【完結】ムシブギョー 十二ノ刀   作:一ノ原曲利

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三日間も投稿出来なくてごめんなさい!!
いやぁ…新作ゲームが来まして……じゃなくて、土曜は友人との集まり会、日曜は半日バイトって感じで大変だったんですよ!
そのせいでゲームが出来なかった…!! はやく攻略したいのにぃー
それでは、どうぞ




十一太刀目

 両者は地を蹴った。石畳をへこませるには些か弱い踏み込みであるが、それとは対照的に両者の速度は尋常ではない。あっという間に大盆の中央で両者は肉薄する。上段から無涯が『塵外刀』を振り下ろし、下段から掬い上げるように九散の手刀と交差した。

 ガキンっ、とおおよそ人体と衝突した時に発する音ではない金属音が鳴り響き、両者は再び距離を取る。

 

「(……先程の奴の防御…)」

 

 無涯は再び駆けだしながら、九散が先刻見せた夢久と影忠との戦闘を振り返る。

 

「(……いくら何でも何の仕掛けも無しに全てを無傷で捌き切ったとは考えにくい…とすれば……)」

 

 無涯は九散と一合、二合、三合と剣撃をぶつけ合う。時に九散の魔手とも呼べよう二振りの手刀を凌ぎ、時に隙を突いて九散の懐へ太刀を叩き込む。その全てがすべてぶつかり合い、速度は瞬時にして音を超え始めた。無涯は九散の猛撃に拮抗しながら思い出す。九散が防御したそのときを。

 

「(あの時たしか―――)」

 

 第一陣、慚愧(ざんき)の不意打ちを受けた時。九散は碌な防御態勢を取っていなかったにも関わらず粉塵舞う中、生還していた。第二陣、前後からの挟撃を喰らい足場が崩れはしたものの九散は無傷で受け止めていた。この二つの共通点は、九散自身ではなくむしろその周囲――。

 

「(そういうことか)」

 

 二つの異なる状況と結果は無涯の仮説を僅かながら裏付けた。まだこれから行うことが通用するかは分からないが、試してみる価値はあるだろう。故に、無涯は即座に実行した。

 

 ―じ ゃ ら ら ら ら ら ら ら ら ら ら ら ら !!

 

「持ち手が…!」

 

 交戦中、突如『塵外刀』の長い柄が分裂したことに九散は警戒心を抱いた。なるほど、柄が普通の刀と違って長めに設計されていたのはそういう使い方をすることも出来るのか。ばらばらに崩れた柄の中心部には、数珠のように連なった鎖が繋がれていた。それによって中距離戦闘も可能にしている。そして今回は。

 

「!」

 

 柄の一番先を、石畳に突き刺した。否、正確には満遍なく敷き詰められた石畳と石畳の隙間。同時にそれは九散の足場でもある。

 ガクンっ。突如、九散が乗っていた足場の石畳が揺れた。九散の攻め手を防ぎつつ足を使って柄を撃ち込み、まるで梃子の様に踏み抜くと石畳が大盆の地から離れた。九散の表情が強張る。

 

「しまっ――」

「喰らえ」

 

 足場が崩れ体勢を崩した所に無涯の『塵外刀』が迫る。狙うは、左脇。人体の中でも限りなく心臓に近いそこは強打しただけでも大きな痛手を負う。咄嗟にそう判断した九散は勢いに任せて左肘を垂直に下ろした。

 

不折(おれず)――折れぬこと『(かんな)』の如し!」

 

 その目的は刀の腹への肘鉄――ではなく、肘による『塵外刀』からの防御であった。いつになく切羽詰まった口調で祝詞(のりと)を詠い上げ、無事『塵外刀』を受け止めた九散はそれでも無涯の腕力には敵わず、そのまま吹き飛ばされてしまった。

 

「――く、」

 

 ほんの少し顔を歪めながら、九散は空中で一回転しながらなんとか体勢を維持し、大盆の淵ぎりぎりで着地した。表情こそ歪んでいるが、そこには苦渋と歓喜が混濁していた。

 観客も観客で、あの九散を吹き飛ばしたという事実に驚きを隠せなかった。

 

