この素晴らしい世界にリリカルな魔導師を!   作:ゴマフアザラシ

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アクアへの質問とこめっこ来訪

「……さて、カズマ。正直に答えて貰おうか……!」

 

アクセルの屋敷に戻って数日。各々が落ち着いたのを見計らって、俺はリビングでカズマに詰め寄っていた。

 

「い、いきなりなんだよ!? 何を答えろって……」

 

「お前……何で日本語が読めた? それに何で神器の効果について詳しく知ってる?」

 

「神器はクリスに聞いて……、それと……」

 

どことなくバツの悪そうなカズマであったが、そこに割って入ったのは、意外にもアクアであった。

 

「……そう、ちゃんと話さないといけないわね。私やカズマについて……」

 

いつもの好き放題やっている雰囲気はどこへやら、真剣な表情で俺を見ているアクアであった。それでただ事ではないと感じたのだろう。全員が俺達の近くに来て、耳を傾けていた。

 

「……けど、その前に、あなたの事をちゃんと聞かせてくれないかしら? 私はあなたをここに送ったりはしてないわ。それにユウのお友達だってそうよ?」

 

送り込んだってのは、何の事なんだか……。まあいい、信じるかどうかはみんな次第だ。嘘つき呼ばわりされるのも覚悟しないとな。

 

「……俺は、そうだな。みんなの認識で言うと、”異世界人”って事になる」

 

「いっ……異世界人!? 里の学校の図書室にも、その様な本はありましたが……本当に!?」

 

「お前……、またおかしな事を言って、はぐらかそうとしているのではあるまいな……?」

 

こうなったら、もう隠してても仕方ないし、事実をそのまま言ったのだが、めぐみん達は半信半疑のようだ。

確かに、いきなり異世界人なんて言ったって、こんな反応するのが普通だ。

 

「信じてもらうにはどうするか……。手っ取り早いのは、俺の住んでる世界に連れてく事だけど……」

 

「それはダメだ!!」

 

何故かは知らないが、カズマがそれを大声で止めていた。

 

「何がダメなんだ? 次元転送で何か困る事でもあるのか?」

 

カズマは世界間移動についても知ってるって事になる。コイツはもしかしたら……。そんな事を考えていると、

 

「その……もっと詳しく聞かせてくれませんか? 私はむしろしっくりきます。見た事の無い魔法に、聞いた事の無い話を沢山教えてもらいましたから」

 

ゆんゆんは普段から俺の魔法を見慣れているためか……特異性について、納得してはいる様だった。それでもまだ完全ではないだろうが。

 

「じゃあ……まずは次元世界について話そうか」

 

多分、難解な話なので半分も理解できないとは思うが、それでも丁寧に分かりやすく解説しているつもりではあった。

 

「――とまあ、色んな世界で平和維持をしてるのが、俺の所属している組織、『時空管理局』なわけだ。でもって俺らからすると、この世界は偶然見つかったので、現在色々調べてるって事」

 

予想通りというか……、一番理解を示していたゆんゆんでさえ、頭の上に?マークを浮かべている。それは全員同じようだった。

 

「そういったせ――」

 

「言っとくが、”設定”じゃない。これは純然たる事実だ」

 

めぐみんの言いたい事が何となく分かったので、そうツッコむと無言となってしまった。

 

「しかしだな……。いきなり信じろと言われても……」

 

ダクネスも真剣な表情ではあったが、やっぱり信じられないらしい。そんな中、

 

「ユ、ユウさん……!? 今、管理局って言った!? 時空管理局って言ったの!?」

 

アクアだけが、なぜか顔を青くして震えながら俺をジッと見ていた。その様子から、管理局を知っているようだが……。

 

「へえ……。アクアは知ってるんだ。その辺り、ちょっと”お話”聞かせてくれないかなあ……?」

 

アクアはヤバッってな感じの雰囲気を出していたが、すぐにカズマとリビングの隅でヒソヒソ話を始め、

 

「ねえ……ヤバいわよ! 管理局よ!? 世界間を移動する方法を広められたら、転生者に特典渡せなくなっちゃうわよ!?」

 

「それはもうエリス様から聞いた! お前の力でアイツを強制退去とかできないのかよ!?」

 

「出来るわけないでしょ!?」

 

