この素晴らしい世界にリリカルな魔導師を!   作:ゴマフアザラシ

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今回、二話に分けたのに、後編が過去最長になってしまった……。


アクセルの(男性冒険者にとって)一番長い日【後編】

とある喫茶店――そこは現在、『本日貸切』の札が掛けられており、誰一人として立ち入る事が許されなくなっている。

その中には、美貌と妖艶な気配を醸し出しながらも、処刑される寸前の囚人のように震えるサキュバス達と、この街の男性冒険者が一堂に会していたのであった。

 

「……さて。これからユウの対策会議を始める」

 

重苦しい雰囲気の中、この場を仕切るカズマが口を開く。

 

「対策会議つっても、どうするんだ!?」

 

「ああ……! 事情を説明すれば分かってくれる。あいつだって男だ。昨日のエロ話だって普通に乗ってきてたろうが!」

 

キースとダストがまずは穏便に事を進めるべきといった意見を出していたが、

 

「それは無理なんだ……。あいつは、ある馬鹿者(アクア)のせいで、悪魔への敵対心を刷り込まれてる。いつもウィズ魔道具店のバニルとドツキ漫才やってはいるが、それで済んでるのは相手がバニルだからだ。サキュバスのお姉さん達があんなの喰らったら、それこそ一撃で終わる」

 

ビクッとして緊張するサキュバス達。自分達は悪魔の中でも最下級に位置する存在であり、人間にすら後れを取るのは承知の上らしい。

そんな中、この場に似つかわしくない者が一人。

 

「吾輩、そろそろ帰っても良いか? ポンコツ店主とニート神に店を任せておくのは、(いささ)か不安なのだ」

 

後は好きにやれといったセリフを吐き、バニルが店から去ろうとはしていたが、

 

「バニル様……、どうかご慈悲を……」

 

サキュバス達が縋るようにバニルのそばで蹲っていたのであった。

 

「悪魔には悪魔の鉄則、そして理念があるのだ。弱き者は淘汰され、強き者に支配される。吾輩は日夜、人間の悪感情を食らうため、実に様々な人をおちょくり、からかい、コケにしている」

 

急に真面目に語りだしたバニルであった。だが後半の内容に関して、男性冒険者達はドン引きしていた。

 

「だがそんな行いをする以上、いつでも討伐される覚悟は出来ている。サキュバスは元来、男性冒険者にとって何より恐れ――」

 

「今度ウィズの店でいらない高級商品を大量に買い取るよ」

 

カズマからのたった一言。一瞬静まり返った後、

 

「汝、偉大なるお得様よ。いきなり吾輩が出ては、この街が壊滅しかねん。最後は吾輩が相手をするので、それまでは貴様らがどうにか足止めするがいい。この場で、あの凶悪魔道士と正面切って戦えるのは吾輩くらいであろう」

 

「俺達だってあいつと、まともに戦う気なんてねーよ! それにこの戦い、勝つのが目的じゃない! サキュバス達が別の場所に隠れるまで、時間稼ぎが出来ればいいんだ!」

 

そう、それが勝利条件。相手を倒すのではなく、あくまでサキュバスが身を隠すこと。そのための捨て石になる覚悟は全員が持っていたのであった。

 

「けど、できれば被害は少ない方がいい。ここはまず――」

 

 

 

 

 

 

 

 

いつも通りに起床し、朝食を作り、それをみんなで取る。ただしカズマは昨日言っていた通りで帰宅しなかったらしい。まあ、どこかに泊めて貰ってるだろうが。

装備を整え、屋敷の外に出て探索を開始する前に簡単なミーティングを開いていると、

 

「朝早くからごめん。うちのパーティーの男連中見なかった?」

 

珍しくリーンが屋敷を訪ねて来たのであった。ダストとキースはともかく、二人に比べたら品行方正のテイラーですら、昨日は宿に戻っていないらしい。

 

このタイミングでこれとは、不安はあるが……。

 

「嫌な予感がするわね……。女神としての私の勘が、良からぬ事態を感じ取っているわ」

 

アクアが急に真剣な表情で、今回は一筋縄ではいかないといった説明をしていた。けど現時点では、早計ってものである。

 

「まあ、テイラーも朝まで飲み明かしたい時だってあるだろ? 案外、カズマ達とどっかで雑魚寝でもしてるかもな」

 

「だったら良いけど……」

 

不安が拭えない様子のリーンであった。仕方ないだろう。パーティーメンバーの姿が誰一人として見えないのだから。

とりあえず、冒険者ギルドまでは全員で移動して、そこからダクネスは事情説明、それ以外はそこでばらけようかといった段取りである。例の女の子は一人にしておくわけにもいかないので、一緒に連れて来ているのであった。

 

魔法に関しては、まずはあまり使わずに捜索を進めようと考えている。冒険者ギルドに報告しているとはいえ、無暗やたらにエリアサーチを使って住民の不安を煽るのは得策ではない。

