「ふぅ、終わった…」
前回語っていた時間からほぼ1年の時が過ぎた。
さっき俺が何を終えたのかというと、
『高校生活を振り返って』
あの作文である。
-青春とは嘘であり悪である-
…
-リア充爆発しろ-
うん、特に何も考えないで書いてたらすんごいどこかで見たことあるようなのが完成したな。
最後だけでも書き直してみるか。
…
-砕け散れ-
これじゃ犯行声明じゃないか。もっかい…
…
-爆発しろ-
あっれれぇーおかしいぞぉ?メガネの小学生探偵もビックリなほどほぼ同じ文章にしかならない。
もういいや最初ので。ハイ終了!
ん?前回ラストの検証はどうなったかって?あー、アレな。
本当に特に語ることは何も無く、元の世界と同じようなぼっち…いや、平和な1年を過ごしたよ。
これじゃさすがに説明がガサツか。
ならばまた断片的に何をしたか、少し時間を戻して語らせてもらうことにする。
***
検証、とはいっても単純なことである。
俺は元の世界で、1年生の間に校内であの2人に会った覚えがない。ていうか絶対会ってない。
由比ヶ浜なんてクッキーの依頼の時初めて知ったし、雪ノ下だって眉目秀麗成績優秀な高嶺の花ってことで小耳に挟んでいた程度だったし。
というわけで、俺が1年のうちにあの2人に接触を試みると「運命の強制力」または「世界線収束」とやらがはたらくのか、というのを検証してみたんだ。
なんと検証は大成功。つまり、会うことには失敗。
それがまた見事なもので、雪ノ下に会おうと国際教養科の教室やらなんなら奉仕部の部室に直接乗り込もうとすると何故か先生から呼び出しを喰らったり、教室に辿り着いたと思ったら雪ノ下が不在だったりと…
いや別に会いたいなーとか思ってたわけじゃないよ?ホント、ハチマン、ウソ、ツカナイ。
どちらかと言うと、ていうか断然衝撃的だったのは由比ヶ浜の方の検証だった。
俺はまず、彼女の1年の時のクラスを知らなかった。
そこで、彼女のクラスを教えてもらおうとある人を頼るため職員室に行ったんだ。
え?友達に聞けばよくないかって?
…いたら職員室になんて行きませんよ。
ドアをノックし、開ける。
「失礼しまーす。1年の比企谷です。平塚先生はいます…おられますかー?」
体育科のやつにすんげぇ睨まれた。アイツ先生のこと「いますかー」とか言ったらうるせぇんだよなぁ…だからわざわざ言い直した。
カツカツと、ヒールの音が近づいてくる。
「お、比企谷か。私に何か用かね?」
白衣を着ているのはどちらの世界でも変わらないらしい。
「探している生徒がいましてね、クラスとか教えてもらおうと先生を…」
「あー、構わんぞ。その生徒の名前は?」
「由比ヶ浜結衣、という女生徒なんですが」
先生は何故か少し目を細め考えるような表情をした。
「はて、そんな生徒うちにいたかな…学年は?」
「俺と同じ2年…じゃなくて、1年のはずですが」
思いっきり間違えた。
特に不審に思うこともなく平塚先生は続けた。
「ふむ…よし、全クラスの名簿を持ってきてやる。応接室で待っていてくれたまえ」
「うす、ありがとうございます。あ、普通科だけで構いません」
「わかった。おかしいなぁ…新入生は全員把握してたつもりなんだが…」
そうぼやきながらまたもヒールの音を立て奥へと入っていった先生。
この時、私も歳かなー、とか、早く結婚したい…、とかは聞こえなかったよ?ホントダヨ?
***
「さ、思う存分探してくれたまえ!私も手伝おう」
何故か先生は嬉しそうにそう言い、手伝ってくれた。
目がキラキラしてた。残念ながらそれは少女や乙女のそれではなく、少年のものだった。
「山田…渡部…このクラスじゃないな…」
名前の順になってるから、最後の方だけ見ればはやいだろう。と、作業してるとあっという間に確認終わった。
ちょうど平塚先生と俺とで半分ずつだった。
「あの、俺の方にはいなかったんスけど、そちらは?」
「私の方にもいなかったよ。念のためこちらも見ておくといい。そして私がそちらを確認しよう」
そういって先生は自分が確認した方の名簿を差し出してきた。
「ありがとうございます」
受け取りながら俺も自分が確認したのを先生へ差し出した。
…
やっぱり、いなかった。
さすがにちょっと動揺した。
由比ヶ浜が総武高から消えた…?
