仮面ライダー剣 〜切札と帽子と本の旅人〜   作:龍牙

10 / 12
九幕

翔とクウヤの二人がアンデッドの出現を知らされた時まで遡る。

 

 

「ったく、何でオレ達があんな奴等と手を組まなくちゃなんねぇんだよ」

 

 

慎はJACARANDAを出た後苛立ちを隠せずにいた。不満なのだろう、チーフである橘が翔が自分達が封印したラウズカードを持っている事を黙認している事、手を組もうとしている事が。

 

 

(今まで三人で上手くやって来たって言うのによぉ。あんな連中居なくたって、オレ達だけでやってけるのに。って、こんな所で一人愚痴ってるのもなんか情けねぇ……)

 

 

不満に思っているとはいえ、慎であっても認めざるを得ない。“才能”と言う一点では圧倒的に自分よりも翔が上回っている。現時点での実力と、それに加えて一年間の間ブレイドとして戦って来たと言う経験値、何より今よりも更に強くなると言う将来性でさえ。

 

 

扱っているライダーシステムこそ慎の方が最新型だが、翔に言われた言葉通りシステムのスペックでは安定性こそランスの方が上だろうがブレイドの方が総合的には上に行っている。やはり、キングフォームやジャックフォームの存在は大きいだろう。

 

 

「はぁ……」

 

 

考えられ考えるほど深み嵌って行く。何一つ年下の先輩に勝てる要素が無い。否定したくても短時間の間に既に上級アンデッドを含めたスペードスートのアンデッドの殆どを単独で封印したと言う実績は嫌でも実力を認めさせられる。

 

もっとも、真実はチーリンアンデッドが残りのスペードスートを封印したと言う話を説明するのが面倒だったので、向こうが勝手に解釈しているままにして放置しているだけだ。

 

 

そんな事を考えている時だった。後ろから何者かの足音が聞こえる。振り向かなくても分かるほどの殺気を放っている時点でどう考えても味方ではない。

 

 

後ろから近づいてくる気配からの攻撃を躱して、慎はその姿を確認する。青い色をした蜘蛛を思わせる姿をしたアンデッド。蜘蛛の姿をしたアンデッドは二体しか存在せず、その内一体は既に封印されているクウヤがレンゲルに変身するのに必要なカードであるカテゴリーAのスパイダーアンデッド。もう一体は、カテゴリーキングである『タランチュラアンデッド』だ。

 

 

「カテゴリーキングか!」

 

 

言葉を交わす事も無くタランチュラアンデッドは慎へと向かっていく。だが、慎はそれを許さずカテゴリーAのカードが装填されたバックルを装着、

 

 

 

 

『OPEN UP』

 

 

 

 

人造のアンデッドにしてカテゴリーA、天王寺の野望の為に生み出され、以前は二度に渡って翔達四人の仮面ライダーを苦しめた人造アンデッド『ケルベロスアンデッド』の力を纏う槍の仮面ライダー、仮面ライダーランスへと変身する。

 

 

「カテゴリーキング! オレが封印してやる!」

 

 

その名である“ランス”の名の如く、専用武器である槍を構えてそう宣言する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翔SIDE

 

 

 

ダイアスートのカテゴリーキングであるギラファアンデッドを封印した後、パラディンフォームの飛行能力でブルースペイダーを停車させていた場所まで飛び、ブレイドへの変身を解除した翔は携帯電話を取り出し、JACARANDAに居る奈菜と連絡を取っていた。

 

 

「奈菜か、こっちはアンデッドの封印は終わった。クウヤともう一箇所はどうなった?」

 

 

『うん、二箇所ともアンデッドに大きな動きは無いよ。クウヤ君と……多分最後の一箇所には新世代と言う連中が足止めしてるんだろうね』

 

 

「……わかった。オレは予定通りもう一箇所に向かう」

 

 

『気を付けた方が良いよ。もう一箇所やクウヤ君の所も出現しているのは並みのアンデッドじゃない』

 

 

「……だろうな」

 

 

奈菜の警告に翔はそう返す。

 

 

まだ二箇所で戦いが続いていると以上、先程までカテゴリーキングと戦っていた以上、残った二箇所に居るのが並のアンデッドなら既に封印されていても可笑しくは無い。どう考えても、上級アンデッドよりも封印に手間取る下級アンデッドは少数派に入るのだし。具体例を挙げるとスカラベアンデッドとか。

 

 

翔の予想通り、ランスの居る三箇所目には翔がギラファアンデッドを封印した事で、残された最後のカテゴリーキングであるタランチュラアンデッドが、クウヤの変身したレンゲルの居る場所には同じく最後のカテゴリーAのマンティスアンデッドが存在している。