まずは、聞き込みや隠れやすそうな裏路地を探索しようとしていたところ、

 

「ここにいたか。屋敷にも誰もいなかったからな。随分と探し回ってしまったぞ」

 

「あのなあ……。リーンが心配してたけど? 珍しく、お前まで帰っていないって」

 

どうやら先ほどのアクアの勘とやらは、ただの杞憂であったらしい。俺を探してたらしいテイラーに、いつもと変わらぬ様子で呼び止められてしまったのであった。

 

「そういえば、カズマはダスト達と?」

 

「ああ。朝まで飲み明かしていたらしい。運ぶのに随分と苦労させられた」

 

成程。あの三人に付き合ったのは良いものの、最終的な面倒はテイラーが見る破目になってしまったって事か。

 

「すまないな。うちのリーダーが世話になった」

 

気にするな、と言わんばかりのテイラーだったが、このままでは気が済まないので、

 

「何か飲むか? 朝だから酒じゃなくて、ジュースだけど」

 

なんて提案をして、飲み物を買おうとしたところ、テイラーが良い店を知っているので自分が行くと言い出したので、お金だけを渡してお願いし、数分後。

 

「なんだ? 俺の分まで買ってきたのか? 別にいいのに」

 

「昨日カズマから聞いたが、今日は朝から歩きっぱなしだろう? 飲んでくれ」

 

確かに丁度喉が渇いていたところだ。なら良いかとコップを口に運ぶ寸前。

 

「ああー! やっと見つけた。テイラーどこ行ってたのよ?」

 

息を切らせながら、リーンが俺達の元へやって来たので、

 

「まあ、落ち着けって。これでも飲んで」

 

そう言って、リーンに先ほどの飲み物を差し出した。あちらも疲れていたのだろう、一気に飲み干してしまい……、

 

「……あれっ!?」

 

一瞬、戸惑った感じではあったが、そのままリーンが倒れる様に眠ってしまった。とりあえず横にして、呼吸や脈を確認し、問題はない様であった……が、俺自身、専門ではないのでアクアに一刻も早く診せる必要がある。そして――

 

「テイラー、お前もしか――」

 

飲み物を持ってきた男性は、リーンの容態を確認している最中に忽然と姿を消してしまったのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「すまない。作戦は失敗に終わった……」

 

「まさかあのタイミングで邪魔が入るなんてな」

 

喫茶店に戻ったテイラーが経緯を説明していたが、作戦第一弾で済めばそれが一番であった。対象を眠り薬で次の日まで眠らせ、そのうちにサキュバス達は避難できる。これが失敗した以上、相手もそれなりに警戒するはずである。

 

「作戦第二弾で行く。アーチャーのみんなは準備してくれ!」

 

カズマが重苦しい声で、次の指示を出していたのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「どうだ? リーンは変な薬でも盛られたか?」

 

「……大丈夫よ。ただの眠り薬みたいね。明日の朝には目覚めるわ」

 

アクア達と急いで合流し、冒険者ギルドでリーンを診て貰っていたが、どうやら命には別状がないらしい。それは幸いだったが、問題は……。

 

「しかし……、テイラーがお前に一服を盛ろうとしたとは……。信じられん」

 

「俺だってそうだ。一体何が……」

 

シンと静まり返ってしまった、その場の全員。その中に在ってアクアのみが緊張した面持ちで口を開き、

 

「……みんな、落ち着いて聞いてね? この私の曇りなき眼には、事の詳細がはっきりと見えているわ……」

 

いつものアクアとは違う、そう思わせる何かを俺達は感じ取っていたのであった。

 

「多分、テイラー達はサキュバスの魅了(チャーム)で操られているわ!」

 

「「「「なっ!?」」」」

 

アクアから、にわかには信じられない発言が飛び出していた。続けて、

 

「周りを見なさいな。冒険者ギルドって、こんなにも静かだった?」

 

アクアの言に従い、冒険者ギルド、そして併設された酒場を見まわすと、確かにいつもと違う。一番の違いは男性冒険者の姿が見えない事だ。何人かはいるものの、それにしたって微々たるものだ。

 

「まさか……アクセルの男性冒険者が丸ごとサキュバスに操られていると……!?」

 

それに頷くアクア。当の本人も少しばかり悲し気な表情であった。信じたくはないのだろう。

 

「それでね。サキュバスの狙いはおそらく……、ユウよ!」

 

「何で俺が……」

 

あのサキュバスが俺を陥れようとしている可能性はなくはないが……、それにしたってこんなに大掛かりな……。

 

「あなたは自分の現状を分かっていないわ。お互いに全力じゃなかったけど、魔王より強い、魔王の娘と戦って生きてるのよ? 魔王軍にとっては危険人物と思われていても不思議はないの」

 

本当にいつもと違い、理論的に物事を説明しているアクアであった。この姿なら女神と信じてしまっても、誰も不思議には思わないだろう。

 

「サキュバス達だってそんな人間が近くに居るとなったら、気が気じゃないはずよ。けど、正面からじゃ絶対に敵わない。だったら……」

 

