仮面ライダー剣 〜切札と帽子と本の旅人〜   作:龍牙

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七幕

「アイちゃん、そっちお願い」

 

 

「オッケー」

 

 

すっかり仲良くなったカスミとアイの二人を眺めながら、翔は隅の方で震えているクウヤへと視線を移す。

 

 

「…あー…何と言うか、刺されないで良かったな」

 

 

「………はい………」

 

 

ポーラベアアンデッドを封印した後、アイを連れてJACARANDAに帰ってきた時……目が笑っていないダークな笑顔でカスミちゃんに『ねぇ、その子誰?』と散々問い詰められたクウヤ君でした。普段大人しい子ほど怒ると怖い物である。

 

まあ、行き成り女の子を連れてくればそんな反応されても無理は無いだろう。………彼女がドラゴンのアンデッドだと言う事も出来ないし、信じられないだろうし。…クウヤもアンデッド態を見ていないし。

 

 

「あっ、クウヤー、私も今日から此処で住み込みのアルバイトさせて貰う事になったからねぇー」

 

 

何時の間にやらそんな事になったらしい。JACARANDAでは昔最強のアンデッド・ジョーカーこと始さん、現在上級アンデッド・ドラゴンアンデッドことアイもタダのアルバイトらしい、恐るべしJACARANDA。この喫茶店、無駄に防衛力が高くなっている気がするのも気の所為じゃないだろう。

 

 

「……龍の祖のアンデッドなんだよな…あの子?」

 

 

「…一切信じられませんけど…」

 

 

「…麒麟のとは大違いだな…」

 

 

「はい」

 

 

武人肌のチーリンアンデッドと普通の女の子のドラゴンアンデッド、今までブレイドこと翔とレンゲルことクウヤの遭遇したカテゴリーペイジはそんな感じだった。まあ、共通点としてバトルファイトに興味が無いと言うが挙げられるが。

 

兎も角、これで残すはハートとダイアの赤のスートだけなのだが、どんな相手なのか未だに予想も出来ない。

 

 

「…麒麟に龍に鳳凰、それから…霊亀、か」

 

 

「どうしたんですか、急に?」

 

 

「いや、カテゴリーペイジとカテゴリーナイトは四霊獣だな、なんて思ってな」

 

 

クウヤから見せられたカテゴリーナイトのラウズカードを返してそんな事を思う。まあ、改めて思う事は一つ…

 

 

「…相変わらず、お前には遭わない組み合わせだな、ジャックとナイトは」

 

 

「…言わないで下さいよ」

 

 

少なくともクウヤは翔と同じで力任せに戦うタイプではない。まあ、バトルスタイルとなる杖術は翔が教えたのだから似るのも仕方ないが…。

 

だからアブソーバーを手に入れてからもあまり使う気が起きなかったのだ。付け加えるなら、翔のアンデッド化の現象を考えるとキングフォームは使う気になれない。

 

 

(…そうなると、龍が被るけどこの組み合わせだとダイアとハートのスートは四聖獣…四神になる…のか?)

 

 

其処まで考えた後一度考えを切り止める。チーリンアンデッドやアイは『試練』だと言っていた。それが試練である以上、残った二つのスートのアンデッドが現れるのは高い確率で翔とクウヤの前では無いだろう。有り得る可能性は精々不在の仮面ライダーカリス…相川始の代役だけだろう。それも封印から開放されれば話は変わるが、カテゴリーペイジとカテゴリーナイトの残りに関しては現状では警戒と放置しかないだろう。

 

 

…間違いなく何らかの情報を知っているであろう本人達の一人であるアイに何も聞かないのは、それによって試練に失格するのを避ける為だ。

 

 

(…もう一体のジョーカーやバトルファイトの副賞と何か関係有るのか?)

