この素晴らしい世界にリリカルな魔導師を! 作:ゴマフアザラシ
めぐみんの実家に一泊した翌日の早朝。まだ日が昇り切っておらず、薄暗い中、紅魔の里の広場で朝稽古をしていると、
「やあ、おはよう。一手お願いできるかい?」
……本当に来るとは思わなかった。ミツルギさん、真面目過ぎるでしょう。
「分かりました。怪我するといけないから、お互い寸止めで良いですよね?」
それに小さく頷き、木刀を構えるミツルギであった。それに応える様に自身も構えてあちらの出方を窺っていた。
「はあああああ!」
木刀を大きく振りかぶり、脳天目掛けて真っすぐ向かってくる攻撃を受け流し、その流れで胴体へと横薙ぎを仕掛ける。ミツルギも後退するが、一足飛びで懐に飛び込み、喉元に切先を突き付ける。
「まだやりますか?」
「ああ……! もう一本!」
そんなやりとりが約一時間続き、
「はあ……はあ……」
そこには息を切らして座り込んでいるミツルギの姿があった。この一時間打ち合って、彼について分かった事がいくつかあった。《両手剣》スキルの他には、ソードマスターの固有スキルらしい剣技もあったが、木刀であれば、初見でも何とか対応でき、直撃はさせずに避けるか受け流すくらいは可能であった。
それでも上級職のスキルであり、俺の木刀にも相当なダメージがあったらしく、所々へこんでいる部分が見受けられた。
もしかしたら、グラム無しでも単純な筋力は俺より上かもしれない。その辺りは、高レベル冒険者といったところだろう。
「何で……ここまでの差が……」
「これでも9歳の頃から鍛錬は欠かしてませんから。そちらも強いですけど、1、2年で追いつかれてたら、自信無くしますよ」
あちらもそれなりに渡り合えるかと思っていたらしいが、結果を見れば惨敗。それこそ
「……もう一本だけやってみますか? 俺は真っ直ぐ振り下ろしますから、好きに対処してください」
それに頷き、真剣な表情でこちらを見据えるミツルギであった。好きに対処しろとは言ったものの、あちらは避ける気は無く、真正面から迎え撃つつもりのようだ。
ゆっくりと、木刀を振りかぶりながらミツルギへと近づく。彼の間合いへ入ったところで、あちらも全力で袈裟斬りを仕掛けてきたが……、
「……がっ!?」
激突したお互いの木刀は、カーンと乾いた音を立てながらではあったが、ミツルギはその衝撃に耐えきれずに木刀から手を放し、自分の手首を抑えていた。
「だ、大丈夫ですか!? ちょっと……やりすぎたかも……。アクア起こして来ますから!」
「い、いや。気にしないでくれ。それよりもさっきのは……、スキルか何かかい?」
まだ手首を抑えてはいるが、そこまで深刻ではないらしい。先ほどの斬撃について知りたいみたいだが……、
「言った通りで、真っ直ぐ振り下ろしただけですよ。身体強化も使ってませんし、踏み込みと身のこなしと重心の移動を、全部斬撃に乗せただけです」
それを聞いてポカンとしてしまったミツルギであった。
「スキルを修得しているわけでもないのに、あの威力……!?」
ミツルギもアクアにこちらに送られたらしいが、スキルを修得して強くなるのが当り前になってるのだろうか?
