【完結】ムシブギョー 十二ノ刀   作:一ノ原曲利

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ようやくPCが治ったというか、データ引っこ抜いて復活しました!
ただ文章を打つときの変換が酷過ぎて書くのにも時間かかりましたよ…泣
それではお待たせしました、どうぞ!


二十四太刀目

 

 

 

 新生真庭忍軍真庭鵺組が一人、五感の内の一つである皮膚感覚を司り、縛刀(ばくとう)(くさり)』を駆使し死体集めを生業(なりわい)とする屍体愛好忍にして真庭の里の歴史上最年少記録である真庭 人鳥(ぺんぎん)に並ぶ最年少である『死釣(しづり)海蛇(うみへび)』こと真庭 海蛇。

 新生真庭人軍真庭鵺組が一人、五感の内の一つである嗅覚を司り、大太刀爆刀(ばくとう)(ちょうな)』巧みに操り空間を燃焼し、たちまち火の海を作っては人を燃やす焼死体生産機にして真庭忍軍中最も惨たらしく慈悲のない性格である『爆炎(ばくえん)貒狸(みだぬき)』こと真庭 貒狸。

 上記二人とも九散の弱点や盲点を突きつつも、ものの見事に返り討ちにされたと報告が上がっているが要注意人物であることに変わりはない。何故ならば九散に撃退されたからといって現在揃っている江戸の兵力で太刀打ちできるかと言えば、そうではないからだ。九散より弱いからと言って、江戸の(つはもの)より弱い理屈は通らない。

 そして新生真庭忍軍真庭鵺組が一人、真偽は未だ不明であるが五感の内の視覚・聴覚・味覚を司ると言われており、上記二人の他に過去元『蟲狩』の一員であった無涯の塵外刀――別名吸刀(きゅうとう)(はばき)』真打、現『蟲狩』頭領である無涯の兄の塵外刀――吸刀『鎺』影打を拵えた『語られざる歴史』における歴史的刀鍛冶の血筋にして占星術師の力を持つ四季崎 記紀の子孫である『三感(さんかん)参猿(まいざる)』こと真庭 参猿。異例である真庭 剣牙虎(けんがこ)の存在を除けば一組三人編成の鵺組の中でも最も危険であり、過去最も九散を追い詰めた存在の五指に入る存在こそ彼女なのである。九散本人の供述ではもう一度場を改めて戦ってしまえば勝敗はわからないと言わしめるほどの猛者であり、報告を受けた吉宗と蟲奉行が真庭忍軍中二番目に警戒している人物である。一番は――言わずもがな、剣牙虎である。

 

「ずずず………」

「………」

「………」

 

 吉宗と蟲奉行は、その二番目に警戒している相手と、

 

「……ごくごく、ぷはぁーええお茶ですわー…あーいやいや、結構なお手前、やったっけ」

「……どうなのだ、蟲奉行よ」

「妾に振るでない」

 

 お茶を飲んでいた。

 護衛一人すら呼ぶことも叶わず突如現れた参猿の手によって、口を塞がれた二人は茶室へと強引に引き摺り込まれて今に至る。途中から礼儀作法として嚥下をあからさまにするという無礼講となってしまっているが、当然誰一人咎めようとは思わない。それよりも、護衛一人呼べずに相対している参猿の一挙手一投足を見逃すまいと二人は警戒していた。

 

「里から突っ走ってきたんでよぅ喉渇いとったんよな。満足満足。これでなんとか喋れるぅ」

「…余から言うのもなんではあるが、その面は取らぬのか?」

「このお面外しても意味無いで。他のお面がいつの間にかついとるさかい。何か問題か?」

 

 柔和なお面なんか被っていると、緊張のきの字も無いんだよ。

 とは流石に言えず、二人とも横目で合図し悟られぬようため息をついた。

 

「さて、そんじゃま早速本題に入りましょか。足かたっぽ無いんで無作法は勘弁な」

「その前に一ついいか?」

「なんや? 蟲奉行はん」

「……九散殿…錆 九散は何処にいる?」

 

 市政百姓ならば気絶してしまいそうな眼光が参猿に注がれる。九散失踪の件に関わっている――否、関わる発端を作ったであろう人物が目の前にいるのだ、警戒しないわけが無い。いくら『蟲狩』の刀によって力を失ったとはいえ、戦う意思まで失われたわけではない。もし殺したとあらば一矢報いて首根を掻っ切るか喉を潰すか、目を潰すくらいのことは出来る。

 