二人共、まとまらない話を延々としている様だった。逃げるつもりはないみたいなので、それについてはゆっくり聞くとして、他の三人は……。

 

「つまり……、世界というのは沢山あって、ユウはその中の一つから来たという事で良いですか?」

 

まだ完全には信じてはいないらしいが、俺の話した内容については理解してくれためぐみんであった。

 

「まあ……そうなるな。今すぐ信じろってのは無理だろうけど……」

 

「では……元の国に帰るというのは……?」

 

「魔法で俺の元いた場所に戻るってだけだな。世界と世界の間でテレポートするみたいなもんか。ちょっとした申請は必要だけど、”ここ”へ遊びに来るくらいはできるかな」

 

仮にみんなを連れてったら……、よくある江戸時代の人が車を見て、”鉄の猪だー!”みたいな反応をするのだろうか? ……そ、それはそれで面白いかも知れない。まあ、遊牧民族っぽい暮らしをしてたアルザスのル・ルシエ出身のキャロだって、馴染んでるから結局は慣れなんだろうな。

 

「俺の方はこんなところだ。それでカズマ達は……?」

 

そして意を決したように、カズマとアクアが目を見合わせ、

 

「……私はカズマに無理やり連れて来られた、アクシズ教の御神体、水の女神アクアよ!!」

 

「人聞きの悪い事言ってんじゃねえええええ!!」

 

自分は偉大だと言わんばかりの勢いで胸を張り、改めて自己紹介するアクアと、婦女子誘拐犯的な扱いをされたカズマであった。それを聞いて思わず。

 

「……ふっ」

 

「ねえ、ユウさん。今、鼻で笑った!? 絶対信じて無いでしょ!?」

 

「悪い悪い。済まないが女神様? 話を続けてくれないかな?」

 

今にも泣きそうになっているアクアではあったが、今度はカズマが説明をしてくれた。俺の方だって突拍子のない話だから最後まで聞いてみよう。

転生者――日本で若くして亡くなった人間に特典、つまりは神器や能力を渡してこの世界に転生させていたのがアクアなのだそうだ。『勇者候補』なんて呼ばれてるのも転生者だとか……。

確かに、この世界は地球というより日本の文化が随所に見られるので、本当だとしたら辻褄は会うが……。

 

「じゃあ、俺から質問。アクアがもし本当に神様だってんなら、答えられるよな?」

 

それに泣きそうになっていたアクアではあったが、

 

「ユウさん、今、私の事、どんな風に思ってるの?」

 

「その話が本当だとして……、誘拐犯的な何か……かな?」

 

「そ……そんな!? 私、あんなに一生懸命仕事してたのに! ユウさんと初めて会った時だって、そのお仕事そっちのけで、相談に乗ってあげたでしょ!?」

 

何の事だかまったく覚えがない。 

 

※初めて会った時は、休憩時間の暇つぶしで相談に乗っていました。(駄女神様のお導き参照)

 

「……も、もしかして、私、取調室に連れて行かれて、かつ丼なの!? 私、かつ丼より親子丼がいいわ!」

 

何で刑事ドラマみたいな話題になってるんだ? そもそもそんなのは利益誘導になるので、やらないのだが。

 

色々ツッコミたい所はあるが、もしアクアが女神様だったら、これには答えられると思い、

 

「じゃあ、さっきの質問の続き」

 

それを言うとアクアはキョトンとした顔で俺の方を向き、

 

「……何で、ずっと昔に一度倒されてるはずの魔王がまた現れた? というか、魔王を倒したはずの勇者が何で魔王になった? 長い事生きてる神様なら、どうなのかは分かるんじゃないか……?」

 

「それは、私じゃなくて、エリスに言いなさいな。それともエリスより前の担当者かしら?」

 

よし、コイツは女神様(自称)で決定。

 

「……今の言い方だと、アクアさんが女神かどうかはともかく、長い年数生きてるのも不思議じゃないみたいな感じでしたけど……」

 

「だってアクアって、おっさんくさい時があるし、シルビアの象さん見た時も反応が淡白だったし、実年齢聞いたら、殴るって言うし」

 

ゆんゆんは不思議に思ったらしい。まあ、不死者的なのを見るのは初めてじゃないしな。そういった人ってだけかもしれない。

 

「浄化能力とか、莫大な魔力とか、カンストしてるステータスとかは!?」

 

