仮面ライダー剣 〜切札と帽子と本の旅人〜   作:龍牙

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MissingA編
序幕


あの戦いから二年、翔が『相川 始』を最後のアンデット『ジョーカー』として封印した時から、そろそろ二年の月日が流れようとしていた。

ブレイバックルも『BOARD』へと返却し、自分は仮面ライダーの仮面は外したはずだった。

「外したはずなんだけどな…。」

翔は手の中で一枚のトランプに似たカードを玩ぶ、そのカードに書かれているのは、今にも動き出しそうな程リアルに描かれたスペードのマークと一体化したカブトムシの絵と『A』の文字、彼はそのカードの名を知っている。それは『カテゴリーA』のアンデットを封印したカード。

二年前の戦いでもっとも、自分が触れていたカードなのだ。

「烏丸所長も何で態々返したはずのブレイバックルとエースのカードを、オレに届けたんだ?」

一年前の旅ではブレイバックルの入った小包を受け取って直に実家に出かけた。それが実質一年以上の長い旅(但し、こっちで過ぎた時間は1時間にも満たなかったようだが)の始まりだったのだ。

突然聞かされた婚約者の話と、最悪の出会い。今でこそ両思いと言う恋人同士だが、あの時の自分では想像も出来なかっただろう。

それはさておき、実家に帰ってから直に『彼女』の姉探しの旅が始まったのだ。ブレイバックルの存在に気づいたのはその旅の中での事。その時は自分の想像を超えた経験を何度も体験した事もあり、ブレイバックルには…『仮面ライダーブレイド』の仮面にはその中で何度も助けられた。

「…ブレイバックルとカテゴリーAのカードをオレに託すか。何を考えてるんだ?」

実際、何を考えているのか理解できない所が多い人でも有ったのだから、そんな事を呟いた所で意味はないだろう。だが、その行動には全て意味が有った。

それなら、自分にブレイバックルとカテゴリーAのカードが送られて来た事にも何か意味が有るとも考えられるが、その意味を問おうにも、二度と会う事も無いと思っていた仮面ライダーとしての先輩である橘から一度だけ有った連絡で烏丸所長は事故で亡くなったと聞いた。

自分が戦い、その中で死んだ故人を悪く言う気はないが、天王寺等と言う奴に比べればよっぽど信用できる。だから、もしかしたら…何らかの理由があって、烏丸所長は自分にブレイバックルを託した。そして、自分の死を予期していた。そうとも考えられる。

「それにしても…。」

目の前に置かれたコーラを飲み干し、時計を確認する。別に『彼女』とのデートと言う訳ではないが、かつての仲間、進路に付いての相談があると言う母校の後輩に当たる『仮面ライダー』の一人との待ち合わせなのだ。今日は大学の講義もない、時間は有ることなので、早めに出てきたのだが…。

「早く来過ぎたな。」

はっきり言って今日1日用事もなく暇だったのだ。約束の適当に時間を潰そうと考えても、新しい雑誌の発売もなく、こうして待ち合わせ場所で缶ジュースを飲んでいる事しか出来ない。

「…済みません、翔さん。こっちからお願いしたのに、待たせてしまって。」

自分が考え事をしている間に来たのだろう、声が聞こえてきた方向に視線を向けると、そこにはかつての仲間『仮面ライダーレンゲル』であった少年『風見 クウヤ』がいた。

「気にするな、暇だったからと言って、一時間以上も早く家を出たオレが悪い。」

「ええ。それで…。」

久し振りに会う仲間との会話を弾ませながら、雑談を交えながら、翔はクウヤの相談に答える。

「…それで、彼女と同じ大学に進むとすると、志望校のランクを一つ落とす訳か。」

「…そうなんです。それで、元の志望校にするか…一つ落とすか…それで悩んでるんですよ。」

『天王寺 カスミ』…クウヤの幼馴染にして、その姓からも解るように、あの天王寺の身内でもある。飛行機事故で本当の両親を失い、天王寺に養女として引き取られたので、血縁関係はないのだが。

彼女を人質にされ、以前の戦いの中で初めて翔がキングフォームを発動された直後、レンゲル用のラウズアブソーバーを持って、クウヤが敵に回った事がある。

「…難しい話だな。守ってやりたい、大切な人か…。」

そこまで言うと楽しそうな笑みを浮かべながら、翔は言葉を続ける。

「…実際、オレ達を裏切ってまで守りたかった相手なんだろう。その子は。」

「…そ、そうです…。前は…最初の頃はカテゴリーAに意識を操られて、あいつを傷つけたり…あいつを人質にされて翔さん達と戦ったり…そんな調子でしたから…。だから、どう言う選択をすれば、今度こそ守ってやれるのかが分からなくて…。って、そうじゃなくて!?」