「俺も生来、器用な方じゃないですので。あそこまでになるまでには、相当な時間が掛かりましたが」
それこそ、姐さんと打ち合ってばかりではあったが、”お前は器用じゃないから、高度な技を焦って身に着けるより、基本を突き詰めた方が良い”……と言われた事があったので、そうしていたのであった。今では、そこそこ立ち回りもうまくはなったが。
「じゃあ……、あそこまでになるまでに、どれくらいの……?」
その質問に、ひい、ふう、みいと指を折って回数を計算すると……。
「……百万回くらい? 9歳の頃からですが、ここ二年くらいは木刀に重り付けてやってますし。ただ振ってれば良いんじゃなくて、体捌きとか全部意識しながらですけど」
「ひゃ……く……まん!?」
計算したら、そうなってしまった。継続は力なりとは言うものの、そこまで回数こなしてたんだなあ……と、ちょっとだけ自分自身で驚いてしまったのであった。
「……僕が一から剣術を覚えるのは、可能だろうか?」
「それこそ、長い時間必要ですし……。一朝一夕では無理ですけど、守る時は守りに専念して、攻める時には一気に攻めるってのを意識するだけでも、全然違ってくると思いますが……。相手が自分より強い弱いじゃなくて、今の自分が相手に勝つには、どうすれば良いかを考えた方が良いと思います。そして、戦うからには勝つって気概も」
もしかしたら、それだけでも出来ていれば、バニル仮面のカズマと戦ってた時に結果は逆になってたかもしれない。
一旦休憩し、二人で地べたに座りながら、
「……グラム無しで、ここまで差があるとは思わなかった。それに……」
不意に話しかけてきたミツルギであった。
「戦うのは……、こんなにも……怖いものだったんだなあ……」
最初から神器なんて物を持ってて、職業も上級職。出会った時には、アクアの檻の弁償代金(慰謝料込み?)も当たり前のように支払ってたから、そこまで困る事は無かったのかも。
「当然です。相手だって死にたくないから必死になって向かってきますし、負ければ自分だけじゃなくて、周りの人間にまで被害が及ぶかもしれませんから」
「君もそうなのか?」
「本当は戦わずに済めば一番ですけど。それでも戦わなきゃならない時は必ず来ますしね。無くしたくないものがあるなら、猶更」
何故かここに来てからは、うまく立ち回ろうとすると、戦闘になる場合が多かったけど。特にベルディアの時とか。
それから少しばかり話を続けていたが、ミツルギが神妙な面持ちであったため、こちらの方が緊張してしまったのであった。
朝稽古も終わり、各々の寝泊まりしている家へ――俺はめぐみんの実家であるが、そこに着くと、
「兄ちゃん。おはよう!」
「おはようございます。朝も早いですね。めぐみんも早起きして、食事の支度でもすれば良いのですけど……」
「おはようございます。めぐみんも久々の実家ですし、寝せておきましょう。朝食の支度なら手伝いましょうか?」
台所に行こうとしたのだが、こめっこから、
「兄ちゃん、汗臭い」
これはいけない。なんだかんだで、結構動き回ったから、汗かいてたか……。これで食事の支度はダメだな。
「すいません。お風呂をお借りしても良いですか?」
構いませんよ。との、ゆいゆいさんの返答で風呂に入って汗を洗い落とし、再び居間へと戻ると朝食の用意ができた様で、食卓には人数分の食事が用意されていた。
「お母さん! いつものじゃない! 硬く炊いたご飯がある!」
「こ、こめっこ! お客さんの前ですから、それは言わないで……ね?」
前にここでお世話になった時は、”薄めたシャバシャバのおかゆ”とか言ってたよな。アクセルの工事に参加したのが効いているんだろう。けど……こめっこの食生活聞いてると涙が出てくる。
せっかく作って頂いた朝食が冷めてはいけないと思い、就寝中の面々を起こしに行くかといった話になったので、
「こめっこちゃん。お兄さんが女の子の寝てる所に行くのはマズいから、姉ちゃん達を起こして来てくれるかな?」
うん! と元気よく頷くこめっこにある物を渡し、俺はカズマを起こしに部屋へと行き、
「……カズマ、今日は『混浴温泉』が本当に混浴になる日らしいぞ」
寝ているカズマの耳元で、ありえない発言をすると、
「マジか! 早く行こうぜ! ……んっ!?」
前にアルカンレティア行きの馬車がゾンビに襲われた時の手であるが、効果てきめんだったらしい。飛び起きてくれた。
少し恨めしそうな気配のカズマを連れて居間へと戻ると、
「せっかく私が崇拝される夢を見てたのに、何をするのかしら?」
「……起こすにしても、もっとやり方があったでしょう!」
「就寝中に叩き起こされるのも……、悪くないかもしれん! また頼めるか?」
女性陣はダクネス以外良い印象を持ってはいないようだったが、満面の笑顔でもって、
「三人ともおはよう。良い朝だな。遊びに来たんじゃないからシャンとしないと、こめっこちゃんに笑われるよ?」
「「だからって、最大音量でベルの音を鳴らさないで(下さい)!」」
デバイスの目覚まし音を最大にして、再生したのであった。ちなみにこめっこには耳栓を付けさせていた。
朝食後、各自でばらけて、カズマとダクネスは養殖場へ、俺とアクア、めぐみんは族長さんの家へと向かっていた。
「……しかし、なぜノイズについて調べようなどと思ったのですか?」
「王城で借りてきた本の中に、ノイズについて書かれてるのがあってさ。どうも……解せない部分があって」
それに対して、首を傾げるアクアとめぐみんであった。
「デストロイヤーや『魔術師殺し』、紅魔族もか。そこまでの事をした真意ってのが、どうも見えなくて」
「……? 魔王軍と戦うためでしょ? 戦力としては相当でしょうし」
……日記によると、『魔術師殺し』は紅魔族よりも前に造ったらしいが……、
「そうだったら良いんだけど、そうじゃないかもしれない」
また意味が分からないといった表情の二人であった。適当に雑談しているうちに族長さんの家へ到着し、ゆんゆん達と合流した。ミツルギも先に来ていたようで、族長さんの家の客間にて、
「……必要になりそうなのは、昨日のうちに適当に揃えておいたよ」
「
クリスとゆんゆんが色々と族長さんの家で探していてくれたらしい。つーかやっぱり日本語だね、これ。
――ゲームガールアドバンスへの道。
……カズマが日本語分かるってのが判明してから、ゲームガール回収してたのは聞いたが。
――全駆動等身大美少女フィギュア設計図。
……舐めてんのか?