「冒険者を操って同士討ちさせる……か?」

 

めぐみんやダクネス、ゆんゆんでさえ、血の気が引いたように真っ青になっていた。

 

「な、なんて……卑劣な!? こちらは手が出せないのを分かっていて、そんな……」

 

「何という事だ!? これは……簡単な討伐などではない! アクセル壊滅の危機だ!」

 

「まさか……、この街の男性冒険者は、ほぼ全員……!?」

 

可能性としてはあるだろうが、まだ推測の域を出ていない。もしかしたら、操られているのはテイラー一人かもしれないのだ。だが、

 

「……念のため、街の住人には外に出ない様にアナウンスをした方が良いかもな。そして、女性冒険者もギルドに集まってもらって、万が一の場合は対処に当たるように要請する必要があると思う」

 

これが、最善手だろう。あとはアクアの推論の検証をしなければ……。

 

「アナウンスの後は、俺が囮になって一人で街を歩いてみる。もしアクアの言う通りなら、相手が仕掛けてくるはずだから」

 

「いくらなんでも一人では危険です! ここは何人かで固まって行動した方が安全性は高まります!」

 

「うむ。盾替わりであれば、私に任せろ! なに、むしろ私にとっては好都合。サキュバスに魅了され、肉欲を露わにしたケダモノに集られ、拘束されたうえで蹂躙される……。くっ……!」

 

……ダクネスは留守番してて欲しいなあ。もう妄想で無茶苦茶にされるの想像して、震えながら顔を赤くしてるよ。

 

ギルド内で準備を整えつつ、打ち合わせをしていると。

 

『緊急警報! 緊急警報! アクセルの住民は指示があるまで、屋内に待機していてください! 繰り返します……』

 

アナウンスが鳴り響いたので、今度は自分の番とばかりに外へ飛び出そうとすると、

 

「今回だけは連れて行けないんだ。お願いだから、ここで待っていてくれないかな?」

 

またしても女の子が俺のズボンの裾を握って、その場を動いてくれないのであった。

 

「ならせめて、そっちのお姉さんと一緒にいてくれないか?」

 

その一言で、渋々といった感じではあったが、めぐみんの方へとくっついていたのだった。

 

「すまないな。その娘の事を見ていてくれ」

 

「ええ! 任せてください!」

 

元気よく返事をしてくれためぐみんや他のみんなのと一緒に、街へと飛び出した。またアクア達には、女の子の護衛と万が一暴走した場合に備えて、俺から見える位置にいる様にしてもらいながらの捜索で、話がまとまっていたのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

駆け出しの冒険者の街アクセル。いつもは冒険者ばかりではなく、それに関連する人々、行商などで活気に満ち溢れている街並みが、信じられないくらいに静まり返っていた。幼少時からこの街に住むダクネス曰く、この様なアクセルは記憶にないらしい。まさに前代未聞の事態である。俺はというと、前もってアクアに支援魔法をかけて貰っているが、あちらは女の子の護衛を優先にするように、お願いしている。

 

「……さて、どう来るか」

 

現在、俺が単独で街を歩き、その少し離れた後方を他のメンバーが歩いている。ダクネスは俺の近くが良さそうだったが、その防御力はめぐみんやゆんゆん、そして女の子に危害が及ぶ時に使うべき、といった説得で納得してくれた。

俺達以外、誰も歩いていない街道だというのに、まるで戦場の様な緊張感が辺りを支配している。考えたくはないが、アクアの推論は正しいかも知れない。

 

『マスター。3時の方向。距離200』

 

デバイスからの警告に咄嗟に反応し、迫りくる矢を弾き返したものの、どうやらこれだけではないらしい。連続で俺を狙って矢が放たれていた。地面に落ちた矢を拾って確認してみると、

 

「矢じりが付いていないな……。これは、何で?」

 

しかし、矢の先端には矢じりではなく短い針のようなものが、括り付けられてる。それが何を意味するかも気になるが、今回は信じたくはないがアクアの推論が当たったらしい。

今の俺はサキュバスに操られているアーチャーの標的となっている状態。幸い、後ろのみんなは狙われていないらしい。ならば……。

 

「悪いが、お前は索敵に全リソースを割いてくれ。その間はこっちを使う」

 

『了解しました』

 

ファルシオンへと指示を出し、そちらは待機状態で索敵を任せ、自分はストレージデバイスを取り出した。

そして、お前達の標的はここだと言わんばかりに足を止め、あちらが仕掛けてくるのをジッと待っていたのであった。アクア達は上方からの狙撃の的にならない様に、狭い路地裏へと身を隠してもらっている。

 

この場に立ち止まって、どれだけ経っただろう。たった一分だったかもしれないし、もう一時間も経っている様にも感じる。その間、自分自身も神経を研ぎ澄まし、狙撃へ対処できるように準備を行っていた。そして……、

 

『マスター。7時の方向、距離350』

 

