真面目なシーン、独自解釈含みます。
○○鎮守府、一一〇〇ーー
中庭ーー
舞風「あ、龍田さんだ♪ こんにちは〜♪」ノシ
野分「こんにちは、龍田さん」ペコリ
嵐「龍田さん、ちわ〜!」ノシ
萩風「こんにちは」ニッコリ
龍田「は〜い、こんにちは〜」ニコッ
日当たりの良い中庭のベンチに腰掛け、のんびりと日向ぼっこする龍田。そんな龍田の近くを通る者達は龍田にしっかりと挨拶をしながら、笑みを送る。
本日、龍田はとある理由で提督から天龍共々お休みをもらい、今の龍田は天龍が酒保から戻ってくるのを待っているのだ。
とある理由とは、今日が龍田にとって特別な日だからである。
一九四四年、三月十三日。
軽巡洋艦『龍田』は輸送任務中、八丈島沖でアメリカ潜水艦『サンドランス』の雷撃を受けて沈没してしまった日。
当時の龍田は絶対防衛ラインであるサイパン島への輸送船団「東松2号船団」の護衛艦隊旗艦に就くこととなった。
そして悪天候で視界不良の中、航行している「東松2号船団」に迫ってきたのがサンドランスである。
龍田が気付いた時にはもう遅く、魚雷は龍田を絶命させるには十分な損傷を負わせた。
乗組員達は懸命な処置でなんとか沈没を阻止しようと踏ん張るものの、やはり老朽化の影響は荒波に耐え切れず、被雷から十時間後、ついに沈没。
姉の『天龍』同様、浸水によるゆっくりとした沈没だったため、多くの乗員が救助されたことが幸いだった。
そのような日なので、今朝は提督や天龍、関わりの深い者達と海へ向かって黙祷を捧げ、こうしてあの時とは違うあの日をのんびりとのどかに過ごしている。
天龍「お〜っす、戻ったぞ〜」
龍田「おかえり〜、天龍ちゃーー」
提督「やぁ、龍田」ニコッ
まさか提督も一緒だとは思ってなかった龍田は驚いて思わず固まったが、すぐに平静を装って提督にも笑顔を見せた。
龍田「提督もご一緒だったんですね〜、びっくりしちゃったわ〜」フフフ
提督「丁度酒保で会ってな」
龍田「じゃあ、いつもの一服タイムなのね〜♪」
笑顔で龍田が言うと提督は「あぁ」と短く返し、いつもの喫煙スペースへ座る。
天龍「何も離れないで、ここで吸えばいいじゃねぇか。オレらは気にしないぜ?」
提督「喫煙スペースで吸うのがルールだ。皆の上官である私がルールを無視するのはいけない」
天龍「そりゃ、分かるけどよ〜……龍田の様子を見るためにオレにくっついて来たんだろ〜?」
龍田「!?////」ピクッ
天龍の言葉に龍田は思わず微かに方を震わせ、頬をほんのりと染めた。それは提督が駆逐艦でなく、軽巡洋艦の自分のことも気に留めてくれている……それが嬉しかったから。
提督自身、煙草を吸うのは中庭にいる龍田の様子を伺うための方便なので、それを天龍に暴露された提督は少しバツが悪そうにしている。
提督「コホン……まぁ、それはそうなんだがな……」ニガワライ
天龍「回りくどいことしねぇで、いつもみたいに普通に様子見ればいいだろ? その方が龍田だって喜ぶぜ?」
そう言って天龍が龍田に「なぁ?」と同意を求めると、龍田は何も言わずコクコクと頷いて見せた。
それを見た天龍が「ほらな♪」と提督に言うと、提督は小さく息を吐き、観念したかのように煙草を胸ポケットに戻して、龍田の隣へ座る。
龍田「…………////」モジモジ
提督「今年はどうだ、龍田?」
龍田「え、えぇ、この通り……落ち着いて、ます////」ウツムキ
提督「そうか、なら良かった……」ニコッ
提督はそう返すと、龍田の頭を優しく撫でた。
龍田が着任して初めてこの日を迎えた時、龍田は情緒不安定となり身体の震えが止まらなかった。
その震えは自分の沈み行くまでの記憶のせいではなく、龍田が歩んできた艦時代の記憶のせいからくる震えだった。
龍田は『第四三潜水艦』と衝突事故を起こし第四三潜水艦は立て直すことが出来ずに沈没。
