ウルトラマンブレイブ   作:まさ(GPB)

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第2話「目覚める者」

 怪獣と戦う、一人の赤い巨人。

 僕は近くからその戦いを見ていた。

 

「シュア!」

 

 ……いや、違う。見ていたんじゃない、一緒に戦ってるんだ。

 僕とその巨人は怪獣の攻撃を躱して、光の剣で倒す。

 そして再び、目の前の場面が変わる。

 

「ブレイブ……」

 

 さっきまで一緒に戦っていたはずの巨人――ウルトラマンブレイブが僕の前に立っていた。

 

『ユウキ、これからも私と共に戦ってくれるか?』

 

 そう言ってブレイブがこちらに右手を差し出してきた。

 僕はその差し出された手を掴もうとして――――

 

 × × ×

 

「ん、んぅ……」

 

 窓から差し込む日の光で目が覚めた。

 まだ寝惚けていて、頭がぼんやりとする。

 体を起こして周りを見ると、そこは見慣れた僕の部屋だった。

 

「……夢?」

 

 さっき見た夢の内容を思い出す。

 怪獣と戦っていたウルトラマン、それはブレイブだった。

 そして昨日の事を思い出す。

 ブレイブと共にベムラーに立ち向かい、勝利したことを。

 もしかしたら、あれも夢なのではないか? そう思わせるほどリアルな夢。

 だけど、それは僕に掛けられた声によって杞憂であったんだと安心する。

 

『起きたか、ユウキ』

「ブレイブ……夢じゃなかったんだね」

『昨日の事か? それなら夢ではない』

「そっか……。うあっ!?」

 

 布団から出ようとした途端、身体に走った痛みで情けない声を上げた。

 

『ユウキ!?』

「大丈夫……ちょっと筋肉痛みたいだから……」

 

 筋肉痛。

 本当に情けないと思う……。

 確かに、運動は日頃あんまりしてないし、そこまで得意な方でもない。

 それでも、こんな筋肉痛になる程に運動不足だとは思ってもいなかった。

 

『それはそれで心配だぞ? これから戦えるのか?』

 

 ブレイブが呆れている。

 これからはちゃんとトレーニングもしないとな……。

 身体の痛みに耐えながら、僕はそう思った。

 

 

 

      *

 

 

 

「昨日、家に帰ってきてから布団に入った覚えがないんだけど? 服もいつの間にか着替えてたし……」

 

 なんとか布団を出た僕は、いつでも外に出られるよう着替えた。

 椅子に座って、机に置いてあったブレイブの結晶を手に取って質問する。

 昨日は確か、家に帰ってきて父さんと母さんが無事なのが分かって、それから……。

 

『ユウキは両親と話してる途中で眠ったぞ?』

「……あー」

 

 なるほど、きっと安心したのと疲れが一気に出てしまったんだろう。

 って事は、ここまで運んで着替えもしてくれたのか。

 心配もさせちゃっただろうし、後でお礼言わなきゃね。

 

「ブレイブともゆっくり話すつもりだったのに、ごめんね」

『何、気にする事は無い。君に無理をさせる訳にもいかないからな』

「うぅ、ありがとう」

 

 ブレイブにその気はないんだろうけど、ちょっと申し訳なく思う。

 体力付けないとね……。

 昨日の事をやってないかと思い、テレビを点ける。ちょうど取り上げているようだ。

 

『ご覧ください! 私たちの目の前で今、本物のウルトラマンと怪獣が戦っています!』

 

 女性リポーターが興奮気味に喋っている。

 当然だ。何せこの世界でウルトラマンは、実在しない架空のヒーローだったんだから。

 それが突如、現実に現れて怪獣と戦っている。ウルトラマンは実在したのだと、世界中が驚いただろう。

 って言うか、戦いに集中してたから気が付かなかったけど、カメラに撮られたりしてたんだね……。

 別のチャンネルにすると、そこでは制作会社の会見がされている。

 

『我々もこのような事態が起こって、大変驚いております。実際に現れたウルトラマンについては、現在企画中の物でもありません。我々も全く知らない……本物の、未知のウルトラマンです』

 

 そうだろう。これで知ってて製作してるのがブレイブなら驚きだ。

 何だかこの状況、劇場版ガイアみたいだ。……いや、あれは少し違うか。

 そんな事を考えていると、ブレイブが質問してきた。

 

