【完結】ムシブギョー 十二ノ刀   作:一ノ原曲利

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一週間経つのにまだゲームが全員クリアできない…!!
家だとゲームする時間限られてくるなぁ…ゲームという雑念が振り払えず、今回の話は難産だった!
ネタ会だっただけに詰め込み過多www


十二太刀目

【BGM:時すでに始まりを刻む】

 

「…そいじゃあいくぞ、お前等」

「オイ、ちゃんと息揃えろよなお前…って先に飲むなよ飲むなよ!? 絶対飲むなよ!? これフリじゃねぇからな!?」

「カカカッ、わぁってるって」

「それではっ九散殿の蟲奉行所御就任を祝して――」

「「「乾杯!!」」」

 

 カカカンッ。お酒がなみなみと注がれた徳利同士が鳴る。仁兵衛の音頭を合図に徳利を鳴らした皆はひと思いにぐいっと酒を呷った。喉に染み渡る熱が心地よい。

 茶屋『春夏秋冬』―――の、前通り。そこはかつて九散が茶喰蚕(ちゃばみかいこ)と戦闘を繰り広げた場所であり、九散によって特にこれといった損害も無く済んだ場所でもある。そして、蟲奉行達もここで九散と邂逅を果たした。

 本日は大盆での神楽を観戦していた江戸の住民のほとんどが祝いの場に集まり、九散の就任を祝っていた。既に祝うというよりただ宴をしたかっただけのようだが――無理もない。いまは残っていない歴史の内の一つであるが、かつて巌流島で行われた二度の決戦を遙かに凌駕するような大接戦が見られたのだ。寝ても覚めぬ興奮ならば、いっそ宴会の場で発散させてしまおうという魂胆である。江戸城にいる吉宗公も神楽を見て歓喜し、無涯と九散に武勲を魅せてくれた褒美として千両もの大金を頂いたので資金としては充分。江戸町でひっそりと営んでいた料亭に九散自身が声を掛け、大金を渡す代わりに宴会での料理を振る舞ってくれることとなった。桜は既に散り、葉桜が夏の夜風に揺れて心地よい。だがそんな風さえものともせず、江戸の者達は宴会におおいに盛り上がっていた。

 酒の席には「市中見廻り組」は勿論のこと、「寺社見廻り組」の夢久(ゆめひさ)と「武家見廻り組」の影忠(かげただ)他、二つの組の武士達がいた。普段ならば市井百姓と飲むなんぞ言語道断、と礼節を重んじる夢久が一喝するのだが、治療済みではあるものの未だに痛みを残す身体を九散によって半強制的に引き摺られて仕方なく同席している。

 

「フン…我を笑い者にでもするつもりか」

「いえいえ滅相もない。ささっ、お酌いたしますわ」

 

 明らかに九散の方が重傷を負っていた筈なのに、もともと傷の治りが速いのかとても三日間死闘を繰り広げたとは思えないような動きに夢久は思わず後退った。だが追い打ちをかけるように九散が迫り、体勢的に上目遣いされながらついつい視線が顔の下、着物から零れるほどたわわに実った双丘の谷間に目移りしてしまい赤面する。悲しいかな、それが男の(さが)

 

「ごほんッ! …ま、よかろう。腹立たしいことに貴様がこの我を打ち負かしたのだからな…乗ってやる」

「あらあら~いい飲みっぷりですこと」

 

 夢久の趣味と合う朱塗りの大皿に注がれた酒は瞬く間に夢久の喉の奥に消えた。その飲みっぷりに「寺社見廻り組」の者達が眼を丸くして見つめながら、触発された影忠が胸を躍らせて手頃な酒瓶を掴む。

 

「夢久殿がこれほどいい飲みっぷりをしているとは…ならば拙者も乗らせて頂こう」

「お酌しますよ」

「うむ、(かたじけ)ない」

 

 酒瓶を受け取った九散が簡素な杯へと酒を注ぐ。注がれた酒からは芳醇な香りが漂い、鼻腔でそれを感じつつ一息に呷った。喉をカーッと焦がすような味わいが堪らない。

 

「流石だな…振らないのか? それは濁り酒だろう」

「濁り酒は最初は振らずに飲んだ方が楽しめるものですので」

「わかっているではないか」

 

 はははははは、うふふふふふふと哄笑が響く。普段仏頂面の影忠も酒の席ではついつい破顔してしまうようだ。

 

