この素晴らしい世界にリリカルな魔導師を!   作:ゴマフアザラシ

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奇妙な夢と学校探索

とりあえず、本日分の探索とレベル上げを終了してめぐみんの実家で夕食後、くつろいでいたのだが……、

 

「兄ちゃん! 絵本読んで」

 

この絵本、こめっこの宝物でめぐみんが旅に出る際に受け取ったものだそうだ。こめっこがアクセルの屋敷に寝泊まりしていた時にもよく読んであげていたのである。それは最近、話題に上がっている一人で魔王を倒した勇者の物語であるが……、

 

「勇者がぼっちだとか、ちょーウ・ケ・る! お前、友達すらいないのに誰のために戦ってんの? プークスクス。もう魔王軍に下っちゃえよ」

 

ちょっとだけ、演技っぽく読んでいるのがこめっこには面白いらしい。めぐみんや他のみんなではなく、俺に絵本を読んで欲しいって頼む理由だろう。

 

「俺はぼっちじゃなくアクシズ教徒だから、人が寄ってこないんだ! 女神アクア様がいつも見守ってくださってるから、一人じゃない! 魔王しばきに行くから、そこを退け!」

 

「勝手に物語を改変しないで下さい!!」

 

これから面白くしようと思ってたのに、大声でめぐみんに遮られてしまったのであった。

 

「えー? 同じ物語ばっかりじゃ飽きるだろ? 別ルートがあっても良いじゃないか」

 

「それだったら、わざわざ絵本読む必要ないでしょ? それより続きを聞かせて頂戴な。主人公がアクシズ教徒なんて、良い話じゃない! でもウチの子だと、何でぼっちなの? ねえ!?」

 

アクアにも一部を除いて好評らしい。リクエスト通りに、その場のノリで考えたストーリーを語っていく。

 

 

 

その少年には不思議な力がありました。水の女神アクア様の加護を受けたその少年は、水を自在に操る力を授かっていたのです。

 

「魔王城には結界が張っている! 八人の幹部を倒さないと、結界は開かんぞ! フハハハハハ!」

 

胡散臭い仮面のタキシードが高らかに笑っているのを尻目に、少年は詠唱を始めました。

 

「この世に在る我が眷属よ……。水の女神アクアが命ず……」

 

少年の周りに発生した霧は、やがて小さな水へと変わっていく。そして、

 

「『セイクリッド・ハイネス・クリエイト・ウォーター』ッ!!」

 

それは洪水ではなく、魔王城を覆う程の巨大な津波。女神アクア様の加護を得た津波は、魔王城の結界を難なく消し飛ばし、魔王城すら、瓦解させてしまいました。当然、城内の魔王もただでは済みません。

命からがら瓦礫から脱出した魔王とその手下は、住む家も財産も全て失ってしまったのです。少年はある物を魔王達に差し出し、こう言いました。

 

「これに名前を書けば、女神アクア様のお力で、病気が治ったとか宝くじが当たっただとか、様々な良い実体験を聞くことが出来る」

 

それはアクシズ教団入信書。もう魔王達には選択肢が残されていませんでした。こうして、魔王軍はアクシズ教徒となり、水と温泉の都で真面目に働きつつ、水の女神様に祈りを捧げるのでした。めでたし、めでたし。

 

 

 

 

 

室内は沈黙が支配していたが、アクアだけは、うんうんと頷きながらご満悦であった。しかし、

 

「魔王軍がアクシズ教徒になったら、バッドエンドじゃねーか!」

 

「一応、魔王しばいてるし、みんなが平和に暮らしてるから、グッドエンドだよ……、多分」

 

思い付きで作った話だから、そこまで気にしないで欲しいなあ……。

 

「兄ちゃんはぼっちって言われたら、何て言い返すの?」

 

こめっこはさっきの物語より、そっちの方が気になるらしい。例の勇者は一週間悩んで答えたらしいが。どうやって答えるか……。やっぱりここは……。

 

「それはな。物憂げな表情で、”ぼっちでいいよ。ぼっちらしいやり方で、魔王しばくから……。”と言って、全力で魔法を……」

 

「ぼっちは否定せんのか!?」

 

だって、ぼっちなのは否定しようがないじゃん。ダクネスだったら何て答えるんだろう?

