この素晴らしい世界にリリカルな魔導師を!   作:ゴマフアザラシ

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王城での日々

「「「お帰りなさいませアイリス様!」」」

 

もう住人が眠りについてもおかしくはない時間帯だというのに、多くの侍女たちが王女様を出迎えていた。俺とカズマが案内された城の上部にある豪奢な部屋。そこに着くと白スーツさんは報告があると言って、残されたのは俺とカズマの他には、王女様と魔法使いのお姉さんとなっていた。

 

「失礼。これはどういったつもりでしょうか? 城に連行される覚えはありませんが」

 

これに関してはカズマも同じ意見らしい。それについて、お姉さんに説明を求めると、

 

「連行ではありません。客人としてお招きしたのです」

 

魔法使いのお姉さん――レインさんの説明では、王族であるが故に身分が釣り合い、年の近い遊び相手もいないので、しばらく王女様の遊び相手を務めて欲しいと言っていた。

 

「それって、カズマだけですよね? 俺はさっきの問題についての答えを教えろとかですか?」

 

それを言うと、王女様は何やらレインさんに耳打ちし、

 

「それについては自分で解きますので、あなたのお話も聞かせて欲しいです。との事です」

 

ただ教えてもらうのは、プライドが許さないのだろうか。というか、自分の話とか恥ずかしすぎるので遠慮したい。

カズマの方は、さっきのでほとんどの冒険話を話し尽したらしい。今回に関しては、王女様が自分を叩いたダクネスへの軽い仕返しを兼ねているという事だったので、カズマもダクネスの話をしようと思い付いたらしい。カズマがレインさんにしばらく城に滞在するので、その連絡をアクセルの方にもして欲しいとお願いしていた。

ダクネスの話に俺も参加して欲しそうだったので……。

 

「そうですね……。俺はダクネスに対して、あだ名を色々と考えてはいるのですが、どれも気に入って貰えずに困っているのですよ」

 

「あだ名……ですか?」

 

「ええ。王女様……、いえアイリスはララティーナと呼んではいますが、俺達がそれを呼ぶと恥ずかしがるので、親しみやすくできないものかと思いまして……」

 

カズマはダクネスについて何かを思いついたらしかったが、何故か俺の方を向いて冷や汗をかきながら顔が青くなっていた。もしかしたら、今日の疲労が噴き出して来たのかもしれない。

 

「ララちゃんから始まり、ららちーな、ららぴょん、ららっちぃ、ららみょん。そして、ららぽん。一番最近では、ららぴんと。ここまで考えているのですが、どれも気に入ってもらえず……」

 

「何でそこまでするのですか?」

 

「それは、仲間だからですよ。気兼ねなく呼び合うには、この様なものも必要です」

 

それを聞いたカズマは……。

 

「……お前、絶対楽しんでやってるだろ? イタズラっ子気質だし」

 

「いやだなあ……! 誤解だって。めぐみんにだって二つ名付けようとしたろ?」

 

「『爆裂ロリータ』って提案して、斬りつけられそうになってて何言ってんだ?」

 

ぴったりだと思うんだけどなあ……。まあ、ロリっ娘って呼ばれて落ち込んでた頃よりは、打ち解けたって事かな?

 

「ですので、時と場合は弁えなければなりませんが、護衛のお二人にも、あだ名を付けても良いかも知れないですね」

 

それを聞いてうーんと腕を組みながら、悩んでいるアイリスであった。ちなみに名前呼びに関しては、本人の希望であるが、流石に丁寧語は崩さないようにしている。

すると、色々と手続きを終えた白スーツさんが入室して、

 

「失礼します。アイリス様、色々と手続きを済ませてまいりました。これでお二人は正式な客人となりましたので、気兼ねなく城に滞在して頂ければ……」

 

そう、白スーツさんがアイリスに報告をしている、その途中で、

 

「ご苦労様です、くれみい。何かありましたら呼びますので、下がりなさい」

 

「……アイリス様。今何と仰いました?」

 

「えっ!? クレアは常日頃、私の護衛を務めていますし、少しだけあだ名を考えたのですが……」

 

「貴様らっ! アイリス様に何を吹き込んだ!?」

 

俺達が何かしたと思ったらしいクレアさんが、激昂して睨みつけている。

 

「ちょっと落ち着いてください。俺としてはダクネスにしている事を、アイリスにもしたらどうだと提案しただけですよ」

 

「貴様……! 恐れ多くもアイリス様を呼び捨てにするとは……! 王女様と呼べ!」

 

だってー、本人が良いって言ってるしー。別に良いだろうと思う。

 