「レアスキルと1000年に一人くらいの魔力と、知力と幸運を犠牲にして他が高いってだけかな?」

 

「なんでよおおおおおお!!」

 

結局、泣き出してしまったアクアであった。それよりも気になるのは。

 

「カズマ、お前の話が本当なら、一度死んで……蘇生は何回かされてるな。じゃなくて、その日本にいた佐藤和真と、ここのお前は本当に同一人物か?」

 

「言ってる意味が全く分からねー!」

 

大声を出して、お前なに言ってんだ? みたいな表情をされてしまった。

 

「クローンに記憶を映しても同一人物なんて造れないしな。どこかしらに違いが出てしまうんだよ。もしかしたら、お前は自分を佐藤和真と思い込んでいる別人かもしれない……」

 

「何それ怖い」

 

けどなあ……、これに関しては証明の仕様がないんだよなあ……。さっきの話が本当だとして、元のカズマはもう死んでるって事だし。

 

「当り前よ! 双子が同一人物じゃないみたいに、体が同じでも魂が違ってたら別人になるに決まってるじゃない。その辺は神様の力を侮らないで欲しいわ!」

 

「あーはいはい、凄いねー」

 

日本人(?)とミッドチルダ人ハーフと女神様(自称)の会話に全くついていけない他のメンツではあったが、

 

「ユウとしては、これからどうするつもりなのですか?」

 

めぐみんは、今までの話から俺がどうするか気になっていたようだった。

 

「……アクアとカズマってもしかして、世界間を渡れる? それを知ってたみたいだけど。俺としては、まずはそれを確認したい」

 

「「出来るわけねーだろ(ないでしょ)!!」」

 

これだと話し合いは平行線だ。とりあえず今、確実に分かってることは、

 

①カズマは日本語が読める。(もしかしたら日本人)

②この世界は日本の文化が何故か伝わっている。(アクアの言う通りなら転生者とやらの影響)

③アクアは多分、今までの様子からして長い間生きてる。

 

ってくらいか。何か……このままコイツラの近くにいたほうが、色々と判明しそうな気がして来たな。

 

「まあ、あんまりここには手出しはできないんだけどな。本来は」

 

「「「「今更、何言ってるんだ(ですか)!?」」」」

 

俺の一言に全員がツッコミを入れていた。

 

「今まで良いだけ魔王軍と戦ってきただろう? 手を出してはならないなどと……」

 

「俺としては、降りかかる火の粉を払っただけだけど。一回でも連中に自分からケンカ売った事はあったか?」

 

うーんと全員、今までを振り返り、

 

「……そ、そういえば、そうですね……。今まで戦ったのが魔王軍の幹部というだけで……、基本的に戦闘を避ける様に動いてましたし」

 

「ハンスの時も諦める様に言ってましたし、シルビアの時も話して撤退するように勧めてました……」

 

結果、紅魔の里が燃やされたりしてしまったのだが……。シルビアの時は……、ほんとに情緒不安定だったんだなあ……。

 

「ずーっと前にもミツルギに言ったけど、ここってどうして連中と戦ってるんだ? 言葉も通じるし……、いやまあ……異種族とか異民族とかって争いになりやすいのは、分かるんだけど」

 

「なぜ……と言われてもな。私が生まれた時からそうだった。皆もそうではないか?」

 

ダクネスの言葉にうんうんと頷く、めぐみんとゆんゆんであった。つまりは人間と魔王軍は敵対してて当然といった認識って事だ。

 

「それじゃあ、女神様(自称)は何か知ってるか?」

 

「(自称)って何よ!? 私がこの世界に転生者を送り出したのは……、上から指示のお仕事よ! 人間がいなくなったら困るでしょ!」

 

長寿っぽいから色々知ってるかと思ったけど、何にも知らないらしい。年齢と知識は比例しないんだなあ……。

 

 

 

 

とりあえず、これ以上新たな情報は出ないと思ったので、この話題は終了となったところで、玄関が開く音が聞こえたので、そちらに向かうと、

 

「あっ!? 兄ちゃんだ! 父ちゃん、母ちゃん、わたしはここに居ればいいの?」

 

屋敷の玄関にいたのは、こめっこと後二人、ひょいざぶろーさんとゆいゆいさんであった。

 

