おまけに一週間も経過しかけているというのにこんな内容で短い文しか書けずに申し訳ありません
重ねていつしか言った七月中に完結できなくて申し訳ありません(ぺこり)
それでは、どうぞ
江戸、町奉行所総本部診療所。
蟲などという超大型巨大生物との戦闘において、余程の手練でも無い限り怪我一つせずに退治するなんて不可能な話である。従って百年前に出現した蟲に抵抗すべく創設された蟲奉行所本部には当然の如く蟲奉行所専用の療養所が設けられている。部屋数ざっと百はあり、五つに分かれた奉行所の役人の三分の一は収容出来る大きさである。その部屋も個室完備ながら一部屋二~三人はいれば少々窮屈な思いはするが全員収容出来るほどだ。
つい先ほど、吉凶の前触れかと疑う黒い雷が空を裂き、運悪く療養所に的中したのである。幸い感電による死者は出なかった――どころか、瀕死の重傷を負った者、武士としての命を絶たれた者、永遠に傷が癒えない者、彼等全員が一夜にして完全復活を遂げたのである。
そして全快とまでは言わずとも、致命傷の大怪我を負うより前の状態になるまでに回復した元『市中見廻り組』が与力、松ノ原 小鳥もいまだ絶対安静を言いつけられ、集中治療室の布団に横たわっていた。
ただ、一人ではなかった。
「松ノ原さん松ノ原さん元気ですか? 起きてる? あ、起きてるならお目覚めの接吻が必要だよね私たち前世から夫婦なんだから当たり前よ当たり前! でもそこは落ち着け私、ここで今あえて『恋人』と言わなかったのは恋人だったもしても結婚して夫婦になった訳じゃないという裏が存在して他の人に誤解とツッコミを与えてしまうからなの私って超賢い! そう…前世では三度失敗した挙げ句松ノ原さんを誑かした泥棒猫を何匹も駆除したから大変だったの! だから今回は松ノ原さんとはまるで何も知らずに運命という名の赤い鎖によって導かれたウブな恋人達として始めていく必要があるよね、だから最初は節度を持って距離を
怖いくらいに迫って世話をしてくる色白の童女を見て、小鳥は背もたれにもたれ掛かりながら冷や汗をかいて答えた。
「……えぇ、そうですね」
突如奉行所の看護係の人と代わって現れた―――凍空 しらゆきと名乗る少女。どうやら今現在行方不明である錆 九散の要請によって遠江の黄泉神社から派遣された見習い神主らしい。
色白の素肌と幼女と見紛うほど小さく幼そうに見えるが、これでも九散より年上らしい。拙く危なっかしい動きではあるが、料理洗濯家事全般すべてにおいて完璧であった。そこまでしてくれるのは有り難いが執拗なまでに向けられる愛情からして良い予感がしない。
関係者以外立ち入り禁止として木製の扉ではあるものの鉄の閂で施錠されていた筈だが、箸を割るような感覚で手を捻っただけで開けられた辺り、九散同様に半分人間をやめてる。小鳥も平均的元服男子程度に体重はあるつもりだが、指一つで布団ごと崩すことなく持ち上げたときは驚きに腰を抜かした。
この子、今まで会ってきた人の中で一番厄介すぎる。
小鳥は布団の中に隠された手紙を盗み見て、鼻歌を歌いながら料理しているしらゆきにばれないように溜息をついた。その手紙は小鳥宛に送られてきた九散からの血文字で書かれた手紙であり、ある一文が書かれていた。
――『暫くしらゆきちゃんの相手をして、貴方に足りない自主性と自己主張を身につけなさい』――
「ところで松ノ原さんは祝言を上げる前に子供が欲しいかな? それとも祝言を上げた後? 確かに子供が出来ると母親と父親との間に緩衝材が出来るから困るかもしれないけれどやっぱり夫婦の愛を確かめるのは性交が一番だと思うの。個人的には相手を気遣って慎重にしてくれるのも嬉しいけれど野獣のようにがつがつ攻めてくれるなんて普段の姿とは懸け離れた仕草もぞくぞくして堪らない! 松ノ原さんはまだ童貞なのかしら彼女がいない歴と年齢は同じなのかなっ? 嗚呼でも松ノ原さんに過去の女がいようがいまいが関係ないよね、今は私のことだけを見て私だけを感じて私だけを愛してくれるんだから。今や周りの女なんて道端に生えた蒲公英でしかない…嗚呼でも九散さんは別かもしれない、あの人の紹介でこんな素敵な殿方を見つけ出せたんだもんっ、桜程度には意識してくれてもいいかも。糸目で眼鏡でそれなりの細身、几帳面で実力主義で厳しいところもあるけどさり気なく他人を気遣い他人を立てるまさに影の功労者と言っても差し支えない私好みの品行方正な人! 正しき人ほど甘やかして毒を少しずつ盛ってずるずると自堕落街道に追い込んで私が付きっ切りで一緒にいてあげないと生きていけないような駄目人間に仕立て上げたいなぁ」
「(なんて置き土産をしてくれるんだ九散くん!?)」
これ以上にない試練だった。
▼ ▼ ▼
―――酒。
酒、酒、酒、酒、酒。
酒酒酒酒飲酒飲酒飲酒飲酒飲酒飲酒飲酒飲酒飲酒飲酒飲酒飲酒――っっっっっっっ!!!!!!