『そう言えば、君は昨日“知っている”と言ったな。あれはどういう意味だ? この世界の人々は私達を知っている様だが……』

 

 それは僕とブレイブがベムラーの熱線を防いだ時に言った事だ。

 あの時は戦うのが優先だったし、あの後も話せてなかったね。

 

「あぁ、その辺りの説明しないとね」

 

 そして僕はブレイブに、この世界でウルトラマンがどういった存在なのかを説明した。

 今から五十年前、特撮テレビドラマとして始まったウルトラマン。それから様々なウルトラマンが活躍している。

 最後に放送されたのは、メビウスだ。暫くは長期の休止状態だったが、さっきの会見でも言ってた通り、現在は新作の製作中だとか。

 

『なるほど。つまり、ここで私達ウルトラマンは創作とされているのか』

「そう、だから僕も、一応戦い方を知ってたって訳なんだ」

 

 ブレイブによると、それらの話は恐らく実話であると言う。

 作品の中の出来事は、光の国でも語られている話で聞いたことがあるらしい。流石に、それ以外の世界の話は分からないみたいだけど。

 

『しかしメビウスか……。アイツは地球を任されていたが、しっかり戦えたのだろうか……』

 

 ブレイブはどこか懐かしむ様に言う。

 

「ブレイブ、メビウスを知ってるの?」

『当然だ。私は光の国から来たと言ったはずだぞ? それに、アイツとは宇宙警備隊の同期だ』

「そうなの!?」

 

 これには驚いた。

 光の国から来たっていうのは聞いてたけど、まさか、あのメビウスと同期なんて……。

 そしてブレイブは、この世界に来た原因を話す。

 

『私はメビウスとは別の任務に就いていたのだが、その任務の途中に強大な闇のエネルギーを感じて、この次元の宇宙までそれを追って来た』

「強大な闇?」

『ああ。私はその元凶と戦ったが力及ばず、完全に倒すことが出来なかった……。だが、私は最後の力でソイツを封印したんだ。かなり昔の話だがな』

 

 この姿になって地球に落ちてきたのは、僕が拾う少し前の事らしい。

 ブレイブの力でも完全に倒すことが出来ない相手。それを封印して力を使い果たしたから、ブレイブは今この結晶になってしまったんだ……。

 だが、とブレイブは続ける。

 

『そのおかげ、と言えば少しおかしいが、こうしてユウキと出会う事が出来た』

 

 そんなことを言うブレイブが何だかおかしくて、僕はちょっと意地悪をしてしまう。

 

「でもブレイブが寝てる間に、メビウスはウルトラ兄弟の仲間入りしちゃったよ?」

『何、それは本当か!?』

「本当だよ。メビウスは地球で、エンペラ星人を倒してね」

『あのエンペラ星人を……!』

 

 最初は驚いてたブレイブだけど火が点いたのか、私も頑張らなければな、とか言っている。

 同期なのもあってか、メビウスに対して少しライバル意識もあるらしい。ここで更に追い打ち。

 

「そう言えば、メビウスってパワーアップしたら、名前にブレイブって付くんだよねぇ……」

『なっ!?』

「ナイトブレスとメビウスブレスを一つにして誕生したメビウスブレイブ、仲間の想いを力に変えたバーニングブレイブ、そして不死鳥の勇者フェニックスブレイブ」

『ユウキ……!』

 

 ブレイブの反応が面白いけど、いい加減にしないと怒りそうだ。

 

「ふふ、ごめんごめん。つい意地悪しちゃった」

『全く……流石に私も怒るぞ?』

「ブレイブも、メビウスに追いつけるように頑張らないとね」

『……そうだな。だが今は、この地球を守る。君と共にな』

「うん、僕も頑張るよ」

 

 再びブレイブと共に決意した僕は、気になっていたことをブレイブに聞いた。

 

「ねぇブレイブ、ゲルゼの正体って何者だと思う?」

 

 そう、ゲルゼについてだ。

 

『残念ながら、今のところ奴の正体はまだ分からない』

「ブレイブでも分からないんだね……」

『だが、奴が連れてきた怪獣にヒントがある』

「怪獣に……?」

 

 ゲルゼが連れてきたのは宇宙怪獣ベムラー。

 

「普通のベムラーと変わらないと思うけど……」

『確かに変わらない。だが、あのベムラーが出現した時と、回収された時の事を思い出してみろ』

 

 言われて、あの時のベムラーが、初めは光になってあの宇宙船から出てきて、回収される時も光になっていたのを思い出す。

 

『あの現象に心当たりがあるとすれば……レイオニクスだな』

「レイオニクス?」

『ああ。分かりやすく言えば、怪獣使いだな。私は実際に見た事は無いが、話には聞いた事がある』

 

 怪獣使い……確か、今製作してる新作がちょうどそんな設定だったかな? 