 

 

翔はブルースペイダーに跨りヘルメットを被る。目的地はクウヤの戦っている場所では無く最後の一箇所。

 

 

(……四枚のカテゴリーキングの一枚はオレ達が手に入れた。これで、橘さん達の言っていた力は敵の手には渡らない……筈だ)

 

 

世の中には絶対は無い。有るとすれば既に確定している過去だけだ。間違っても安全とは言えない。少なくともカテゴリーキングを封印したカードが手元に有るとは言え、それが奪われないとは限らない。

 

 

(……そもそも、何で白いジョーカーの動きが見えない? 最後に与えられるとか言う力を、カテゴリーキングの封印を狙っているなら、もっと姿が見えても良い位だ。……ジョーカーと違ってアンデッドを封印できないのか……?)

 

 

ブルースペイダーを走らせながらそんな疑問が浮かぶ。白いジョーカーも最強のアンデッドと謡われたジョーカーと同等の戦闘力が有るのなら、人に目撃されたとしてもキングフォームでも無ければライダーでも対処は不可能だ。

 

 

(……何らかの理由で動けないとすれば、考えられる理由は……)

 

 

一つは、ジョーカーと違って本当にアンデッドを封印出来ない。

 

一つは、何らかの考えが有って向こうから動かない。

 

 

前者だとすればライダーを使ってカテゴリーキングを封印させるのを狙っている。ライダーがカテゴリーキングを封印した後奪い取れば良い。つまり、こうして封印している方が危険だといえるだろう。だが、それは考え辛い。

 

 

だが、後者だとすれば……

 

 

(……動きから見て上級アンデッドに近い。まさか白いジョーカーも上級アンデッドの様に人間に変身できる、なんて……っ!?)

 

 

そんな考えが浮かびヘルメットの奥の表情が驚愕に染まる。ブルースペイダーを停車させながら、己の中に浮かんだ考えを纏める。

 

 

(待て……二つのジョーカー、カテゴリーキングとカテゴリーA……)

 

 

アンデッドの中で唯一姿が似ている存在が二つのジョーカーの存在を知るまでは、カテゴリーキングとカテゴリーAだった。

 

強力な力を持つカテゴリーキングに対抗する為に、それをモデルに生み出された存在だと推測されたカテゴリーAだが、カテゴリーAはどちらかと言うと人間に変身できない事から限りなく上級に近い下級アンデッドと言った所だろうか。

 

そもそも、トランプに於けるAのカードも立ち位置としては絵札でもなく通常のカードでもない。ゲームのルールによっては最弱にも最強にも成り得るある種不安定な立ち位置のカード。

 

もし、ヒューマンアンデッドのカードが無ければ人間の姿になれないジョーカーがカテゴリーAに、下級アンデッドに近い存在だとしたら、白いジョーカーは上級アンデッド側、カテゴリーAに対するカテゴリーキングの存在と推測できる。だとすれば……

 

 

(……効率良くカテゴリーキングを封印するためにライダーに任せて、自分は目立たずに動いていない。いや、オレ達も白いジョーカーの事は警戒してる。そんな状況で最も楽に確実に封印されたカテゴリーキングを手に入れるには……)

 

 

完全に仮説の上に仮説を重ねた推測だが、仮説による推測から浮かび上がる答えは……

 

 

「……オレ達の中に、白いジョーカーが居ると仮定した上で、最も確実にラウズカードを手に入れられるのは……」

 

 

 

 

SIDE OUT

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ランスは槍型の専用武器『醒杖ランスラウザー』を構えてタランチュラアンデッドへと攻撃を打ち込む。だが、流石はカテゴリーキングと言った所だろうか、並のアンデッドならばよろめく程度はするであろう攻撃を受けても、答えた様子は見られない。

 

 

(ブレイド達なら、封印したアンデッドの力を使って相手を弱らせるとか出来るんだろうけど)

 

 

つい先程翔に指摘されたグレイブ達新世代ライダーの欠点。切れる手札の圧倒的な少なさだ。

 

彼らの使う『マイティ』のカードは切り札であり使うタイミングは限られる。逆に翔達は必殺技さえも切り札であると同時に簡単に使える手札でもある。

 

仮にブレイド、ギャレン、レンゲルと戦った場合、一撃の攻撃力は安定して高くても単独ではブレイド達に勝つのは難しいだろう。だが、戦い方によっては一対一でも負ける事は無いだろうが。

 

 

「ぐわっ!」

 

 

『もう少しキングの動きを止めてから』とタイミングを伺いながら攻撃していたランスのランスラウザーの穂先を掴み、ランスへとパンチを打ち込む。

 

 

(痛っ!? だけど、槍を掴んだって事は、自分から動く心算は無いって事だ。今が、マイティを使うタイミング!)