矢が飛んできた方向へ向き直り、瞬時にストレージデバイスの先端を彼方の相手へと構え、

 

「『スナイプショット』」

 

襲い掛かる矢と、ファルシオンの索敵による狙撃手の位置。その二つを自分の頭の中で一直線に結び、一発の直射型魔力弾で、矢と狙撃手の両方を無力化する。

 

……魔法の発動自体はストレージがやっぱり早いか。訓練用の魔力弾だから、あっちの怪我は無いと思うけど……。

 

『2時の方向。距離300』

 

その後も狙撃手の攻撃が止むまで、こちらも攻撃を続けていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、サキュバスの喫茶店では。

 

「……狙撃に……カウンター合わせて……全部、倒したあっ……!?」

 

「フハハハハハ! 素晴らしい悪感情、感謝する。あの凶悪魔道士、こと狙撃に関しては痛い目を見たようだ。あれは一朝一夕で身に付く技術ではないな」

 

「そ、そういえば……、こめっこが攫われた時にそんなの言ってた気が……」

 

カズマがバニルの持ってきた水晶玉で現状を確認しながら、作戦の成り行きを見守っていたのであった。遠距離からの複数人による狙撃、それを当然のように捌いた者に対する畏怖を感じざるを得ないのだろう。

 

「キース……、お前の犠牲は無駄にはしねえ。後は俺達に任せろ!」

 

「カズマ! 指示をくれ!」

 

作戦が破られたにも関わらず、男性冒険者達の士気は衰えるどころか、ますます高まっている。それもひとえに彼らの楽園を守るためである。

 

「……すまない。お前たちの命、俺にくれ!!」

 

「「「「おおっー!!」」」」

 

涙を流しながらカズマは次の作戦を実行に移すのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

狙撃が止み、針が付けられた矢をアクア達の元へと持って行き見せてみると、

 

「これは……、液体が付着していますね?」

 

「普通に考えたら毒だろうけど……」

 

毒矢とか一発でも掠ったりしたらまずかったかも知れない。俺を狙ってるなら、それだけでも命の危険に晒されるくらいの猛毒の可能性もあり得る。そう説明すると、

 

「……んっ!」

 

えー、ダクネスさんが、さも当然のように針を自分に刺していました。いくらアクアがいるからって、ドMここに極まれりである。

 

「これは……ただの睡眠薬だ。致死性でもないでもない」

 

ドMさん、もといダクネスは各種状態異常耐性のスキルを修得しているらしく、この程度なら効きはしないそうだ。針を刺した瞬間、眠くはなったそうだが耐えられるとのことだった。

 

「……また睡眠薬。もしかして、連中は俺の捕獲が目的か?」

 

「ありえますね。倒すよりも、捕まえてから魅了(チャーム)で、自分達の兵隊にした方が良いと考えているのでしょう」

 

その為に、カズマ達まで利用するか……。ただでは置かない……!

 

「バカねえ……。ユウさんにそんな干渉効かないのに。まあ、知ってるのは私とカズマくらいだけど」

 

「……? 何で俺だと効かないんだ? 俺、プリーストでも何でもないけど」

 

「それはね……。私が水の女神、アクアだからよ!」

 

「……そっか。ありがとうございます……」

 

今日のアクアは冴えているので、茶化す気にはなれない。長い事生きてるから、色んなのが出来ても不思議はないし。

 

「次はどんな手で来ると思いますか?」

 

ゆんゆんもそこは気になるらしい。搦め手、そして遠距離からの攻略に失敗。なら次は……、

 

「おそらく、大人数での物量戦の可能性が高い。狙いは俺一人、だったら数で押し切ろうってな」

 

「なら、今度は私の出番もありますね」

 

今回は自分にも出番とばかりに張り切っていたゆんゆんではあったが。

 

「いや、みんなは引き続き、後ろで見守っててくれ。ついでに自分の周囲の警戒も」

 

こちらの魔法には非殺傷設定なんてものは存在しない。もしもゆんゆんが戦闘になれば、操られている冒険者達も負傷する可能性がある。そう説明すると、渋々ながら引っ込んでくれたのだった。一番の懸念はアクア達が人質に取られる事である。

 

おそらく、大人数で襲ってくるのであれば、相手は広場に陣取っているだろう。アクアが言うには、チャームはそこまで強い物ではないので、一発どつけば正気に戻る可能性が高いらしい。なら、敵に回った冒険者を気絶させつつ、サキュバスを追い詰めていくのが良いはずだ。

わざと連中の誘いに乗るために、街の広場に向かうと、

 

「……やっぱりか」

 

もう、見知った顔ばかりでありましたよ。戦士系だけじゃない。魔法使い、盗賊まで揃い踏みであった。だが、その中にカズマの姿はない。これの意味するところは……?

