──徳を積んでいない人間が神の恩寵を得られるわけがなかろう。
  欲しければ戦え、そのための能力と場所を与えてやる。


気がつけば男は「華麗なるビクトリーム様」になっていた。
 
 

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華麗なるビクトリーム様、降り立つ。

   

 

そこはまるで白い雲の上にあるような景色である。  

その場所に一人の男が現れ、キョロキョロと首を忙しなく動かして周囲を見渡し辺りを窺い、やがて大理石でできた白い玉座に腰掛ける巨体に気づく…

 

 

それは筋骨隆々のマッチョ老人だった。

 

 

はち切れんばかりの筋肉を古代ローマのような衣装で無理矢理押さえつけながら、口元を覆っている白い髭をモゴモゴと動かして…

 

 

──うぬが『  』か…?

 

 

低く、くぐもった声で男の名を口にした。

名を呼ばれた男はこくこくと頷き、思案する。

 

 

──これは所謂神様転生 神様特典

 

 

男は屈強な老人に自分の願望を述べると…

今まで黙っていた老人がおもむろに玉座から立ち上がり、そのゆったりとした動作から一転、俊敏な動きで男との距離を一気に縮め、烈迫の気合いと共に男に鋭い蹴りを叩き込んで吹き飛ばした。

 

 

──邪な思考がただ漏れだ。

  徳を積んでおらず、敵国の一人も討てていない者が神の恩寵を得られるわけがなかろう。

 

 

痛みで腹を押さえながら眼下で蹲る男を、陰となって見えない表情で見下す。

 

 

──だが戦争のない国で「敵を討つ」機会はそうそう得られるものでもない。

  故に敵と戦う機会と能力を与えてやる。

 

 

「そ…それは……どういう──」

 

 

意味だ? …と言い終える前に男の姿が霞みがかったように薄くなっていき、やがて消えた。

 

 

──お前は華麗なる容姿を望んでいるようだから…

 

 

男が消えた場所から光が集まり、人の形を取っていく。

 

 

──お前を「華麗なるビクトリーム様」にしてやろう。

 

 

男の姿がアルファベットの〝 V 〟を上下に二つ重ねた姿に変貌していた。

「金色のガッシュ!!」に登場する人物であり、主人公であるガッシュと戦い、最後には本を燃やされて魔界に帰還したキャラクターの一人である。男はその姿に変わっていたのだ。

男は自分の望んでいない姿に頭を抱えて悶絶する。

 

 

──お前も含めて1000人。最後の一人になるまで戦え…

  そして最後の一人になった時、転生者とそのパートナーの願いを叶えてやろう。

  詳しいことは「本」を見れば分かる。

 

 

再度、男の姿が掻き消えて、玉座に座る老人だけが取り残される。

静寂が場を支配し、沈黙が場に満ちた。

 

 

「神」とは絶対的な存在だからこそ「神」なのである。

男はその事を忘れていた……もしくは「神」というものを勘違いしていた。

 

 

   ***

 

 

「ベリィィィィ・シィィィィィット!!!!

 神様転生かと思ったら、神様お手製のデス・ゲームかよ!?

 

 

夕暮れの住宅街を行くVの字の男──改め「華麗なるビクトリーム様」

その姿は簡素な住宅街に不釣り合い過ぎていた。

すれ違う町の住人が目を合わせないようそそくさと過ぎ去っていくのが視界の端に見える。

やがて公園に辿り着くと…

 

 

「マグルガァ!!!

 

 

人のいない方向に向かって叫ぶが……特に変化は起きない。

 

 

「我が美しさを股間の紳士に!! チャーグル!!!