「ぷへぇ、そりゃ一週間も飲んでねぇと全身干乾びちまうに決まってんだろカカカッ!!」
「へへへ、確かになぁ。一週間も恋川の旦那の顔を見て無ぇといい予感がまるでしねぇから酒の仕入れ量増やしておいたんだよ。いやぁ他の客に出せる余裕が出来てよかった」
「ンだよジジイ…俺ァ疫病神か」
「飲み屋一軒なら余裕で潰す貧乏神さ」
「違ぇ無ぇ」
あっはっはと豪快な笑い声が江戸の下町に木霊する。下町の中でも貧困層に位置する飲み屋は春菊が最もよく出入りしている店だ。『九十九斬り』と呼ばれる以前から江戸にいた、春菊が子供の頃から世話になっている飲み屋で、不本意ながら死んだ父親の伝手で紹介され、元服祝いに飲んだ飲み屋でもある。以前『寺社見廻り組』と『武家見廻り組』の手でたかだか見えない蟲一匹のために吹き飛ばされかけた町の一角に位置し、職を失い落ちぶれた者達にも酒や肴を奢ってくれる業腹な老人が店主だ。
「……包帯のことは聞かねぇのか」
「どうせ蟲退治だろう? そうでなくても別に聞きゃしねぇよ、それこそ野暮って奴だしな。流石に包帯から飲んだ酒が漏れたら笑ってやるけどよぉ」
「カカッ、言ってろ」
「お前の傷なんぞ聞かん、男の怪我なんざ眼中に入らねぇからな。それより……前に来た金髪の姉ちゃんはどうした?」
「………」
聞かれたくないことを、聞いてきた。
この店の店主は聞いても聞かなくてもどうでもいいようなことは聞かない。ただ、勘が良過ぎる。『寺社見廻り組』による町内掃討作戦があったときだって一番高い酒だけ抱えてこっそり逃げ出していたとか。
――錆 九散と共に飲み屋へ来たのは夏の陣が終わった数日後だった。信州銘酒『明星』を台無しにしたツケとして、春菊が梯子している飲み屋の中でも一番味がよくそれでいて高い酒を出してくれる店を紹介しろ、といつの間に解いていた包帯を鞭のように操って叩きながら脅してきたものだから、仕方なく応じるしかなかった。その紹介した店こそいま春菊が飲んでいる飲み屋なわけだ、当然店主も九散の顔くらいは覚えている。挙句の果てには「春菊って名なのに春が終わるのが速いな」なんて嘯くものだから喧嘩腰になって当たり前だった。
「…あいつは、奉行所を辞めたよ」
「別れ話か? 縁切りか?」
「いい加減三枚にオロすぞてめぇ」
「そりゃ怖い」
そもそも――九散とは、そういう間柄ではない。
確かに同心の火鉢よりは人間関係の距離が近いという実感があった。だがそれはあくまでも親愛の情であって恋慕の情ではないのだと自覚している。あくまでも同心、あくまでも仕事仲間。だが、無涯や天間、小鳥、仁兵衛、火鉢達とは何かが違う。そして、そのことを考えるたびに飲む酒が不味く感じる。
「ん……?」
改めて、己と九散との関係はなんだったのか――それを考えようとしたそのとき、視界の端で自分を看護していた人が走ってくるのが見え、同時に頭の上に何かが落ちてきた。
「なんだこりゃ」
「手紙かぁ? ははぁ、頭の上に落ちてら。なんとも間抜けな姿だな」
「うっせ」
よくもまぁ口が回る店主だ。春菊は悪態をついて頭に乗った手紙を手に取る。そこには――微かに香る錆付いた血の匂いと、『錆 九散』と書かれた文字が躍っていた。
「は!? なんであいつの名が……!?」
「へぇ、あのお嬢ちゃん錆って名前なのかい。金髪なのに日ノ本の国出身なんだなぁ。で、なんて書かれてたんだ?」
「『市中見廻り組』恋川春菊ー!! 探しましたよこんなところでお酒なんか飲んでないで戻ってくださいよ絶対安静なんですかふげっ」