「心配でしたら、クレアさんも参加されませんか? 護衛でしょうし」

 

「クレア様と呼べ! 私はお二人が懇意にしているダスティネス家にすら並ぶ、シンフォニア家の長女クレア。アイリス様の護衛にして……」

 

うん、インパクトが足りない。紅魔族式名乗りに慣れてしまったのだろか? どうせだったら、マントか何かをはためかせてほしいもんだ。

 

「お前……何遠い目をしてるんだ?」

 

「いや……。慣れって怖いなって……」

 

その後、カズマと俺がダスティネス邸で戦った時の話やいつもゆんゆんにどんな稽古をつけているかなど……、これに関してはクレアさんの方が興味があったらしく、耳を傾けていた。

 

「あなたは魔法使いに格闘を教えているのか?」

 

「まあ、魔法戦の補助程度ですが。ライト・オブ・セイバーは斬れ味は鋭いですが、当たらなきゃ意味ないですし。ついでに言うと、強い魔法に頼りっぱなしも良くはないですから」

 

などといった話の他には、

 

「訓練校ですか……。それは、学業もですけど、文字通り魔法の訓練の方がメインですよね」

 

この世界にも魔法学院があるってのはリーンから聞いた事はあるが、義務教育は無いらしい。それを考えれば紅魔族てのは、知能が高いのか、はたまたその教育のせいで中二が量産されているのか微妙なところである。

 

「お前……ってか、お前らって、あの二人とお前とこないだ教官で来てた人で、最年少やんちゃっ子4人組って呼ばれてたらしいよな」

 

「それ、いまだに納得いかない! どうして俺がアイツらと同列にされてるんだ!? 俺みたいな大人しいのを、やんちゃなんて……」

 

「年上数人にケンカ売られて、一人で返り討ちにしたのは、大人しいとは言わねー。許可取って模擬戦したっていってもな」

 

これだから、昔の事を知られるのはイヤだったんだ。カズマまであの小説読んでるんだろうか……。

 

もう真夜中といった時刻なので、そろそろ眠るかといった話になってはいたのだが、

 

『魔王軍襲撃警報! 魔王軍襲撃警報! 騎士団はすぐさま出撃! 冒険者の皆様は、街の治安維持のため、街の中へのモンスター侵入を警戒してください。高レベルの冒険者の皆様はご協力ください!』

 

剣を携えたクレアさんに連れられて、俺も戦況を確認するために城の外に出た。

 

「騎士団は下がってますね。どうして……?」

 

「見ればわかる。降って来たか……」

 

最初はポツポツと降り始めていた雨だったが、次第に豪雨と言って良い規模へと変わり、次に魔王軍の前線に降り注いだのは雷であった。

その雷で敵軍の前線はあえなく崩壊。後方に待機していた騎士団で残党との戦闘となり、いきなり出鼻をくじかれたのが大きかったのか、魔王軍は敗走を余儀なくされていた。

 

「冒険者の出番、あまり無かったですね……」

 

「ああ。最初はあのスクロールの効果を疑問視する声はあったが、結果はこの通りだ。ある程度のレベルの魔法使いは必要ではあるが、強力な力を持つ個人ではなく、それ以外の者でも使えるので、全体的な戦力向上につながっている」

 

「ミツルギみたいなのばっかりじゃないですしね。全体で見れば、個人の力で出来る事なんて限られますし」

 

「そうだな。あれほどの力と魔剣を持っているのは、ほんの一握りだ。その点、あなたの造った物は革新的と言って良い」

 

どこでも似たような問題は抱えてるもんだな。俺らで言う所の本局と地上部隊みたいなもんだ。

 

クレアさんと雑談しながら、アイリスの部屋へと戻ると、

 

「陽動に引っかかり、単身で残されたユウは相手の出方を窺いながら、どうにか突破口を開こうとしていたんだ。魔力も少なく、左腕も負傷。そんな中で独白が始まり……。『あいつらなら、この状況でもどうにかできるんだろうな……。ほんと、いつも思う……。なんで、俺じゃなかったんだ……ってさ。あれだけ恵まれた魔力と才能なんて。けどな……』そして、意を決したユウは――」

 

「人の過去ばらしてんじゃねええええええ!!!」

 

思わず大声を上げてしまったのであった。カズマが俺の昔話をアイリスに話していたのだ。

 

「良いじゃないか。めぐみんから見せてもらったけど、あの小説売れると思うぞ。俺としては、お前にもそんな頃があったってだけでも安心するけどな」

 

「やっぱりあの時、破り捨てれば良かった……」

 

