一線級。だけど残念、たかがAAランクとBランクの私達すら倒せない。
きっと、物心ついた時から強かったあなた達だからこそ、忘れないでいて欲しい。強さの意味。今日ここで、こんなに弱い私達に負けた理由……。
――さて、じゃあ問題です。
「……分からん」
「ど、どういう事でしょう?」
「さっぱりね」
「う、うーむ……」
「えーっと?」
カズマ達が会食中にも関わらず、首を捻っていた。それは王女様一行も同じようで、3人とも困った顔をしている。
「……とまあ、俺の話はこれで終わりですが、どうでしたか?」
困った顔をしている王女様に代わって、白スーツさんが、
「その言葉を信じるなら、あなたは低レベルでも強力なスキルを持つ者と渡り合えるという事になるが、証明できますか?」
証明しろか……、だったら。
「ゆんゆん、済まん。冒険者カード見せてもらっていいか?」
「あっ!? はい!」
そうして、俺とゆんゆんの冒険者カードを見比べる白スーツさんであった。
「あなたは彼女に稽古をつけていると言いましたね? 初級魔法と中級魔法しか使えないあなたが、紅魔族で上級魔法を使う彼女に教えていると?」
「まあ、そうですね。なんだったら、今からお見せしましょうか?」
それにゆんゆんがビクッと反応していた。これからやるんですか? 本気ですか? 私、王女様の前で叩きのめされるんですか!? といった感じだ。
「……いえ、結構です。先ほどの剣技、見事でした。確かに冒険者カードに現れない部分を蔑ろにしていたようです」
深く頭を下げてくれたので、騒動に関してはこれで終わりという事で良いだろう。するとカズマが、
「おい、さっきのはどういう意味だ? 『自分より強い相手に勝つためには、自分の方が相手より強くないといけない』って。まるっきり言葉遊びじゃねーか!」
「カズマだったら分かると思うけどな。やってるのは、その通りだし」
頭上に盛大に?マークを散らせてるカズマであった。それは他も同じようで、会食を終えた広間がそのまま謎解き会場と化している様だった。
「これに関しては。『この言葉の矛盾と意味をよく考えて答えなさい』ってのがあると良いかな」
「余計分からん」
謎解きに関しては屋敷でゆっくりやってもらうとして、王女様達を見送らないとな。
すると王女様がカズマに向かって、
「嘘つきだなんて言ってごめんなさい。……また冒険話を聞かせてくれますか?」
「喜んで!」
あちらも和解できた様で一安心。後は見送るだけとなっていたのだが、
「それじゃあ、王女様。またいつの日か、俺の冒険話をお聞かせに参りますので」
そして、魔法使いのお姉さんが詠唱を終えると、白スーツさんだけが転送され、今度は……、
「何を言っているの?」
王女様は俺とカズマの手を取り、お姉さんがテレポートを発動させると、目の前には大きな城。白スーツさんが驚く中、
「また私に、冒険話をしてくれるって言ったじゃない。そちらの方の問題も解いていませんので、こちらに来ていただきました」
やられたな。これは……。
どうやら、また一悶着ありそうだ。
ちなみに問題の答えは、
自分より総合力で強い相手に勝つには、自分が持っている相手より強い部分で戦う。
だそうです。
チームとしてそれぞれが強い部分を持ち寄れば、より万全に近くなる。ってのもありました。
これってそのまま、このすばメンバーに当て嵌ってて面白いと思いました。