思いっきり翔に乗せられて彼女に対する惚気話をしてしまった事に気がつき、顔を真っ赤にしながら、目の前の先輩を睨む、クウヤ。

「…そうだ、翔さん。昨日、虎太郎さんに会って聞いたんですけど、今度、栗原さんの所で天音ちゃんの誕生日パーティーをするそうですから…。」

「そうか…。じゃあ、オレも参加するから、詳しい日程を聞いておかないとな。」

クウヤと会話を続けながら、最初の質問の答えを考えていく。その時だった。突然、悲鳴が聞こえたのは。何かと思って視線を向けてみると、その視線の先にいたのは………人を襲うアンデッド。

「あれって、アンデッド!?」

「…ローカスト、カプリコーン、モス、ゼブラ、バッファロー…それに…嶋さんに…キング。」

ローカスト、カプリコーン、モス、ゼブラ、バッファローと言ったアンデッド達…そして、その奥にはクラブとスペードのカテゴリーキング…タランチュラアンデッドとコーカサスビートルアンデッドまで存在していた。

「…そんな…なんでアンデッドが!?」

「クウヤ、お前は襲われている人達を避難させろ。」

クウヤへと支持を出して翔はポケットの中からブレイバックルを取り出し、『カテゴリーA』のカードを差し込む。

「翔さんは何を…っ!? それって…ブレイバックル!? どうして…。」

「話は後だ…。変身!!!」

『Turn Up』

そう叫び、ベルトのバックル部分を回転させると、前方に蒼いカブトムシとスペードを象った紋章が現れ、その中を潜り抜け、『仮面ライダーブレイド』へと変身し、アンデッドの中へと突っ込んでいく。

(…一体でも梃子摺った奴も多い…なら、最初に狙うのは、ローカストかリザード、ライオン。)

ライオンアンデッドとリザードアンデッドの姿は近くには見えず、仕方なく唯一狙いの中で近くにいたローカストアンデッドへと向かっていく。

「はぁ!!!」

不意打ち気味な一撃が別の人間を襲っていて無防備なローカストアンデッドの背中に吸い込まれ、ローカストアンデッドが襲っていた人はすぐにクウヤが避難させる。

それを確認した瞬間、今度はブレイラウザーで休みなく、連続で切り付ける。5回、6回、7回と連続で叩き込まれる。そして、最後の一撃が吸い込まれた瞬間、ローカストアンデッドは倒れ、バックル部分が開き、ブレイドが投げたラウズカードに吸い込まれ、再封印される。

「まずは一体。」

これである程度の最高攻撃力は確保した。本来なら、『ジャガーアンデッド』や『ディアーアンデッド』と言ったローカストアンデッドのカードとのコンボを可能にするアンデッドを優先的に倒して行きたい所だが、生憎とその手のアンデッドは存在していない。

ブレイドの仮面の中で未だに暴れつづけるアンデッドを睨み付け、次の相手に向かおうとした時だった。三台のバイクが向かってきたのは。

バイクを止めると、そのバイクに乗っていた三人は逃げ惑う人々とは逆の…アンデッドの方に向かって歩き出す。

三人とも自分と同じ年…いや、僅かながら上の年齢に見える。1人は誠実そうな好青年、1人は生意気そうな青年、そしてもう1人は気の強そうな女性。明らかに彼等三人の顔には怯えは無く、その手には何かの機械らしき物を持っている。遠目から見てそれはレンゲルの物に近いライダーのバックル。

元々、例外である『カリス』を除外して、『ギャレン』、『ブレイド』、『レンゲル』と言った順に新型になっている。見た事のないライダーの変身システムがレンゲルよりも新しい物なら、と言うのなら、最新型に位置するレンゲルの物に近いのにも頷ける。

翔の推測を肯定する様にそれに何かのカードをセットし、アンデッドの群れに迷いなく近づいていく。

「まさか…あれも…。」

ブレイドが戦っている間に変身できないなりに力になろうと、怪我をした人に肩を貸して戦場から離れていくクウヤがそれを見てつぶやく。

そして、三人はかつてクウヤの持っていた物と同様にバックルを腰に当て、ベルトとして装着される。

「「「変身。」」」

『OPEN UP』

バックルを開き、紋章のような壁が展開し、三人を細部が違う同型タイプの『仮面ライダー』へと変身させる。

「仮面ライダー…オレの…それもレンゲルと同じ…。」

「オレ達の同類か。クウヤ、おまえは早く離れろ!」

何処か憎しみを込めた目で三人の仮面ライダーを睨み付けながら、クウヤはブレイドの言葉に従ってその場から離れていく。

(仮面ライダーの量産型…いや、量産型の先行試作型か?)

