「ヴァアアアア!!」
「クッ!」
人間を超えた膂力とスピード、生前の技術、装備、この騎士だったであろう動く死体はこの森でも上位に位置する強力な敵となっていた。
得物は大剣、その中でも『鉄の塊』と言えるほどの大雑把な剣だ。よく竜退治や巨人退治と言った怪物殺しの為に造られた剣だとも言われる、その真髄は切れ味ではなくその振り回すのに凄まじい筋力を必要とする質量とそれを振り回すことで生まれるスピードの相乗効果で生まれる破壊力をもってして怪物を死に至らしめる、逆に言えば対人戦や小型の動物、魔獣相手には不向きな武器だが生前も強くまた幾多の戦場を越えてきたのだろう動く死体化したことにより上がった筋力とスピードを差し引いても凄まじい使い手だ。
死体騎士が剣を抱える様に持ち大きく踏み込んでくる。
この剣は見たところ人間を二人縦に並べた様な長さだ、突きにしても唯の横薙ぎにしてもリーチは長く、そのぶん死体騎士に近ずくのも一苦労だ。
右足を大きく踏みしめ剣を一回転させる様に縦の振り回す、地面が抉れ土が捲き上るそれ以上にそこから更に飛び込む様な突きと回る様な薙ぎ払いを繋げられどうにも近づけ無い。
ジャックの左腕でもこれを受けきることはでき無い、受けたとしても腕が吹き飛びそのまま叩き斬られるだろう。幸い二、三度この一連の動きを避けきると鎧が踏み込みに耐えられず具足の部分が吹き飛んでいる。
(やるとするなら足を崩して一気に頭部と心臓の破壊だ。しかも迅速にだ。)
ちらりと地図を見ていた騎士と女子を見るが騎士はピクリとも動かず、女子は出血がある。なんとか彼らから離したはいいが早々に終わらせなければ街の治癒師や司祭でも治せない。
四度目の構えに入る死体騎士に向かい剣を右手に、鞘を左手に構える背負っていたバッグは頑丈なので投げておいても大丈夫だろう。
「カハハハハ!」
何が愉快なのか知らないが自身の二倍ほどある剣を引きずりもせず片手で持っている死体騎士がゆっくりと近ずいてくる。そして剣の間合いにジャックを捉え先ほどより深くそして素早く踏み込み剣を振り上げる!
「フッ!」
ジャックは剣の間合いぎりぎりに入り込み横にずれて縦斬りを回避。
それを見た死体騎士は剣を横薙ぎに振りそのまま体を叩き切ろうとする。
「ハア!」
ジャックは全神経を大剣の刃の動く方向と自身の左手に集中させ鞘を斜めに大剣と地面の間に差し込む様にして自身は姿勢を低くする。そのまま右手のロングソードで死体騎士の両の足を叩き斬る。
地面との関わりを失った動く死体は大剣に引っ張られ無様に転がり大剣が地面に突き刺さり動く死体は仰向けになる。
ジャックは剣で急所の心臓と頭を破壊し、常日頃から持っているランプの油と火打ち石で着火、死体を燃やす。地図を取り出し印をつけてからバッグを回収、そして怪我をしているであろう方向音痴と女子の倒れている爆心地に向かう。
「グッフォ!はあはあ、キッツイわー、これ骨折れてるわー」
騎士は兜越しのためくぐもって居るがどうやら気絶していただけだった様だ。出血が多い女子は重症だったが街の治癒師ならどうにかなるレベルのところで応急手当てが出来たので女子を担ぎ、騎士は引き摺りながら帰った。
「・・・今日は厄日だな。」
「わうあははははは!!」
街に着き治癒師のところに二人を担ぎ込んだ後宿屋に帰還するとまだ装備をあらってのも居ないうちに酔っ払ったエルフの弓師に組みつかれ非常に大変だった。因みにだが店長には少し小言を貰ったが仕方ないな。