「やはりな」

「あら、あら……鋭いのね」

 

 九散が防御に使った左肘に横一閃の斬り込みが刻まれており、ツーッと血が垂れていた。つまり、看破されたのだ。九散の絶対防御を。

 

「からくりが分かればどうということはない。お前の『(よろい)』は単なる防御ではなく、衝撃の伝播だったんだな」

「ご明察。花丸よ、無涯君」

 

 そう、九散が体現した完成系十二本が一振り賊刀『鎧』には――いまだ改善仕切れない弱点が存在する。それは七花が二度目に対戦したときにもこの弱点を突かれたのだが、賊刀『鎧』は空中では扱えないのだ。賊刀『鎧』の力は完全なる絶対防御。だがそれはありとあらゆる貴金属を駆使したところで実現することは敵わず、ただ衝撃を受け止めるのではなく受け流すことで絶対防御を維持した。それは九散の戦闘でも見て分かる通り、慚愧の木刀による攻撃は文字通り九散の足場を砕いた。だがそれは九散がその攻撃を受けていたからではなく、足下の石畳へと衝撃を伝播させていたからである。影忠の大鉈と夢久の刺突においてもそれは遺憾なく発揮され、無事な石畳を足場にしていただけに衝撃を逃がすには十分であり、九散へと降り注ぐ衝撃はすべて石畳へと伝播された。故に、足場を無くされては衝撃を逃がす場所が存在せず九散は先程のように吹き飛ばされてしまった。もし、九散が判断を誤り『鎧』を体現していた場合――外部へ放出される筈だった衝撃は体の皮膚外装で反射して体内を蹂躙していただろう。

 だが九散も転んでもただでは起きない。その賊刀『鎧』の下位互換とも言える、折れない刀こと絶刀『鉋』。完成系変体刀十二本が一振りの中でもかなり初期に作られたものであるが為に他の刀より見劣りするものはあるが、折れず曲がらず錆びることのない刀は仕掛けもからくりもない刀の中では一番の頑丈さを誇る。だが今回の九散の傷口は純粋に無涯の力量が『鉋』に勝ったということもあるが、九散の十二使刀流の発現がほんの少し遅かったということもある。

 伯仲する実力。これには観客も沸いた。

 

「――ぉぉおおおおおお!! やるじゃねぇか無涯の旦那ァ!!」

「凄ぇ…あの美人さんが血を流すトコなんて初めて見たぜ!」

「いやいや、この前胸をグサーって刺さってたから完璧じゃないみたいだぜ」

「無涯殿―――!! 頑張れ―ッッッ!」

「おい負けんな別嬪さんよォ!」

「そんな奴畳んでしまえ九散! 合い言葉は『ちぇりお!』だぞ!」

「えー先程まで前哨戦での無双っぷりから七:三で九散氏が勝つ相場だったが今ので四:六になったな。しかし引き分けに賭けてる者はいない…つまり! 勝者皆無となればこの私が総取りで大儲けできるということだ!」

「し…シロ君こんなとこでもお金に眼がない所とか素敵!」

「アレ、止めなくていいのか…いやいいか、この場の連中のほとんどがやってるみたいだしな」

「わかってるなら、言わなくていい」

 

 途中不穏な発言をする観客もいたようだが容認されているようだ。仮にも蟲奉行様の御前なのに…と下座で胃を痛めながらも券を握っている男もいるが。

 大盆からでも賭けの券が見えてしまい、九散は血を振り払って落としつつ苦笑した。だが僅かに腕に電流を走らせて傷口を塞ぐと再び無涯に向き直った。

 

「まさか『鎧』をこんな方法で破るとはね、恐れ入ったわ」

「考えてみれば分かることだ。…初見でなければな」

 

 その通り、九散が防いだ技が初見であったらもう少し攻略に時間が掛かっただろう。それが無かったのは九散が防御した際に生まれた違和感のある石畳の破砕。通常見落としそうな部分に着眼点を置き、発想を飛躍させる。それならば、あり得ないことも無いと。

 

「でも、『鎧』一つ破っただけで勝とうだなんて――甘過ぎるわ、よっ!」

 