 

「まったく、何でこう落差の激しい人間なのでしょうか? この男は……」

 

「だってー、常時三白眼で眉間にしわ寄せるとか、俺のキャラじゃねーし」

 

「魔王に関する考察の時のように、あの雰囲気でいれないのですか!?」

 

プライベートまで頭使うとか御免被る。つーか、めぐみんは俺に何を求めてるんだろう? 明るく楽しい愉快なお兄さんが良いと思うんだが……。

 

さり気に周囲を見渡すと、腕を組みながらうーんと唸っているこめっこであったが、何か気になることがあったらしい。またまた俺に向かって、

 

「何で勇者はソロでいたの? 誘ってくれた人がいたのに……」

 

昼間の族長さんの家での出来事をカズマ達に聞かせていた時に、こめっこも一緒にいたので、ちょっとした推理ゲームみたいな気分になってるんだろう。

 

「うーん、どうだろうね? 結局、その時の魔王は倒してるし、遊び半分じゃ無かったとは思うけど……」

 

まあ、アクアの言う通りならチートが有ったろうが、それにしたって、チートの効果で適当に稼いで行く事だってできたはずだ。

 

「もしかしたら、自分の周りで人が傷ついて欲しくなかったのかもね。足手まといなんて言ったのは強がりで、人を遠ざけたかったのかも」

 

かなり好意的に解釈してだけどな。なんて考えていると、少し驚いた様な顔をしていたのは、めぐみんだった。

 

「……あの、もしユウが同じ立場で、同じ能力を持っていたら、パーティーに誘われた時に、どんな気持ちになりますか?」

 

他人の気持ちなんて、完全に分かるもんじゃないけど……。そうだな……、周りで人が傷つくのが見たくなくて、自分は一人でやっていける力があるか……。

 

「結構、怖いかも。人に手を差し出すのも勇気がいるけど、その手を取るのも同じくらい大変だと思うから。下手にやっていける能力があるなら、意固地になっちまうだろうし」

 

フェイトとか姐さんとかヴィータとかもそうだったしなあ……。今となっては懐かしいけど。

 

「けど、こめっこちゃんは知らない人に付いてったらダメだよ?」

 

「えっ!? もちろんホイホイ付いて行って養ってもらう!」

 

「お腹すいたら、兄ちゃんに連絡しなさい。食べ放題とか連れてくから」

 

ホイホイ付いて行って誘拐されかけてるこの子は、ちょっと心配になるのである。ミッドに連れて行くうまい申請理由でも考えておかないとな。

 

「ついでにめぐみんも来ればいい。多分、普通よりは安く済むはずだから」

 

……見た目中学生に見えないから、小学生料金でいけるはず……。けど、本人が怒りながら自分でバラしそうな気がする。

 

「……今、物凄く失礼な事を考えませんでしたか? というか、私だと安く済む理由を教えて貰おうか!!」

 

「いいじゃないか。利用できるものは利用しないと。まあ、本当は身分証とか見せるから無理なんだけど」

 

言ってる意味が、自分の予想通りだと感じたらしいめぐみんが、拳をバキバキ鳴らしながら俺へとゆっくり近づいて来たので……、

 

「めぐみんが俺をいじめるー! 助けてー」

 

ちょっとふざけた感じでこめっこを抱き上げて、助けを求めると、

 

「姉ちゃんはいじめっこ」

 

「違いますよ! 私はいじめっ子ではありません! 躾けようとしているだけです!」

 

けどなあ……。学生時代の話を聞くと、毎日ゆんゆんの弁当巻き上げてたんだよなあ……。

 

「兄ちゃんは、あまえんぼ」

 