「おお~尾上様いい飲みっぷり!」

「よォし、んじゃこれから飲み比べすんべ?」

「オッ、いいねいいね~」

「カカッ、俺に敵う酒豪はいねぇだろ!」

「かーっ、やっぱお酒と焼き肉は最高ね! あ、点蔵お酒おかわり」

「こちらでござるな」

「うっわ、相変わらず犬みたいに命令こなすわね……別に先生との需要無いわよ? ねぇマルゴット」

「そうだよねぇガッちゃん。あ、この山椒味付けいいね」

「オホホホホホ! 折角の酒の席なんだから、この賢姉様が踊ってあげるわ!! 感謝しなさいよこの愚民共!」

 

 誰かが発言したことを発端に飲み比べ大会が始まった。それを見た小鳥は「みんな飲み過ぎないでねー…」と尻窄みに言ったが、誰も相手にされなかった。当然だろう、この宴会で酒を飲んで溺れない奴はいない。普段下戸の武士達も顔を真っ赤にして酔っぱらっていた。

 

「小鳥さん」

「おお、九散君」

 

 一息ついていると主催なのにお酌をしていた九散が小鳥の隣に腰掛けた。

 

「此度は正式な蟲奉行所への就任、おめでとう」

「こちらこそ、これからよろしくお願いしますわ小鳥さん」

 

 お互いに酒の入った杯を掲げて乾杯し、呷って一飲みする。

 

「よく飲まれるので?」

「まぁね。よく同僚にはザルとか言われてるけど。九散君は?」

「祖母にはよくワクと言われてましたね」

「え」

 

 どたんっ、と九散の背後で倒れる音がして思わず小鳥は視線を向けた。すると九散が歩いてきたであろう道にはお酒の飲み過ぎで突っ伏している益荒男達が倒れていた。

 

「これ…」

「あぁ、飲み比べして負けたら閨に付き合えと言ってきたものですから、飲んで飲ませて払いましたわ」

 

 ――九散は強い以前に美しい。日ノ本の国の者離れした容姿が逆に魅力を引きつけ、無涯との交戦中に見えそうで見えなかった筈の絶対領域から計算された胸囲は春と同等か、もしかしたらそれ以上なのではと言われていた。一体誰が計算したのだろうか。そして九散が第一陣で吹き飛ばされた変態の証言によれば、九散は未だ生娘。つまりは、処女。これに落ちない男はいない。

 だが、そのほとんどが返り討ちに遭ってしまった。一対一ならば負けるかもしれないと予想して徒党を組んで挑んだ筈なのに、まるで蟒蛇(うわばみ)の如くあれよあれよと飲んでいく様は凄まじかった――とのこと(火鉢談)。いま九散の背後で倒れている男達の数は十人強。つまり十連勝以上しておいて未だ正気が保ててるのだ。なのに九散の近くにいる小鳥には酒臭さが感じられない。相当の飲み手らしい。

 

「(…恐ろしい娘っ!)」

「それで―――ひとつ訊ねたいことがあるの。いいかしら?」

「何だい?」

「―何故、祖父ではなく私に蟲奉行所への推薦状を出したのですか?」

「そこか……」

 

 日本最強、鑢 七花。語られざる歴史における流派、虚刀流の使い手にして完了形変体刀真打虚刀『鑢』そのものである。彼は九散がこの歳になってなお現役らしく、神出鬼没にして住所不定ではあれど旅の者達がよく噂にしている奇妙な拳法の使い手。いまや西半分が蟲によって占領されているにも関わらず普通に乗り込み、無傷で帰って来るというのだから驚きだ。

 

「――単純に、キミの方が足取りが掴みやすかったということもあるね」

「あらあら、確かに祖父は根無し草で浮浪者、気分屋と三拍子揃ってますものね」

「凄い言われようだね……でも、それだけじゃない。九散君の噂を蟲奉行様が聞いて推薦したんだよ」

「まぁ……」

 

 初耳だった。

 御簾の向こう側にいたせいで顔までは拝見出来なかったが、普通の人とは違う何かを持っていたようにも感じられた。そして、高齢。声こそ少女のそれではあるが、年齢と容姿の不一致によるものだろう。もしかしたら、語られざる歴史を知っているのかもしれない。だから彼女の周りの者達は語られざる歴史を識っているのか。

 

「蟲奉行様のご期待に添えられるよう、尽力しますわ」

「有り難い。…ところで、僕も質問がある」

「なにかしら」

「いやなに、キミは語られざる歴史を知っているのだろう? 酒の肴に聞きたくてね」

「あら、そんなことでしたか」

 

