なぜ外は暑いのだろう。
まあ七月ともなれば当然だと思うが。
千反田の家までは少し距離がある。
七月の暑い日差しを浴びながら徒歩で向かうという苦行を続けること30分、相変わらず広い千反田家が見えてくる。もうへろへろだ。
「折木さん、もう少しですよ!」
「おう・・・」
明るい声で励ましてくれる。
この暑い中30分も歩いても大丈夫な千反田に比べ俺は一体・・・
少し心が折れそうだ。
「折木さん、申し訳ないのですが少し玄関で待っていてもらえませんか」
そう言って千反田は中に入っていく。
部屋の片づけでもしているのだろう。
ふと、自分たちがまだ昼食を食べていないことに気付く。
「腹減ったな・・・」
時刻は1時30分、昼食には遅い時間だが腹が減っていることに変わりない。
千反田はどうするつもりだろう。
「どうぞ、上がってください」
千反田が白いワンピースに着替えて出てくる。
俺はその格好に息をのんだ。
千反田の白い肌が白いワンピースと相まって一層映えて見える。
思わず目を逸らしてしまう。
あの雛祭り以来のしまったという気持ちが俺の心を満たした。
「お、おじゃまします」
千反田の部屋に案内される。
そういえば前にも千反田の家には来たことがあったが、千反田の部屋に入るのは初めてではないだろうか。
「折木さん、お昼まだでしたよね。これからご馳走しますね」
「ああ、頼む」
同級生の女子の部屋にいることに若干緊張しながら、ふと疑問に思う。
「千反田、今日お前ひとりなのか?」
「ええ、そうですよ」
「そ、そうか。けどよかったのか、こんな状況で俺が上がり込んで?」
「折木さんだからいいんですよ!」
そう言うとそそくさと部屋から出て行った。
どうやら俺は千反田から信頼はされているようだ。
しかしなぜ千反田は顔を赤くしていたのだろう。
こんなうまい冷やし中華は食べたことがあっただろうか。
そう思えるほど千反田が作ってくれた冷やし中華はおいしかった。
みずみずしいトマトときゅうり、麺に絶妙に絡むタレ・・・
俺は無言でそれを10分足らずで平らげた。
「ご馳走様、おいしかったよ。」
千反田は嬉しそうに微笑んで、
「お粗末様です。お口に合ったようでなによりです」
「千反田、このトマトはお前の家で作ったものか?」
「はい、そうです。桃太郎という品種のトマトで、おそらく折木さんが普段食べているトマトも桃太郎ですよ」
「そうなのか、なぜわかる?」
「この桃太郎という品種は国内シェアの7割ほどを占めるそうです」
「よく知ってるな。・・・よしそろそろ片付けるか、洗い物はまかしてくれ」
「それではお願いします」
さて洗い物が終わったら本題を聞くとしよう。