「うん。兄ちゃんは甘えんぼで、寂しんぼだから良いんだ。こめっこちゃんみたく逞しくなかったから、7歳の頃なんて友達(なのは)ん家に寝泊まりしてたし」

 

「ええい! そこで開き直りますか! つい先日まで、一人で抱え込んでいた男が……!? この中でも年上なのですから、それに見合った態度で――」

 

こめっこをも巻き込んだ口喧嘩を、呆れた様な表情で見ていた面々は、

 

「ユウさんって、結構……、残念な男の子よね?」

 

「ああ……。剣士の姐さんが言うには、むしろあれが地らしいしな……」

 

「いたずらっ子がそのまま大きくなったような印象だ。めぐみんの言う通り、仕事中との落差が激しすぎる……」

 

その口論に参加することなく、俺達の様子を見守っていたのであった。

すると、今まで工房で何やら造っていたらしい、ひょいざぶろーさんがこちらへ来て、俺の前へと座り、

 

「……これを試してみてはくれないか?」

 

それは、見た目ただの指輪。だが、この人の作った魔道具が普通であるわけはない。当然、

 

「遠慮します」

 

即答でお断りの返事をしたのであった。

 

「そう言わずに……。聞けば最近、魔力量が伸びなくなっているらしいじゃないか? 君がワシにやったのを参考にして魔力の負荷をかければいいと思うのだが……」

 

あれはリミッターであって、魔力負荷じゃない! っていうかどこをどう弄ってああなった!? しかもそれでこの人、また魔力がデカくなったらしいからな。

 

「レベル上げ中のカズマに試してください! 俺はこれで……!」

 

カズマを生贄に捧げ、もう割り当てられた部屋へと行こうとしたのだが、

 

「まあまあ、俺よりもお前の魔力が上がった方が戦力になるだろ! 遠慮しないで付けてみろって!」

 

そうして逃走スキルですたこらさっさと、屋外へ駆け抜けていったカズマであった。こうなったら実の娘(めぐみん)に説得してもらおうとしたのだが、先ほどのやり取りのせいか、俺を庇う気は無いらしく、むしろ……、

 

「か、体が動か……ない……」

 

パラッと開かれたパラライズのスクロールで、身動きを封じられてしまった。そのまま、

 

「お父さん、どうぞ」

 

無理矢理指輪を嵌められてしまったのであった。

 

「ちょっと待ってください! これ……負荷どころか魔力制御までおかしくなってますって!」

 

こんなの付けてられるかと、外そうとしたのだが、全然外れてくれない。これは呪いの指輪だろうか?

 

「これはトレーニングのために、最低9時間は外れないようになっている。朝には外せるようになるから、そのままでいてくれ」

 

ちょっと待て! 朝までこのままってどういう事だ!? いらん所で高性能すぎるだろ!

 

「敵襲あったらどうするんだよ!?」

 

「忘れましたか? ここは紅魔の里です。『魔術師殺し』がない今、並の軍勢など恐れるに足りません。もし万が一の時は、私の後ろにでも隠れていてください。爆裂で一掃した後でおんぶしてもらいますから」

 

さいですか。剣でどうにかしろとは言わないのな。

 

さっきのやり取りでどっと疲れが降りて来たような感覚に襲われたため、今日はもう就寝となった。

 

 

 

 

 

――誰か、わたしを……て……

 

そこにいたのは……、小さな女の子。その子はその力で周辺を破壊し尽し、その場所は見るも無残な瓦礫と生物だった残骸だけが転がっていた。

対するは二人の女性。一方は、赤い髪にエルフの様な長い耳、そして上を向いた二つの角……。それ以上に、たゆんたゆんといった擬音が聞こえてきそうな豊満な胸部が印象的な人だった。

見た事はある……、この人はウォルバクさんだ。いつもと違うのは、あらゆる魔法を使いこなし、女の子を容赦なく攻めて立てている。

上級魔法や中級魔法だけじゃない。おそらく炸裂魔法や爆発魔法なのだろう。それらやテレポートによる空間移動を効率的に使い、徐々に有利な状況を作っていったが……、

 