 

 

続けて体をVの字にして明後日の方向に向けて叫ぶが……何も起こらない。

代わりにビクトリームを指差す男の子を母親が引っ張ってその場から離れていき、猫が威嚇の声を上げ、カラスがけたたましく鳴き、犬が狂ったように吠え続ける。

 

 

「やはし、本の持ち主を探さなければ「術」は行使できないか…」

 

 

アゴに手を当てて考える素振りを見せるビクトリーム、その手には一冊の本が握られていた。

「金色のガッシュ!!」ではパートナーである人間たちが本を読み、術の名を言わなければ発動しない仕組みになっていた。

ビクトリームの先程の奇行はパートナー抜きで術が使えるかどうかを試していたのだ。

 

 

「これは一刻も早く我が本の持ち主を探さねば…」

 

 

自分の本を読める者を探すために町を散策する。

暫く探索していると何処かで見たことのある顔を発見し、その場で立ち止まる。同時に手に持った本が淡く輝き始める。

彼の目に写ったのは小学生の「高町なのは」…学校帰りなのであろう、彼女はランドセルを背負っていた。

 

 

件の少女──高町なのはは視線を感じたのか、ビクトリームがいる方向に顔を向き、彼と視線が合ってしまった。

ニッコリと微笑むビクトリームにやや顔を引きつらせながらも微笑み返す少女。

 

 

「私の名前は「華麗なるビクトリーム様」…。ほら、言ってごらん?」

 

 

優しく声をかけるが、なのはは動かない。

突然、見知らぬ人物……それも到底、人には見えない何者かの登場に混乱しているのだ。

 

 

「ふふふ。緊張しているのかな? 初対面なら仕方がないね」

 

 

もっともビクトリームは自分の容姿が相手にどのような印象を与えているのか理解していないのか、上機嫌で話を続ける。

 

 

「とりあえず、この「本」が読めるかどうか見て確かめてくれないか?」

 

 

淡く輝いていた「本」が少女に近づくにつれて輝きを増し、ビクトリームのこぼれる笑みがさらに深くなる。しかし、両者の距離が近づくにつれてなのはは恐怖に怯え、体の震えが増していく。

 

 

「そこまでよ この変態

 

 

──の声とともに赤子ほどの大きさの石がビクトリームの顔面に当たり、堪らず「ブルァァァっ!?」と血を吐きつつ叫んで地面にバタッと倒れる。

 

 

「ベリー・シット 頭部に40のダメージを喰らってしまった

 いったい何処のバカだ!? 我が頭部に石を投げつけた不届き者は!?

 〝 人が会話している最中は石を投げてはいけない 〟…って教わらなかったのか!?

 

 

すぐさま上半身を起こして憤慨するも、なのはは新たに現れた少女たちと一緒に本を見ていた。

 

 

「何この本の文字? 読めないし、今までに見たことがない…」

 

 

長い金髪の少女が本のページを捲って中身を確認するが読めないでいる。

 

 

「当然だ その本は選ばれし勇者にしか読めない仕様になっている キサマのような凡人を絵に書いたような奴に読めるハズがないのだ わかったら、とっと私に返せ

 

 

うるさく喚き散らすビクトリームに金髪の少女は…

 

 

「この本、燃やすわよ?」

 

 

その一言でビクトリームは大人しくなった。

 

 

  ***

 

 

「信じられないわね。願い事が叶えられるなんて…」

 

 

金髪の少女──アリサは素直に漏らした。

三人の中で本を読めることができたのは高町なのは彼女だけだった。

 

 

「君たちがそう思うのはムリもないが、これは事実なのだよ?」

 

 

彼女たちに本を奪われたあの後、物は試しに…と公園で術を行使したところビクトリームの頭部からVの字をした光線が照射され、壁にVの字を刻みつけ、しぶしぶながらも納得したのである。

 

 

「最後まで残ればどんな願いでも叶えてくれるって話だ。たとえ負けたところで君たちには損失はあるまい?」

 

 

得意気に話すビクトリームだが、突然口を閉ざして沈黙する。

その豹変ぶりに少女たちは訝しげる。

 

 

「ふっふっふ。あたいってば最強ね♪

 こんなにも早く一人目と遭遇できるんだから♪」

 

 

身長は低く、なのはたちと同じぐらいか? 青い髪に青い服装の少女が滑り台の上で腕を組んで立っていた。ただし、その背中には人の身にはない氷でできた浮遊物が妖精の羽のように浮いていた。

 

 