とはいえ、考えてばかりじゃ先には進まない。ゆっくりと歩を進めると、

 

「うおおおおおお!!」

 

雄たけびと共に、一人の戦士系と思しき男が突っ込んできていた。こちらは魔法を使って吹っ飛ばしたりしたら、街にも被害を出すので全力では戦えない。だったら、

 

「頼むぞ。神刀」

 

この世界に来てから、随分と世話になっているぴよぴよ丸。これで相手の武器と鎧を断ち切り、

 

「ぐっ!?」

 

腹に向けて拳を突き出すと、相手はうめき声と共にピクリとも動かなくなってしまったのであった。

 

……おかしい。人海戦術なら一斉に掛かってくるはず。何を狙っている?

 

その後も複数人で襲い掛かってくることはあっても、俺を倒すよりどこかに誘導しているような感じで動いている男性冒険者達であった。

 

 

 

 

 

 

 

広場に集まった男性冒険者達の後方では……。

 

「なんだ……あれ……!? 魔法使いだよな!? 何で戦士を素手で倒してるんだ!?」

 

「もう少し、こちらに誘導しろ。そうすれば……!」

 

「早くしろ! 戦線が持たない! なんなんだ!? アクセルの魔王、いや……大魔王か……!?」

 

彼らが相手をしているたった一人の少年に、かつてのベルディアの様な恐怖を感じ取っていたのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ユウさん、あれで手加減してるわね?」

 

「ああ……。人間にも街にも被害を与えない様に立ち回っている。そこは流石と言っておこう」

 

「何というか……、本当に私達の出番はありませんね?」

 

「うん……。でも、ユウさんって本当に別世界の人みたい」

 

俺について来ていたアクア達が暇すぎるのか、ほのぼの空気で雑談をしている様だった。こちらとしては相手が何を狙っているのかが気になっているのだが……。

 

戦闘をしばらく続け、周りに横たわっている冒険者はざっと20人程度。仲間を倒されること――これが俺の行動範囲を制限するため布石だったらしい。俺がある地点に到達した時に、

 

「今だ!」

 

何らかの指示を出していたリーダーらしき男。すると、

 

「「「「『フリーズバインド』ッ!!」」」」

 

「「「「『バインド』ッ!!」」」」

 

魔法使いと盗賊が一斉に俺へと向かって、拘束するための魔法とスキルを放っていた。当然、首から下は氷漬けの縄のグルグル巻き状態で、まったく身動きが取れない状態となってしまう。

 

「よし! 一斉に掛かれ!!」

 

四方八方から男性冒険者達が俺へと襲いかかる。おそらくはこれを狙っていたのだろう。

 

「ゆ……ゆんゆん、早く援護を……!?」

 

自身は爆裂しか使えないめぐみんは援護を要請していたが、次の瞬間。

 

「『スティンガーブレイド・エクスキューションシフト』」

 

頭上から俺の同心円状へと落下する百を超える飛翔型の魔力刃。当然、非殺傷設定なので喰らった冒険者達は怪我など微塵もなく、ただ気絶している。

だが、自分は身動きが取れないので、大声で、

 

「アクア、悪い。魔法とバインド解除してくれ!」

 

ポカンとしていた後ろの面々であったが、その一言で、我に返ったらしい。こちらへ近づき、拘束を解いてくれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃のサキュバスの喫茶店。もう人数も少なくなった、その場所は。

 

「……あれだけの人数をものともせずに……倒しただと!?」

 

「おお……! これはまた上質な悪感情である。あの小僧もよく言っていたであろう。”勝ったと思った時が一番危険”だと。その通りの結果になってしまったな。フハハハハハハ!!」

 

「こっちに残っているのは……、俺と……ダスト? 何でお前がいるんだ?」

 

カズマもそれは疑問を持ったようだ。てっきりさっきの冒険者達と一緒に出撃したと思っていたらしい。

 

「……カズマ、悪いな。これから俺のやることは、他言無用で頼めるか?」

 

いつもと全く雰囲気の違うダストに、思わずゴクッと喉を鳴らしながら頷くしかないカズマであった。

 

「こりゃあ丁度いい。借りてくぜ」

 

それは店の中にあった、鉄でできた一本の身の丈以上の棒。それを携え、カズマの方を振り向き、

 

「さらば……、なんてのは言わねえ。楽園(サキュバスサービス)でまた会おうぜ!」

 

それは覚悟を決めた漢の顔。ここで力尽きようとも、前のめりで倒れる。そう背中で語っているダストであった。

涙ながらに見送ったダストが店を出てすぐ、

 

「バニル! ありったけの魔道具と、役に立ちそうなものを何でもいい。持って来てくれ!」

 

「ふむ。お得意様よ、良い提案があるのだが――」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

広場に倒れている冒険者達はギルドに任せるとして、大体は魅了された連中を倒したという事で、捜索を本格的に始めるかといった話へとなっていた。

 

「すまないな、ダクネス。魔力刃で地面に傷がついちまった」

 

「……気にするな。むしろこれだけの事態で、この程度で済んでいるのが奇跡の様なものだ。これならば損害賠償も発生しないだろう」

 

