東方不死人   作:三つ目

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八雲と美鈴が手合わせをする少し前
レミリアとアリスの睨み合いが行われていた

「それで、その条件だけど――――ゲームをしましょう」

レミリアはニンマリと笑いながら、アリスを見据えていた

「・・・ゲーム?」
「そう、ゲーム」

クククとレミリアは笑い続ける

「タダで願いだけを叶えるってのは私としては面白味もないし、ゲームで貴女が勝てば無条件で私は協力するわ」
「もし、そのゲームに私が負けた場合は?」
「貴女の願いも、あの男の願いも、今後一切絶対に協力しないだけ」
「それで、ゲームの内容は?」

肝心の中身を確認したかったが、レミリアはとりあえず落ち着けといったジェスチャーをアリスにして、従者を呼ぶ

「咲夜」

その名を呼んだ瞬間に、アリスとレミリアしかいなかった部屋に、突如メイド長が現れる
扉を開けた気配も無く、まるで瞬間移動でもしたかのようにも見えるが
原理が分かっているアリスは特に驚くことも無く、その様子を眺めていた

「はい、ここに」

そう言うと、咲夜の手には新聞がある
幻想郷にある、お騒がせ新聞の一つでもある『文々。新聞』、その新聞である
その新聞をレミリアは受け取り、広げてアリスに見せた

「実はね、私もあの男には興味があるのよ、霊夢を倒したなんて凄いじゃない」
「・・・」

その新聞の見出しは、八雲が霊夢に勝った事を告げるようなものになっており
二人が対峙していた時の写真と、霊夢が石化している途中の写真が使われている
それも確かに凄い内容だが、それよりもアリスが引っかかった言葉は
『私もあの男には興味があるのよ』
という部分だけだったりもする

「あとこれも・・・なかなか面白いじゃない?」

もう一枚、ペラリとレミリアは新聞をめくりアリスに見せた、その瞬間

「キャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!」

アリスはビリビリとガラスが振動するほどの大声を張り上げた




本の迷宮に住む隠者

アリスは新聞をレミリアからぶんどり、今度はビリビリと新聞を細切れにした

 

『なぜ!?どうして!?』

 

混乱するアリス、それが昨日の写真だと直ぐに理解した

それは、アリスの家で全裸になっている八雲と上海人形の姿が映されていた

 

よく確認しなかったが、上海人形が八雲に触れていた瞬間だったような気がする

 

「そんな趣味があるの?」

レミリアは心底哀れな、それでいて意外そうな顔を造り、アリスを挑発する

 

「違うわよ!!」

 

「あ、そうなの?それでゲームの内容は、こうよ」

と、レミリアは急に話題を元に戻した

 

「紅魔館の全員と、あの男・・・本気で戦ってあの男が勝てば貴女の勝ちよ」

 

レミリアの言っていた興味があるとは、男だからではなくて、霊夢に打ち勝ったその能力の方だったのか、とアリスは納得した。

それは改めなくても誰もが普通はそう考えるものだが、アリスの思考のベクトルは少しずれていた

 

「紅魔館の誰かに藤井さんが敗れれば、私の負けって事ね・・・でもそれには問題があるわ」

「言ってみなさい」

「藤井さんに戦えと言って、本気で戦ってくれるかしら?」

「戦わせるように仕向けるのよ。その為には人形遣いの協力が必須なんだけどね」

「だから私を待っていたのね」

 

さっきの新聞の写真を見たレミリア、八雲と戦ってみたいと言う願望がつのり、どうすれば八雲と自然に戦えるのかを真剣に考えてたどり着いた答え

それが二枚目の新聞、アリスと八雲の関係性

それがどんなものでも構わない、八雲にとってアリス本人が人質として成立するのなら、それを利用すればいい

 

その為の協力と提案

アリスが協力をしなければレミリアの願望は成立しない

ならば、こちらからも協力をする様にし、餌を吊るす

本当はお願いをしたいのはレミリアの方なのだ

お願いだから、あの男と戦えるように仕向けて欲しい

しかしそれは言えない。

彼女の立場とプライドがそれを許さない。

ならばゲームという事にすればいい

ゲームなら、余興になる

余興であれば、舘の主が動いても従者にはなんの影響も与えない。立派な大義名分。

ではアリスに協力させるためにはどうするか?

簡単な事だ、向こうから吊るした餌に食いつき、それを釣るだけ

協力と協力、そして提案と提案

レミリアの提案を断れば、アリスの提案は反故される

という事は、レミリアの提案を、アリスは飲み込むしかない

だからレミリアは待っていた。

向こうから成案を持ちかけるタイミングと、それを上から押さえつける絶好の塩を

それにより、主導権を握り、プライドも保たれる

そしてそれは、成就した。

 

「分かったわ、出来る範囲で協力はする・・・けれど、私からも条件を付けさせてもらうわ」

「なにかしら?」

「藤井さんの能力は私からは絶対に公開しないわ」

「結構よ、どんな能力か知ってからじゃ、興醒めもいい所じゃない」

 

交渉成立。

あとはゲームに勝てば問題は無い。

全ては八雲次第。

 

『いいのかしら、本当に』

 

今更考え直しても、もう遅い

既に目の前の吸血鬼は楽しみで仕方長いといった感じで落ち着きがなくなっている

 

「あの霊夢を倒した男・・・そいつを倒せば霊夢を倒したと同じ事よね・・・!!」

 

レミリアはいつかのリベンジを、本人ではなく八雲で果たそうと考えていた

 