「とんでもないわね……! このままじゃ、あの世界(アルハザード)の二の舞になるわよ? 上の連中のお小言無視して降りて来たのに、これじゃあ……」

 

「もう少し弱らせなさい。そうすればどうにか私の権能で、あの子を操って無力化するから……」

 

「はっきり言って、あなたの傀儡と復讐って……印象悪いどころじゃないわよ?」

 

「うっさい! 怠惰と暴虐なんて言い換えれば、ニートとDVじゃないの! 人の事言えるほど、あんたは偉いっての!?」

 

なぜか戦闘中に、口喧嘩を勃発させてしまっている御二方。その能力は人間を超越しているにも関わらず、その二人を相手にし、大した傷の無い女の子。その子はゆっくりと二人に近づいて来ている。

 

「いくら、地上に来て能力が落ちてるからって……、こうなったら可哀想だけど……」

 

詠唱を始めるウォルバクさん。この詠唱は良く知っている爆裂魔法のものだ。そして……、

 

「『エクスプロージョン』ッ!!」

 

爆裂魔法――あらゆる存在、たとえ神や悪魔と呼ばれる存在にすらダメージを与えると言われる究極の魔法である。その魔法の直撃を受けた女の子は動きを止め。

 

「これでも止めにはならなかったなんて……。爆発魔法や炸裂魔法で複層結界を破壊してなかったら、どうなってたか……」

 

悲し気な瞳にも関わらず、冷や汗をかいていたウォルバクさんと、

 

「ごめんなさいね。けど、もう休みなさい……」

 

その一言と共に女の子の頭を優しく撫でる様な仕草で何かを施す、もう一方の女性。その女の子の顔は……、

 

どこかで見た顔というより、良く知っている顔だ。整った顔立ちに黒髪だが、瞳は真っ黒。これで紅い瞳なら……。

 

 

 

 

 

布団に入ったまま目を覚ますと、見えていたのは天井ではなく、

 

「……紅い眼だな」

 

「珍しく寝ぼけているのですか? いつもと違って起きて来ないので、様子を見に来たのですが」

 

ジッと俺を覗き込んでいるめぐみんと、ウィズ魔道具店から連れて来たちょむすけが俺の上で丸まっていた。

 

「ちょむすけ、お前の元ご主人……、神様みてーな暴虐っぷりだったぞ」

 

「にゃーん。にゃ!」

 

ちょむすけを抱き上げて、さっきの夢を思い出して話しかけると、

 

「それともアレはお前の夢か? この指輪で魔力制御がおかしくなってるせいで、お前さんが無意識に発信した情報でも受け取っちまったか? 昔、ユーノが初めて来た時みてーに」

 

「なーお」

 

※魔力反応を無意識に映像にしたのではなく、念話の様なものを映像化したと解釈してください。

 

会話ができていないはずなのに、会話になっているような俺とちょすけではあったが、それに付いて行けないもう一人が、

 

「どんな夢を見たのですか?」

 

「うーん……。女の子がウォルバクさんと後一人にいじめられてる夢?」

 

なんのこっちゃ……といった表情のめぐみんのであった。

 

「女の子は、めぐみんっぽい顔だったような……?」

 

「わ、わわ、私ですか!?」

 

少し顔を赤くして、慌てたような感じになっているめぐみんに続けて、

 

「けど、ゆんゆんっぽい気もするし、あるえの様な……、それとも居酒屋の女将見習い(ねりまき)にも似てた気が……。うーん、ポニテ(どどんこ)ツインテール(ふにふら)とも……」

 

それを聞くと、小刻みに震えながら俺のこめかみに拳を当てて……。

 

「さっさと起きてください! これなら目が覚めるでしょう!!」

 

「―――――ッ!!?」

 

グリグリ地獄めぐみんバージョンが炸裂し、悲鳴を上げてしまったのであった。

 

