やはり俺の仮想世界は間違っている。   作:なしゅう

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宗三左文字

「キリト、ちょっといいか?」

 

解散後、俺はキリトを呼び止めた。

 

「珍しいな」

「……珍しいか?」

「ああ、いつもならすぐお前は帰るからな」

 

思い返せば、俺は確かに解散と言われた次の瞬間には背を向けてたからな。

まあいい、俺はキリトに用があるんだ。

 

25層でドロップしたこいつについて相談するためだ。

 

「25層のラストアタックボーナス、伝えてなかったろ? これなんだよ」

 

そう言ってウィンドウを開き、刀を取り出す。

ズッシリとした重さが手に伝わる。

それをキリトに手渡す。

 

「刀……か? いつも使っているお前のより刀身が長いな、the・日本剣って感じだな。これがどうした?」

 

キリトは持ち上げてみたり、振ってみたりして感想を言う。

 

「そうだ。刀カテゴリーの武器なんだがな、それ、宗三左文字(そうざさもんじ)って言うんだが、多分織田信長の刀」

「へぇ……だから炎に囲まれたのか」

「本能寺の変の演出かもな。だとしたら切腹しないと……ってそれはどうでもいい」

 

慌てて方向修正をする。

キリトと話すとさらっと変な話題に飛んでいくことがよくあるんだよな。

ここからが本題だ。

「これ、装備するには要求値が後少し足りないんだ。敏捷だからまだ助かるんだが……」

「お前の敏捷で足りないのか? かなりの要求値だな」

 

しげしげと刀を見つめるキリト。

 

「ああ、俺のレベルだと1人だとモンスターのポップも遅いからな、だからーーーーーー」

 

メインアタッカーとなったからにはそれ相応の攻撃力を持たなければならないだろう。

今まではいいやと思っていたが今回ばかりはそうはいかない。

 

キリトとは友達、のはずだ。

だから、頼んでも断られることはない……はずだ。

 

不安に包まれる俺は、なんとか言い切ろうと次の言葉を口から出そうとする。

 

「だからーーーーーー」

「レベリングの手伝いか? いいよ、俺で役立てるなら」

「ぁ……お、おう……」

 

あっさりと返事来た、拍子抜けだ。

そのせいか変な返事をしてしまった気がする。恥ずかしい。

 

「なんだよ、エイトマンが強くなるのは攻略組として嬉しいし、エイトマンにお願いされるってのも珍しいしな」

「……あー、……なんだ、ありがとな」

「レベリング終わってからそれ言えよ」

 

ケラケラ笑うキリトを見ていると、本当にこいつとは友達になれたんだなと、俺は素直にそう思えた。

 

ーーーー

キリトと協力してレベリングを始めて2時間。

やっと俺は宗三左文字を装備するために必要な敏捷値に達した。

 

「ついに、ついに装備できたぞ……!」

 

こんな敏捷値をこの階層で要求してくる装備なんて、絶対強いに決まっている。

 

 

「俺の筋力値より高いな、この階層でそれはバケモノだろ」

「おかげさまでスキルポイントも増えたから後で何かに振っておくことにするわ」

「それより、どんな感じだエイトマン?」

 

食い気味に迫ってくるキリト。

俺も興奮気味だ。

装備した宗三左文字も抜刀してみる。

 

「おおっ、装備してる時としてない時じゃ、なんだか感じも違うな」

「前の刀とは刀身の長さも違うし、何より色がな。実際重い、キリト一回振っただろ?」

「多少は筋力も上げた方がよかったんじゃないのか?」

「かもな、今度は筋力上げることにするわ」

 

ブンブンと振ってみる。重いからいつもより少し遅い。

試しに近くにいたモンスターに向かってスキルを発動する。慣れ親しんだソードスキル

《緋扇》

 

「はぁっ!」

 

いつもの要領でスキルを発動させる。

大体なら三撃目でHPを0にできるが……ーーーーーー

 

「すごい攻撃力だな、二撃目で沈んでたぞ」

「刀ってのは本来攻撃力くそ高いはずだからな、今までの俺がおかしかったんだよ」

「敏捷高いエイトマンに更に攻撃力まで追加したら……鬼に金棒だな」

「悪いが俺は鬼なんて大それたものじゃない。鬼は鬼でも下っ端で桃太郎に真っ先に倒される役目の鬼だ」

「自虐が激しすぎるぞ!?」

 

キリトのツッコミがキレを増した気がする。誰のせいだよ。

 

「まあ、ボス戦までに装備できてよかったな」

「ああ……あー、ごほん、ありがとなキリト」

 

慣れない言葉に背中が痒くなる。

そんな俺にキリトは笑いながら、「どういたしまして」と言った。

ふむ、新しい武器。

強化とかもしていきたいな……。

ん? 前にキリトが武具店を紹介してくれるとか言ってたような……。

 

「そういえば、武具店紹介してくれるんじゃなかったか?」

「あー……」

 

ギクリ、といった表情で目をそらすキリト。

おい……まさか……。

 

「その、なんていうかな、あるにはあるんだけどまだないっていうか」

 

ジトーっとした目で、逸らさずキリトを見つめる。

 

「まだ武具店建ててないみたいですすみません」

 

観念したのかキリトが白状した。

 

「まだ建ててない……?」

「アスナの友人が、武具店を建てるらしいんだ、でもまだ先で……」

「なるほどな、まあいいよ。このレベリングを手伝ってくれたってことでチャラだ」

「だよな!」

「でも出来たらすぐ呼べよ」

「もちろん!」

 

スラスラと会話ができる。

楽しそうに話すキリトを見て俺も口を緩ませていた。

 

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