真面目なシーン、ネタ、独自解釈含みます。
説明文多めです。
○○鎮守府、一五〇〇ーー
中庭ーー
島風「天津風〜、喉乾いてない〜?」
時津風「チョコ食べる〜?」
雪風「暑くないですか〜?」
初風「してほしいことがあれば遠慮しないで言うのよ?」
天津風「分かったからいつも通りにしててよ、こっちが落ち着かないから」ニガワライ
中庭のベンチでくつろぐ天津風。そんな天津風に同じ第十六駆逐隊の面々と仲良しの島風がいつも以上に天津風へ気を配っている。
本日は天津風がアメリカ陸軍機の攻撃を受け、
朝には提督や姉妹、仲良しの者達と揃って黙祷を捧げた天津風だったが、その後から妙にみんながお節介を焼いてくれている。
去年のこの日は鎮守府ではお花見だったので天津風としても良い日を迎えたのだが、今年はそうではないのでみんなの厚意が直で伝わってくる。
どうしてこんなにもみんなが天津風を気遣うのかというと、艦時代の壮絶な時があるから。
駆逐艦『天津風』は一九四四年の一月十六日に船団護衛をしていた最中、アメリカ潜水艦『レッドフィン』の放った魚雷の一本が第一缶室、第二缶室の間に直撃して大破、当たりどころが悪く、魚雷発射管が空中に吹き飛び、船体はくの字に折れ曲がってしまうほどの事態に見舞われた。
航行不能な上、悪天候で一週間も海の上を漂流し、博打打ちに近い賭けをして味方に電波をキャッチさせることに成功した。
その後、天津風は十ヶ月に及ぶ
とにかく浸水箇所が多すぎる上に人員不足、部品不足、慣れないドック等、順調に行く要素は何一つなく、十月にようやく整備を終えるものの、これはあくまで艦尾の話だった。
十一月十五日、天津風はシンガポールへと曳航され、
ここでは仮艦首を接着、不格好なんて言っていられなかった。
艦首のすぐ後ろにマストが設置され、そのマストには仮設の艦橋施設が用意された。その後ろには一番魚雷発射管がある。
全長はわずか七二.四m、測距儀どころかジャイロコンパスもない天津風だったが、十三mm単装機銃三基と二五mm単装機銃二基を増設、速度は当初十二ノットが限界とされていたところ、ボイラーの一基が復旧したことによって二〇ノットにまで回復した。
新たに就任した森田友幸艦長(当時大尉)は、若干二五歳であり、二五歳の青年が天津風を日本へと誘導することになった。
日本からは天津風の本土回航を命令され、呉では天津風の新しい艦首や缶の製造、最新式の電探の準備が始まっていた。
しかしすでに日本の戦況は敗色濃厚で、シンガポール近海すらも危険な海域となっていた。
第十方面司令長官であった福留繁中将は、森田艦長に回航を中止してはどうかと進言。
多少の兵装があるとはいえ、戦える状態とは決して言えなかった。しかし、森田艦長は本土へ戻ることを決意したのだ。
一九四五年三月、天津風は船団に加わって本土へ戻ることが決定。
この船団は、沖縄決戦が目の前に迫る中、南方の輸送船をかき集めて日本へ物資を運ぶ最後の輸送船団で、輸送船七隻、海防艦六隻、そして天津風と総勢十四隻の大型船団となった。
勘を取り戻すために短期間で厳しい訓練を重ね、ついに三月十七日、天津風は外洋へ出るも、次々と船団は機雷や空爆で沈んでいき、香港へ入港した四月二日には輸送船は一隻も残っていはいなかった。
更に翌日の四月三日、やはりアメリカ攻撃機が香港を襲い、これによって海防艦の一隻が大破着底してしまい、天津風は別の船団に加わって香港を出港するのだった。
しかしその後もアメリカ軍の空爆は激しさを増し、四月六日の空襲で天津風はとうとう大破してしまう。
相次ぐ座礁、更には