 

 

 

 

「めぐみんのいじめっこ」

 

「こめっこのマネですか! 起き抜けにおかしな事を言うからです!」

 

そんなしょうもない会話をしながら、朝食を済ませて昨日のように各自でばらけての行動となった。ひょいざぶろーさんに嵌められた指輪も外している。

 

「じゃあ、今日は地下格納庫に行くの?」

 

グリフォン像前に集まった探索メンバーではあるが、

 

「アクアはカズマの方に合流したら?」

 

なんで……といった感じのアクアに。

 

「新技開発とかな。ゴッドセレナーデとか、ゴッドラプソディーとか、ゴッドフーガとか作ってみたらどうだ?」

 

「何よそれ! 私にはゴッドブローと聖なるグーとゴッドレクイエムがあれば十分よ!」

 

けどカエルには効果が無いのである。いっそ刃物持ってゴッドスラッシュとか……。

 

雑談しながら地下格納庫の前に付き、暗号を入力して中へと降りていく。格納庫の中は前回シルビアが『魔術師殺し』を取込み、暴れたせいで、荒れ放題になっており、とてもじゃないが探索どころでは無かった。

 

「なあ……、前に見つけた手記って、今、持ってる?」

 

アクアからそれを受取って目を通したが、カズマから聞いた以上の情報は書かれていなかった。じゃあどうするか、といった話になったので、今度はゆんゆんが……、

 

「でしたら、学校に行ってみませんか? そこの図書室も結構な数の本がありますし」

 

成程。それは良いかも知れない。この里を調査しているのだから、行けるところには行くべきだ。という事で、学校の図書館へと赴いたのであった。

 

めぐみんとゆんゆんの元担任へと挨拶し、図書室で情報がありそうな本を探していたが、なぜかアクアだけは、『暴れん坊ロード』という本を読みふけっていたのであった。遊びに来たのか、探索に来たのかはっきりして欲しい。

『紅魔族誕生秘話』、『魔道技術大国が滅ぶまで』なんて本を見つけたが、ノイズの発展から滅亡までは王城で借りた本とほぼ合致していたので特に気にする必要はないかと思われたが、

 

「……デストロイヤーを製造していた時期は、財政が火の車だった可能性が高い……?」

 

そういえば、デストロイヤー内部の日記では、あれだけの低予算で機動要塞を造るのは無茶って記述があったな……。

それでも蜘蛛を叩いた跡ってだけの設計図から、あれだけの要塞を造ったのだから技術力自体は決して低くはない。『紅魔族誕生秘話』の方は……、

 

「魔道技術大国の粋を結集して、魔法を使う適性を最大限にまで高めた種族であり、その誕生までには紆余曲折が……」

 

その後は、如何にも紅魔族といった中二な文言の羅列が並んでおり、理解に苦しむ内容であった。この本には改造人間などといった内容は記載されておらず、そもそもこの本自体が最近になって書かれているので、八割方は想像で書かれていると思われる。だが、その中にあって、

 

「……魔法適性を高める為に、参考にした人物がいる?」

 

これはありえる話ではある。何もないところから造り出すよりは、よっぽど現実的だからだ。

 

「ユウ、ちょっとこっち来て」

 

クリスが何かを見つけたらしいが、そこへ行くと持っていたのは、地下格納庫で以前、カズマ達が見つけた手記であり、

 

「ここの所、ページがくっついてる。まだ何か書いてるかもしれないよ!」

 

全員をその場に集めて、ペリペリとページを剝がしていくと、まだ何やら書かれており、それを読んでいくと……、

 

「――○月△日。だから無理だって言ったんだ。用心棒国家(ベルゼルグ)の王族に対抗できる人間なんてできるはずねーだろ! あれはチート持ってる連中の血を引き継いでるからな。反対した俺に内緒で計画を進めていやがった。バッカじゃねーの?」

 

それを聞いた面々は、訝し気に、

 

「……紅魔族ではないのですか? 私達が改造人間の末裔なのは周知の事実ですし……」

 

「けど、これってページを見ると、紅魔族の改造手術の前みたいだけど」

 

これはゆんゆんの言う通り。ノイズは何を狙っていた? 魔王軍と戦うためだけの戦力として……か?