 言い切った途端今度は九散が仕返しとばかりに駆け込んだ。だがただの駆け込みではない、超低空走行だ。蛇行する様は蛇のよう、縦に躍動する様は獅子のよう。履いている下駄と女性という体躯ではおおよそ実行できないような走行。だが虚刀流を会得している九散にとって牽制の足運びは造作もないことだった。そしてその体勢への迎撃に、無涯に一瞬の迷いが生じた。

 

「(振り下ろすか、袈裟斬りにするか)」

 

 この場で横凪の切り払いは選択に値しない。狙うならば影忠の領分である乾坤一擲の一撃。だが無涯はその思考をさらに加速させた。

 

「――『塵外刀』大瀑布」

 

 振り下ろした。しかしそれは速すぎる攻撃。振り下ろされた『塵外刀』は九散の前方で石畳に直撃し――破片が土砂の奔流に変貌した。これが狙いだった。牽制を入れて遅くするにしろ速くするにしろ、振り下ろせばいいという結論へと至ったのだ。速ければ一刀両断、九散の頭から背中まで真っ二つに断ち切られてしまっていただろう。遅ければご覧のように、衝撃で巻き上げられた石畳の破片が無数の弾丸となって九散の眼を潰す。しかし、

 

不捕(とらわれず)

 

 空に舞い上がる。見方によってはまるで障子紙のような細さ、薄さ、儚さといっても差し支えの無い九散の身体。瀑布のように迫り来る土砂の奔流を、しかし九散は躱すのでもなく跳ね除けるのでもなくそのまま流した。奔流に身を任せ、極限まで力を抜いた。それにより奔流と共に押し寄せる風――無涯が叩き付けた『塵外刀』から放たれた圧力は九散を軽々と吹き飛ばし、それによって土砂の奔流に巻き込まれることなく大空を舞った。

 現在、九散の体重は零に等しい。観客の中に真庭忍軍の一人でも居ようものならば『忍法足軽』と評価していたことだろう。だが残念なことに九散は真庭忍術『忍法足軽』を会得していない――だがこれは会得し得なかったのではなく、会得する意味がなかった事を示す。

 

「――捕らわれぬこと『(はり)』の如し」

 

 完成系変体刀が一振り、薄刀『針』。九散の叔父にあたる前々日本最強の剣聖・錆 白兵が所持していた刀である。この世に存在する刀の中でも最も『軽い』刀である。刀を抜けば、まるで刀身が硝子のように透き通っており向こう側が見られるほどと言わしめた、非常に扱いづらい刀である。『軽い』ということは同時に『脆い』ということ。つまり、軽ければ軽いほど刀としての頑丈さは歯抜けしていき、防御どころか太刀筋を誤ってしまえば自壊してしまうほどである。

 つまり、現在の九散の強度は零。

 

「『塵外刀』(さい)の型――飛水」

 

 地上から真上へ刀を撃ち込む。それはまさしく登竜門を昇り天翔ける竜の如く。柄が分裂し鎖によって延長された間合いは空へと舞い上がる九散を射止めるには充分であった。剣圧による衝撃には煽られようと、刺突によって繰り出される圧力は無に等しい。面ではなく点で天を突くとは正に針、『針』を体現している九散を針の様に射止めるとは、これまた皮肉か意趣返しか。

 

「――他愛、無し」

 

 迫り来る『塵外刀』の刀の腹を手のひらで側面からたたき落としながら、九散は残念そうにそういった。別段防御力が零になったからといって九散が弱体化した訳ではない。むしろ防御力を零にしたことで九散の中での力の振り分けは攻撃10、防御0になったことを意味する。これは――

 

不捕(とらわれず)不定(さだまらず)――捕らわれぬこと『針』の如し、定まらぬこと『(はかり)』の如し」

 