それに関しては、幸運ではあるが……。

 

「許せないわね……! 見てなさいよ! 必ず私が退治してやるわ!」

 

「ああ……! それは同感だ。なんとしてでも見つけ出して、落とし前をつけさせてやる!」

 

アクアと俺がサキュバス討伐への決意を固めていると、

 

「まさか……そんな……ダストまで……!?」

 

めぐみんの驚愕の声でそちらを向くと、いつもとは明らかに違うダストがそこに佇んでいた。一番の違いは自分の身長以上の長い棒を持っている。ただそれだけだというのに、その立ち姿は微塵の隙も無かったのである。

 

「……みんな下がってくれ。いつもとは違う……」

 

俺の声から、ただ事ではないと感じたのだろう。全員が無言で従ってくれていた。

鉄の棒ならぴよぴよ丸で斬り裂いて、武器を破壊した後でも気絶させればいい。だが、その考えは甘すぎた。

 

なっ……!? 速い!?

 

ぴよぴよ丸で鉄の棒を狙おうにも、その”引き”の速さが常軌を逸していた。あちらは長物だというのに、こちらの攻撃は空を切るばかり。鉄の棒はダストの技量によって、槍そのものと変貌していた。

 

「『シュートバレット』!」

 

ならば、間合いの外からの魔力弾ならば……、そう考えて、総数十五の魔力弾をダストに向けて放ったが、

 

「甘えっ!」

 

それはまるで舞のような流麗な槍捌き。ダストの視界の外も含めて一斉に襲い掛かった魔法を、全て叩き落していたのであった。

 

「ねえ!? 何よあれ……。ダストってあんなに強かったの!?」

 

「信じられません!? あの槍捌き……、ユウを超えて……」

 

めぐみんの推測は間違ってはいない。俺の場合、槍術とはいうものの、杖を効果的に使うための補助のような意味合いが強い。本当に鍛え上げた槍使いには劣る。それは分かっていたが……。

 

……何者だ? これだけの腕を持ちながら、駆け出しの街に留まり、しかも普段は槍を使用してはいない……か。

 

ダストの素性について、一瞬思案してしまったが、今はそれよりも目の前の相手を倒すのが先決だ。

 

空に上がって、間合いの外から攻撃するか? いや……、操られているのなら、飛んだ瞬間にアクア達に襲い掛かる可能性も捨てきれない。ここは地上に留まるのが得策。……なら、あれだけの槍使いには一か八かの賭けになるか……。

 

ダストは槍を水平に構え、腰を落とし、ここからでも分かる集中力を見せている。おそらくは必殺の一撃、それを狙っているはずだ。自分のもそれに応える様に、腰を落としデバイスもモードリリースにして、両手を空にして構えている。

数秒の後、双方が目を見開き、ダストの槍術の一撃が俺へと襲い掛かる。

それは、目で追っていては捕らえられない程の瞬きの突き。目に映った瞬間――それは相手を貫き、勝負が決まっている証拠に他ならない。その突きを、

 

――何とかこれで逸らしてくれ! 『ラウンドシールド』。

 

通常なら全身を守れるほどの大きさに展開するシールド。それを左手の手のひらサイズまで圧縮し、ダストの狙っている個所を防御して攻撃を逸らす。その刹那、相手の懐に飛び込み右拳に魔力を込めて、アッパーカットの構えを取る。

俺の右拳には魔力のスフィアが展開し、

 

「『ブラストカノン』ッ!」

 

アッパーに乗せた零距離砲撃を空に向けて放ち、ダストを下すことに成功したのであった。

 

……冷や汗が止らない。あの一撃、棒じゃなくて本物の槍だったら、腕ごと吹っ飛ばされていたかもしれない……。

 

ダストの最後の一撃に驚愕する他なかった。

 

「ちょ……!? 凄い汗よ! 大丈夫なの?」

 

「すまん。左手診てくれないか? もしかしたら、ひびくらいは入ってるかもしれない」

 

アクアが心配そうに俺の傷を確認しているが、衝撃で一時的に痺れているだけで、時間が経てば普通に動くようになるらしい。

 

「よくあの攻撃を見切れたな? まさかあれ程とは……」

 

「目は口ほどに物を言うってな。攻撃直前の視線の位置で、どうにか先読みできた。けど、それが外れてたら……」

 

おそらく、結果は真逆になっていただろう。それほど拮抗した一撃だった。

俺の残り魔力ももう少ない。こんな時にカズマがいてくれればと考えてしまう。そして、これで打ち止めになってくれれば……と、そんな淡い期待は最悪の来訪者と共に打ち砕かれたのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「『スティール』ッ!」

 

聞き覚えのある声に反応して自分の装備を確認すると、(ぴよぴよ丸)を奪われていた。それをしている隙に相手は三回連続でスティールを行い、俺の武器一式が奪われてしまった。そちらを向くと、

 

カズマ……、いやあれはバニル仮面? いや、違う。あれは王城で着けていた物じゃなくて、本物のバニル仮面か……!?