三度の曳航にも応えてくれなかった天津風の機関はもう使えず、匪賊に襲われたこともあり、天津風に固執して危険にさらされることを避けた苦渋の決断だった。
そして四月十日、軍艦旗降下後、天津風は機雷の自爆によって爆沈。
本当に本当に壮絶な最期だったのだ。
天津風(陽炎姉さん達も妙に優しいし、調子が狂っちゃうわ♪)
天津風はそう思いながらも、顔は朗らかで自然と笑みが浮かんでいたーー
島風「あ、提督〜♪」ノシ
提督「やぁ、みんな」ニコッ
陽炎「やほ〜♪」ノシ
不知火「」ペコリ
天津風「!?////」ビクッ
ーー提督が来るまでは……。
本日秘書艦である陽炎とその補佐(強引に申し出た)不知火が中庭へやってくると、天津風は透かさず髪を手櫛で整え始める。
天津風(し、司令官と会うの今日で五回目……嬉しいけど落ち着かないわ♡////)
提督は提督で仕事があるが、今日はこうして何度も天津風の元へ訪れている。提督としても今日が天津風にとってとても特別な日だというのが分かっているため、少しでも一緒に過ごそうとしているのだ。
雪風「しれ〜、お疲れ様です〜♪」ギューッ
時津風「休憩〜?」ギューッ
父に甘える娘のように提督の両サイドへ抱きつく雪風と時津風。提督はそんな二人の頭を優しく撫でつつ、「あぁ」と言って父性あふれる笑みを浮かべる。
初風「二人共、甘えたいのは分かるけど、提督さんはこれから一服のはずよ。離れてあげなさい」
提督「それには及ばない。陽炎と不知火には悪いが、執務室で一服させてもらったからな」
不知火「あれだけの激務をこなしておられるのです。煙草の一本や二本で目くじらを立てることはありません」キリッ
陽炎「本当は不知火が司令の煙草を吸う仕草を見たかっただけなのよ」ニガワライ
初風「なるほどね……流石は不知火姉さんだわ」ウンウン
提督「さて、天津風にも会えたことだ。みんなして食堂で甘い物なんてどうかな?」ニコッ
提督の提案にみんなは万々歳。しかし天津風は複雑な表情を浮かべた。提督の厚意はとても嬉しいが、天津風の性格ではつい遠慮してしまうのだ。
そんな天津風を見た提督は「そんな顔をしないでくれ」と言うように、天津風の頭をポンポンと叩くように優しく撫でる。
提督「こうして食べ物をご馳走するくらいしか、私には出来なくてすまない。だが何かしてやりたいんだ」ナデナデ
天津風「わ、分かってる、わよ……そんなの♡////」ドキドキ
天津風は思わず頬の緩みを感じた。何故なら、自分が好いたどこまでも優しく真っ直ぐで誠実な提督の目を見たから。
陽炎「何お互いに見つめ合ってんのよ」ニガワライ
島風「見つめあ〜うと〜♪」
時津風「すな〜おに〜♪」
雪風「おしゃ〜べり〜♪」
不知火「出来〜な〜い〜♪」
天津風「ちょ、不知火姉さんまで!?////」
提督「ははは、確かにそうかもしれないな♪」
天津風「あなた!?////」ポッポー
初風「ふふ、じゃあ食堂に行きましょ♪ みんなでね♪」
全員『お〜♪』
天津風「な、ちょ、ちょっと〜!////」
雪風達に手を引かれ、食堂へ連れ行かれる天津風。
しかしその繋いだ手を離そうとはしなかった。
その繋がれた沢山手がとても温かったからーー。
今日は天津風の大切な日なので、それを取り上げました。
天津風は本当に一九四五年の三月から自沈までの間が壮絶で説明しきれなかった部分が多いですが、どうかご了承ください。
本編内の情報は『大日本帝国海軍 所属艦艇』より得ました。
この日やこの日までに亡くなった天津風の英霊の方々、そして駆逐艦『天津風』に心からお祈りします。
そしてこのような日ですが、今日は加古さんとニムちゃんの進水日です!
二人共おめでとう!
読んで頂き本当にありがとうございました!