 僕はPCを起動して、検索する。

 ――結果は当たりだった。

 

「これかな? レイオニクス……バトルナイザーと言うアイテムを使って怪獣を操る」

『それだな。実際に奴がレイオニクスとは限らないが、もしそうなら、どれだけの怪獣を従えているか分からない』

「バトルナイザーを見る限りだと三体までみたいだけど?」

 

 僕は楽観的に捉えていた。バトルナイザーのストックは三体、それを倒せば終わると。

 しかしそんな考えは、ブレイブの一言で崩れ去った。

 

『……いや、ギガバトルナイザーと言うのがある。仮にだが、それを持っているとすれば、百体まで可能だ』

「百体だって……!?」

 

 ブレイブは仮定の話だ、と続ける。

 

『ギガバトルナイザーは炎の谷と言う場所に封印されている。あそこから持ち出すのは不可能なはずだ』

「封印されてるとは言っても、そんな物もあるんだね……」

 

 怪獣を操ることが出来ると言うだけでも十分脅威なのに、それが百体。封印されるのも頷ける。

 

『私の考え過ぎだとは思うが、警戒するに越した事は無い』

「確かにそうだね」

 

 そう話していると、部屋の扉がノックされた。

 

「ユウキ君、起きてる?」

 

 どうやら僕にお客らしい。

 扉を開けると、そこには黒髪を左右二つに纏めた、やや小柄な少女がいた。

 

「スズ、おはよう」

「おはよー。って、もうすぐお昼だよ? お休みだからって、寝過ぎるのはダメだからね?」

「分かってるよ」

 

 彼女はイヌガミ・スズカ。

 僕とは幼馴染で、家によく遊びに来る。

 今日は何の用だろうか。

 

「それよりも……昨日のあれ見た!? 本物のウルトラマン!!」

「あ、あぁ……見たけど」

 

 いや、うん、見たって言うか、僕がそうなんだけどね……。

 ブレイブには昨日のうちに、僕がブレイブに変身した事は言わないようお願いしている。

 もし誰かに知られると我夢みたいに追われかねない。そんな事態にはならないと思うけど、念のためだ。

 当然、父さんや母さん、スズにも話さない。心配をかけたくないし。

 ……まぁ信じないだろうけど。

 

「やっぱり! ユウキ君、昨日あそこに行くって言ってたもんね! 本物はどうだったの? カッコ良かった!?」

「ちょ、スズ、落ち着いて」

 

 スズは目を輝かせながら詰め寄ってくる。

 昔からスズと僕はよく一緒にいた。ウルトラマンを一緒に見る事も多かったから、彼女もウルトラマンが好きなのだ。

 

「やっぱり光の国から来たのかな!? 身体の色に赤が多かったからレッド族だよね? あ、でもガイアみたいに地球のウルトラマンなのかな!?」

「いや、レオ兄弟とかジョーニアスみたいに、赤と銀のウルトラマンでも光の国以外から来たのもいるんだから――」

「あ、そうだったね! じゃあ他の星から来たのかな? 会ってお話してみたいなぁ」

「簡単には会えないと思うけど……」

 

 僕の事は気にせずに喋るスズ。

 彼女はウルトラマンの事になると、暴走する時がある。今みたいに。

 僕も熱が入って語る事はあるが、ここで下手に何か言うとボロが出そうだ……。

 スズが光の国から来たのを当てたから、咄嗟に他の星のウルトラマンを言ったけど、ちょっと危ないかも。

 とにかく、今はスズの暴走を止めないと。

 

「そ、そうだスズ! 昨日買ったのってヒカリサーガのDVDなんだけど、一緒に見ないかな?」

「え? 今から?」

「う、うん」

 

 これで釣れなければ、もう逃げられない。

 

「……見る!」

 