 

 

すっかりバトルファイトの勝者に与えられると言う大いなる力と言うのは、翔の中での呼称は『副賞』らしい。

 

 

「まあ、今はオレ達のするべき事を順にしていくだけだ。………そんな訳でクウヤ…いい加減震えてないで手伝え」

 

 

「はい」

 

 

意図的に倒れて気絶して隅に置かれている人物を無視しつつ、クウヤも翔を手伝って飾り付けを始める。

 

 

「…お、おい!」

 

 

「あっ、起きた」

 

 

「用が済んだら帰れ、こっちは忙しいんだ!」

 

 

「何一つ済んじゃいねぇえよ!!!」

 

 

翔とクウヤの辛辣な言葉に怒鳴り返す慎。黒のスートの師弟コンビは揃って溜息を吐くと飾り付けの序でに慎へと視線を向ける。

 

 

「で、何の用だ?」

 

 

「2のカードを返せよ! こんな偽者渡しやがって!」

 

 

「封印したのはそっちだけど、これはオレのスートのカードだ。何より……お前等が持ってて意味有るのか?」

 

 

「どう言う意味だよ?」

 

 

偽者だと言う事に気付いて態々取り戻しに来たラウズカードを見せながら、翔は推測した新世代ライダーのもう一つの欠点を指摘する。

 

 

「…単純に使わないだけなら良いとして…。そっちのライダーシステムって、専用のラウズカード以外使えるのか?」

 

 

「っ!?」

 

 

肯定も否定もしない慎。そもそも、今までの戦いで新世代のライダー達は使えるなら持っている他のラウズカードを使っていても不思議では無いだろう。それなのに、相手は『マイティ』以外のカードを使った様子は無い。

 

 

そう言う訳で、翔はグレイブ、ランス、ラルクの新世代ライダー達にはラウズカードは必要ないだろうと考えたわけだが…どうやら図星の様だった。

 

 

向こうには橘もいるが、主となって動いているのはグレイブ達で有る以上、態々死札を作る必要は無いだろうと思って態々偽者まで用意して貰って置いた訳だ。

 

 

「安心しろ、今回の一件が片付いたらカードは返してやる」

 

 

そう言って翔は『忙しいから帰れ』と言う様に手をヒラヒラと振っていた時、

 

 

「…そう言えば、そっちにはカテゴリーペイジとカテゴリーナイトは現れたのか?」

 

 

「お前の持ってきた奴以外まだ見てねぇよ」

 

 

「そうか。…まあ、『次は橘さんの前に現れそうだから気を着けてくれ』とでも伝えてくれ」

 

 

…翔の考えが正しければ、順番的に次に現れるのは橘の前に現れるであろうダイアスートのカテゴリーペイジだろう。悪ければカテゴリーナイトとも戦う可能性も高い。

 

今までは既に封印されたラウズカードを受け取っただけでカテゴリーナイトの実力は正直何も分からないが、『絵札』に分類されるカードで有りカテゴリーペイジの事を考えると上級アンデッドで強敵である事に間違いないだろう。

 

流石にそれを『リモート』のカードで開放して確かめるわけにも行かないし、現在『リモート・テイピア』のカードは厳重に封印中だ。

 

…余談だが、テイピアアンデッドが開放されなかったのは、不幸中の幸いと言えるだろう。下手に開放されれば上級アンデッドよりも厄介である事は間違いない。

 

 

「どう言う意味だよ?」

 

 

「どう言う意味も何も…クウヤの前にも現れたからな。あと残っているのはハートとダイア…消去法でダイアしかないだろう。…代理は最後になりそうだしな」

 

 

予想は外れる可能性も有るが、少なくとも警戒してもらっても損は無いだろうと考えた結果だ。カテゴリーペイジ達による『試練』が終わったのなら、残るカテゴリーキングの封印に集中できる。

 

 

「伝えておいてやるよ」

 

 

「頼んだ」

 

 

今度こそ『さようなら』と言う仕草でJACARANDAから出て行く慎を見送る。

 

 

「…ところで、あの人…なんで気絶してたんですか?」

 

 

「…お前から電話が有った後、ニセモノのラウズカードに気付いて乗り込んできた時に足を滑らせて気絶しただけだ」

 

 

翔の言葉にクウヤは『態と気絶させたな』と思う。どうも、翔は敵にはまったく容赦がない。

 

 

「一人だけで、ですか?」

 

 

「…どうも、橘さんは黙認したようだからな、オレが持ってるの」

 

 

それが特に気に入らなかった慎が一人で出て来たと言う訳だ。翔にしてみれば贅沢を言えば、カテゴリーキングのカードも手元に有った方がキングフォームが使えて良いのだが。

 