「それを出来ないのがお前の甘さだ。俺だったら、即座に破り捨てる!」

 

その後、どんな修羅場になっていたか想像したくない。あるえは下手すれば泣き崩れ、俺は周囲から責められ散々な目に遭ってたかもしれない。

カズマにもその話をしない様に釘を刺し、明日には街に返してもらえるといった旨の発言がアイリスからあったのだが、

 

「お二人は、何だか昔の頃のお兄様みたいです。私には実の兄がいますが、王族は兄妹同士でも、ある程度の年月が経つとよそよそしくなってしまうものなんです」

 

「今、なんて?」

 

カズマが何やら気になったようで、聞き返していた。

 

「俺達が何みたいだって……?」

 

カズマの言葉に対しアイリスが、

 

「お、お兄様みたいです」

 

「できれば砕けた感じで、もう一度……」

 

その一言に応える様に、

 

「お兄ちゃんみたい」

 

ガッツポーズで興奮するカズマであったが、目を瞑って無言であった俺が気になったらしい。

 

「おーい。俺はここに残る! お前は明日の朝にアクセルに戻って事情の説明を……」

 

カズマの言葉は全く耳に入らず、俺の脳内では。

 

お兄ちゃんお兄ちゃん、お兄ちゃん、お兄ちゃんお兄ちゃん

 

その単語のみが、ひたすらリピート再生されていたのであった。

 

「カズマ、俺も残る。何、これも仕事の一環だ。この城の古書とか見せていただきたいのですが、よろしいですか?」

 

「えっ!? ええ……。構いませんが……」

 

確かにこれは仕事も兼ねているが、適当に理由を付けて残りたくなってしまったのであった。俺達がここに残る事をダクネス達に伝えて欲しいとレインさんにお願いして、しばらく城に滞在する事になったのであった。

 

そこから数日間は、カズマは引き続きアイリスの遊び相手。俺はというと、

 

「ユウ様、この城の書庫はあまり整理されておらず、探しづらいとは思いますが……」

 

「構いませんよ。そういうのは得意ですから。ついでに整理もやっておきます」

 

「御客人にその様な事をさせてしまい、申し訳ありません」

 

伏し目がちに頭を下げるレインさんではあったが、そこは気にしないで欲しいものだ。この国の歴史だの逸話だのそんなのを探しなら書庫の整理をしていたのであった。そこには、

 

『ベルゼルグ建国記』、『勇者と魔王の戦いの歴史』、『神器研究』、『魔道技術大国ノイズ、終焉まで』、『冒険者カードの開発の経緯』などといった興味をそそられる内容であろう古書がいくつも見つかった。最も、これを見せてもらう代わりに書庫の整理を請け負ってしまったので、それを進めていると、

 

『アクシズ教教義の変移』、『幸運の女神の肖像』なんてのも見つけてしまった。アクシズ教の方は、ゆっくり見るとして、”幸運の女神”ってのはエリス教の御神体のはず。その本をパラパラと捲ると、

 

「……今と随分違うな」

 

慈愛に満ちた様な表情については女神様なので、そうなっているのは納得できるが、この古書の肖像画は現在と全然違う部分があった。それは……、

 

「胸が小さいな……。エリス教会の彫像とか肖像画は結構大きいけど……」

 

そういえば……アクアやアクシズ教徒がエリスの胸はパッド入りとか言ってたけど……まさかな。もしかして、この肖像画自体、アクシズ教徒が書いた可能性だって……。そう思い、作者の名前を見ると、

 

『ダスティネス――』

 

……ダクネスの先祖か親戚だろうか? それ以上はすすけて読めなくなっているので、ちゃんとした名前は分からないが。確かあの家は先祖代々敬虔なエリス教徒とかって言ってた気が……。

 

これに関してはここまでにしておこう。時間を食わない様にして書庫の整理をするようにはしたが、王城の書庫だけあって、相当な広さを誇り一日では終わらない。そして夕方になったので、割り当てられた部屋へと戻ると。

 

「ユウお兄様。お帰りなさいませ。お仕事お疲れ様です」

 

こっ……これはヤバい。アイリスの”お兄様”の一言で疲れが吹っ飛ぶ気がする。これでお腹いっぱいになるな。

 

「ただいま。カズマは……何でふてくされてんだ?」

 

二人が座っているテーブルを見ると、ボードゲームが一つ。どうやらアイリスに惨敗していじけてしまってたようだ。

 

「……まっ、元気出せ」

 

「……バトンタッチ」

 

