少し真面目なシーン、キャラ崩壊、独自設定、独自解釈含みます。
○○鎮守府、一九〇〇ーー
居酒屋『鳳翔』ーー
提督「さぁ、今日は私の奢りだ。好きな物を頼みなさい」ニコッ
イヨ「うん……ありがとう、提督」ニッコリ
大好きなお酒の席……それも貸し切りだと言うのに、イヨはいつもの鳴りを潜めている。
それもそのはずで、今日はイヨこと『伊号第十四潜水艦』がアメリカ軍の手によってハワイ沖で海没処分をされた日だから。
伊十四は一九四五年・五月に鎮海で燃料を搭載後、同年七月十一日に大湊を出港しトラック諸島へ偵察機『彩雲』二機を輸送する任務(光作戦)に就いた。
同年八月四日、途中で姉の伊十三を失った中でもトラック諸島に到着し輸送任務は完遂するも、攻撃段階に移る前でポツダム宣言により、その地で終戦を迎えることとなった。
伊十四は生まれた時代が時代なだけに戦果等は特に無しだった。
それから同年九月十五日に除籍され、戦後はアメリカに回航されて試験や実験に用いられた。
そして一九四六年の五月二十八日、アメリカ軍はソ連(現ロシア)への潜水艦技術の流出を恐れたことでハワイ沖にて自沈。現在も伊十四はハワイ沖に沈んでいる。
イヨは今朝の黙祷時にその時のことを思い出し、更には自分が艦だった頃の乗組員達の思い出が走馬灯のように浮かんだ。
するとイヨは大声で泣き叫んだ。
乗組員達は頑張ったのに自分は何も乗組員達に残せなかった。
姉を失っても頑張ったのに……もっともっと頑張れたのに……と。
それは誰もが艦娘となって初めて感じること。これをしていれば、もしあの時の自分に意思があったら……そんな思いが溢れ出してくるのだ。
そんなイヨに提督は黙って胸を貸し、優しくイヨの頭を撫でた。
姉であるヒトミはイヨのことを優しく背中から抱きしめ、うん……うん……とイヨの言葉に優しく頷きながらなだめた。
暫くしてイヨは涙を拭いた。提督が「もう大丈夫なのか?」と訊ねると、イヨは大きく頷いた。
そして、
イヨ『あの頃は何も出来なかったけど、生まれ変わった今を、あの頃のみんなの分まで頑張る!』
と笑顔でそう言った。
そのようなことがあり、イヨは今回ばかりはちょっと物静かなのだ。
ヒトミ「イヨちゃん」ニコッ
イヨ「?」
そんなイヨに姉のヒトミは優しい笑みを浮かべて酒瓶を見せる。
イヨ「姉貴……ありがと」ニッコリ
イヨはそう言うと、盃を持つ。ヒトミはそのまま酒瓶を傾け、盃にお酒を注いだ。
そしてイヨは「献杯」と言ったあとで、その盃を空にする。
提督「次はイヨが艦娘として生まれ変わってきてくれたことに対しての、乾杯だな」ニコッ
イヨ「えへへ……乗組員のみんなには悪いけど、してもらっちゃおうかな」
ヒトミ「英霊の皆さんは喜んでくれるよ」
提督「こうして生まれ変わってきたんだ。この日を悲しいだけで終わらせることはないだろう?」
提督の言葉にイヨは小さく「うん」と頷いた。
鳳翔「お料理もお酒も遠慮なく、好きな物を頼んでね」ニコッ
妖精あ「いつものボトルもありまっせ!」
妖精い「大好きな肉じゃがやもつ煮込みもバッチリです!」
妖精ろ「じゃんじゃん頼んでくださいです!」
厨房から優しくかけられた鳳翔達の声。そしてヒトミは「良かったね、イヨちゃん」と言って、イヨの頭を優しく撫でた。
するとイヨは元気に「うん!」と頷くと、
イヨ「鳳翔さ〜ん!