 完成系変体刀が一振り、誠刀『銓』。十二本ある完成系変体刀の内で最も異質の刀であり、刀と名目されてはいるものの刀身そのものが存在しない異様の刀である。なにしろ刀とは本来出来た時点で強さが一定値に制限――否、設定されるものだ。多少持ち手によって前後するかもしれないが、それは差ささいな違いだろう。人によっては。だが誠刀『銓』の場合それが無く、持ち手によって千差万別有り様を変質させてしまう刀なのだ。『誠実さ』に主眼が置かれているこの刀は己自身を測る刀であり、自分を試し切る刀でもある。その誠実さは己を知るという事に他ならない。己を知る、とは己の性格、弱点は勿論のこと、力量や手の内を知れるということでもある。

 九散はそれと『針』を組み合わせた。

 『針』の脆さと『銓』の誠実さを組み合わせ、防御力を一切持たない状態で刀をはたき落とした。かつて誠刀『銓』の所持者であった仙人・彼我木(ひがき) 輪廻(りんね)は攻撃を放棄して防御に徹する専守防衛こと『誠刀防衛』を駆使した。九散はそれを正反対でありながら見事体現し、応用した。つまり、防御力の無い『針』でありながら完全なる攻撃性を持った防御力という矛盾を両立させたのである。九散の祝詞で『銓』は定まらない。それは攻撃性と防御性の振り分けの急激な変化を可能にしたことを意味する。

 

「!」

「あらあら、懐まで接近を許すなんて惚けてるのではなくて?」

 

 『塵外刀』の柄から伸びる鎖を滑るように伝い、あっという間に目と鼻の先に迫る。鼻頭同士がくっつきそうなほどの接近に無涯は戦慄し急いで後方へ飛ぼうとする。だが、少し遅かった。右肘を曲げ、手刀を構えた九散は詠い上げながら一閃する。

 

不砕(くだかず)――砕かぬこと『(なまくら)』の如し」

 

 全てを断ち切る斬撃は無涯の胸元をばっさりと引き裂いた。横一文字に刻まれた斬り口からは鮮血が噴き、九散の顔を染め上げた。だが同時に、

 

「がッッッ……はぁっ……!!」

 

 聞こえたのは、九散の呻き声だ。息と共に吐き出された血は倒れた無涯の顔を穢す。観客は何が起きたのか分からず瞠目していた。地に倒れ伏す無涯も胸元の痛みに顔をしかめながら、苦悶の表情を浮かべる九散を見上げた。

 

「くっ……手元が…器用なのね…」

 

 血を吐く九散の背中には、深々と『塵外刀』が刺さっていた。九散が躱し、迫り、間合いを詰め、斬り払う。それまでの時間は常人からすれば瞬時と呼ぶに相応しいが、無涯にはある程度時間があったと言える。躱された瞬間、こちらへと攻めてくると予期していた無涯は『塵外刀』の柄から伸びる鎖を手元で器用に動かして操り、剣先を落とした。それは無涯が宙へと放った勢いを失うこと無く、今度は空から落ちる雷のように落下し、九散を串刺しにした。

 

「いたたたたたた…不思議な刀ね、懐かしささえも感じるわ」

 

 幸い『塵外刀』の剣先は地面を貫くには至らなかったため、思いのほか楽に抜いた。それはもう、ずっぽりと。左胸を串刺しにしていた血濡れの『塵外刀』を放ると程なくして出血も途絶えた。無涯も筋肉を収縮させて傷口を塞ぎ出血を抑えながら、その様を見て訝しげな表情を見せた。

 

「出血が少ないな…」

「ああ、悪いけど私は身体の中を好きに弄れるのよ。だから大動脈や心臓は退かしたの」

 

 つまり、必殺には至っていないということ。九散を本気で殺すならば首を切断しない限り、致命傷には至らないという証拠だ。無涯はその事実を冷静に鑑みて捉え、把握しながら『塵外刀』を手元に引き寄せて立ち上がった。僅かに『塵外刀』が反応している。それは、貫いた九散が異形であることを示していた。

 

「……貴様、人間か? それとも蟲人(むしびと)か?」

「あらあら…あなたがそういう蟲人とやらは聞いたことが無いけれど、想像はつくわね。でも私は違う」

 