 

「――○月◇日。お偉いさん、自分の面子の為に予算をオーバーして研究させてやがった。俺が参加しなかったから、予定よりも使ってしまったって? 知るか! 文句を言ったら、女研究者に叩かれた」

 

さっき……、デストロイヤー製造時期には財政が火の車だったとかって書いてたが……、これと関係が?

 

「――×月△日。ヤバいだろ、アレ。小国が滅んだよ……。つーか、どうやって止めるの? 好き放題強化しすぎて、手が付けられねーぞ!」

 

「――×月□日。なんか暴走止った。けど、アレもどっかに行っちまった。研究データは残ってるけど、もう同じ事はやらないだろうな。大体お偉いさんも魔王軍倒したの後の事も考えろ、だなんて無茶すぎる。アレで結界を無理やり破って、機動要塞で魔王城ごと破壊する計画だけは悪くないけど、技術力過信しすぎじゃね? しかも、その後の事って言ったら……」

 

この次のページから、紅魔族への改造人間募集のページへと続いていた。

 

「ちょっとユウ! 顔真っ青よ! 少し休みなさい! 誰か保健室に連れてってあげて」

 

「は、はい! こっちに来てください!」

 

ゆんゆんに連れられて、学校の保健室で横になっていると、心配そうな表情でここを訪れたのはクリスであった。他は図書室の片づけをしているらしい。

 

「お頭、具合はどう?」

 

「誰がお頭だ。俺はそんなんじゃない」

 

「だって、王女様の着けてた神器を盗んだ盗賊団の首領はカエルでしょ? だからお頭」

 

良い迷惑だ。『銀髪盗賊団』か『仮面盗賊団』で活動して欲しい。

 

「……で、何が分かったの? ただ事じゃなさそうだけど」

 

「教えない。理由はクリスも俺に隠し事をしてるから」

 

ちょっとムッとしたクリスではあったが、今度は……、

 

「ねえ、ユウはさ……。魔王を倒す気は無いの? もしかしたら、倒せるかもしれない力があるのに?」

 

どうだろうな……。俺の実力なんざ、幹部といい勝負ってところだ。それがラスボスまで行けるもんか……。それに、

 

「一回、魔王には会いに行きたいな。お茶菓子といいお茶でも持って、こう……バルコニーで語らうとか」

 

「……意味が分からないよ」

 

頭を抱えながら、呆れた様なクリスであった。

 

「一応、聞いてあげる。何のためにそんな事をするつもり?」

 

「……全部を知らないと、どう動いて良いか分からないから……かな? そうしないと、結局は前には進めない……と思う」

 

「それが……本来、あなたには不要な事だとしてもですか?」

 

突然、口調が変わったクリスに対して驚きを隠せなかったが、あまりにも真剣な表情だったので、こちらも。

 

「俺な……。”ここ”も結構好きなんだよ。俺らの言える事じゃないけど、”ここ”の在り方は酷く歪に感じる。まるで、魔王軍と敵対しているのが当然で、それ以外は考えない方が良いみたいにも見える時がある」

 

それを狙ってやってるのか、それともそうせざるを得なかったのか……。

 

「そうですか……。あなた以外は、そう感じないのかもしれませんね。私も少し動いてみますので、何か分かったら、その時は先ほどの話をして頂けますか?」

 

それに頷き、保健室から退室しようとしたところで、

 

「大丈夫でしたか!? まさか、お父さんの魔道具の副作用で体調が……」

 

「ユウ、病気なら大人しくめぐみんの家で休んでなさい! 私、治療は出来るけど、呪術なんて使えないから、病気は治せないわよ!」

 

「もし良かったら、私の家に来ませんか? めぐみんの家で、風邪がみんなに移っちゃいけないですから!」

 