いや、ここはポジティブに行こう。プロローグにあったように世界から消えたわけではないんだ…事故の時ちょっと様子は違うが由比ヶ浜には会っている。なんだよ大袈裟だなー世界から消えただナンテー…
とはいえ、かなり動揺しているのが出ていたらしく、
「どうした比企谷。そんなにその女生徒に何か特別な思いでも抱いているのか?同性の友達もいないのに異性から手を出すとはな…リア充爆発しろ!」
すんげぇ勢いで机をバンと叩きなさった。これガラスの机とかだと粉々だよね?ってくらいの威力。
「いや違うんスよ。ホントただ探しているってだけで…」
人が人ひとり消えたって動揺してるのに他人事みたいにしやがって…ってここまでひとひと言ったこと今まで一度もなかったなーとか思ってると、
「冗談だよ。むしろ他者とほとんど関わりのない君が自ら人と関わりを求めようとすることは教師としては嬉しいものだぞ?」
そういってめっさいい笑顔で頭をクシャクシャと撫でてくる。めっさ男らしい。
少し撫でられたあとスルリと躱しながら俺は
「げ、この時からもう既にぼっちだから目付けられてたのかよ」
と言ってしまった。
「ん?何を言っているのかね君は。あんなの気づかない方がどうかしてるよ」
先生はハハッと笑いながら言った。
つい記憶ってのがあるせいで余計なことを言ってしまう。
どうやら不審には思われなかったらしい。
知ったかぶりよりも知らないふりする方が難しいんじゃないだろうか。
いや、そうでもないか。アイツらみんな俺がいじめられてても知らないふりする…じゃなかったな。アイツら全員敵だったわ。知らないふりというかクラス総動員で俺を潰しにかかってきてた。
何?学級総動員法とかいうクラスのルールでも作ったの?それでも俺は潰されなかった。アイツら30数人、俺ぼっち。つまり単体でのスペックは俺があいつらの30数倍以上は高いということになる。よって、俺の勝ち。証明完了…
…またトラウマ掘り返してたわ。いかんいかん。
意識を先生の方へと戻す。
「そうですか。よく生徒のことを見てるいい先生、なんですね」
「褒めても内申点はやらんぞ。ラーメンくらいなら奢ってやってもいいが」
「ぜひお願いします」
「比企谷…お前、普段からそんな素直にしてたら友達の1人や2人くらいできるだろう…」
少し目を見開き、驚きながらそう言われた。
「俺が欲しいのは友達とか、そういうんじゃないんで」
「そうか…なら今はまだ何も言わん。」
「その方がありがたいです。」
「だが君が大きく間違いそうになった時は叱らせてもらうぞ。」
「はぁ…衝撃のファーストブリットとかは勘弁してくださいね」
「フッ、どうだか…とにかく、私は君も、ちゃんと見ているよ」
そう言って先生は穏やかに笑いかけてくれた。
この時には俺も既に落ち着きを取り戻していた。
***
あれからのほほーんとぼっち高校生活を満喫しているふりをしながらもどこかであの2人と会えないだろうかと常に周囲は見渡していたが、どうやら由比ヶ浜は本当にこの学校にいないらしい。証拠に雪ノ下は何度か遠目から見かけたことがあるんだ。接触はできなかったけど。
そして夏休みやら文化祭、体育祭、冬休み、クリスマス、お正月、マラソン大会、と文字通りトントン拍子で高校1年(2回目)は終わって冒頭の日記へと至るわけだ。
マジで何も起きなかったなー1年の間は…
書き終えた作文をそのまま提出した。
やはり、とでも言うべきか。平塚先生からの呼び出しである。
「比企谷。この舐めた作文は何だ?」
「先生が出した課題のレポートですが?」
「よし比企谷、私に着いてこい」
「え、ちょっとはやくない?」
「何がだ?」
あー、これ逆らったらあかんヤツや…目がマジだもん…ていうか目だけで言ってるよ。「逆らえば貴様のどこかが飛ぶ」的なことを…
今回は腕を掴まれ半ば強制連行なんてことはなかったが、逆らえば俺のどこかが無くなりそうだったので大人しく自首するかのよう先生についていった。
今思えば、1年の間に何も起きないことも、あのレポートであんなことを書くのも、それが原因であの部活-まだ確定はしていないがおそらくそうだろう-に入れられるなんてことも「運命の強制力」とやらがはたらいていたのかもしれない。
***
「着いたぞ」
うむ、やはり。それが最初に思ったこと。ほぼ一年近く毎日のように訪れていたあの扉の前に、俺はいる。
「うす」
扉に手を伸ばそうとした時
「やけに素直じゃないか比企谷。私はもう少し嫌がるかと思っていたのだが」
「い、いや…そのぉ…あーマジでここどこだよーはやくかえりてぇよー」
「そうかそうか。君はそんなにここに来たかったのか…なら入ろうか」
なん…だと…!?俺の迫真の演技が…!どうやら俺は嘘が下手らしい。ていうか嘘つけないっぽい。
一人の少年のハリウッドへの夢が絶たれたところで(いや、別に目指してないけどね)先生はからりと戸を開けた。もちろん、ノックなどせずに。
「平塚先生。入る時にはノックを、とお願いしたはずですが」
何年かぶりに聴いた気がするその声は、どこか聴き慣れたものと違い、冷たい。そんな印象を受けた。
はい、というわけで、平塚先生登場でーす!
彼女めちゃめちゃいい先生だと思うんですけど、それが伝わればなーと思いながら今回のお話作らせてもらいましたが、伝わったでしょうか?
ここで謝罪です。前回のお話の後書きであんなキャラやこんなキャラって書いて2人新登場しそうなところ今回は平塚先生1人ということになってしまったことをお詫び申し上げます…
強いて言うなら雪乃の再登場でしょうか?とはいえ、誤解を生んでしまっていたのは事実ですので改めて謝罪申し上げます…
え?後書き読んでない?なんだ、それならいっか!
一応次回のお話をちらっとさせてもらうと、次回からいよいよプロローグまで戻るための色々(2年の間のあんなイベントやこんなイベント再び)が始まります、とお伝えしておきます。
八幡が入部してからの最初の依頼といえば…なんでしたっけ?といった辺りから始めようと思っております。
それではまた次回!
ありがとうございました!