どうやら俺にやれと言っているらしい。日も沈んだし、一局だけになったのだが……。

 

「……王手」

 

「……え、えげつねえ……」

 

思わず、カズマがそう呟いてしまった。いつかのめぐみんとの勝負の時のように、王がまともに動けない様に包囲させてもらった。

 

「や、やりすぎた……かな?」

 

「いいえ! もう一局! もう一局だけお願いします! 次は勝って見せますから!!」

 

「いや……ほら、今日はもう遅いし、また今度な。もしかしたらカズマだって、慣れてくればいい勝負できるようになるかもしれないし」

 

少し頬っぺたを膨らませながら、いじけている顔も可愛いもんだ。これが萌えってやつか。

 

 

 

 

 

 

その数日後の早朝。カズマの部屋から殺気立った声とカズマの大声が聞こえて来たので、

 

「どうしたんだ? ……すいません。お邪魔しました」

 

「お前もだ! レイン殿から連絡は受けていたが、何日も城に滞在してどういうつもりだ!?」

 

カズマを組み伏せているダクネスとオロオロしているアイリス。そして、それを呆れた様な目で見ているアクア達であった。すぐさま立ち去ろうとはしたのだが、引き留めれられてしまう。

 

「まあまあ、そんなに殺気立っても仕方ないだろ? ここは紅茶でも飲んで落ち着いて……」

 

「たわけ! 貴様もだ! まさかカズマのように城で遊び呆けていたのではあるまいな!!」

 

どうやら俺まであらぬ疑いをかけられてしまったらしい。

 

「俺はここの古書探しながら、書庫の整理をやってたんだ。よく言うだろ? ”働かざる者、食うべからず”って」

 

「俺だってアイリスの遊び相手役に就任したんだ! 安泰な俺の人生の邪魔すんな!」

 

カズマよ、遊び相手だけじゃ、一生安泰とは言えないと思うけどなあ……。

 

「良かったじゃないの。カズマはともかく、ユウはちゃんと仕事のために残ったみたいだし」

 

「そ、そうですね! 確かに、王城ともなれば珍しい本もありますし、仕事なら仕方ありませんよね!」

 

もしかして、俺ってそんなに信用させてなかった? などど、アクアとゆんゆんの言葉を聞いて思ってしまった。

ため息をつきながらめぐみんが、

 

「まあ、事情は分かりました。ですが、そろそろ帰ってきてください。カズマのようにお兄様などど呼ばれて調子に乗ったわけでは……。おい、何で目を逸らす?」

 

「そいつだって、それにつられて残ったようなもんだ! お兄様って呼ばれてる時、顔が緩みすぎてるからな!」

 

カズマの野郎、俺を道連れにする気か!?

 

「これには深い事情があるんだ。よく聞いてくれ」

 

その一言で、周囲の視線が一斉に俺へと集まる。

 

「始まりはキャロが来た時に、ダストに親バカって呼ばれたのだった……」

 

「……呼ばれるだろ。お前、あの子を手放したく無いって口走って……」

 

カズマが即座にツッコみを入れたが、構わず続ける。

 

「そして、エリオがギルドで大泣きした時に、アクアが単身赴任のお父さんなんて言ったのが、そのままアクセルに広まり……」

 

「だって、お父さんそのものじゃない。一緒に遊んだり、ご飯の準備したり、同じベッドで眠ったり……」

 

アクアよ。それはお兄さんでもできる事だ。

 

「極めつけは、魔道具造ってる姿が自分のお父さんみたいなんて、めぐみんにまで言われてしまって……」

 

「あ、あれは……工房で魔道具を造っていたので、そう見えてしまっただけです! 実年齢はちゃんと分かっていますとも!」

 

だがしかし、あれには結構傷付いた。

 

「そんな事で、城に残っていたのか? 仕事はしていたようだから、大目にはみてやる。もう帰るぞ」

 

「そんな事って言ったな!? だったら2歳違いの俺がダクネスを”おかん”って呼んだらどう思うよ!?」

 

それにダクネスが一瞬固まり。

 

「ダクネスおかん、ララティーナお母様、母ちゃーん!」

 

金髪で貴族で硬くて、おかん……。誰かに似てるって? そんな未来の話は知らないなあ……。はっはっは!