「九散はんは……九散はんに関しては、何も言えへん。ただ、未だにあの八丈島にいるとだけは言っておく」

「何だと?」

「八丈島は…もう消え去ったのではないのか?」

「うん? まぁ、一般人には消えたように見えるやろな。厳密にちゃうけど」

「厳密…?」

「厳密っちゅーか正確っちゅーか、神隠しっちゅーか公主隠しっちゅーか」

「公主隠し?」

「あ、ちゃうちゃう神隠し。島ごとどっぷり神隠しに逢ったみたいなもんよ」

「なぜ貴様にそれがわかる?」

「ウチがその神隠しに逢った島から、命辛々()()()()んを確認したからや。蟲奉行はんも体感したやろ? 島を中心に引力…の逆っちゅーか、斥力言うんかアレ? みたいなんを感じたやろ」

 

 そういえば、と気絶する直前のことを思い出す。気絶する瞬間と気絶から目覚めるその前後の記憶が曖昧だったが、参猿の言葉に記憶を揺さぶられて僅かに蘇った。そう、おそらく九散の分身体に抱きかかえられて島から抜け出そうとして海岸に辿り着き、駆け寄ってきた夢久の切羽詰った声を聞きながら――突如、背後から押し寄せてきた膜のようなものに押されて、気絶したのだ。そして目覚めたときには江戸湊の海岸線に流されていて、自分よりもその膜の影響を受けた『市中見回り組』の面々を見て絶望したのだった。

 

「まぁ、次元を歪める歴史の英雄と目覚めたばかりの邪神がぶつかればそうなるわな。むしろ神隠し程度で済んだほうが奇跡。そして死人は次元に漂流された者が一人もいないことなんか更に奇跡。いいことずくめ過ぎて悪い予感しかせぇへん」

「ほう……貴女がいる『蟲狩』にも死人は出なかったか」

「いんや、そっちの松ノ原ちゅう奴に殺された者がいる。他は致命傷を負った者ばかりやけどな…唯一例外で体を動かせるウチが特使として派遣されただけやね」

 

 ぴ、と片足で胡坐をかいている参猿が二人の目の前に置いた封書を指す。

 

「読んでみぃ。別に真庭忍軍お手製の視認呪文とか書いてへんから安心しぃや」

 

 そう促されて、目配せした二人は頷き吉宗が代表して手に取った。赤黒く書かれた筆跡が血で書かれたものであることはすぐに察した。封書から匂う錆の香りに気圧されながらも開き、書かれた文字を読み上げる。

 

「……拝啓、江戸の皆様。私は蟲奉行所改め新中町奉行所所属、市中見回り組を辞職する旨を伝えます。直に話せなくて申し訳ありません、此度の辞職につきましては様々な声があるでしょうが、ご理解ください。そして、この封書をお読みになっているであろう将軍吉宗公、そして老中蟲奉行様に一世一代をかけたお話があります―――……!?」

「どうした?」

「……これは、――!? ……九散殿は、本気か!?」

「貸してくれ………――!?」

 

 開かれた封書の内容を読んだ蟲奉行も、吉宗と同様に目を見開き悶絶した。開いた口が塞がらないとはまさにこのことだろう。まぁそんな反応するわな、と空笑いして参猿は肩を愉快そうに揺らす。

 

「それは――ウチら真庭忍軍及び『蟲狩』も了承や」

 

 書かれていた内容は、以下の通りだった。

 

 

 ―――八丈島消失の日より()()()、日ノ本の国に住まう全軍で蟲によって()()()()()西()()()()()()()()()()()を行う。

 現在残している日ノ本の国の東側に住まう全戦力として、虚刀流九代目現当主錆 九散の名の下より以下に召集を掛ける。

 出雲の三途神社から移転してきた遠江(とおとうみ)黄泉神社(よみじんじゃ)の武装巫女集団。

 薩摩の濁音港(だくおんこう)から拠点を移した磐城(いわき)撥音港(はつおんこう)の鎧海賊団。

 近江の伊賀を離れ甲斐(かい)に里を置く新生真庭人軍。

 棋士の聖地・出羽の天童将棋村の将棋武士及び心王一鞘流道場。

 流浪の蟲退治集団『蟲狩』。

 そして、関東在中全町奉行所本部・支部すべては吉宗公の名の下より召集を依頼する。

 各代表は半月後、信濃の古禅寺に集合し会議を開き、『西征』の計画を執り行う。

 全軍進撃は一月後、蟲共の最盛期である白露の侯。

 百年の支配に終止符を打つか否か、人間の未来を決める最大にして最後の決戦を行う―――

 