「おっ、お父さんとお母さんと……、こめっこまで!? 何で……?」

 

とりあえず三人をリビングへと通し、アクセルを訪れた事情を確認すると、王都で俺達が計画を練った工事。その作業者として夫婦二人で来たのは良いが、その他には里の自警団なども来ているらしく、こめっこはいつも靴屋さんにお願いして家を空けるのだが、それもできないのでアクセルの俺達の屋敷まで連れて来たらしい。

 

「宿屋の手配って……作業者だけだったか……? まあ、こめっこちゃん一人でいさせるわけにもいかないし……」

 

工事の期間中こめっこを預かるのは別にいい。それよりも気になっていたのは、ひょいざぶろーさんだった。どことなく疲れた様な表情で、首から下の衣服が生乾きの様な気がする。

 

「ひょいざぶろーさん、何が……?」

 

「済まんが……聞かないでくれるか……」

 

その話題には触れるなといった雰囲気のひょいざぶろーさんを見て、めぐみんは思い当たる節があったようだ。

 

「そ、そのですね……。お母さんは、お父さんが借金をこさえてくると、首から下を氷漬けにして、強力なモンスターだらけの森に泣いて謝るまで放置する事がありまして……」

 

それを聞いてすかさず、ゆいゆいさんの方を向くと……、

 

「今回は借金ではないですよ? 家の主人が土木作業は嫌だと言ってきかなかったものですから……。夫婦二人で1200万エリスですから、魔道具を造るよりも良いお仕事ですし……」

 

うっわー。この人、超怖い。紅魔の里で逆らっちゃいけないって勘は、外れではなかったらしい。めぐみんも、たまにおっかなくなるから、ぜってー血筋だ、これは。

 

「ああ……、それとこれは、君がウィズさんに注文していた素材だ。丁度良かったので、今、持ってきたが?」

 

「でしたか、ありがとうございます。という事は代金は……?」

 

「ワシはもう貰っているので、ウィズさんに支払うといい」

 

そうして、ひょいざぶろーさんから素材を受けとると、夫婦二人で工事現場へと向かって行ったのだった。一人屋敷に残されたこめっこを、どうしようかといった話になったが、

 

「……工事ってどのくらいまでするんだっけ?」

 

「確か……一か月くらいだったかな?」

 

被害総額15億エリス程の工事を一か月で、しかも通常の数分の一での報酬で可能な紅魔族……恐るべし。ともかく、せっかく来てくれた小さなお客様に、

 

「こめっこちゃん、今日は何が食べたい? それとも俺じゃなくて、姉ちゃんの手料理の方が良いかな?」

 

「兄ちゃんの方がおいしいから、兄ちゃんが作って!」

 

「こ、こめっこ……!?」

 

何気に料理で負けてしまって落ち込んでいるめぐみんであった。すぐにメモ帳らしき物を取り出し、なにやら書き込んでいるこめっこであったが、めぐみんがそれを覗き込み、

 

「〇月×日。にいちゃんがわたしにえづけするらしい。げんちづまをさがしているので、わたしをねらっているようだ」

 

それを聞いて、固まる一同。それを読んだめぐみんでさえ、言葉が続かなかった。

 

「……こめっこちゃん。餌付けとか現地妻とか……、誰から聞いたのかな?」

 

「ぶっころりー」

 

よし、あの靴屋の兄さんか。確か自警団もアクセルに来てるとか言ってたな。後で覚えてろよ……!

 

「こめっこちゃん、兄ちゃんが現地妻を持つのは違うからね。意味は分からないかもしれないけど」

 

「そ、そうですよね! 結婚とかそんなのじゃないですよね!!」

 

いち早く、反応したゆんゆんだったが、俺は続けて、

 

「現地妻ってのは、もう結婚してる人の仕事先とかで一緒に暮らす奥さんみたいな人の事だよ。兄ちゃんはまだ独身だから、もし結婚しても相手の人は普通のお嫁さんになるから、そこは間違わないでね」

 

ほう、と感心したような表情のこめっこを他所に、めぐみんが、

 

「そっちですか! そこは、そんな言葉を使ってはいけないと言う所でしょう!」

 

「……一度覚えた言葉を、子供に使うなってのは難しいんだ。だったら、正しい意味を教えておかないと……」

 