いつものイヨが戻ってきた。
そんなイヨに鳳翔は「は〜い♪」と笑顔で返すが、
ヒトミ「い、イヨちゃん!」アセアセ
姉であるヒトミは大慌てである。
提督「はっはっは、私が全部面倒を見るから大丈夫だ。ヒトミも遠慮せずに飲みなさい」ニコッ
ヒトミ「で、でもぉ……」オロオロ
イヨ「姉貴〜、人の厚意は受け取るべきだよ〜? それに姉貴も一緒に飲んでくれた方が、イヨちゃん嬉しいんだけど〜?」
ヒトミ「…………はぁ、分かったわ。提督、頂きます」クスッ
イヨ「いよぉっし! んじゃ、みんなで乾杯しよ〜!」
そして提督とヒトミは勿論だが、鳳翔やそのお手伝いである妖精達も乾杯することになり、イヨは眩しい笑顔で高らかに乾杯の音頭をとるのだった。
そしてーー
イヨ「ん〜♪ おしゃけはおいひぃし、てーとくもあにぇきもみんにゃやさしいし、さいこ〜♪////」ヒック
妖精い「ここの鎮守府はサイコーです!////」ヒック
妖精ろ「提督さんは優しいし、まさにホワイト鎮守府!////」ヒック
妖精あ「ブラック? 何それ美味しいの? って感じです!////」ヒック
妖精い「ブラックは珈琲だけにしろって感じだよな!////」
みんな『分かるぅ〜!////』アハハハ
イヨと妖精達は上機嫌に酔っ払っていた。イヨは呂律が怪しくなっていて、妖精達の方は呂律は大丈夫だがその顔は真っ赤っかだ。
ヒトミ「もぉ、イヨちゃんったら。妖精さん達も……」フフフ
鳳翔「提督、お水をどうぞ」つコップ
提督「あぁ、ありがとう」ウケトリ
そんなイヨ達を提督達は優しく眺めている。
提督は元々酔わないように自分のペースで飲んでいるが、鳳翔とヒトミはイヨと同じペースで飲んでいたのにまだまだ素面同然。
鳳翔に至っては鎮守府では有名な酒豪なので何ら驚かないが、ヒトミも酔わないのには提督は内心驚いていた。
提督「ヒトミは全然酔わないんだな」
ヒトミ「そう、ですね……おかしいですか?」
提督「いや、そうではない。ただ意外な一面だと、そう思っただけだ」ナデナデ
鳳翔「ふふふ、女は見かけによりませんからね♪」
ヒトミ「何だか恥ずかしいです……////」カァー
イヨ「こ〜りゃ〜! イヨちゃんのひにゃのに、てーとくといちゃいちゃしゅるにゃ〜! てーとくはあにぇきじゃにゃくて、イヨちゃんをにゃでにゃですゆの〜!」
提督「お〜、それはすまなんだ。よしよし」ナデナデ
イヨ「んゆ〜♪」ゴマンエツ
ヒトミ「イチャイチャなんかしてないのに〜……////」ハゥ
鳳翔「ふふふ」ヨシヨシ
その後イヨはいつも以上に笑顔で酒盛りをし、最後は酔い潰れた。そして妖精達も座敷の上に川の字でぐっすり。
イヨの寝顔はとても幸せそうで、ヒトミはいつもならば剛拳で叩き起こすところを今回だけは頭を優しく叩くだけに収めるのだったーー。
おまけーー
その後ーー
鳳翔のところからの帰り道、提督は酔い潰れたイヨをおんぶしてヒトミと寮までの道のりをゆっくりと歩いていた。
ヒトミ「今日はご馳走様でした。そしてイヨちゃんを運んでもらってありがとうございます」ペコリ
提督「気にすることはない。今日はイヨの大切な日なのだならな」ニコッ
ヒトミ「提督は皆さんのこういった日には、毎回こうしてるんですか?」
提督「その者の要望を聞いて、出来るだけ叶えてあげようとは思っているよ」
提督「みんなはあの大戦でこの国を守ってくれた。そして艦娘として生まれ変わり、当時のことをその身で精一杯受け止め、今も人々を守るために頑張ってくれている」
提督「そんなみんなに、そういう日くらい目一杯我が儘を聞いてやりたい。そう思っているんだ」
提督はそう語る。そしてその目は深い慈愛に満ちていた。
ヒトミ「なるほど……」
提督「ほぼ私の自己満足みたいなものだがな」ニガワライ
提督が自虐的に言うとヒトミは「そんなことないですよ」と笑顔を見せ、イヨに視線を移す。
イヨ「イヨ、これからいっぱいいっぱいがんばる〜……」ムニャムニャ
ヒトミ「こんなに幸せそうな寝顔なんですから、提督の気持ちは皆さんに届いてますよ。勿論、私にも」ニッコリ
提督「そうか……」ニッコリ
こうして今日という日は穏やかに日付を変えるのだったーー。
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本編に書きました通り、今日はイヨちゃんこと『伊号第十四潜水艦』が海没処分された日なのでそれを書きました。
この日に海没処分された伊十四と英霊の方々に心からお祈りします。
本編内の情報はWikipedia、ピクシブ百科事典で得ました。
読んで頂き本当にありがとうございました!