 

カズマが自身の顔に着けている仮面は、いつぞやの量産型バニル仮面ではなく、額にはっきりと”Ⅱ”の文字が浮かんでいる、正真正銘オリジナルの仮面である。

 

「カズマ……、いや、バニルか。何のつもりだ?」

 

俺の問いかけを意にも介さずに、一足飛びで懐へと潜り込み、

 

「『テレポート』ッ!」

 

おそらくは紅魔の里でのレベル上げの後に修得したテレポートだろう。俺はバニル仮面を被ったカズマにアクセルの外へと飛ばされてしまったのであった。そこまで遠くではなく、アクセルの外壁が遠方に見えている。

 

そして、その場はたった二人になり、お互いを視線だけで牽制し合っていた。こちらから一言。

 

「……今回の黒幕は全部お前か? バニル」

 

「ふむ。そうだと言ったら、どうするのだ?」

 

カズマの口を介して、バニルがその問いかけに対して答える。おそらく今のカズマは、バニルに取り憑かれてしまい、逆らえば激痛が走るために、仕方なく従っている状態だろう。

 

「……前に言ったよな? 俺の周りで下らない真似をしたら、お前を殺し尽す……って」

 

目の前の悪魔に対して、初めて本気での敵意を露わにしたのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(何なんだ!? こっちを見てるだけだろ!? 足が竦んで動けねえ!?)

 

「あの凶悪魔道士、完全に吾輩を『敵』と認識した様であるな。ここまでとは思わなかったが。人間であった頃のウィズ以上かもしれんな」

 

(……具体的な例で教えてくれませんか? バニルさん)

 

「そうだな……。年老いた現在の魔王であれば、いい勝負になるかもしれん。魔王の娘には及ばんが、一時的にならば、いつか聞いた限界突破(リミットブレイク)とやらで拮抗できよう」

 

(……つまり、今のあいつを相手にするのは、魔王と戦うのと同じですか?)

 

「その通りだ。おおっ! 素晴らしい悪感情である。貴様の中に入った甲斐があったわ。フハハハハハ!」

 

カズマとバニルはお互いに会話をしながら、現状を確認していたのだった。後にカズマは語っていた。あれほど後悔は人生の中でもただの一度きりだったと。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さてと、武器は全部奪われてアクセルにある。しかもばら撒いた魔力もアクセルにあるので、集束砲も使用不可。こちらの魔力は残り少ない。あちらは、ちゅんちゅん丸にスクロール、石みたいのが見えてるから、マナタイトも所持しているだろう。だったら、戦闘時の選択肢は限られる。

つまりは素手でのクロスファイト。接近しての殴り合いだけである。

 

「はああああああ!」

 

気合と共に、カズマの元へと駆ける。カズマはちゅんちゅん丸を鞘に納めたまま、脇構えをしていたが、

 

「『烈風刃』ッ!」

 

紅魔の里で俺が教えた、風魔法加速式居合斬りを仕掛けてきていた。名前はオリジナルらしい。

 

「構わずに突っ込んで来た……か? いや」

 

バニルが無策で飛び込んで来たとでも思ったらしいが、腕周りにバリアを張りながら防ぎ、バニル仮面に向かって魔力を込めた渾身の拳を突き立てたが、

 

硬い……!? これって……。

 

仮面の硬さに思わず、後退してしまったのであった。消耗して出力が下がっているとはいえ、仮面を砕くことが叶わなかったのである。

 

「小僧。貴様、クルセイダーのスキルを修得したか?」

 

(ああ。魔力が多くないからな。ダクネスから防御のパッシブ系スキル教えてもらった。ちなみにまだスキルポイントは余裕がある)

 

「ならば、吾輩の『バニル式殺人光線』でも修得してみるか? 人間では貴様が初めてのはずである。もっとも貴様が修得したところで、撃てはせぬだろうが」

 

何やらバニルが口走っているが、あの硬さはおそらくダクネスから教わった防御系スキル。確か装備品にも適応されるはず。これは意外に厄介だ。殴ってどうにかなる相手じゃない……か。

 

その後も、バニルinカズマは中級魔法やクリエイト・アースゴーレム等を主軸とし、それをマナタイトで連発する戦法を俺に対して繰り出していた。自分に近づかせない様にしているのは、仮面を破壊されるのを警戒しての事だろう。

 

「呆れた戦闘能力であるな。ほぼ満身創痍に近いというのに、造り出したゴーレムをここまで破壊してのけるとは……」

 

「……ゴーレムの大群とか、昔を思い出したっての。懐かしいのを思い出させてくれた礼だ。こっちも今できる全力でやってやるよ」

 

眼を閉じ、集中。そして、詠唱を開始する。

 

「咎人達へ処断の刃を」

 

カズマでさえ初めて聞く詠唱。それは周辺魔力を集めるキーワード。

 

「星よ集え、万物を断ち切る刃となれ」

 

その魔力は、集束砲のような球を形成することなく。

 

「斬り裂け、光剣」

 

それは手の中に納められた魔力だけで出来た剣。デバイスを柄代わりにしているわけでもない、剣の形をした純粋な魔力の塊である。

その光景を目の当たりにしたカズマとバニルは。

 

(…あれ、抜剣じゃねーか!? 杖なくても使えるのか!?)

