艦これ Short Story改《完結》   作:室賀小史郎

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睦月型駆逐艦のみ。

少し真面目なシーン、独自解釈含みます。


艦これSS改105話

 

 ○○鎮守府、二〇〇〇ーー

 

 埠頭ーー

 

 本日の任務を終え、艦娘達が休息の時を過ごす中、提督を始めとした複数の艦娘達が埠頭に整列していた。

 

提督「全員、黙祷!」

 

 提督の号令に整列する全員が一斉に黙祷を始める。

 

 今日、五月五日は『第三一号駆逐艦』、後の睦月型駆逐艦『菊月』がツラギ攻略作戦中、アメリカ空母『ヨークタウン』から放たれた艦載機から爆撃を受けて沈んでしまった日なのだ。

 

 一九四二年五月、第二十三駆逐隊はツラギ島を占領し、菊月や他の駆逐艦が敷設艦『沖島』へ補給作業を開始。

 ところがその補給作業中、アメリカ空母であるヨークタウンから飛び立った艦載機が菊月達に襲いかかった。

 菊月は沖島から離れて攻撃を回避しようとするも、瞬く間に右舷機関室に魚雷を受けてしまい、菊月の乗組員達は沈没を避けるために特設駆潜艇『第三利丸』によって曳航、擱座されるものの、沖島は菊月の乗員達を乗せてラバウルへと避難。

 菊月はやがて被雷による深刻な浸水で沈没してしまった。

 

 菊月沈没の報告を受けた重巡洋艦『加古』の当時の艦長であった高橋大佐は、

 

『小さき(ふね)に襲ひかかれる敵百機 掩護のわれは遠くにありしに』

 

 と記して菊月を偲んだ。

 

菊月「………………」

 

 菊月はいつものように静かに黙祷を捧げているが、その表情は複雑だった。

 

 それもそのはずで、菊月は一九四二年の八月から始まった『ガダルカナル島の戦い』において、アメリカ軍がガダルカナル島の奪還を達成したその翌年、一九四三年にアメリカ軍の手によって浮揚させられ艦内を調査されたのだ。

 しかも調査が終了すると、用済みとされた菊月は沈められることもなく、その場に放棄されたという経緯があるから。

 

菊月「………………」

 

 調査された時の菊月の辛さは菊月本人にしか分からない。

 しかし黙祷を終え、開かれたまぶたの奥には菊月の穏やかな眼差しがあり、それは海ではなく菊月の隣に向けられていた。

 

 あの日は一人で過ごした。

 更には一人で何十年という時を過ごした。

 でも今は……艦娘となった今は、大好きな姉妹が、大切な仲間が側にいるから。

 

 そして姉妹達とは反対の位置には、

 

提督「………………」

 

 心から慕う提督がいる。

 

 提督が黙祷を終えると、バチッと目が合ってしまった。

 菊月は慌てて俯いて目線を逸らしたが、

 

提督「生まれ変わってきてくれてありがとう、菊月」ナデナデ

 

 提督は今年もそう言って菊月の頭を優しく撫でた。

 

菊月「…………ふん////」プイッ

  (ありがとうは私のセリフだ……)

 

 そう心で返しつつ、チラリと視線をあげる菊月。

 提督は変わらずに笑顔を向けていて、菊月はその笑顔に釘付けになった。

 

菊月「………………////」

 

 ほんの少し……ほんの少しだけ、菊月は勇気を振り絞り、提督の上着の裾をキュッと握りしめた。

 提督はそんな菊月に『ちゃんとみんなここにいる』と伝えるように、菊月の小さく、それでも力強い手にそっと自身の手を重ねる。

 

菊月「大きくて温かいな、司令官の手は……////」

提督「お気に召してもらえたようで何よりだ」ニコッ

 

 提督の言葉に菊月は顔を更に赤くしてフンと鼻を鳴らすが、提督の手を払い除けようとはしなかった。

 

卯月「菊月〜、うーちゃん達も忘れちゃダメだぴょん!」

 

 すると今まで沈黙を保っていた姉妹や仲間達の中で、卯月がそう言って菊月の背中に抱きついた。

 

菊月「な、急に抱きつくな!//// 別にみんなを忘れてはいない!////」

睦月「そうかにゃ〜? ずっと司令官と見つめ合ってたみたいだけど〜?」ニヤニヤ

如月「司令官と二人だけの世界にいたわよね〜?」ニヤニヤ

菊月「わ、私はちゃんとみんなの存在を感じていた!//// そもそも私は司令官を見る前にみんなをーー」

 