 良かった、どうやら興味がヒカリに向いたみたいだ。

 スズはパソコンを持っていない。父親の物はあるが、それは仕事用だから触らせてくれないのだと言う。

 なのでネット配信のヒカリサーガは、僕の家でしか見れなかった。DVDを買いに行ってた事で僕は今助かった訳だ。

 こうして僕はスズによる質問攻めを躱して、大人しくさせることに成功した。

 ……一時的ではあるだろうけど。

 

 

 

      *

 

 

 

 ヒカリサーガ視聴後

 

「いやぁー、やっぱりヒカリはカッコいいなぁー……」

 

 スズが感慨深そうに呟く。

 彼女はウルトラマンの中でも、アグルやヒカリといった青いウルトラマンが特に好きなのだとか。

 クールでカッコいいよね! と、前にスズが語った時も暴走してたな……。

 そんなことを思い出しながら、次はメビウスを見ようかと考えていると――――

 

「あれ?」

「ん? 地震?」

 

 ガタガタという音と共に、部屋が揺れ始める。

 初めは弱い揺れだったけど、だんだん強くなってきた。

 

「ユ、ユウキ君!」

「こっちに!」

 

 ブレイブを上着のポケットへ入れ、スズと外に出ようとしたその時。

 外から轟音がして、続いて土煙が空へと舞い上がったのが窓から見えた。

 その場所は家から距離がある。揺れが収まっているのを確認して、僕はスズの手を取る。

 

「スズ、行くよ!」

「う、うん!」

 

 急いで一階へ降りる。

 

「ユウキ! スズカちゃん! 大丈夫か!」

「こっちよ! 早く!」

 

 そこでは父さんと母さんが僕達を呼んでいた。

 全員で家から飛び出ると、外は逃げる人達で混乱が起こっている。

 人々が逃げてくる方向の先には、さっき部屋から見えた場所がある。

 暫くそこを見ていると、再び轟音と土煙を巻き起こしながら黒い巨体が姿を現した。

 

「あの怪獣は……!」

「あれはゴメスだ……だが、何だあの大きさは……」

 

 父さんがゴメスについて説明する。

 それによると、ウルトラQに登場するゴメスの体長は10m程度。しかし、今現れたゴメスはそれ以上に大きい。

 恐らく40m程はあるだろう。他のウルトラ怪獣にも引けを取らない、圧倒的な迫力も見られる。

 

「とにかく、今は逃げるぞ!」

 

 そう言って、父さんは母さんの手を取って逃げようとするが、僕は二人を止める。

 

「待って! 父さん、母さん、スズをお願い。僕は他の人が避難するのを手伝ってから、後で行くよ」

「ユウキ君、何言ってるの!? 一緒に逃げないと!」

「スズちゃんの言う通りよ! ユウキ、急いで!」

 

 一人ゴメスの方を見詰めている僕を、スズと母さんが引き留める。

 だけど父さんは僕をじっと見ると、気を付けろよ、とだけ言い二人を強引に引っ張って行った。

 

「母さん、スズ、ごめんね」

 

 そう呟きながら皆を見送っていた僕に、ブレイブが声をかける。

 

『良かったのか?』

「うん。今アイツと戦えるのは、僕だけだからね」

『……すまない』

「ブレイブ、昨日言ったよね? 一緒に戦えて嬉しいって。だから、一緒に戦おう!」

『そうだったな……よし!』

 

 ブレイブの言葉に頷いて、僕は駆ける。

 逃げてくる人波をかき分けて走り、誰にも見られないよう物陰へと入る。

 

「ブレイブ、変身だ!」

『ああ!』

 

 僕の両腕にブレイブブレスが出現した。

 やり方を聞かなくても、どうすればいいか分かる。

 右腕を前に突き出すと、光のエネルギーがブレスに集まる。

 エネルギーが溜まったブレスに左手をかざして、光を身体に纏わせるよう横に払うと、僕の周りを光が舞った。

 そして、メビウスとは逆に右腕を空へ突き上げるようにして、その名を叫ぶ。

 

「ブレイブーーーーッ!」

 

 一際強い光でブレイブブレスが輝く。

 

「シュアッ!」

 

 ブレイブと一つになり、ゴメスの前に降り立って構える。

 ゴメスは威嚇の咆哮を上げながら、こちらに向かってゆっくりと進む。

 まだ距離があったため、僕達は暫くどう動くのか様子を窺っていると、ゴメスが咆えて突進してきた。

 

『来るぞ!』

「こっちも行くよ! ブレイブ!」

 