 

「…まあ、カテゴリーキングは今はバラバラに持ってた方が良いだろうからな」

 

 

「ですね」

 

 

「ねえ、ちょっと良い?」

 

 

そんな会話を交わしているとアイが二人の会話の中に割り込んでくる。

 

 

「「!?」」

 

 

二人に一切の気配を感じさせずに近づいたのは流石と言うべきだろうか、何時の間に近づいたのかは分からない。

 

 

「…なんだよ、アイ」

 

 

「何だよは無いんじゃないの、クウヤ。折角アイちゃんがアンデッドが出た事を教えてあげようと思ったのに」

 

 

「っ!? 本当かい、アンデッドサーチャーには何の反応もなかったはずのに」

 

 

アイの言葉に反応するのは、以前のデータからもう一度アンデッドサーチャーを作った本人である奈菜。

 

 

「まあね、こう見えても一応上級アンデッドなんだから」

 

 

(((そう言えばそうだった)))

 

 

失礼ながら三人揃ってそんな事を考えてしまう翔、クウヤ、奈菜の三人…。仕方ないと言えば仕方ないが、アンデッドの持っている感覚はアンデッドサーチャーを上回っていると言う事なのだろうか。

 

 

「あっ、そう言えば何だか少しだけ翔に似てる…何て言えばいいのかしら~、気配? がするのよね~」

 

 

「っ!? オレに少しだけ近いって…」

 

 

リリスの言葉にある単語にその意味を理解する。…過去の戦いで高いアンデッドとの融合率とキングフォームへの変身によってアンデッド化の現象が翔の体に起こった。

 

リリスの言う“翔と少しだけ似ている気配”と言う事は間違いなく、アンデッド…悪ければもう一体のジョーカーだ。

 

 

「…さっきアンデッドサーチャーに反応があったから、間違いないと思うよ…。…何だか自信がなくなってくるね…」

 

 

「気にするな、奈菜。この二人が例外中の例外なだけだから…」

 

 

翔は表面には現れていないが間違いなく落ち込んでいる奈菜の肩を叩いて慰める。流石に相手は図書館世界の管理人と上級アンデッド、この二人の感覚とはどう考えても比べない方が賢明だろう。

 

 

「それで、相手は何処に…」

 

 

「三箇所に分かれているみたいだけど、二人には取り敢えずの近くの奴を狙ってもらうよ。対処出来次第残りの方に回って貰うって事で良いかな?」

 

 

「ああ」

 

「はい」

 

 

翔に励まされて、奈菜は気を取り直して翔とクウヤにアンデッドサーチャーに表示された位置を指示する。敵に目的が有るなら“罠です”と言っている様に三箇所に分かれて反応は存在している。…主に新世代組みに対しての。

 

 

「ん、行ってらっしゃい~」

 

 

手を振ってクウヤを見送るアイ。それに対して翔は…。

 

 

「待って」

 

 

「葉月?」

 

 

葉月さんに呼び止められました。あの後、翔が過去に関わったアンデッドとの戦いの事は全て彼女達には話してある。

 

……当然ながら、その中には天音とハートスートのライダー・仮面ライダーカリスこと相川始、ジョーカーアンデッドの事も含まれている。

 

 

仲間でありながら最後の最後では封印するしかなかった相手、一人の少女の悲しみと仲間、それを全人類の生存と天秤にかけた結果、翔は全人類を救う道を選んだ。何よりも彼はそれを望んでいると思ったからだ。

 

 

「翔、君は無事に戻ってくるよね?」

 

 

「まあ、生きて戻ってくるって言う約束なら出来るけどな」

 

 

過去の戦いを思い出すと怪我をしないと言う約束だけは否定しておく。少なくとも無傷で勝てるほどの温い戦いは一つも無かった。だからこそ、一度戦った相手が多いとは言え無傷での勝利だけは約束できない。

 

 

「それでも良いから…ボクの前から居なくならないで…」

 

 

「……心配するな、オレは絶対に居なくならない」

 

 

葉月の中の長い旅路の記憶は無いが、それでもそれは何処かに破片のように残っているのだろう。翔の事を好きになった気持ちが残っているように、大事な人間が目の前から居なくなった記憶も。

 

 