 『鐚』による自動回復で傷口が塞がったのを確認し、血濡れた顔を無涯へと向ける。すると無涯ならず観客、祭壇にいる者達全員がギョッとした。凄惨な笑みを浮かべる九散の顔面の半分が漆黒に染まり、髪は血の雨を受けたように真っ赤になっていたからだ。黒に染まった顔面の眼球も反転し、白目の部分は墨汁を零したようにどす黒く、黒目の部分は鮮血のように爛々と紅く輝いている。端正な唇が、開いた。

 

化外(げがい)…穢土の夜都賀波岐(やつかはぎ)―――

 

 ―――なんてね」

 

 花のような笑みと共に、色が元に戻っていく。まるでさっきまでの重圧が嘘のように消え去り、華やいだ空気に全員の肩ががっくりと傾いた。緊張の糸が限界まで引っ張られて、耐えきれずに切れてしまったようだ。そんな肩すかしを喰らいながら、無涯もその笑顔に見えた真意に苦笑を零した。

 

「あらあら、笑えばもっといい男じゃない」

「…興味ないな」

「そう、でもあなたと戦っていると愉しいわ。あなたもでしょう?」

「俺は……」

 

 胸から沸き上がるものは血だけではない。刀を交えれば交えるほど、己が昂ぶっていくのを無涯は自覚した。蟲を斬ることが全てであり、蟲を殺し続けることにのみ生き甲斐を感じていた無涯にとって、それは未知の領域であった。もとより人間と比べ物にならない戦力を誇る無涯からすれば実力が伯仲する相手はかつての同心であった『蟲狩』の中の数名。それでも、手合わせをして昂ぶることは無い。だが、九散と相手をしていると戦意が溢れ出る。

 

「…ふっ、そうだな。俺も……愉しい!」

 

 同時に石畳を蹴った。走り込みながら『銃』を撃ち込まれ、最低限の損害で弾幕をかいくぐる。『塵外刀』を下から逆袈裟気味に斬り上げると上段から振り下ろされる手刀と衝突する。それに収まらず横に一回転して強引に振り抜き、再び交差する。烈火の火花が無数に飛び交い、滴り落ちる血飛沫が二人を濡らす。刀と手刀が衝突する度に剛風と衝撃波が石畳を砕き、弾く。速くて重くて強か。矛盾していながらその全てを持ち合わせた剣撃が神楽を至上まで昇り詰める。

 

「ぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっっ!!!!!!」

「はぁアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッッッ!!!!!!」

 

 獣のような雄叫びを交わし合いながら、大盆を蹂躙し衝突し合う。もはや大盆は既に崩壊していた。それによる被害は観客全員を覆うような法術を展開した、顔を隠した祭事によって防がれたものの、果てには大盆を越え大地を削り、隣接していた海を抉るにまで至った。

 

不砕(くだかず)不見(みえず)――砕かぬこと『鈍』の如し、見えぬこと『針』の如し!」

「『塵外刀』(さい)の型――風壁!!」

 

 距離を無視した不可視の斬撃が海を引き裂く。その直線上にいた無涯は空中で全方位に『塵外刀』の斬撃を飛ばして防御する。背後で大きな鯨ごと真っ二つに割断されているのを見た無涯は再び九散に肉薄し、火花を散らした。

 

 

 ―――この御前試合は三日三晩続き、江戸近海の魚を喰らいながら戦闘を続けていた両者は最後、海に浮かんで気絶していたところを小鳥達によって発見されて終焉を迎える。御前試合の結果は全て見ていた祭事にも勝敗は分からず、引き分けという形で幕を下ろす。かつて無い死闘は江戸の民全員を沸かせ、同時に半数以上がその裏で(金銭的に)涙を流した。この神楽では不思議と蟲のよる被害が無いという奇跡的な記録を残したものの、それらは全て九散と無涯の戦闘の巻き添えを喰らい塵も残らず消し飛んだらしい。

 これにて神楽は終わり、錆 九散の正式な蟲奉行所へのお勤めが決まった。

 

 

 

 

 

 




これにて神楽終了。よかったね江戸の町が無くならなくて!!
しかし更新停滞は【評価1】を食らうなぁ…気をつけねば

※6/19訂正
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