霧雨家ーリビングー
所変わって魔理沙の家へと家主の魔利沙とアリスと八雲の三人は向かった
そこで八雲は二人の少女に今までの経緯を包み隠さず、全て真実を説明した
自分の事、そして自分の居た世界の事、大事な仲間の事
「ふーん」
その全ての説明を終えて、終始黙っていたアリスがクスクスと笑いながら口を開いた
「不死身で、妙な術まで使えるなんて、それに八雲って名前・・・貴方本当に何者なの?」
「何者と言われても困る、俺は俺だからな」
「なんか哲学的だぜ」
などと三人は会話を脱線させながら進め続けた
「とりあえず、俺は地球に帰らないと・・・!」
帰らないと、そう言ってみたものの、帰る手段なんか到底わかるはずもない
その虚勢で突き上げた握りこぶしが哀愁さえ漂わせている
「帰るといっても、アテはあるの?」
アリスに突っ込まれたおかげで、その握りこぶしを引っ込める事ができた
「無いなぁ・・・」
「ならまずは知ろうとするまえに、識るべきじゃないかしら?」
アリスのその言葉の意味が判らない八雲はアリスを見つめた
「貴方は別世界の妖怪なんだし、貴方はこの世界の事を識るべきよ、じゃないと帰り道を見つける前に本当に死ぬわよ」
死ぬ、という不穏な言葉に八雲は複雑な思いが交差して笑ってしまった
八雲はアリスにまるっきり信用されていなかった、まずはそれの苦笑い。
体から出ている精を見たのか、感じたのか、それを彼女は妖気と呼び、八雲の事を妖怪と呼んだ
不死身というのも言葉のアヤで、『死なない』ではなく『死にずらい』と解釈したのだろう
別にそれならそれで構わない、八雲自身もそれに固執している訳でもない
辛辣な言葉でも、どっちかというと八雲はそれが少しだけ新鮮で嬉しかった、その笑み
地球に居たら絶対に言われることの無い言葉、されることの無い心配
しいて言えば、『心の死』をパイは悲しんでいたか・・・
地球で八雲にされる心配は存在の死ではなく、その体を封印されることなのだから
『本当に死ぬわよ』
きっとアリスは優しい人物なのだろう
初対面の人に対して、相手を案じての注意というのはなかなか出来ないものだ、最後にその関心の笑い
「それなら問題ない、言っただろう?俺は不死身だって」
「ならもう好きにすればいいわ、死んでから恨み言なんて言わないでね」
やっぱり信用されてない、というか八雲の言葉は信じてもらえていない
真面目な話に区切りが付き、今度は魔理沙が口を開いた
「幻想郷で生活、ってほどじゃないにしても『弾幕ごっこ』くらいは出来た方がいいぜ」
「弾幕・・・ごっこ?」
ごっこ、と付くからには遊びなのだろうけど、その内容が見えてこない
「簡単に説明すると、相手に弾を当てれば勝ち、もしくは相手のスペルカードの制限時間まで避け切れば勝ちって簡単なルールだぜ」
「なんだ、やけに簡単なルールだな」
さらっと返した八雲に溜息をついてアリスは呆れたような仕草を見せる
「何言ってるの、弾幕はブレインよ、簡単そうに聞こえるけど奥は深い。相手の逃げる方向を予想して、予知して、追い立てなければ当たらないわよ」
それに反論する魔理沙
「いいや!弾幕はパワーだぜ!チョコチョコ逃げるなら全部まとめて吹き飛ばせばいいのさ!」
二人の言ってる事はアベコベだが、八雲はそれを自分なりに解釈していた
「それぞれの得意分野で攻めるのが定石って事か・・・」
という事は、魔理沙は知能的な攻撃に弱く、アリスは圧倒的な火力差に弱いと聞こえなくもないが
実際の所はそうでもなかったりする
「ってことで、やろうぜ!八雲!」
「おいおい、やるってまさか・・・」
「妖怪なんだし出せるだろう?弾幕くらい」
それは一体どこの世界の妖怪だろう?