だから彼女を安心させる様に翔はその言葉を噤む。

 

 

「そうだね、葉月義姉さんだけじゃなくて、私としても翔にいなくなって欲しくないからね」

 

 

『自分だって心配している』と言う意思を込めて奈菜も告げる。

 

 

「居なくなるのは、父さんで最後にしてほしいからね」

 

 

「…分かってる…」

 

 

いつもと変わらぬ態度だが心から心配していると言う義妹の気持ちが理解できる。彼女は過去に二度も実父を失っている。二度目の別れが改造実験体トライアルに書き込まれた記憶だったとしても。だからこそ、奈菜は翔にまで居なくなってほしくは無い。

 

 

そんな翔達の姿を見て膨れているリリスは初美に宥められている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、翔とクウヤがそれぞれ指示された場所に向かうと

 

 

「当たり、か。クウヤじゃなくてオレの方に来たのはラッキーだけど…下手したら二人に怒られそうだな。…なあ、カテゴリーキング!」

 

 

ブレイバックルを装着した翔と対峙しているのはクワガタの姿をしたアンデッド。クワガタのアンデッドは二体しか存在しない。

 

カテゴリーAとダイアスートの頂点に立つカテゴリーキング。一体は既に封印されている以上、目の前に居るのは間違いなくダイアスートのカテゴリーキングにして過去の戦いではジョーカーを除いて最後に封印したアンデッドとなった相手『ギラファアンデッド』。

 

 

「…敵だったと言っても、アンタ達のそんな姿は見たくなかったな…」

 

 

下手にカテゴリーキングを封印する事はもう一体のジョーカーの望みに繋がってしまう危険性が高いが、それでも放置するにはカテゴリーキングは危険すぎる。

 

そもそも、翔としては人に危害を加えないアンデッドまで封印する意思は無い。それに、上級アンデッドの中には好感の持てる相手もいた。だからこそ…その中の一人である相手が、ダイアスートの頂点に立った誇り高い敵が、タダのバケモノの様に暴れまわる姿は………心底気に入らない。

 

 

「…アンタ本人もそう思うだろ…だから。変身!」

 

 

《Turn Up》

 

 

ヘラクレスオオカブトのオリハルコンエレメントを潜りブレイドへと変身すると、ブレイラウザーを構えながら翔は宣言する。

 

 

「この場で封印する!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…っ!? …なんか、嫌な感じだな」

 

 

目の前に出現したアンデッドを見て思わずそんな言葉が零れてしまう。目の前に居るのは並みのアンデッドではない。漆黒の体に赤い複眼。

 

上級アンデッドが戦う事を渇望した相手、ハートスートのカテゴリーA、『マンティスアンデッド』。その名はライダーの名であると同時にそのアンデッドを挿す名であったと言う事を知った…聖杯のライダー『カリス』。

 

仮面ライダーカリスがマンティスアンデッドの姿を借りた物である以上、目の前にはカリスが存在しているような物だ。

 

 

仲間の変身していたライダーの姿で暴れまわるのは見たくは無い。

 

 

「本当は翔さんが封印したかったんだろうけど…お前は、オレが封印する。変身!」

 

 

《OPEN UP》

 

 

尊敬する相手に代わってマンティスアンデッドを封印する事を決意しながら、スパイダーアンデッドのオリハルコンエレメントを潜りながらクウヤはレンゲルへと変身し、レンゲルラウザーを構えながらカリスアローを構えたマンティスアンデッドと対峙する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「カテゴリーキングか!?」

 

 

一方、先にアンデッドを封印した後に翔達が向かう予定だった位置に居たアンデッドと対峙していたのは慎だった。目の前に居るのは蜘蛛を髣髴とさせるアンデッド。クラブスートに存在している蜘蛛のアンデッドは二体、カテゴリーAとカテゴリーキングだけだ。

 

 

《OPEN UP》

 

 

距離を詰めてくるタランチュラアンデッドに対して、慎はケルベロスのライダー・ランスへと変身する。

 

 

「カテゴリーキング! オレが封印してやる!」

 

 

高らかと宣言すると、その名の如く槍を構えたランスはタランチュラアンデッドへと先制攻撃を叩き込む。

 

 

 

 

 

 

 

 

つづく…

 

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