これは結構重要だと思う。特に紅魔族は知能が高いから、すぐに理解してくれるはずだ。

 

「お前な……子供相手にそんなの教えるって……かなり引くぞ?」

 

「嫌だなあ……、カズマ。俺にあらぬ疑いが掛けられそうだったから、ちゃんと教えただけだよ?」

 

カズマも少々引き気味だったが、本気だったらぶっころりーに対して、”甲斐性無しの脛かじり”と、こめっこに言わせるところだ。流石にそれをやらせたら、めぐみんが怖そうなのでこれに関しては紙に書いて、彼の部屋の前にでも置いておくとしよう。

多分、これの原因って、めぐみんの里での一言のはずだ。妻子がいるのに、めぐみんに手を出した様な言い方だったから……。

 

 

 

 

次の日の朝、朝食を用意していると、続々と起床してくる面々であった。その中には当然ながらこめっこの姿もあるので、

 

「はい! こめっこちゃんには特別メニューだよ」

 

特別メニューと言っても、そこまでの大した物ではなく、言ってみればお子様ランチのように一つの皿に色んなおかずとご飯、別容器にデザートをよそっただけである。ちなみにちゃんとご飯はチキンライスにして、旗も立てている。

 

「また器用な……。少し羨ましい気もするが……」

 

「じゃあダクネスは、これと同じで盛りを多めにするか? 名称も『ララちゃんプレート』にして」

 

「それは止めろ! いやだが……私にも同じのをくれるか?」

 

意外にお子様ランチが気に入ってしまったダクネスらしい。結構可愛いもの好きだからか?

 

「兄ちゃん! おかわりある!? このご飯とエビフライが食べたい! この白いプリンみたいのも!?」

 

「その白いのは杏仁豆腐って言うんだよ。まだ沢山あるからね」

 

朝食を出した傍から全て食べきって、おかわりを所望しているこめっこではあったが、

 

「こめっこ、この家にいる間はいつでもお腹いっぱい食べられます。ですからそこまで無理して食い溜めしなくてもいいんですよ?」

 

めぐみんが妹の態度に少し恥ずかしくなったのだろう。さり気なく注意を促していた。

 

「ユウもあんまり甘やかしては……」

 

「何で? 俺を兄ちゃんって呼んでくれる貴重な子を、ぞんざいに扱うわけないじゃないか」

 

その一言でこめっこ以外が俺の方を向き、

 

(((やってることは、お父さんそのものなのに……)))

 

三人の思考が一致したような雰囲気を出していた。

 

朝食後、カズマが起床し、屋敷を訪れたゆんゆんの稽古の後で屋内に戻ると、なんだかんだで疲れたのらしいこめっこが目を擦りながら近づいて来て、

 

「眠い……」

 

「じゃあ、こっちおいで。兄ちゃんはしばらく本読んで動かないから」

 

そう言うと、こめっこはソファに座っていた俺の太腿を枕にして、安心した寝顔で眠ってしまった。その様子を見ていた面々は、

 

「……慣れてるわね? 子供にやさしいのは知ってたけど」

 

「私は、”姉ちゃんはさみしんぼ”って言われましたが……」

 

「自然とあやしているというか……、安心させているというか……」

 

「お前ってやっぱり……、お父さ――」

 

最後のカズマの言葉だけは聞き捨てならなかったので……、

 

「おおっとカズマ。それ以上言ったら、後で最終奥義……!」

 

それだけ言うと、後ずさってしまったカズマであった。

 

「まあ……。昔のエリオに比べたら、全然楽ちんだ」

 

それを聞いた全員が不思議そうな表情で、目を見合わせた後、ゆんゆんが、

 

「エリオ君ですか? 少しやんちゃだったのは、聞きましたけど……」

 

少し……。うん、少し……か。

 

「エリオも小さい頃は色々あってな。初めて会った頃は、暴れて施設の人達困らせてたもんだ」

 

皆して信じられないといった感じである。少なくともここに来た時には、礼儀正しい普通の男の子だったからだ。

 

「違法研究なんてのを捜査してると、子供が巻き込まれてる場合が多いんだ。特に強い魔力や先天技能なんてのを持ってると猶更」

 

エリオの場合はそれだけじゃないんだけどな。こめっこの行方が分からなくなった時だって、それを疑ってしまった。おそらく、紅魔族を研究対象にするつもりだったのかもしれない。