 可笑しそうに微笑む。だが視線だけは鋭く、背後にある襖を睨んだ。そして一瞬にして襖に手刀を添えて戻すと人型に切り開かれる。人型に斬られた襖の向こうで、冷や汗をかいて絶句している家重が呆然と突っ立っていた。

 

「な、な、な、な、な」

「な?」

「ななななななにをするっ!? 危うく斬られるところだったのだぞ!?」

「あら、人の話を盗み聞きするのは殿方のやっていいことではありませんわ」

「そうですよ家重様、いくら次期将軍様といえどやっていいことと悪いことがあります」

「…おい与力…なんか俺よりこの小娘に対する優先順位が高くないか?」

「え?」

「え?」

「え?」

「………」

「家重様、取りあえず席についた方がよろしいかと」

「う…うむ」

 

 無かったことにした。ひとまずこれ以上九散の機嫌を損ねると間違いなく切り捨てられてしまいそうだったので、慌てて腰を下ろした。具体的にナニを切り捨てられるかは明言しないが。

 

「酒の肴といっても……私もいくつかの話しか出来ませんよ? それにお世辞でも愉しいとは言い難いですわ」

「構わないよ……って、いくつか?」

「はい」

 

 口直しのお茶を漱ぎながら頷く。

 

「今のところ、私が話せるのは三つ。一つは『婆娑羅(BASARA)』と呼ばれた乱世。もう一つは祖父の刀集め…徳川ではなく家鳴が幕府を治めていた時代。そして最後に―――」

「ま、待てっ!!」

 

 そこで、いままで黙っていた家重が声高に止めをかけた。

 

「なんですか、盗み聞き名人家重様」

「そんな名前で呼ぶな! 俺のことは長福丸でいい! それよりお前が言うその家鳴とやら! そんなものはこの国のどの歴史書にも記載されていなかったぞ…それに『婆娑羅』だと!? そんなもの、南北朝時代の社会風潮や文化的流行を表した流行語ではないか!」

「あら、ご存じで」

「……馬鹿にしているのか」

「いいえ、長福丸様の博識に感動しただけですわ」

 

 婆娑羅とは南北朝時代の身分秩序を無視して公家や天皇といった時の権威を軽んじて反撥し、奢侈な振る舞いや粋で華美な服装を好む美意識の一つであり、後の世で戦国時代における下剋上の風潮のきっかけともなった。

 

「だが婆娑羅は本来時代を指すのではなくただの流行語だ」

「そうですね…私が話す婆娑羅では、正史通り『独眼竜』伊達政宗が六刀流だったり『若き虎』真田幸村が二槍流の熱血漢だったり、『第六天魔王』織田信長が死んでまた蘇ったりと波瀾万丈にして奇想天外なものですわ」

「なんだそれは!?」

「なるほど…名だたる武将達の話か…興味深いね。特に乱世だから明細な記録が残されていない分、そういった話があってもおかしくない。それで、三つ目は?」

「ええ。今は蟲が西半分を制圧している世だけど、かつては東半分が穢土という到底人が住めないような人外魔境の巣窟となっていた時代で行われた『東征』と呼ばれる歴史ですわ」

「…なぜ、そうも俺の知らないことばかり知っている?」

 

 聞き慣れない単語群に頭を抱える家重。心なしかその視線には恨みがましいものも感じられる――が、九散は気にも留めず笑い飛ばした。

 

「あらあら、書物に書かれていることがこの世の全てではなくってよ」

「ぐぅ……!!」

「そもそも九散君はなんでそこまで歴史に無い話を知っているんだい?」

「趣味よ。語られることのない歴史を調査して識る……生き甲斐を感じるわ。よく蟲に邪魔されるけど」

「なるほどねぇ…趣味か。いいね。因みに今はどんな歴史を調べているんだい?」

「今は……現将軍吉宗様が生まれた1648年に起きるとされていた『末世』と極東の地『武蔵』を取り巻く歴史ね。まだ生き証人捜索が困難で……」

 

 ―――そうして宴は夜通し行われた。初夏の晩の涼しさを塗り潰すような宴は、まだ醒めない。

 

 

 

 




まだ終わりではありません。あと4~5話くらいやるつもりです
しかし前回のバトルシーンがよかったせいか今回は見劣りするッッッッ…!!
なんか前回のでバトルシーン中毒になってしまったようだ…
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