仮面ライダー剣 〜切札と帽子と本の旅人〜   作:龍牙

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烈 勇志さんのご指摘を受けてエレファントアンデッドをウルフアンデッドに変更しました。
ご指摘ありがとうございました。


十幕

「そうか……分かった」

 

 

ブルースペイダーを走らせながら受けたクウヤからの連絡によれば『ハートのカテゴリーAの封印が完了した』とある。流石に翔でも複雑な心境を隠せずには居られない。だが、同時に単独でカテゴリーAの封印に成功した事は、クウヤの師匠としては弟子の成長を素直に喜んでも居た。

 

 

……実際、クウヤには悪いが過去に交戦経験のあるカテゴリーAはクウヤのスートのAであるスパイダーアンデッドしか戦っていない。それも当然だろう、ライダーへの変身にはAのカードが絶対に必要なのだ。そして、トランプに於けるスートは四つ、ビートル、スタッグビートル、マンティスの三体が封印されている以上、開放状態にあったスパイダーアンデッド以外に戦えるわけが無い。

 

 

まあ、人造アンデッドのカテゴリーAであるケルベロスアンデッドに関しては、完全に例外に分類されているのだろうが。

 

 

「こっちはカテゴリーキングの封印に成功した」

 

 

『っ!? 本当ですか!? なら……!』

 

 

「これでより確実にもう一体のジョーカーの目的を防ぐ事が出来る、筈だ。(念の為に橘さん達には黙っていた方が良いだろう)」

 

 

目的の四枚のカテゴリーキングのカードが分散されていると言う状況は守る側にとっては厄介な面も有るが、ありがたい面も有る。

 

結局の所、相手にとって四枚のカードが揃わなければ意味は無い。三枚のカードが奪われたとしても、たった一枚でも守り切れれば十分。

 

ならば、一枚程度は目の届く所に有った方が安心出来る。それでも敵の居場所が分からない以上は“絶対”とは言い切れないが。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(……何か、ヤバイ)

 

 

直感的にそう思って周囲を見回す慎、霧の所為で視界は狭いが、雷雨のお蔭で敵の姿を見つけることが出来た。

 

 

白い影に、胸元の赤い宝玉、頭から伸びた二本の触角がその影を何処かカミキリムシを思わせる。だが、アンデッドの中にカミキリムシの祖『ロングホーンアンデッド』等はいない。故にその存在の名は、

 

 

(間違いねぇ……チーフから聞いていた姿と一致する。……今、オレの目の前に居るのは……)

 

 

「お前は……ジョーカー!」

 

 

ランスは白い影……『アルビノジョーカー』へと向けてそう叫ぶ。だが、当のアルビノジョーカーは何の感情も無くランスと対峙している。

 

 

ただ対峙しているだけだと言うのに、ランスの鎧を纏っているというのに、雨が当たっているわけでもないのに……妙に冷たい空気が肌を直接撫で回している様な嫌な感覚を覚える。

 

 

「お前も、オレが封印してやる!!!」

 

 

咄嗟に武器を構えて、ランスはアルビノジョーカーへと向かう……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「っ!?」

 

 

翔は反射的に目の前に飛び出してきた影に気付き、ブルースペイダーを急停車させながらカテゴリーAを装填したブレイバックルを装着する。

 

 

「お前は……」

 

 

それはこれまでのアンデッドの記憶と一致無い姿。強いて言うならば龍を思わせる外見と言うことだろうか? 背中に持った翼が特徴的な龍を思わせるアンデッドは翔の行く手を遮るように佇んでいた。

 

 

(……ドラゴンのアンデッドはあのアイって子の筈……。もう一体龍のアンデッドが。まさか!?)