違法研究――そのキーワードで、全員が何となく境遇を予想できた様子であった。

 

「そういえば……、前に私達が盗み聞きしていた時、”俺にやったのと同じのを喰らわせてやれ”……と言っていたが? 何をされた」

 

「思いっ切り電撃喰らった……。ついでに言うと、魔法で防御ちゃいけないと思ったから、それも無しで……」

 

「ダクネスでもないのに、か、雷の直撃ですか……!? それは……」

 

めぐみんだけじゃなく、カズマ達も顔を青くしていた。唯一ダクネスだけは紅潮していたが、ツッコむのは止めておいた方が無難である。

 

「無茶するわね……。何でそこまで……」

 

「あの頃のエリオはな……。辛くて苦しくて、それをどうにかしたいけど他人を傷つける事でしか、自分を表現できなかったんだと思う。本当に全部諦めてたんなら、子供でももうちょっと達観して大人しく……、それはそれで十分おかしな話だけど」

 

シンと静まり返ってしまったリビングであった。

 

「もし、魔法で防御したら……、それも拒絶されたって感じるんだろーなー、……と、何となく」

 

フェイトも同じ事してたはず。まあ、アイツは優しいけど我慢強すぎるから、良いだけ電撃喰らって、俺より怪我してたかもしれないけど。

 

昔を思い出しながら、安らかな寝顔のこめっこの頭を撫でていると、

 

「ん……? どうした?」

 

何故か、俺を見て魅入っているような面々であった。

 

「いっ……いえっ! 何でもありません! 何でもありませんとも!!」

 

「そうです! 何でもありませんから!!」

 

慌てながら、何かを否定している紅魔族二人に、とんでもないものを見るような目の残り三人であった。

 

(ちょっと何よ! 今の表情。落ち着いてて凄く優しげで……、思わず見とれちゃったんですけど!)

 

(ああ……、アイリスの体の時にミツルギに撫でられたけど、アイツとも全然違う! あんなのやられたらヤバくないか!?)

 

(私の趣味がそちらでなくて良かった……! というか、ユウのあんな顔は初めて見るが……)

 

アクア、カズマ、ダクネスの三人は、俺をチラチラ見ながら寄り添ってヒソヒソ話をしていた。そうしていると、こめっこが目覚めて、昨日と同じようにメモ帳を取り出し、何かを書いていたので、今度は俺が読んでみると……。

 

「○月△日。にいちゃんがわたしに、なでぽをためしていた。わたしは、それでおちるかるいおんなだとおもわれたらしい」

 

昨日から思ってたけど、このメモ帳は何だろう? 子供が使っちゃいけない言葉がチラホラと……。

 

「こめっこちゃん。このメモは何を書いてるのかな? 日記帳?」

 

「母ちゃんが、姉ちゃんの周りであった事、これに書けって。それと、ぶっころりーが兄ちゃんは、どうやって女を落とすか教えてくれって」

 

ゆいゆいさんは良いだろう。何だかんだで娘が心配なはずだ。問題は……。

 

「すまん、みんな……、今日の工事が終わるくらいで、ちょっと出てくるよ」

 

「ユ、ユウさん……。そ、その威圧感が凄いんですけど……!? ど、どちらへ行かれるのですか!?」

 

俺を見て敬語になっているアクアであった。かすかに震えているような気がする。怖がらせない様に笑顔でいるのに何でだろ?

 

「うん……! アクセルに来てる、出稼ぎニートの所に少しだけお話があって」

 

稼いでいるからニートでは無いだろうが、そんな事はどうでも良い。

 

夕方になって、紅魔族が寝泊まりしている宿屋に向かおうとした矢先、めぐみんが俺に……、

 

「……私が許します。というか私の分もお願いします!」

 

力強く頷き、ぶっころりーの部屋に殴りこ……ではなく、平和的なお話をした後、何故か彼は一昼夜眠れずに恐怖に苛まれていたらしい。




何だかんだでエリキャロと同い年の子には結構甘い主人公です。

ひょいざぶろーさんが首から下を氷漬けにされてたのは、漫画版爆焔一巻のおまけ小説で幼少時のめぐみんが言っていました。
ゆいゆいさんおっかないですねー。それで治らない旦那も相当ですが。
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