と考えるだけ無駄だと八雲も理解し始めた
きっとこれがこの幻想郷での日常的なもので、当たり前なのだろうと、考え至った
「まぁ、出せなくもない・・・のか?」
「よし、じゃあ外に行こうぜ!」
快活に笑う魔理沙に八雲は待ったをかけた
「いや、やる意味が判らないって」
「意味ならあるぜ!それは私がやってみたいからだ!」
その回答に八雲は頭を抱えた
どうにもこうにも、魔理沙という少女はかなりのマイウェイな性格のようだ
「違うわよ魔理沙、こういう意味は持つ物ではなくて持たせる物よ」
「何だよ、どういう意味だ?」
「魔理沙の方が上級者なのは当たり前なんだし、意味にも報酬にもハンデがあったほうが楽しめるでしょう?」
「何だよ、難しい事を・・・具体的に言えって」
「簡単な事よ、藤井さんに戦いたくなる様な意欲を沸かせればいいのよ、例えば藤井さんが勝てば、魔理沙がずっと黙っている『帰れる手がかりを持つ人物』の話をする・・・とかね。仮に藤井さんが負けてもペナルティ無しのお試し期間ってことでどうかしら?」
それを聞いて八雲は口を大きく開けた
「な・・・黙ってた・・・!?」
「ちょっとアリス!なんで―――――」
といい掛けて、途中で魔理沙は黙った
八雲にジロリと見つめられているのを察したから、と言うまでもない
「あまり乗り気はしないけど、そういう事ならいいだろう」
「よ、よし!それなら外に行こうぜ!」
「私もいくわよ、面白そうだし」
呆れ顔の八雲と、焦り顔の魔理沙と、真顔のアリスは、揃って魔理沙の家を出て行った
霧雨家ー上空ー
「いや、ちょっと待ってくれ」
「なんだ?どうしたんだよ!」
「まさか、藤井さん・・・貴方」
飛べないの?とアリスに言いわれた、とても、とても意外そうに
「妖怪なんだし、外来人でも空くらい飛べると思ったけれど」
まるで挑発するようにクスクスと笑うアリスにちょっと苛立ちながら八雲も
「平然と飛んでる方が俺からしたら意外なだけだ」
獣魔を召還する
意外なだけ、そのニュアンスをアリスはすぐに察した
「藤井八雲の名において命じる!出でよ!
そう呼ぶと、八雲の近くに、まるでカマキリのような鎌を持った獣魔が呼び出される
「へぇ」
「なんだ、ありゃ・・・」
その獣魔は八雲の肩に飛び乗り、みるみる変態していく
まるでそれは蝙蝠の翼の様に姿形を変え、八雲はその背中に生えた羽を器用に羽ばたかせた
「よっ・・・と、やっぱうまく飛べないな」
体の延長、新しい腕が2本生えたような違和感があるが、動かせないことも無い
バサバサと羽ばたきながら、八雲も空を飛んだ
「よし、これでなんとかなるな」
とはいえ高速で飛ぶことは出来ない
無理やり浮くほど羽ばたいているだけなので、魔理沙やアリスの様に自在に飛ぶという事は出来そうもない
むしろ
さっきのアリスの様子を見て、なんとか飛んでいる所を見せたくなった八雲だった
「よしって・・・そんな飛行で弾を『避けれる』と思うの?」
「多分大丈夫だ、『当たらなければいい』んだろ?」
あまりにもぎこちなく飛ぶ八雲に見かねてアリスは心配したのだが
あっけらかんとしている八雲を見て、呆れかえっていた
八雲の意思返しになんとも言えない鬱憤を抱えたアリスには今度は気が付かなかった
八雲と交わした、言葉の微妙な違いに
「あっそ、怪我しても自己責任でお願いね」
「大丈夫だって、怪我程度なら問題ないさ」
「もういいわ、勝手に落ちれば」
アリスは知らない、知ろうともしない
例えどんな相手であっても、外来人とは深く交流しないアリスにとっては八雲は少し珍しい程度の存在だった
アリスは識らない、識ろうと努力もしない
彼が、藤井八雲は只の外来人という括りでは片付かない事を
「それじゃ行くぜ!」
「良し、来い!」
霧雨家上空にて、八雲の始めての弾幕戦の火蓋が切って落とされた
次回!弾幕戦!