 

 

幻獣の姿をしているアンデッド等可能性は四つしか考えられないだろう。ハートとダイヤのカテゴリーペイジとカテゴリーナイト。

 

既に封印されているスペードのペイジとナイト、クラブのナイトの三種と、クラブのカテゴリーペイジである龍の祖であるドラゴンアンデッド(未だに信じられないが)のアイが四霊獣の姿をしたアンデッドと言うのなら、残る四体の幻獣のアンデッドは。

 

 

「で、どのスートのカテゴリーペイジかカテゴリーナイトなんだ?」

 

 

「まあ、そう言って直ぐに気付いて貰えるのはありがたいな」

 

 

翔の言葉に龍の姿のアンデッドは答える。

 

 

「私はハートスートのカテゴリーペイジ。“ワイバーン”のアンデッドだ」

 

 

龍の姿のアンデッド……『ワイバーンアンデッド』がそう名乗ると、翔は何時でも変身できる様にブレイバックルに触れながら相手の様子を伺っている。

 

 

「そう警戒するな……と言っても流石に無理が有るか。私はお前と敵対する意思は無い。私はこのカードを届けに来ただけだ」

 

 

そう言われて投げ渡されるのは、白い虎を思わせる動物の絵が描かれたラウズカード。スートはハートで、描かれている文字は『ナイト』。

 

ハートスートのカテゴリーナイト、白い虎の姿のアンデッドの正体は不明だが、目の前のアンデッドは“青龍”、封印されているナイトは“白虎”と言った所だろうか。予想通り翔とクウヤの黒のスートは四霊、赤のスートは四神に対応しているらしい。

 

 

「……なんでオレなんだ? ハートスートのライダーは……今は居ない筈だ」

 

 

「お前の側に有った方が確実に持つべき者の手に渡ると思っただけだ。それに、今の状況では奴への試練は無理だろう」

 

 

「確かに」

 

 

ハートスートのライダー、仮面ライダーカリスはジョーカーアンデッドと言う事を知っている者にしてみれば、ワイバーンアンデッドの言葉は納得だ。

 

ハートスートのライダーであるジョーカーは封印されている。試練を課そうにも試練を受けるべき相手が何処にも居ないのでは試練も与える事はできない。

 

 

 

「で、試練を受けるのはオレが代理って所か?」

 

 

「いや、かつての最悪のアンデッドがあそこまで変わった以上、既に試練は必要ないだろう。今のジョーカーなら私の力を託すに相応しい。そんな事よりもブレイド、君には知っておくべき事がある」

 

 

そう言うとワイバーンアンデッドは翔を指差す。

 

 

「既に大いなる力に至る為の鍵を生み出す、4枚のカテゴリーキングは封印されてしまっている。カテゴリーキングを一箇所に集めるな。そして……万が一集まってしまった時は、カードに“贄”を与えるな。アルビノジョーカーの狙う力はカードだけでは手に入らない。14番目の大いなる力への鍵は二つ。カードと贄だ」

 

 

「贄? 贄って誰の事なんだ」

 

 

「分からない。それが何者なのかは私達には分からない。だが、アルビノジョーカーはそれさえも知っている筈だ。でなければ奴が動くはずが無い」

 

 

「っ!? ……手掛かりは無いのか?」

 

 

ワイバーンアンデッドの目的……それが既に四枚のカテゴリーキングのカードが封印されていると言う事を伝える事。そして、万が一揃ってしまった場合の対策を伝えに来たとすれば……。

 

 

「贄の資格を与えられた者は、『聖戦の始まりを告げし者』だ」

 

 

「はあ?」

 

 

ワイバーンアンデッドの言葉に思わず呆けた声を出してしまう翔だった。少なくとも、古代に伝えられている言葉と言う時点で予想できていた答えだが……やっぱり妙に詩的な答えだった。どうも、一から推理する必要が有る様だ。

 

 

「残念ながら、私にはこれ以上の事は分からない。お前達に賭けるしかない。後は頼んだぞ……仮面ライダー」

 

 

そう言ってワイバーンアンデッドは自身へとラウズカードを突き刺してその中に封印されていく。青いワイバーンの絵が描かれたハートスートのカテゴリーペイジのラウズカードは、己の意思が有る様に翔の手の中へと収まる。

 

 

(……“聖戦”は“バトルファイト”の事だよな? バトルファイトの始まりを告げし者……アンデッドの戦いの始まりを告げた……?)