――上層部を納得させる予算の上乗せ方法。
……そういえば、この場所ってノイズのお偉いさんに隠して作ってたんだっけ。ってか日本語で書くだけで、誰も読めない暗号になっちゃうから、こうして残ってるんだろうなあ……。
「……とりあえず、これは全部いらない」
「何で!? ゲームガールアドバンスは、私、プレイしたいわ!」
「……アクアってさ。これ書いた人を”ここ”に送り込んだんだよな?」
その質問に、やっと私を女神って信じてくれたのね! と上機嫌になったアクアではあったが、
「それが本当なら、俺の気が済むまでハリセンでツッコむところだ。……で、どうなんだ?」
その一言で、震えながら口を
「これは……人型兵器の設計図でしょうか?」
めぐみん、それは違う。等身大フィギュアの設計図で兵器じゃない。これは……、教えない方が良さそうだ。
「こっちは……数字みたいのが並んでますけど……」
ゆんゆん、将来はともかく、それは良い子が知ってたらいけない事だよ? まあ、族長継ぐんなら、必要になるかもだけど。俺は半分くらいは悪い子だから良いのさ。
見つかった日本語の書物をちょっと見ただけで、呆れかえってしまっていたのであった。それはミツルギも同じようで、どこか疲れた様な表情をしている。
「じゃあこっちは……?」
クリスが差し出したのは、記録……、日記だろうか? デストロイヤーや地下格納庫にもあったって言うけど……。
その日記をパラパラと捲っていくと、それも日本語で書かれており、
「――あの国やってらんねー。あいつらバカなの? 俺を何だと思ってんの? 命令すりゃ研究で成果出すヤツとでも思われてんの? 無茶ばっかり言いやがって。こうなったら森のど真ん中に遊び場作っちまえ!」
声に出して、その日記(?)を読み進めていったが、このふざけた感じは間違いなく、デストロイヤー内部で読んだ日記と同一人物のものだ。
森のど真ん中ってのは、どう考えても現在、紅魔の里になっている場所だろう。
「――最近できた
多分、この場合は象徴としての意味と、単純に戦闘能力の面の両方だろうが。
「――お偉いさん。また無茶を言い出す。チート持ちがベルゼルグに持ってかれるなら、強い人間作ればいいだろだって。俺に詰め寄って、出来るだろ! 出来るよな!! やったら地位でも名誉でもくれてやる!! なんて脅してきやがった。地位も名誉もいらないから休みくれ」
……これが紅魔族に繋がるのか? この記述だとチートや神器持ち(仮)の血を受け入れて国家を強化していったのがベルゼルグで、人為的に強化した人間を戦力にしようとしたのがノイズになるが……。
「……ユウ? どうしましたか? 怖い顔をしていますが……」
「いやーな予感がしてな。これ以上読み進めて良いもんか……」
めぐみん曰く、今の俺は怖い顔らしい。そこまで表情に出るくらいだから、やっぱり……、あんまり読みたくはないなあ……。
「しかし、君がここに来たのはノイズについて調べるためだろう? 読み進めるべきだ」
確かにミツルギの言う通りなんだよなあ……。ただ、俺の勘がヤバいって言ってる。
「――大体、魔王軍がここまで厄介になってるのは、他のチート持ちのせいじゃねーか。いっぺん魔王倒してるってのに、自分が魔王になるってどういう事だよ? チートや冒険者カードがあっちに渡ったせいで泥沼になってるだろ! 昔の話らしいけど良い迷惑だ」
……以前、ウォルバクさんが言ってたお伽噺の勇者か? たった一人で魔王を倒して、その後魔王になったっていう少年だ。
「……どういう事だろう? チートが魔王軍に渡ったというのは?」
ミツルギの疑問に答えるようにゆんゆんが、
「その魔王は子供には孤独にならない様に、『自分一人じゃ意味を持たない能力』を与えたらしいです」
……でも、その勇者のチートは、おそらくはこめっこに読んだ絵本からすると、レベルアップまでの経験値の軽減または、取得経験値の増加と考えられる。それは自分一人だけが意味のあるものだ。……ってことは。
「……済まない。ちょっと聞きたいんだけど、スキルって自分で造る事は可能か?」
「えっ!? ええ……。確か前にウィズがオリジナルの魔法を持ってるって言ってたから……、冒険者カードで一般化されてないないだけで、持ってる人はいるかもしれないわね」