「聞いていたわね?咲夜」

「はい、お嬢様」

「美鈴には伝えなくてもいいけれど、パチェには伝えておいて、後はうまく立ち回るようにしてちょうだい、出来るだけあの男を煽るようにね」

「承知しました」

 

咲夜は一礼をすると、来たときと同じように、音も無く消えた

 

「それで具体的にはどう協力すればいいのかしら」

「そうねぇ、捕らわれのお姫様とか、好き?」

 

好きと聞かれても答えに困るものがある

 

「もうそんな夢見る年でもないわよ」

「じゃあ、幽閉ってことにするわ」

 

レミリアはサラリと凄い事を言い出した

 

「貴女は私に捕まった、助け出さなければ貴女は死ぬ・・・そういう演出でどうかしら」

「どうって、なにがよ」

「あの男が本気を出す演出かどうかに決まってるじゃない」

 

そこまで聞き、アリスは考えた

 

『藤井さんは私の為に・・・本気で戦うのかしら?』

 

その答えはちょっと興味がある

もし八雲が本気を出したらどうなるか

というのはアリスにも未知数だが、見てみたい

 

「さぁね・・・、でも本気を出そうが、出すまいが。アナタでは藤井さんに勝てないわよ、レミリア・スカーレット」

「言ってくれるじゃない、そんな事言われたら・・・もっとヤル気になるわ!」

 

八雲が不死身という事を知っているアリスには、特に何の心配も無い

 

『藤井さんは、藤井さんだから何をされても殺される事は無いでしょうけれど』

 

心配は無い、むしろアリスが心配なのは別の方

 

『私の危機に・・・本気を出してくれるのかしら・・・』

 

アリスはさっきの話を思い出し、捕らわれの姫君と、それを救出する騎士の図を思い浮かべる

もちろん、姫はアリスで、騎士は八雲

 

騎士が悪の吸血鬼を倒し、捕らわれの姫を救い出す

 

まるで絵本みたいな話ではないか

もうそんなものに・・・恋に恋をするなんて無いと自分で思っていた、今まさにその絵本みたいな状況に立たされてアリスの心は揺蕩していた

 

 

 




肝心の八雲は、美鈴を反則的(?)な技で降参させ、紅魔館の真紅の正門を開けた。
そこで八雲は違和感を感じた

ありえるだろうか?
舘の扉を開けたら、すぐに図書館になっていることなんて

それも違和感の一つではあるが

それよりも扉をくぐった瞬間に強烈に感じた違和感があった
まるで違う場所に、強制転移されたような、そんな違和感

八雲が中に入ると勝手に真紅の立派な正門が閉まり、結界が張られた

『待ち伏せか・・・』

薄暗い図書館、その本棚で出来た壁を縫うように探索していく
同時に周囲を警戒する八雲だったが、その警戒は杞憂に終わる

「いらっしゃい」

なんと向こうから声を掛けてきたのだ
恐る恐る、その声の方へと向かってみる
本棚で出来た壁を曲がり、そこで八雲が目にしたのは
円卓を囲い、椅子に腰を掛け、優雅にティーカップを傾けている紫髪の少女だった

「大変な事になってるわね」
「君は・・・?」
「私はパチュリーよ、アナタがアリスを救うための第二関門って所かしら」

まるで他人事の様にパチュリーは椅子に腰を掛けたまま、立ち上がろうとはしない

「正直な所を言うと、こんな事は凄く面倒なのよねー・・・」

八雲から視線を外し、どこか遠くを見るようにパチュリーは呆けていた
その遠くを眺めたまま、更に言葉を続ける

「貴方は魔法使いなの?それとも魔術を使うの?」

その違いが分からない八雲は、答えることが出来ない

「まぁどっちでも関係ないんだけれどね」

ティーカップをそっと円卓に置き、今度は近くにあった本を開いた

「あの光の龍、そして三本爪の生えた虫、あれは何?」

どうやら彼女は門の前で起きた出来事を全て見たかのように知っている

「・・・」

「召喚術かしら?それとも生み出したの?でもあんなに即座に生成なんて出来るものかしら」

獣魔術の事だろう、それを説明する時間も惜しいと思っている八雲には答えようとする意思は見えない
それ以前に、パチュリーは自分で言っていた
彼女が第二関門だと
ならば、最悪戦う可能性もあるのなら手を明かす訳にもいかない
沈黙のスタンスを崩さない八雲にパチュリーは更に続ける

「答えてくれたら私からレミィにアリスを開放するようにお願いも出来るけれど?」
「・・・そのアンタのお願いで、アリスが開放される保証が無い」
「それもそうね」

やけにのらりくらりとする彼女に、八雲も痺れはじめていた

「時間が無い、アンタが第二関門だって言うなら道をあけてくれないか?アリスを助けたらその時は獣魔術の説明をするから」
「あれって獣魔術って言うのね・・・時間の方は大丈夫よ、そんなに焦る必要も無いわ」
「だから、その保障がどこにある」
「無いわね、でも私はレミィを良く知ってるわ、だから判るのよ」

少し溜めて、パチュリーは言い放つ

「レミィは今、凄く楽しそうなんだもの」

そしてクスクスと笑う
八雲にとっては深刻なこの場面で、彼女はとても悠長である
その波長の違いが、次第に八雲の痺れが強まる

「言葉じゃ通してくれそうもないな」
「力ずくでも別にいいのよ。その獣魔術を見せてくれるのなら・・・ね?」

彼女の周囲に火炎の弾が現れる

魔理沙を見習って、たまには本の知識だけじゃなくて、肌で体感するのも面白いものね
とパチュリーは思うも、言葉にはせず
目の前の男が構えるのを、ただ待ちわびた。
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