 

 

どう考えても答えは出ない。少なくともアルビノジョーカーはその贄となる人物の事を既に知っていると言う事になる。

 

カテゴリーキングといい情報といい、完全にアルビノジョーカーに情報面で負けている。

 

 

「手掛かりはバトルファイトの始まりを告げた者か……」

 

 

ワイバーンアンデッドの言葉を可能な限り分かり易くすると出て来る答えは“それ”だ。そして、バトルファイトの始まりとは何を意味しているのか考えれば答えは自然と変わって来る。

 

 

(……やっぱり、バトルファイトの始まりを告げた者って言うのは、『アンデッドの封印を解いた人間』と考えるべきなんだろうな……)

 

 

翔の推理が正しいと言う前提の上での話しだが、ハートスートのペイジであるワイバーンアンデッドの言葉を信じるのならば、探すべきはアンデッドの封印を解いた人間なのだが、たった一つだけ大きな問題が有る……。

 

 

(……生きているとは、思えないよな……)

 

 

既に死んでいる可能性も高い。そう考えるとその時点でアルビノジョーカーの目的は果たせなくなっている筈だ。

 

 

だが、当のアルビノジョーカーは動き出している。それは贄の資格を持った人間がまだ生きているという事だ。

 

 

(……橘さんに伝えた方が良いか……。流石にアンデッドの封印を解いた人間の所在なんて、オレよりも橘さんの方が知っているだろうしな)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

咄嗟に武器を構え、アルビノジョーカーに向かいランスは…………

 

 

負けた。

 

 

(くそ、こいつには勝てねぇのかよ……)

 

 

ランスへの変身も解け、薄れ行く視界の中で以前に翔から言われた言葉を思い出してしまう。

 

『チームでの運用が前提』、翔の下した評価、それはランスである慎にはこう言われたようにも感じられていた。『一人では何も出来ない』、『三人で一人前』だと。慎にとってはそれが悔しかった。

 

だからこそ、自分一人の手でカテゴリーキングやジョーカーを封印して証明したかった……オレはお前には負けていないと。

 

 

「嘘……だろ? なん、で……」

 

 

最後の最後でアルビノジョーカーは慎も良く知る人物へと姿を変える。そんな現実に驚愕の声を上げるが、アルビノジョーカーは何も答える事無く慎へと近づいていく。

 

 

(いや、聞こえないだけか。でも、知らせねぇと。託さねぇと)

 

 

ぼやける視界の中、己の死を覚悟しながら動くのもやっとの体を引きずってアルビノジョーカーの前から逃げ出していく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「翔さん!」

 

 

「どうした?」

 

 

向かっている途中、クウヤと合流した翔はマシンを併走させながらそんな会話を交わす。

 

 

「奈菜さん達から連絡が有りました。三箇所目のアンデッドの反応が消えて……その、別のアンデッドの反応が現れたそうです」

 

 

「……そうか」

 

 

それはある程度予想できていた。カテゴリーペイジ曰く、嫌な感じのする存在らしく、図書館世界の管理人曰く、先程の三体よりも翔に近い感じがする相手らしい。

 

流石はアイとリリスと言った所だろうか、それぞれのコメントからジョーカーの対する意識が良く分かる。付け加えると、リリスに関して言うならば13体同時融合のキングフォームの影響によってジョーカー化の影響を受けた翔の気配が基準らしい。

 

何故かあの二人に負けたと奈菜の落ち込む姿が目に浮かぶ。

 

 

「オレにもっとも近い気配って事は、間違いないな」

 

 

「はい。そう言えば、奈菜さん何度もコールしたのに出てくれ無かったって言ってましたよ。しかも、翔さんの位置に短時間だけだけど、別のアンデッドの反応も有ったって言ってましたし」