 

「馬鹿げている!! よりにもよって白露の候だと!? 三年前大阪遠征を行った時でさえ蟲達が最も弱まっている大寒の侯だったというのに…!!」

「……『寺社見回り組』と『武家見回り組』も回復の見込みこそ一月後だが……そして余の軍の要である『市中見回り組』は、回復の目処が立っておらぬ故、実質解散している。無理だ」

「んー……そろそろやね」

 

 封書を見て憤慨している蟲奉行、項垂れている吉宗を横目に参猿は茶室の窓枠に腰掛けて空を眺める。そんな行動に疑問を抱いた二人だが、吉凶の前触れにも見える暗雲が江戸の空だけを覆っていることに気付いて空を仰いだ。

 

「なんだこの雲は……?」

「……まるで、白紙のような雲に墨汁をこぼしたような色だな…」

「………来るで」

 

 その声は、銅鑼を打ち鳴らしたような轟音に潰された。

 黒い稲妻。

 黒雷。

 その雷霆は江戸の人を、町を、大地を揺るがし恐怖に陥れた。

 地震とも大噴火とも受け取れる激震は静かに収まり、人こそ吉凶の前触れを垣間見たが如く慌てふためき混乱の渦中にあるが、軒並みたった江戸の町に傷一つ無く、倒壊した家屋さえ存在しない。

 耳を押さえるような轟音の後、吉宗達がいる茶室に江戸城にいた家臣が掛け付けて来た。

 

「将軍ご無事ですか…って、あ!? く、曲者!?」

「げ」

「今更言うか」

「いいや、彼女のことはいい。それより余と蟲奉行は無事だ」

「そ、そうですか……」

「ほ、報告があります!!」

 

 すると重ねて大勢のの家臣が大慌てで茶室へ飛び込んできた。全身に汗水垂らし、口元を白の布で覆った者――たしか、付きっ切りで『市中見廻り組』の者を見ていた者達の筈。

 

「『市中見廻り組』が同心、松ノ原殿が雷に直撃……直後、傷が塞がり目を覚ましました!!」

「同じく『市中見廻り組』が同心、一ノ谷殿も失明を回復!」

「『市中見廻り組』が同心、恋川殿も覚醒後全身を難なく動かし……これ、夢じゃないですよね? 流石に酒はまだ飲ませない方がいいと思うのですが…」

「『市中見廻り組』が同心、火鉢殿の肘から先が生えて……うわぁあああああああああああああああああああああああ!?」

「『市中見廻り組』が同心、月島殿も目覚めてそうそう茶屋の小娘に……クソ、この助平めぇ!!」

「『市中見廻り組』が同心、無涯殿も全身の文様が消えて起きて……あぁまだ蟲退治蟲退治とかいそいそと行くのやめて下さいよ!? そもそも刀折られててどう蟲と戦うんだよ!? しかもまだ江戸に蟲来てないのにっ!!」

「……これは、どういうことだ…?」

「妾に聞くでない」

 

 そう、ただ二人はいままで『市中見廻り組』を纏めていた小鳥に同情した。よくまぁこんな自由人たちを、纏め上げたものだと。

 

「よーやくウチもウチ等も治ったようやね。英雄の不可逆を戻したとは……ハハハ、相も変わらず九散はんには恐れ入るで」

 

 生えている片足の調子を確認し、満足げに笑った参猿は懐から九散から預かった、吉宗に見せた封書とは別の六つの封書を折り曲げて江戸城から放った。四季崎の血を継ぐ者としては否定的に、参猿は運命というものを信じていない。ただ、運命はそこに在るだけなのだと理解している。風に乗り風に煽られ風に沿い風に吹かれゆく封書は、自ずと差出人である九散が望んだ相手の下へと届くということが、必然的に参猿にはわかっていた。

 

「ほな、ウチ等も行こか」

 

 己の体に入る二人の家族に告げ、参猿は江戸城から姿を消した。

 

 

 

 

 

 

 




 というわけで最終章『西征篇』開始
 そして市中見廻り組看護の方々、ご愁傷様です
 小鳥、天間の対応は比較的楽
 春菊は起きて早々酒屋で血=酒を摂取。後日アル中になって再び看護
 火鉢は腕がニョキニョキ生えるというSAN値直葬コース
 仁兵衛は起きてすぐ看護していたお春ちゃんの胸が飛び込んでくるというラッキースケベ
 無涯は某首オイテケーみたいに虫オイテケーのテンション
 うん、オマエラじっとしてろ(モノクマ)
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