「チルノちゃん、相手が何者なのか分かっていないんだよ? 慎重に動かなくちゃ…」

 

 

ビクトリームが持っている本と同じ、だが色の違う本を両手に抱えて緑髪の少女が現れた。

 

 

「問答無用 先手必勝 やっちゃうよ、大ちゃん

 

 

チルノがなのはに掌を向けると同時に呪文を唱える少女。

無数の氷の礫が掌の先に生み出され、間を置かずに放たれる。

 

 

しかし、なのはの前にビクトリームが立ちはだかり、氷の礫をその身で受け止めて防ぐ。

 

 

礫を放ったと同時に駆けていたチルノ、その手には氷でできた剣が握られていて……ビクトリーム目掛けて上段から両手持ちで斬りかかる。

 

 

力を込めた一撃を、その刃をビクトリームは片手で掴んで動きを止め…

 

 

「我が本の持ち主よ ここで反撃をしなければ友達に被害が及ぶ可能性があるぞ!?

 

 

乱入者による襲撃に我を忘れていたなのは、ビクトリームに叱咤され、慌てて呪文を唱える。

Vの字型の頭部が輝き始めた途端にチルノが剣を放して距離を取ろうとするが、それよりも速くビクトリームの呪文が発動した。

 

 

「マグルガァ!!!

 

 

Vの字の光線がチルノの体を粉砕、氷の粒子となって散る。

 

 

「え?」

 

 

ビクトリームの呪文の威力と、人ではないとはいえ、少女が命を散らしていく光景に呆然となるなのはたち。

そう思ったのも束の間、緑髪の少女の隣で氷が集まり、チルノを形成させる。

 

 

「さすがは大自然の具現した存在、直に本を狙った方がよさそうだな!?

 さあ、我が本の持ち主である高町なのはよ。もう一度呪文を唱えるのだ!! 今度こそ止めを刺すのだ!!!

 

 

ビクトリームに促されるものの、躊躇いを見せるだけで、呪文を唱える素振りは見せない。

その間にチルノは呪文を唱え、周囲を青い霧で覆わせた。

 

 

「ぬぉっ!? 妖精のクセに生意気な

 我が周囲を霧で覆って背後から襲うつもりだろうが、そうはさせん!!

 

 

胴体と頭が分離し、胴体はVの字で地上に待機し、頭部は宙でぐるぐると回転を始めた。

 

 

「このように動けば不意討ち、闇討ちなど恐るるに足らず!!

 さぁ、どこからでもかかってくるがいい!!

 我が本の持ち主よ、襲撃に備えて本を構えるのだ!!

 

 

頭上で高笑いを続けるビクトリーム。

しかし、1分を経過し、さらに5分経っても相手から攻撃してくる動きがないことに、なのはが恐る恐る声をかけてきた。

 

 

「もしかして、これって逃げられたんじゃないのかな…?」──と、

 

 

その言葉が合図になったのか周囲の霧が霧散して、視界が晴れ渡る。

襲撃者である少女二人の姿は何処にもなかった。

 

 

「ガッデ──ムっ!! 妖精のクセに私から逃げおおせるとは、生意気な!!!!

 我が本の持ち主、高町なのはよ。家に帰って今日の反省会を始めるぞ!! あと私の好物であるメロンを用意しておくのだ!!

 

 

「え? 家についてくるつもりなの?」

 

 

当然のようについてくる宣言に思わず聞き返すなのは。

 

 

「何を言うこれからあんな襲撃者たちがやって来るんだぞ? 君は私抜きで身を守る術でも持っているのかい?」

 

 

夕暮れの公園にて少女の「そんな~~~!?」という叫びが響く。

彼らの戦いはまだ始まったばかりである。

 

 

──残りの転生者たちの数、変わらず1000体。

 

  




(´・ω・)にゃもし。

コンビニに行ってみたら「金色のガッシュ!!」の復刻版があって「華麗なるビクトリーム様」が出ていたんだ。
私のツボにはまったから書いてみたよ。
でも話の舞台は「魔法少女リリカルなのは」じゃなくても、よかったかも…

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