意外にも、その答えを言ったのはアクアであったが、続けてめぐみんが、
「一般化されていないという点では、ユウの魔法アレンジも該当しますので、それを考えてもらえればと……」
成程。なら一応、仮説としては成り立つか……。
「ど、どうしたの? 難しい顔してるけど……」
「いや……この日記の通りなら、確かに泥沼だな……って」
クリスも気になったらしい。泥沼……、その一言で顔をしかめていた。
「俺の見立てだと、チート……、神器ってのは本当にありえないくらいの能力を持ってると思う。それこそ、そこのグラムだって、まともに打ち合ったら勝てないくらいの」
「何度もその持ち主に勝っているユウが言っても、説得力がありませんが?」
ここはあまりツッコまないで欲しかったなあ……。話の腰が折れるし。
「それは、あくまでこっちの土俵で戦った場合。相手の土俵だと、まず間違いなく叩き潰される。生半可に鍛えてたって、まず勝ち目がない。例えるなら……、そうだな、ボードゲームで理詰めで行こうとしても、その盤面ごとひっくり返されるようなもんかな」
それだけ神器ってのは強力な物だって確信がある。ミツルギのにしろ、王都で被害にあった体を入れ替える物にしろだ。
「けど、君だって今朝は凄かった……。あれだけ強くされるとは思わなかったからね」
「あれは回数をこなしてたのが、功を奏しただけです。あとは経験の差ですよ」
そんな俺とミツルギの会話を聞いていた女性達はというと……、
「け、今朝は……凄かった!? な、なな、何を強くされたのですか!?」
「回数って何の回数ですか!? 経験って……、もしかして豊富なんですか!?」
「ふ、二人共……そんな関係だったの!?」
えー、何か盛大な勘違いをしていると思います。それこそ俺らの名誉に関わることを。そう考えていると、意を決したような表情のアクアから。
「……大丈夫よ! アクシズ教は全てが許されるわ! 同性愛で迫害されるのが心配なら、アルカンレティアに行きなさい。きっとみんなが祝福してくれるから!」
対象の両名、しばし沈黙の後、
「「絶対に違います!!」」
二人で大声を出して必死に否定していたのであった。ともあれ話の続きを……、と思いながら周りを見渡すと、何故か安心したような雰囲気のが何人か見えていたが……?
「……耳年増」
もうボソッと……聞こえるか聞こえないかの声で呟いたが、約三名は顔を真っ赤にして俯いている。からかうのはこの辺にして、日記についての推論を続けよう。
「ちょっと聞きたいんだけど、魔王って世襲制? それとも幹部がバトルロイヤルやってトップを引き継ぐとか?」
「今の魔王にも娘がいますし、世襲制のはずですよ。仮に今の魔王が倒されたら、娘が継ぐのではないでしょうか」
世襲制で、魔王の一族は魔族のトップに君臨し続けている、……か。少なくとも連中をまとめ上げる……、
それを現代まで一つの一族が行っている。そして、アクアの言っている
「……双方チート持ってれば、泥沼になって同然か……」
「……? 何ですか? 気になる言い方ですが……」
思わず出てしまった言葉にめぐみんだけでなく、その場の全員が怪訝な表情を浮かべていたが……、
「分かるように言いなさいよ! たまにあるけど、自分だけで納得しないで!」
「……ああ、悪い。これはあくまで推測だけど……」
全員が俺を真剣な瞳で見つめている。それに応える様に、
「その魔王になった昔話の少年の
それにうんうんと頷くアクアであった。覚えがあるのだろう。
「それとは別に、魔王には『自分一人じゃ意味を持たない能力』ってのがある。それは
「ちょっと待って! 能力や神器の使用権は子孫に引き継ぐことはあるけど、スキルは……絶対じゃないよ!」
クリスも神器に対して何故か詳しいので、疑問に思ったようだ。まともに考えればそうだろうが……。
「そこで出てくるのが、冒険者カード。その元勇者は成長が早いんだろ? 子孫がそれを引き継いでるとしたら、良いだけレベル上げて、スキルポイント貯めて取ればいい。ついでに言うと、成長が早くて相当強くなれるから魔王を世襲できる。もしかしたら、そのスキルは爆裂並か、それ以上のスキルポイントが必要になるから、実質、魔王の一族しか使えないのかも」