 この目で確かめて、安心したんだ……そう言おうとした菊月だったが、菊月の羞恥心がその言葉を発することを阻止した。

 普段そんなことは言えないし、そもそも言わない菊月にとって、言いかけた言葉はとても恥ずかしかったから。

 

皐月「ボク達を〜、なんだって〜?」

水無月「何か言いかけたよね〜?」

文月「気になるぅ〜♪」

三日月「私も気になります〜♪」

菊月「う、うるさいうるさい!//// 私は何も言いかけてなんかない!////」

 

 本当は菊月が何と言おうとしたのか勘付いている皐月達。しかし菊月本人の口からその言葉が聞きたくて、皐月達はつい意地悪な訊き方をしてしまう。

 

望月「さっさと白状した方がいいと思うよ〜」

弥生「素直になるべき」ウンウン

長月「」コクコク

 

 弥生と望月の言葉に、比較的いつもは自分を擁護してくれる長月までもが皐月達の側へ付いてしまった。

 菊月は提督の背中へと逃げ込み、提督の背中に熱くなった顔を埋める。

 

提督「恥ずかしがることはない。こういう日くらい、素直な言葉を言ったっていいんじゃないか?」ナデナデ

菊月「…………恥ずかしがってなんかない////」

 

 素直になりきれない菊月に提督は思わず苦笑いを浮かべてしまう。

 

 すると、

 

睦月「き〜く〜づ〜き〜ちゃ〜ん♪」

 

 睦月がそう言って菊月に抱きついた。

 更には、

 

如月「菊月ちゃん♪」ムギュッ

弥生「菊月」ギュッ

卯月「菊月〜♪」ギューッ

皐月「菊月〜!」ギュムッ

水無月「き〜くちん♪」ギュッ

文月「菊月ちゃん♪」ギューッ

長月「菊月……////」ギュッ←流れでやるしかなかった

三日月「菊月姉さん♪」ギューッ

望月「菊月〜」ポフッ←便乗

 

 次から次へ姉妹達が抱きついてきた。

 そのせいで菊月はおしくらまんじゅう状態。

 

菊月「く、苦しいぞ!//// は〜な〜れ〜ろ〜!////」

提督「素直になれば放してもらえるのではないか?」フフフ

菊月「〜〜〜〜////」

 

菊月「私は、みんながいて、良かったと、そう思ったんだぁぁぁっ!////」

 

 菊月が観念してそう叫ぶと、睦月達は『これからも一緒だよ♪』と声を揃えて返した。

 

 提督はそんな睦月達、菊月を見て、誰一人欠けることのないように努力を続けようと強く誓った。

 

如月「それで〜、菊月ちゃんはいつまで司令官の背中にぎゅ〜ってしてるの〜? 私はいつまででもいいけど♪」

菊月「みんなが邪魔で離れられないんだ!////」

提督「今日の夜風は冷えるからな。もう少しこのままでもいいではないか」アハハ

菊月「そんな気遣いはいらないんだよぉぉぉっ!////」

 

 今度は叫ぶというより吠えるような大声を出した菊月。

 そんな菊月を中心に睦月達、そして仲間達の笑い声が海と空へこだまするのだったーー。




今日は菊月ちゃんにとって特別な日ということで、このことを取り上げました。

有名ですが駆逐艦『菊月』姿は朽ち果ててはいるものの、現在もソロモン諸島のフロリダ諸島を構成する島の一つ、フロリダ島にあるトウキョウ・ベイと呼ばれる湾内の海岸に座礁した状態で残っており、Google EarthやGoogleMapで確認出来、海上に既存する唯一の戦闘用の艦とされています。

位置
南緯09度07分24.2秒 東経160度14分16.0秒
南緯9.123389度 東経160.237778度

更に2016年になり、「菊月保存会」の方々の活動により、菊月の第三砲塔を引き上げ、母港となる舞鶴へ送り届けるプロジェクトが進んでおり、その引き上げ許可は既に降りています。
近いうちに一部分ですが、菊月は長い年月を経て日本へ帰還することが叶います。

本編内、そして後書きでの情報はWikipedia、『大日本帝国海軍 所属艦艇』より得ました。

この日に沈んでしまった駆逐艦『菊月』と菊月と運命を共にした英霊の方々に心からお祈りします。

読んで頂き本当にありがとうございました!
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