 

「ほう。当然と言えば当然ではあるが、威力はシルビアの時よりは低いであろう。今ここにある魔力を掻き集めて、どうにか形成しておる状態だ。吾輩の仮面だけを破壊するのであれば十分であるが」

 

こちらとしては、これが最後の攻防となる。これでダメならこちらの敗北が決まる。

 

……負ける事なんて考えるな。戦うからには勝つ……! そのための魔法だ。

 

再度、ゴーレムの合間を縫ってカズマの元へと駆けて行き、

 

「これで、終わりだ!」

 

俺の斬撃と共に真っ二つに割れた仮面が宙を舞っていた。これで終わると一瞬の安堵。カズマは倒れこみ、おそらく気絶している。しかし、

 

「フハハハハ! 倒したと思ったか? 残念でした。吾輩はここにおる」

 

その言葉と共にバニルが体を再生させて、俺を後ろから羽交い絞めにする。

 

なっ……!? 仮面は斬ったはず!?

 

驚愕はそれだけではなく、倒れながらも顔を上げたカズマも”Ⅱ”の文字がある仮面をつけていたのであった。

 

カズマは倒れこみながらも、俺の足を掴んでいる。それだけで力が抜けていくのが感じられてしまったのであった。更に、魔力をほとんど消費してしまっていた俺は程なくして意識を失い――

 

 

 

 

 

 

 

「フハハハハハ! 小狡い手段であるな、小僧。凶悪魔道士の接近前に、量産型バニル仮面に着け替えて置き、それを斬らせて、本物の吾輩は後ろから羽交い絞めにする。そして、貴様が隠し持っていた”Ⅱ”の文字を掘った量産型バニル仮面を再び着けた後、わざと見せて動揺を誘い、その隙に全力のドレインタッチでこやつの意識を奪うか」

 

「絶対こいつとはもう戦わねー! あんなの消耗してなきゃ勝てねーだろ!」

 

「凶悪魔道士に睨まれただけで、ちびりそうになっていた小僧よ。貴様の目的は達せられた。サキュバス達は、捜索不可能な隠れ家へと全員、移動を終えた様である」

 

バニルが見通す力で顛末を説明すると。

 

「緊張の糸が切れて気絶しおったか。一人は魔力を吸われ立ったままの気絶。もう一人は心身消耗による気絶か」

 

バニルはヤレヤレと言った感じで、街へと戻り俺達の惨状を仲間達に伝えていたのであった。

 

 

 

 

 

後日、ウィズ魔道具店にて。

 

「諸君。人というものは会話が成り立つ種族である。吾輩と話をしよう」

 

「そうだな。会話は重要だよな」

 

「そうね。やっちゃいなさい」

 

バニルが強力な呪力ロープで両腕を縛られ、あまつさえ、俺のレストリクトロックで本体の仮面を拘束され、その場に固定されている状態である。

 

「……サキュバス達は自分のとこの領民で、助けてくれって頼まれたから、あそこまでの騒動を起こしたって?」

 

「あんたにしては割とまともな理由ね? ついでに悪感情を吸い取るのに色々やってたんでしょ?」

 

店の床に正座しているバニルであったが、俺とアクアに責めたてられて、たじたじとなっていたのであった。

 

「なあなあ、アクア。ゲームをしないか? コイツの残機数当て。予想と近いほうが勝ちって事で」

 

「いいわね。どうせ仮初の体だし、やっちゃいましょうか!」

 

正に悪魔狩りである。その後、ウィズが止めに入るまでゴリゴリとヤツの精神を削ってやったのであった。

 

 

 

 

 

 

 

その頃の新・サキュバスサービス喫茶店では。

 

「俺達の勝利だああああああ! ひゃっはあああああああ!!」

 

今回の作戦に参加した男性冒険者の宴が開かれていたのであった。

 

「あの先生、無茶苦茶だ……。どうやったら狙撃にカウンター合わせられるんだ!?」

 

「あそこまでの総力戦で、負ける寸前だった。今回のMVP、カズマに感謝だ!」

 

「あれは言わば、この場の全員の勝利だ。俺だけじゃない! みんながいたから勝てたんだ!!」

 

それに拍手喝采を送る冒険者達。そして、

 

「皆様には、お世話になりました。お礼として、今日から一週間、料金七割引きでご奉仕させていただきます!」

 

そうして一週間、男性冒険者達は満足した表情で日常を過ごしていたのであった。

 




ブラストカノン:ブレイズカノンから炎熱を抜いた砲撃魔法です。

書いててバニル回になってしまったと思ってしまった。
今回、色々伏線を張るのもあって、長ったらしくなってしまいました。
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