 

「おかんって呼ぶなああああああ!!」

 

「ほら、そうなる。俺は悪くない」

 

アクア達がポカンとした表情をしていたが、いち早く、我に返ったらしいめぐみんが、

 

「……良いから帰りますよ? ロリコンに目覚めるのは嫌と言っていたのですから、そうしてください」

 

「ロリコンはダメだけど、シスコンなら良いかなって思い始めてる」

 

空気に亀裂が入ったような……、そんな音が聞こえた気がした。

 

「この男、最低です! 私にはあんな……! ゆんゆん……一度シメましょう! 協力してください!」

 

「そうだね……。最近、言動がおかしくなる時があるから、目を覚まさせよう!!」

 

めぐみんとゆんゆんは俺を相手に戦う気でいるらしい。てか、ここ屋内だけど……。

 

「二人共下がりなさい。あの子……、基礎ステータスも近接も凄いから。私がお仕置きしてあげるわ!」

 

どうやらアクアが相手する気でいるらしい。ならば仕方ない。

 

「アクアで俺が止められるとでも? お兄様呼びの話はともかく、必要な本はまだ全部読んでないんだ。邪魔はさせん」

 

「いいから、ごめんなさいを言いなさいな。それだけで許してあげるわ。言っておきますけど、この中でステータスが一番高いのは私よ? ユウのゴッドブローだって、私には敵わないわ!」

 

アクアはもう勝った気でいるらしい。確かにステータスの高さは知力と幸運以外はアクアに譲るが、負けるつもりはない。

 

「俺が手をこまねいているとでも? これを見ると良い」

 

拳に魔力を集めて打撃の準備に取り掛かるが、それを見たアクアが、

 

「ズルいわよ!? 何よそれ! 自分の魔力だけで勝負なさい! あの剣の時には全然及ばないけど、凄い魔力じゃない!!」

 

「知らねえなあ……。周辺魔力を使うのだって、俺の能力のうちだ。……で? 俺のゴッドブローがアクアには敵わないって? どうなのかなあ……?」

 

「あのね! 連絡はあったけど、みんな心配してたのよ! めぐみんを見なさいな。目の下に隈だって出来てるでしょ! 二人が帰ってくるのを夜遅くまで待ってたのよ!!」

 

チラッとめぐみんの方を向くと、確かにその通りだった。本人は隠してるつもりみたいだったが。

 

「……そっか、済まなかった。ちゃんと何をやるつもりかは連絡するべきだった。本当にごめんなさい」

 

集束を解除し、深々と頭を下げて謝罪すると、

 

「最初っから素直に謝りなさい。根が真面目な子だから、私はそこまで心配してなかったけど……」

 

アクアがヤレヤレといった感じで、俺を諌めていたのであった。そんな中、

 

「お願いですから、帰宅されるのは少し待っていただけませんか? 私、ユウお兄様の問題がまだ解けていないのです」

 

アイリスが会食の時の問題を引き合いに出して、俺達を引き留めようとしていた。

 

「ここ最近、カズマがアイリス相手にボードゲームでやってるの考えると、分かると思うけど……」

 

「軍事や戦闘の授業の際に、突拍子のない事を仕掛けてきたり、搦手を使ってきたり……と、おかしな影響を受けているとクレア殿から聞いたが?」

 

散々な言われようだ。王族は正々堂々と戦うなんてのを言ってたけど、ダクネスの言い分には少し思うところもあったので、

 

「正々堂々も良いけど、負けた時はそれを言い訳にはできねーぞ。搦手を使うって事は、搦手を知るって事でもあるんだから、長い目で見れば悪い事ばかりじゃない」

 

「お前はそれを容認すべきだと? しかしだな……」

 

「要は心構えの問題。相手がどんな手で来ても対応できる様にするのは無駄じゃないだろ? 搦手程度でアタフタしてたら、とんでもない目に遭うぞ」

 

一同、シンっと静まり返っていたが、カズマだけは。

 

「ああそうだ! 無意味な事をしていたわけじゃない! 信じてくれ!!」

 

ま、まあいいか……。ここは話をまとめた方が良いし。

 

「……私達も、あの問題は気になってはいましたから……。少しここに残っても良いでしょうか?」

 

めぐみんもそれについては気になっていたらしいので、そう提案していた。

 

「じゃあ、誰かと一戦交えてるのを見た方が早いかな。どうする?」

 

「でしたら、私では力不足でしょうか? これでもアイリス様の護衛も務めておりますし、魔法使い同士ですので、分かりやすいかと」

 

この中では比較的大人し目のレインさんが、俺の対戦相手を買って出ていた。

 

「良いだろう。では明日の朝食後、修練場で試合という事で双方いいな?」

 

クレアさんの提案に異論は無かったので、その場は解散となり、久々にみんなで一夜を過ごすことになったのであった。




みんなにお父さんって呼ばれたのが、ここで効いてしまった主人公でした。
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