「黙ってろ」
おっかけの人を足蹴にして急いで手紙を開く。血の匂いこそ不吉な予感しかしないが、それでも何も言わずに奉行所を去った九散からの手紙とあらば、読まずにはいられない。糊か何かで接着されていた部分を千切り、慌てて内容を確認する。
「で、なんて書いてあったんでぇ?」
「………悪ぃ、俺学無ぇんで読めねえわ」
「仕方無ぇなぁ……ホラ、ちょっと借しな」
「テメェ読めんのか」
「少なくとも商業やってりゃ身につく」
ふふんと自慢げに鼻を鳴らす姿が腹立たしい。一発殴ってやりたいところだが肝心の読み手が気絶してしまっては世話が無い。だから読ませてから殴ることにしようそうしよう。そう心に決意を固めながら店主を睨む。そんなこと露知らずに読んでいた店主はいきなり高笑いをし出した。
「なんだ!? なんて書いてあった!?」
「ははははははははは!!!! こいつはあれだよ、その九散っていう金髪嬢ちゃんの新しい許婚かなんかの名前だよ!」
「はぁ!? なんでそんなことわかるんだよ!? 確かに人名なんだろうけどよ……えっと…なんて読むんだ?」
「はっはっはっはっはっはっはっはっは、馬鹿なこと言うんじゃない。俺ぁこの手紙に込まれた書き手の気持ちを代弁して読んでやったのさ! なんて読むかはさっぱりわからん!」
「ドヤ顔で言うことじゃ無ぇだろ」
とりあえず鉄拳制裁して黙らせた。しかし困った、読める人がいないのでは仕方ない。手紙も読めなくてはただの落書きが書かれた塵屑でしかない。
「あ、それ北奉行所の長の名ですね」
「はぁ!?」
突如、足蹴にしていたおっかけの看護人が言った言葉に本日二度目の驚きを見せた。今度こそ空振りに終わってくれなければいいが。
「いやーさすがに江戸勤務の武士様には読めるんですねーありがたいありがたい。で、なんて名なんだ?」
「変わり身速っ! 忍以上に変わり身速っ! つい先ほどまで私を足蹴にしてた人とは到底思えませんよその対応!」
「カカッ、有益な人とあらば媚を売るのが俺の信条でね」
「気をつけろよ、こいつ役に立たないとあらば俺みたいにぶっ飛ばすから」
「黙れクソ狸ジジイ」
「お? やんのかコラ」
「あ~はいはい落ち着いてください二人とも! っていうアンタはついさっきまで大怪我負ってたんですから暴れないでくださいよまた傷が開いたらどうするんですか!?」
「いいからさっさと読めよ」
「『練』って字は読めたんだけどよ、練り物とおんなじ字だし」
「ええーとこれはですね、」
と、追っかけの看護人が口を開いた瞬間。
「………え」
「は?」
「……あぁ?」
その紙が、真っ二つに切れた。
そして鋭利な殺意を感じた春菊は慌てて刀を抜き、斬撃が放たれたであろう方向に懺斬りを叩き込む。
だがしかし。
「ぬるいな」
斬撃を放ったであろう刺客は、春菊の懺斬りをまるで微温湯に掛けられたとでも言いたそうに手を振った。遅れて聞こえる鍔鳴りの音と共に、懺斬りが刺客の左右の建物を切り刻んでいくのが見えた。
「手前ェ…人様に斬りかかるたぁどういう了見だ」
「何、大方試験といったところだ。わざわざ錆に催促され
「あ…あなたは……!?」
「知り合いか? 坊主」
「カカカッ…オイオイ折角出てきたところでいいけどよ、手紙に罪は無いだろ読めなくなっちまったじゃねぇか」
「元より俺様が来たんだ、その手紙なんざ読む必要なんざ無ぇだろうが」