めぐみん、アクア、ゆんゆんが騒がしく保健室へと入って来たので、

 

「大丈夫だって! お前らってホントに面白いよな」

 

「「「面白いってなによ(なんですか)!」」」

 

クスクスと笑っているクリスではあったが、どことなく安心したような感じだ。すると、

 

「あっ……! あの時の子持ちの人だ……!」

 

そこに現れたのは、ふにふらとどどんこであった。俺を”子持ちの人”とか呼んでいる。理由は推して知るべしだが。

 

「おや、私達が卒業して一年以上経っているというのに、いまだ卒業できていない、ふにくらとどろんこではありませんか」

 

それはもう挑発混じりに、”ふにふら”と”どどんこ”に、ご丁寧なあいさつをしていためぐみんであった。

 

「何よ! 子持ちとくっついたからって……。けど、めぐみん、どう考えたっておかしいのよ。あんな風に惚気話するなんて……」

 

嘘は言っちゃいないんだけどな。大人の姿にはしたし、解釈が天と地ほども違うだけで。

 

「……で、どうなのよ?」

 

「……どうなのよ。とは……その……」

 

伏し目がちにチラチラ俺の方を向いためぐみんではあったが、それを見て狼狽える二人を見て、ある決心をした。

 

「つまり、こういう事だ」

 

ポンと、めぐみんの肩に手を置き、身体強化を発動させる。17歳姿のめぐみんへと変化したのを確認させたのち、

 

「大人にしたってのは、こういうこと。変な勘違いはしないように」

 

説明しながら、先日の件について誤解を解くと、

 

「なーんだ! やっぱりそうだったんだ。おかしいと思ってたのよ、めぐみんだしね」

 

「そうそう。大方、見栄を張りたかったんでしょ? 分かる分かる!」

 

勝ち誇った雰囲気で、保健室から遠ざかるふにふらとどどんこ。そして、大人姿のめぐみんはというと……、

 

「おい、空気読まないのも大概にしろ。ここは黙ってれば良いところでしょう!」

 

「悪いが空気なんて読んでたら、悪人の相手なんて務まらねー。これから悪い事するから黙ってろってのを察して、黙ってられるか?」

 

お互い視線を合わせ、ここは譲れないといった気配で牽制し合ってはいたものの、

 

「でしたら、こうしてくれます! カズマですらドギマギしていたのですから、少しは反省するでしょう?」

 

腕を組んでくれるのは悪くはないが、どこかおかしい。

 

「一応、俺のイメージで修正したつもりだったが……、それでも無理だった。済まない……」

 

めぐみんから目を逸らしながら、謝罪をしていたが、何の事か分からないといった感じであった……。

 

「やっぱり例外なのかもな。けど、気を落とさないいいいいいい!!!?」

 

「ほう、身体強化の一種と言っていましたが、ちゃんと腕力も強化されていますね。……で? 何を修正したつもりですか? ちゃんと聞いてあげますから、答えてください」

 

にこやかな表情の大人めぐみんが、俺のこめかみにグリグリを繰り返している。これだと、喋るどころじゃないが……。

 

「もち……ろん……。胸囲をおおおおおお!!!?」

 

「そうでしたか。それは感謝します! お礼に今日という日を、一生忘れられない様にしてあげましょう!」

 

俺とめぐみんのやり取りを、アクア達は怯えながら見守っていたのだそうだ。




セイクリッド・ハイネス・クリエイト・ウォーター
適当にでっちあげた魔法です。あまり気にしないで下さい。

夢の中で戦ってたのは、ウォルバク様とレジーナ様ですね。レジーナ様はまだ名前だけなので、イメージでセリフを考えています。

しかし、この主人公、誰だろうと尻にしかれる運命らしい。おそらくゆんゆんだったとしてもそうでしょう。

ってか、シリアスというよりは、ダークな感じになってきてしまった。夢の設定についてはあまりツッコまないでいただけると助かります。
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