「ですが、職業ごとに修得できるスキルは決まっているのですよ……。ああっ……!?」
めぐみんも気付いたようだ。ある意味、この世界の常識に縛られてたら、こんなのは考えないだろうが。
「めぐみんの考えている通り。
「「「「冒険者!」」」」
魔王軍でも冒険者のスキルを修得しているのは、シルビアが見せている。あれはバインドだったが、あれだって、種族『グロウキメラ』の固有スキルってわけではないはずだ。
シルビアの場合、種族『グロウキメラ』、クラス《冒険者》か《盗賊》だったのかもしれない。もしかしたら冒険者カード自体が、昔のチート持ちが考案したのかもしれないが。便利すぎるし。
「……つまり、君の推測では魔王軍は
「……多分、だけど。さっきのボードゲームの話に戻すと、どちらか一方がチートを持ってれば、盤面をひっくり返せる。これはお伽噺の勇者が、一人で魔王を倒してる事から想像しやすいと思う。けど、それを双方が持っていれば、それは普通の盤面に戻る。ただし、その場合の盤面……、要は実際に戦っている者にとっては凄惨な結果になるが」
片方だけ銃を使用した戦争なら、それを使用した側が大した被害もなく勝てるだろうが、もしそれが両方だったら……、想像は難しくない。
「あの……、だったら何で、その勇者は魔王になったんですか? こんな状態になっちゃうのに……」
「ゆんゆん、それが今、俺が一番知りたい所なんだ。知ってる連中はいそうだけど……」
主に、ウィズ魔道具店の店主と店員だけど、教えてくれなかったからなあ……。その理由自体が、この状況の根幹になってる気がするんだけどな……。それとも、この状況の方が都合が良いとでも……?
とりあえず、族長さんの家で掻き集めた書物については、一通り目を通したので、今度は違う場所の探索でもしてみるか……といった話になっていた。例えば地下格納庫。前回はシルビアとの戦闘の真っ只中だったため、満足に調べられずにいたのであった。
なので、そちらに向かうかと言ったところで、族長さんの家の玄関の扉が開き、
「すいませーん! 誰か養殖場まで来ていただけますかー?」
養殖場でカズマやミツルギのパーティーのレベル上げを手伝っている、自警団の一人だろう。大声を上げながら俺達を呼んでいたので、そちらへ急行すると……、
「……ダクネス、何やってんだ?」
そこには身を震わせながら、艶めかしい吐息を吐き、頬を紅潮させているダクネスと、呆れたようにその人物を見つめるカズマ達。
「……ダクネスが、強いモンスターの動きを止めずに自分の所に誘導しろって……。わざわざモンスターを庇うように前に出て魔法喰らったりして、レベル上げの邪魔にしかならねー!」
……適当に自分で強力なモンスターとやり合うかと思ったが、辛抱できなかったらしい。森の一撃熊さんにでも一発喰らいたいんだろうか?
「……『チェーンバインド』」
鎖型のバインドで、ダクネスをエビ反りの状態にして手足をいっぺんに縛り、その状態で木の枝へと吊るしてやった。
「こ、これは……久々の緊縛プレイか!? こ、今度は是非、体にも菱形に鎖を巻きつけてだな……!」
んなもん覚えるか!? 今日はもう、そのままでいろ!
「……ねえ、あの子……、たまーに特殊な趣味に目覚めるんじゃないかって思う時があるんですけど……」
「お願いですから、変な方向には行かないで下さい! メイドとツンデレだけでも十分おかしいですから!」
「もう一回、子供に戻して刷り込んだ方が良いのかな? 変な趣味は持たないでって」
約一名、ゆんゆんがおっかない事を、思いついてしまっていたようだったが、あんなポーションは二度と飲む気は無い。っていうか、刷り込むって何だよ!?
全員で養殖場まで来てしまったため、こうなったら、カズマとミツルギのパーティーのレベル上げを手伝うといった話になり、そのままこの日は終了した。
悲報:魔王様と魔王の娘のクラスが冒険者になる。
カズマさん(冒険者)がリッチースキル取れるので、こんなのもありかと思い、書いてみました。
多分この主人公、縛るのもこれから磨きが掛かるはず。マニアックな縛り方を聖王教会の双子に教えますしね。