 

 

最適なタイミングを逃すほどランスも愚かではない。カードトレイを展開し、その中からマイティのカードを抜き出す。

 

 

(オレが一人でもアンデッドを封印できるって事……あんな奴らよりも頼りになるって事、見せてやる!)

 

 

彼、仮面ライダーランスこと、禍木慎は翔達の事が気に入らない。

 

彼は元々普通のウェイターだった。それがアンデッドに襲われ、既にライダーだった志村に助けられ、才能を見込まれ、ランスの力を得るに至った。

 

 

自分を助けてくれた志村……仮面ライダーグレイブの事は尊敬しているし、頼りにもしている。当然ながら、チーフである橘の事もそれなりに尊敬している。

 

だが、ブレイドとレンゲル……翔とクウヤの事は違う。

 

自分達が戦っていたのに後からやってきて、眼中に無いとでも言う様な態度。それは『自分達の方が上だ』とでも見下されているよりも悔しさは上だ。しかも、二人が年齢的に年下だと言う事も大きい。

 

 

(……見せ付けてやる……)

 

 

アンデッドと戦ったと言う経験が有るのは認めるが、自分達が襲われた時に助けてくれた訳でもなく、自分達が戦っている時に平穏な日々をのうのうと送っていた。しかも、翔に至ってはまだ仮面ライダーで有ったにも関わらず、だ。

 

 

そして、真実を知ってからは、自分達にも戦わせろという。奴らの態度も、言動も、何もかもが気に入らない。

 

 

だからこそ、カテゴリーキングを封印する事で見せ付ける。古い仮面ライダー等必要ないのだと、自分達が居れば十分だと。

 

 

 

 

『MIGHTY』

 

 

 

 

カードを読み込ませ、ランスは押さえられていた槍先をタランチュラアンデッドへと向けて突き刺す。

 

槍は本来『薙ぐ』『殴る』と言う扱いの武器ではない。同じ長柄武器でも『薙ぐ』のは“戟”や“薙刀”、『殴る』のは“棍”の方が専門だ。本来槍は『突く』為の武器であり、それを知らず穂先を掴んでしまったのが、タランチュラアンデッドの最大にして唯一の敗因。

 

 

 

重力のエネルギーを集めた穂先がタランチュラアンデッドの胸へと突き刺さる。ランスの必殺技『インパクトスタッブ』が無防備な所に叩きつけられたのだ、カテゴリーキングとは言え無事で済む訳が無い。

 

 

インパクトスタッブの直撃を受けたタランチュラアンデッドの体がそのまま草の上に倒れ、バックルが開く。

 

 

「おおおおおおおおおおっ!!!」

 

 

幸運に助けられた様な形ではあるが、勝利を喜ぶ雄叫びを上げながらランスはカードを投げ、タランチュラアンデッドを封印する。

 

 

「やったぁ……やったぜ! オレが封印したんだ!!!」

 

 

誰の力も借りずに己の力だけでアンデッドを封印したと言う事実に歓喜する。

 

 

(オレと、夏美と、志村。仮面ライダーはオレ達三人だけで十分だ。ブレイドもレンゲルも要らない、あいつ等にだって、これでもうあんな奴らは必要ないって思い知らせてやれる!)

 

 

そんな事を考えている間に、何時の間にか今の時節から考えれば不自然なほどに濃い霧が周囲を包み込んでいた。

 

 

直感が危険だと警鐘を鳴らすが、強敵に勝利したという喜びが直感の働きを阻害していた様子だ。直感が警鐘を鳴らしていた時には、時既に遅し。

 

 

周囲を見回すか、霧の所為で視界が狭くなり、周囲の様子を知ることが出来ない。だが、幸か不幸か突然の雷雨に見舞われる。

 

 

その雷雨のお蔭でその場に現れた新たな登場人物を知ることが出来た。

 

 

雷に照らされて姿を見せたのは、白い影と胸に毒々しい輝きを見せる赤い宝玉。頭から伸びる二本の長い触角がどこかそれをカミキリムシをイメージさせるフォルムを作り出している。

 

当然ながら、アンデッドの中には『ロングホーンアンデッド』等存在して居ない。ランスの中で橘から聞いていた“それ”のフォルムとの一致を見せる。今、ランスの目の前に存在している影は……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

クウヤSIDE

 

 

地面に突き刺したレンゲルラウザーと足元から凍り付いているマンティスアンデッド。ブリザードのカードを使ったレンゲルラウザーを地面に突き刺す事でマンティスアンデッドの動きを完全に封じる事ができたのだ。

 

 

「さあ、これで終わりだ」

 

 

レンゲルラウザーのトレイ部分を展開、その中からカードを抜き出し、マンティスアンデッドへとトドメを刺そうとする。

 

 

 

さて、何があったかと言うと僅かに時間は遡る。

 

 

 

 

 

 

カリスアローの斬撃をレンゲルラウザーで防いでいるレンゲルだが、完全に技術とスピードではマンティスアンデッドに負けている。

 

 

(……どうする?)