女のように髪を伸ばした、線の細い若い男。一応将軍に仕えているのか武家の服を着ているが、本人に着る意思が無いのか着崩しているだけなのかだらしない格好で着込まれた黒の袴。眠そうな声に覇気と生命力というものが微塵にも籠められていない出で立ち。とても先ほどの殺気を放ったようには思えない男だった。腰には一本の脇差があるが、とてもじゃないが春菊の懺斬りを退けたとは考えられないほど刀身が短い。
「申し遅れたな。上野で何と無しに北奉行所の頭を勤めてる―――
しゃりんという鍔鳴りと共に、頭上から火を纏った特大の岩石が落下してきた。
「………は?」
「修行第一段階、星を斬れ」
▼ ▼ ▼
「……眼が、見えるようになったのはいいですけど」
ざぶん、ざぶん。波の音が聞こえる。それは眼が見えるからわかる、眼下に海が見えるのだから当たり前だ。当たり前――なのだが――
「………ここ、どこ……?」
――あれー? 眼が覚めたときはまだ、江戸にいた『市中見廻り組』のみんなと江戸にいたはず。死んではいないが親の形見として後生大事に持っている式紙を握って、法力が全然籠もらなくて項垂れてて、すると布団の上に自分宛の手紙が届いて、しかも九散さんのだから当然見るしかなくて、それで――
「……ここ、どこぉ…?」
天間はもう一度、同じ言葉を繰り返した。若干言葉尻が歪んでいるのは泣いているせいだ。眼が覚めれば――否、眩んでいた視界がはっきりして、いつの間にか江戸ではないどこかに飛ばされていた。
式紙を持つ手に力を籠める。だが己の内に法力を失ってしまっている今、握ったところで己を守る盾になってくれはしない。仕方なく式紙を法衣の中に仕舞い、おそらくこんな元凶を招いたであろう手紙を取り出す。そこには御門家分家の土御門家に組する天間ほどの法術使いでも一部分だけだが理解できる術式が書かれた一文があった。まるで日記のような文体ではあるが、漢字や言葉の一つ一つを摘んで纏め、複数の規則性を挙げて繋いで行くことで一つの術式として作用しているようだ。そして最後の文に、術式とは関係なく書かれている文章を読み上げる。
「……『一度法力を失った術師に未来は無い。神の奇跡を信じるのと、悪魔の契約をするのと、どちらがいいか』……か。この『神』なら神格を持った者という意味合いなんだろうけど…『悪魔』ってなんだろう。地獄の閻魔みたいなものかな」
どっちもいやだなぁ、と天間ははにかんだ。
天間が九散と話した回数は数えるほどでしかない。だがその僅か数回でも貴重な体験であったことには変わりない。だが、九散と出会う前までの己との差異が今の天間にはわかっていた。
御門家からの教えだと、神こそがすべてだと言った。人が生きているのも神様のおかげ。ご飯が食べられるのも神様のおかげ。幼い己が法力を身につけているのも、神様のおかげ。だから、神様は崇め、敬わなければならない。
『いいえ、それは違うわ』
だがそれを、彼女は否定した。
『じゃあ蟲なんていうわけのわからないものに蹂躙されるのも神様の贈り物? それとも与えられた試練? 人は死んだらそこでお終いよ、昔は踏み潰しさえしていた小さな虫によって呆気なく一生を終えて、来世が約束されている保障でもあるのかしら。それは宗教によって異なるかもしれないけど、死んで蘇った人なんて名乗りあげた人が今の今までいない以上、死んだらそこで終わり。大人になってお酒を飲む、恋に生き恋を結び恋に破れる、大金持ちになるもよし、海の向こうへ渡るもよし、生きている間にやりたかったこと全部、死んだらできなくなってしまうのよ。神様を拝めば――それは、確かにご利益の一つや二つもあるかもしれないけど、だからって己の人生が何事もうまくいくかといえばそうではないわ』