 

 

「……ああ、ハートスートのカテゴリーペイジに会ってた」

 

 

「っ!? 大丈夫なんですか、それって!?」

 

 

「向こうに戦う意思も無かった見たいだしな。ハートスートのペイジとナイトのカードをオレに一時預けた上に、情報提供もしてくれた」

 

 

「情報ですか?」

 

 

「詳しい事は後で話す、ジョーカーの反応のあった場所に急ぐぞ」

 

 

「はい!」

 

 

そう、ジョーカーアンデッドは既に封印状態にある。自分達の知っているジョーカーが今回のアンデッドの開放の際に開放されていなかった側のアンデッドに含まれている以上、今封印もされずに存在しているジョーカーアンデッドはもう一体のジョーカーアンデッドの事に間違いない。

 

 

クウヤ達にもワイバーンアンデッドから聞いたことを伝えたいのだが、今は時間が無い。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

何とかアルビノジョーカーから逃げ切った慎は建物の中に入る。

 

 

(アイツ以外なら誰でも良い。早く来てくれよ)

 

 

そう思っていると、慎は後ろに誰かの気配を感じる。残された力を振り絞って其方を振り向く。

 

 

(………うん、こいつは、ジョーカーじゃねぇよな……?)

 

 

現れた人間の顔を確認し、先程封印したカテゴリーキングのラウズカードを取り出す。

 

 

「ジョーカーが、現れた。これ……これを……」

 

 

慎は後ろから現れた相手……ラルクの変身者である夏美にそう言うと、持っていたカテゴリーキングのラウズカードを彼女へと渡す。状況がまだ飲み込めていないのだろう、慎から差し出されたカードを夏美は無表情のまま受け取る。

 

 

(良かったな、夏美。これで強くなれるんじゃねーの。強くなりたいって言ってたもんな。でも……)

 

 

何処か安らかな気持ちでそう思いながら、慎は最後に彼女へと告げなければいけない言葉を探す。いや、最後に伝えなければならない言葉が、今の彼等にこれ以外に有る訳が無かった。

 

 

「逃げろ…………。奴の狙いは……それだ」

 

 

無表情のまま夏美が立ち去っていくのを見送りながら、

 

 

(オレさ、お前の事、本当に好きだったんだ。だから頼む、逃げてくれ。……生きてくれ……)

 

 

必死にカテゴリーキングのラウズカードを託した相手の無事を祈る。

 

 

(ブレイド、レンゲル。オレ、お前等の事、嫌いだけど……この事は教えてやらねぇと……。一応あいつ等より年上だからな、オレ。少しくらい、年上らしい事しないとな)

 

 

年下でありながら自分達よりも早く戦っていた先輩でもある相手の事を思いながら、慎は苦笑を浮かべ、最後の賭けに出る。

 

 

(オレを襲ったジョーカーの正体。最後に見た“あいつ”の名前)

 

 

そう思いながらラウズカードの一枚を取り出す。そのカードを持っているのは幸いだった。

 

 

(……ハート、か。オレも会えてたら、仲間に、なれてたかな?)

 

 

取り出したカードを握り締めながらそんな事を思う。

 

 

(…………ああ、死にたくねぇ…………。死にたくなんか、ねぇよ……)

 

 

 

 

 

 

 

 

「おい、しっかりしろ!」

 

 

倒れている慎に駆け寄って脈などを確認する。致命傷こそ負っているが、駆けつけたのが早かったために運が良ければ、まだ間に合う。

 

 

「クウヤ! 医者……いや、橘さんの方が良いか、急いで連絡してくれ!」

 

 

「は、はい!」

 

 

「ん?」

 

 

ふと、慎がしっかりと握り締めている物に気が付く。

 

 

「ウルフアンデッドの封印された……ラウズカード?」

 

 

それは、ハートスートのカテゴリーJ、ウルフアンデッドの封印されたラウズカード。

 

 

 

 

 

 

 

 

つづく…

 

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