ありきたり物語   作:名状しがたい魔王

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説明回の様に見える姫様による説明回

目的地に向かいながら今日で漸く一日目が終わる。途中何度も狐目の騎士が森や林、藪や川に入ろうとするのを姫とジャックが必死に引き戻した。結局最終的に縄でジャックと狐目を繋ぎジャックが引き摺って行くという最悪の構図が出来たが問題なく一日で進むべき距離を稼げたのは奇跡だろう。まあ、ジャックが全力で十分走った距離よりも短いのだが・・・仕方ないだろう、ただでさえ長旅であろう事から通常より装備品の多い状態で何故か道を全力で外れようとするのを阻止しながらである、最早蛇行である。

 

陽が出る前に出発し陽が沈む少し前に野営の準備を始めたので現在は近くの木の枝と防水性のある蛙の様な生き物の皮を使用した一枚の屋根を持つ簡易テントを一個作り、薪を燃やし未だ食べられる生鮮食品に軽く火を通した野菜炒めに道中で狩った角突き兎の肉をトッピングした『兎肉入り野菜炒め』を作って居るところだ。・・・ジャックが。

 

「いやー、お上手ですね〜?」

 

「・・・まさか遠い昔から生きていた?のかは未だ判らないが少なくとも俺より旅をしてきたであろうお前達が料理の一つも出来ないというのは驚きだ。」

 

「「うぐ!?」」

 

ジャックに狐目の騎士が声をかけそれに少しばかり香辛料と嫌味をタップリとトッピングした返答を返し姫と騎士の心を抉るがなんとか持ち直す。

 

「そ、そう言えば未だ我もこのポンコツも名乗って居らんかったな!」

 

「そ、そうですね!今更ですが名乗りますか!」

 

「・・・」

 

心なしかジャックの視線が二人に向かって突き刺さって居る様にも見えるが気のせいである。

 

「・・・うん、おっほん!我が名はフィーリア・レ・イスタリア「声がデカイ、獣に喰われたいのか?」・・・すまん。」

 

姫の名乗りが途中でジャックに止められたがこんな森の途中にある様な道で大声を出せば幾ら退魔の魔法や獣除けの陣が組んであっても流石に襲われる、なまじ死なないだけあって警戒心は薄い様だ。

 

「では少し抑え目で、私はフォック・ティンアイズです。姫様の騎士として、旅の仲間としてこれからもよろしくお願いします。」

 

それを見て少し口角が上がった騎士は主人を弄るのが好きなのだろう、気が付いていたのに敢えてジャックに注意させる事で姫の世間知らずをジャックに見せつけ恥ずかしがる姫を見てニコニコして居るのである。

 

それに気が付いたフィーリアはフォックの腰を掴み力任せにブリッジしフォックの頭を地面にめり込ませた。

周りに真っ赤な液体が広がって居るが料理にはなんとか入らず、フォックも少し痛がる様子を見せながら一気に快復した。

 

「全く!主人のフォローぐらい我が騎士を名乗るのだったらきちんとせい!」

 

というか此処まで格闘出来るのだったらあの動く死体を地面にめり込ませる位できたのでは無いだろうか?

 

「・・・いや、そこは自分で治せ。フォックには既に方向音痴というフォローし切れないレベルの難病があるんだ。」

 

ジャックは単身で十年ほど冒険者をして居る、そこにミスをフォローしてくれる仲間が居たことはほとんど無い、故にフィーリアの発言をフォックを馬鹿にしつつ修正を求める。

 

「そ、そうじゃな、そう言えばそうであった。すまんフォック。」

 

「あの、同情されると逆に心にくるんですが?」

 

姫の思考回路はかなり単純そうだと言うのが判明したところで料理が完成、早速焚き火を囲んで食事を始める。

 

「・・・うむ、いつまでも黙って居ても仕方あるまい、此処で思い切って我が祖国『イスタリア』と我が不死について説明しようでは無いか!」

 

全員が其れなりに食べ終わった所でフィーリア姫による謎の講義が始まった。が、

 

「・・・不死性については省いていい大体検討がついて居る。」

 

「なぬ?」

 

ジャックにとって二人の不死性は既に大凡わかって居る様なものだった。

 

「通常の攻撃などによる致命傷の即時快復、自身の血を使った眷族の不死化。弱点としては龍殺しや竜殺し、後は破魔系の武器か身内からの攻撃。そんなところか、まあ有りがちだな。」

 

ジャックがそう言いつつ自分の皿を洗って居ると姫は愉快そうに笑い

 

「うむ!あって居るがそれはそれで複雑な気分じゃ!」

 

騎士は主人の安全を確保するため警戒心を高めつつ疑問を投げかけた。

 

「・・・因みにですが何故血によって不死性を持たせられると思ったのですか?」

 

「俺は血魔術を嗜んで居てな、相手の気配や大まかな思考を血やその流れで読み取れる。それでフォックの中にフィーリアの血が混じって居てしかもフォックからは王家特有の流れを感じなかった。それだけだ。」

 

ジャックがそう答えるが彼らの頃から廃れて居たのかそれとも彼らが知らないだけなのか血魔術の名前を聞いてもピンときて居ない様子。

 

「まあ、マイナーだし・・・・一応古代では使われていたらしいと聞いたので期待していたが・・・知らないか・・・」

 

「「その、なんかすいません。」」

 

何かこの二人が知らないのかと期待して居たジャックが少し落ち込んで居るのを見てちょっと申し訳なく思ったのか何故か謝る二人、しかし場の雰囲気はだいぶマシになり全員が適度に打ち解けてきた。

 

「う、ウオッホン、ではこれより我らの祖国イスタリアについてざっくりと説明する。」

 

もう一度今回の議題を無い胸を張りながら宣言するフィーリア、それを見ながら片付けを続けるジャックと苦笑しながら拍手をするフォック、それを見てブチギレそうになるフィーリアだが片付け自体はしなければならないし、フォックだって寝てしまってもいい所を付き合ってくれてるのだとぐっとこらえて続ける。

 

「我がイスタリアの王家、その紋章には五芒星に似た花弁を持つ『リーア』と言う名の白い花とその蜜で育つ幸運を呼ぶとされる青い鳥『イスタ』が刻まれて居る。」

 

「なるほど?」

 

なのでイスタリアの騎士であったフォックの装備品の多くは青と白そこに金のアクセントが入った何処と無く高貴な感じになっている。また、現在のイスタでも国旗は青、紋章はだいぶ変わったが色だけは少し引き継いで居る様だ。適当なフォックの相槌を意識しない様にフィーリアは続ける。

 

「また、現在では『冒険者』なるジャックの様な者がいる様だが我が王国では騎士の装備品が二種類あり対人用と対怪物用の二種があった。今はそれを忌々しいとも感じるがあの頃は頼もしく感じた。しょもしょ・・・zzz」

 

「・・・・フォック。」

 

「まあ、今日は此処までと言うことで。」

 

此処で彼女の1日の活動可能時間が来た様だ。途中からお立ち台にして居た切り株の上に座りこみ船を漕いで居たのである程度予想して居たジャックとフォックは姫を何重にも毛皮と藁を重ねた寝床にそっと置き、交代で夜番をする事にした。

 

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