そう、胡乱気に言った。
『結局、人生は己が決めて己が進むものであって神様はただ気休め程度にそこにいるだけの存在なのよ。神代の世界なんかじゃ信仰無しに生きられないのが神様らしいけど、実際どうなのかしらね。あら、別に神を崇拝するのをやめろと言ってるわけじゃないわ。ただ、神様は万能でもなければ全知全能でもない。人よりもすこし大目に物事を知っていることを知ってるだけ、何でもは知らないわよ。だからあまり神様なんていういるかいないか、手を差し伸べてくれるかもわからないような存在を妄信しすぎちゃ駄目ってこと。わかった?』
――まるで、彼女こそ神に近い存在のような、神様の親戚のように神という存在について語っていた。一般人とはかけ離れた存在であるが――なるほど、彼女が神様のような存在に位置していると言われれば納得せずにはいられなかった。なのに――いやだからこそ、彼女は神といういるかどうかもあやふやな存在を妄信するなと、すべては己に決める権利があって、己が選ぶ義務と責任があることを教えてくれたのかも知れない。それだったら、
「……奇跡なんて望まない。あと一月しかないんだ、鬼だろうが悪魔だろうが、なんだって契約してみるさ」
己の内で決心をつけて、天間は後ろを振り返った。そこには、土御門の現当主から唯一警告されていたある山が見えていた。
曰く、法術を見に付けし者でも近寄ってはならない。
曰く、生霊悪霊霊魂の有象無象が蔓延る、蟲とは一線を引いて関わるべき存在ではないものが跋扈している。
曰く、それこそ悪魔に呪われた山。
「……死霊山……」
陸奥・死霊山。からからと無数の風車が不吉気に廻りながら音を立て、侵入者を早くも呪い始める。壱級災害指定地域に指定されているここはかつて、死霊山神衛隊が山頂で鑢 七実が所持したこの世で最も悪性が強い悪刀『鐚』を奉り納めていた曰くつきの地である。今となっては誰も住まない枯れた山になっているが、天界にも冥界にも行けない怨霊達が住まい、日に日に霊力を増していく温床に成り果てていた。とても、良くないものが集まる死の山。普通ならば立ち入ることさえ許されない。ましてや法力を失った天間に己の身を守る術は無い。
だが――いや、だからこそ。
「……ここで、何かを得ろってことだよね」
霊――とくれば、霊力。失ったものを取り戻すのではなく、別の何かで補填するという博打策。いままでの天間だったら、臆して泣いて喚いて逃げていただろう。しかし、今は違う。
「…もう…もう、みんなの足手まといなんか嫌だ!」
九散だけではない、無涯、春菊、火鉢、仁兵衛、小鳥――『市中見廻り組』のみんなを守るには、どんな力であろうとも必要不可欠であることには変わりない。耳元で囁く聞こえない呪詛が己を蝕む。だがそれを気合で跳ね除けて天間は前に進んだ。
――天間が山に踏み込んでから十の月が昇った晩、夜摩閻羅天と呼ばれるあらゆる冥界の裁判官たる存在と出逢うのは、また別のお話である。
凍空 しらゆきちゃんの一族は松ノ原家に嫁いでから明治に入り『江迎』という姓を賜ります(爆)
というわけで、小鳥の元にはヤンデレヤバイ系女子凍空一族
春菊の元には隕石を斬る関西弁を言わない『13kmや』な宇練家の長男
そして天間の元にはTON☆JI☆TI降臨
↑修行経過はもう書きません、だって漫画でも修行回なんてつまらないし
あと三人+三組…!!