当時の天候や潮流が救助を妨げとなり、第四三潜水艦の乗員四十五名は全員死亡してしまった。
更に龍田は日本の海軍史上でもとても重要な事件、「友鶴事件」にも関わっており、龍田は当時『友鶴』と同じ第二十一水雷隊に所属し、演習標的艦を務めていた。
演習中は波が高かったが、友鶴をはじめとした「千鳥型水雷艇」は九十度の傾斜でも復元出来る設計で、演習は継続。ところが、その傾斜が四十度を超えた瞬間、突如友鶴は転覆してしまったのだ。
天候はまたも悪天候、救助出来た人数はごく少数。龍田はその友鶴の捜索と曳航を行った。
この事件は、既存もしくは建造中・計画中の多くの艦に大きな改装・変更を強制させる大事件だった。
この他にも「美保関事件」という、『神通』と『
姉であり普段から慕う天龍でもあの時の龍田は拒絶し、ドックの一室に閉じこもっていた。
そんな龍田に歩み寄ったのが提督だった。
龍田にどんなに殴られても、引っ掻かれても、噛み付かれても、どんな罵声を浴びせられても、提督は龍田を抱きしめたその手を離そうとはしなかった……それは龍田の心からの叫びであり、それを受け止めるのが提督である自分の使命と感じていたのと、何より仲間の苦痛を少しでも軽くしてやりたいと願うが故の行動だったのだ。
提督は龍田が落ち着くまでずっと側に付き添い、龍田へ「大丈夫」、「今はあのようなことは起きない」、「仲間を信じてほしい」、「君の当時の努力を皆が理解している」と励まし続けた。
その結果が今である。龍田はあの時の提督のお陰で今をのんびりと過ごせているのだ。
龍田「提督のお陰です……今の私があるのは……////」ハニカミ
提督「私ではない。天龍や仲間達がいてこその今だ。願わくば、これからもずっとそのように笑顔でいてほしい」ニコッ
龍田「はい、そのつもりです。私だって成長しているんですから」フフフ
天龍「そう言う割にゃぁ、提督から頭撫でられるのは卒業出来てないよな♪」ニヤニヤ
龍田「そ、それは〜、だって〜……////」ハゥ
提督「撫でられるのが好きなくらい、いいじゃないか。それに龍田は頭を撫でると幸せそうにしてくれるから、私は撫でるの好きだぞ」ナデナデ
龍田「ふみゅふぅ……////」トローン
天龍「まぁ、今まで通りで全然いいけどよ……」ニガワライ
提督「天龍も撫でてやるぞ。天龍も撫でると嬉しそうにしてくれるからな」ニコッ
天龍「お、オレは……たまにでいいよ////」プイッ
龍田「天龍ちゃんは素直じゃないからね〜♪」
天龍「あ、あ〜、そう言えばオレ、昼飯は龍田の竜田揚げ食いたいな〜!////」
矛先が自分に向いた天龍は強引に話題を変えた。龍田はそれを分かっていながらも、今日だけはその話題に乗り、お昼は提督と天龍のために心を込めた竜田揚げ定食を振る舞うのだった。
二人が自分の作る料理を美味しそうに食べてくれている表情を見た龍田は、来年も同じように過ごせますように……とそっと心から願ったーー。
今日は本編に書きました通り、龍田さんが沈んでしまった日です。
そして年が違いますがこの日は大阪大空襲が起きた日でもあります。
アメリカ軍のB29爆撃機274機が深夜から翌日未明にかけて
その後、6月1日、6月7日、6月15日、6月26日、7月10日、7月24日、8月14日に空襲が行なわれ、これらの空襲で一般市民の10,000人以上が死亡したと言われています。
軽巡洋艦『龍田』と龍田と運命を共にした英霊の方々。
大阪大空襲で亡くなった多くの方々に心からお祈りします。
そして今日は悲しいことばかりではなく、舞風ちゃんの進水日でもあります!
おめでとう、舞風ちゃん!
本編の情報は『大日本帝国海軍 所属艦艇』より得ました。
読んで頂き本当にありがとうございました!