翔がそう考えるのにも理由がある。三人の姿はほぼ同じ外見、マスクの部分は特徴的なAの文字を連想させる飾りとダイヤを連想させる部分を中央に持つ。胸の辺りにも同じ様な飾りがつけられている。

誠実そうな青年が黄色、生意気そうな青年が緑、そして女性が赤と、アーマーの色こそ違うが、従来のライダーと比べると量産性を高めた様に見える。

「っ!? 待て!」

三人のライダーが相手にしているアンデッド達の中からコーカサスとタランチュラと言ったカテゴリーキングが逃げ出していく。慌ててそれを追い掛けるブレイドだが、突然の衝撃に思わず歩みを止める。

「…この攻撃…こいつか。」

カテゴリーキング二体は既に見失っている。だが、自分にダメージを与えた相手はまだ残っていることは確信できる。足止めと殿を勤めた相手の立つ正面を睨みつける。その前にスカラベアンデッドが立ち塞がっていた。

「やっぱりな…。」

スカラベアンデッドは本来、ジョーカーも含めた53体のアンデッドの中で特に『神の領域』と言う点に近づいていると言える相手である。

『時間停止』…カテゴリージャック、クィーン、キングと言った上級アンデッドやジョーカーでさえ持ち得なかったある種最強の能力を持った、有る意味では上級アンデッド以上の最強のアンデッドと言えるだろう。だが、

「…あいつ等は見逃したんだ…お前だけは封印させてもらう!」

ブレイラウザーの刃を外側へと向け、腰の辺りに添えると言う独特の構えで、右足を前に出し体重をかける。それが日本刀ならば居合の体制に近いと言えるだろう。

自身の正面に立つスカラベアンデッドを睨みつけながら、ブレイドは少しずつ前へと…スカラベアンデッドとの距離を詰めていく…。そして、ボード部分を展開させ、先ほど封印した『スペードの5』、『キックローカスト』のカードを取り出す。

ブレイドの全身を強い衝撃が襲う。次間停止化での攻撃が繰り返されているのだろう、そして、スカラベアンデッドの位置は変わっているが、大きくは動いていない。

(…時間停止の能力…確かに厄介だけどな…。お前が殿と言うのは間違いだったな。)

何者かに命令されて行動している…いや、操られていると言う可能性も有る以上、推測では有るが…奴の後方へと向かわせない為にブレイドの行動を妨害していると推測できる。なら、新しい命令が下る前に自分の攻撃範囲に入ることが出来れば…。

今のスカラベアンデッドの能力では時間停止した所で、回避不能の攻撃でしかない…故に。

《KICK》

電子音と共に居合を連想させる一太刀が僅かにスカラベアンデッドの体に切り傷をつける。だが、それは飽く迄牽制でしかない。

「はあ!」

一瞬だけスカラベアンデッドが怯んだ隙にローカストアンデッドの力の宿ったキック、『ローカストキック』を打ち込む。それにより、一瞬だけスカラベアンデッドの動きが止まる。

《KICK》

「これで!」

二度目のローカストキックを叩き込み、そのままブレイラウザーで横一線に切りつける。

《KICK》

「終わりだ!」

止めとばかりに三度目のローカストキックが飛び蹴りで叩き付けられる。それによって吹き飛ばされたスカラベアンデッドが倒れ、バックル部分が展開する。そして、

「…『スペードの10』か…。厄介なアンデッドが早い内に封印できたな。それにしても…。」

先ほど封印したカード『スペードの10』と『スペードの5』の二枚のラウズカードをブレイラウザーのボード部分へと収納し、逃げた二体のアンデッドを今から追った所で無駄と判断すると、ブレイバックルを外し、ブレイドの姿から元の姿へと戻る。

(…烏丸所長…あんたはもしかして、こうなる事を分かっていて、オレにブレイバックルを届けたのか? だったら…あんたは…。)

叫びそうになった『自分の死さえも予想の内だったのか!?』と言う言葉を飲み込む。結果として既に烏丸は死んでいるのだ。今更何を考えた所で過ぎ去った事実に『if』は無い。何を考えた所でそれは妄想でしかない。

先ほどまで戦っていた場所へと視線を向けると既に戦いは終わっている。そこには一枚だけ、見覚えのあるカード、ライオンの絵が書かれた『スペードの3』のカードが残されていた。既に別の場所で封印された物なのだろう。

「やめておくか…。それにしても…新しい仮面ライダー。一体誰が…。」

翔は空へと視線を向ける。全ては…今、この瞬間を持って、新しい戦いの始まりを迎えたのだった。

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