 

 

考えられる手段はそれほど多くない。長柄武器は確かに強力だが、その攻撃を掻い潜って懐に飛び込める相手に対しては防戦一方になるばかりだ。寧ろ、接近され過ぎているために攻撃できない位置に要る為に返って安全と言えるだろう。

 

 

「くっ!」

 

 

苦し紛れに思いっきりレンゲルラウザーを横凪に振るう。だが、それを受け止められカリスアローによる斬撃の餌食となってしまう。そして、マンティスアンデッドはレンゲルラウザーを受け止めたまま手を離すと同時にキックを打ち込む。

 

 

(……上手く行った……)

 

 

レンゲルの仮面の奥でクウヤはダメージを受けた苦痛で表情を歪めながらも、自分の狙い通りに言った事に笑みを浮かべる。先程のレンゲルラウザーを横凪に振ったのもマンティスアンデッドから距離を取るため。

 

横凪をに振ったレンゲルラウザーを避けてたり直撃したりしてくれれば、ダメージが無く距離を取れる。受け止められて反撃されたとしても、相手の攻撃を利用して距離を取ったり、反撃に繋げることが出来る。武器を受け止めているという事は相手も動きを止めているに他ならないのだし。

 

どちらに転んだとしてもクウヤにとっては狙い通りと言う事だ。

 

 

(先ずは相手の動きを止めること……方法はベノムの毒はダメだ……)

 

 

流石にベノムのカードで毒を打ち込もうとしても、相手に攻撃を当てる事も難しいのだ動きを止める為に攻撃を当てると言うのは流石に却下したい。なるべく相手に気取られる事なく相手の動きを間接的に止められる方法がベストだが。

 

 

(……後は……一か八か……)

 

 

かなりの賭けだが他に手は無いだろう。だが、今の状況では賭ける価値は十分にある。そう考えてカードトレイから一枚のカードを抜き取ると、

 

 

意を決してレンゲルはレンゲルラウザーを構えてマンティスアンデッドへと突進する。それはどちらかと言うと剣術の突きの動きに近い。マンティスアンデッドはそれを避ける事でレンゲルの懐に飛び込んで反撃を狙う。だが、

 

 

「それを待っていた!!!」

 

 

穂先の近くを握って振り上げたレンゲルラウザーをマンティスアンデッドへと向けて振り下ろす。その動きに気が付いたマンティスアンデッドは後ろに跳ぶ事で回避する。

 

 

 

 

『BLIZZARD』

 

 

 

 

地面に突き刺さる寸前にブリザード・ポーラーのカードをスラッシュする。同時に打ち出された冷気が打ち出される前に打ち出されるべき槍先が地面へと突き刺さる。

 

 

「っ!?」

 

 

「狙い通り」

 

 

地面から伝わった冷気がマンティスアンデッドの足元を含めて凍結させる。凍らされた足と凍った地面の上では自慢のスピードも最大には活かせない。

 

 

「さあ、これで終わりだ!」

 

 

 

 

『BLIZZARD』『BITE』

『BLIZZARD CLASH』

 

 

 

 

動きを止めたマンティスアンデッドを冷気で凍結させ、両足で挟み込む様に蹴りを打ち込む。地面に倒れるマンティスアンデッドのバツクルが開いた瞬間、ブランクのラウズカードを取り出しそれを投げる。

 

ラウズカードの中にマンティスアンデッドが封印されると、それはハートとカマキリの重なった絵柄……ハートスートのA『チェンジ・マンティス』のカードとなってレンゲルの元に戻る。

 

 

「やった……。これで……」

 

 

其処まで言った後で言葉を止める。ハートスートのライダーであるカリスはジョーカーでもある。ジョーカーは、まだ封印されたまま、四人の仮面ライダーが全員揃う事は……。

 

 

「っ!? 急がないと……」

 

 

急いで残った一箇所に向かうべくレンゲルバックルを外し変身を解除すると、グリンクローバーの元に向かう。

 

 

 

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。