 ブレイブに応え、こちらも走り出す。

 僕がブレイブと一緒に、皆をゲルゼの脅威から守ってみせる、その想いを胸に。

 

「タアァッ!」

 

 × × ×

 

 少し離れたビルから、ブレイブとゴメスの戦いを見ている女性がいた。

 その女性は、左胸と背中にGDと書かれた白と蒼の服を纏い、手には記録用デバイスを持っている。

 戦いを記録をしながら、通信用デバイスを取り出し、起動させる。

 

「こちらミズキ。隊長、ウルトラマンが現れました」

『よし。予定通り、そのまま戦闘を記録し続けろ』

「了解」

 

 隊長と呼ばれた男性の声に、ミズキと名乗った女性はそう報告して、通信を切ってから命令通りブレイブとゴメスの戦いの記録を再開する。

 ただ、彼女のブレイブに向けられたその目には、他の者とは違う想いが込められているようだった。

 

「ウルトラマン……別の宇宙から来た、光の戦士……」

 

 そう呟いた後、彼女の瞳はブレイブから空へと向けられる。まるで、遥か遠くにある星を見ているかのように。

 

 

 

      *

 

 

 

 ゴメスは僕の想像以上のパワーを持っていた。

 いや、あの体格だ。他の怪獣より――比較するのは難しいが、少なくともベムラー以上(当然ではあるけど)に――力があっても不思議はない。

 それに加えて、体表の鱗や胸、腹部の皮膚も強靭で非常に堅く、通常のパンチやキックと言った攻撃では有効なダメージにはなっていない。

 逆にゴメスの攻撃は、その鋭い爪と太い尻尾によって、ブレイブへダメージを与えてくる。

 端的に言えば、ピンチを迎えていた。

 

『ユウキ、こいつに単純なパワーでは勝てないぞ……!』

「なら、ブレードだ!」

 

 そう言って、ベムラーを倒した光の剣、ブレイブブレードを右腕のブレスに発現させた。

 そして、そのままゴメスを斬る。

 

「セアッ!」

 

 しかし、浅かった。

 胸に少し傷をつけただけで、決定的なダメージにはならなかった。

 諦めずにブレードで二度、三度と斬る。だがそれは、ゴメスを怒らせるだけでしかない。

 体当たりを受け、僕達が後ろへとよろめいた隙を、鋭い爪の一撃が襲い掛かる。

 

「くっ……!」

『どうにか、奴にダメージを与えないとまずいぞ……ユウキ、どうする!?』

 

 もうカラータイマーも鳴り始めていた。

 

(今のパワーでは勝てない相手にどうすれば……)

 

 何かいい方法はないか、僕は考える。

 だがその間にも、ゴメスは攻撃の手を緩めない。

 爪や尻尾の攻撃に加え、今度は口から炎を放ってきた。

 炎を側転で回避し、反撃に左腕のブレスのエネルギーを刃状の光弾に変えて右手で撃つ。

 光弾が当たったゴメスは怯んだが、当然これだけで倒せるはずもない。

 だがここで、僕はある事を思い出す。パワーと防御において優れた怪獣を倒した、あるウルトラマンの戦法を。

 

「ブレイブ、エネルギーを身体に溜めて、それを拳や足に乗せて攻撃する事って出来る?」

『ああ、問題ない』

 

 両腕を横に広げ、それを胸の前でクロスさせるように組んで、全身にエネルギーを溜める。

 

「よし……これならどうだ!」

 

 エネルギーを右手に集中させたストレートパンチを、ゴメスへと繰り出す。

 ゴメスの胸へ拳が命中した瞬間、そこに電撃が弾けて爆発を起こした。

 その衝撃でゴメスが吹き飛ぶ。

 

『良いぞ!』

 

 それは嘗てティガが、強化されたゴルザやガタノゾーアに対して使った技、ティガ電撃パンチのブレイブ版。

 オリジナルの技名に則って名付けるなら、ブレイブ電撃パンチだね。

 思った通りゴメスに対しても効果的なようで、かなりのダメージを与えられた。

 しかし、まだ起き上がってくる。

 

『ユウキ、ここで倒すぞ!』

「そうだね、一気に攻めるよ!」

 

 ゴメスの懐に入り、電撃パンチを胸に連続で打ち込んでいく。

 数発命中させた後、ゴメスの顎にアッパーカットを食らわせる。

 ゴメスは反撃に爪で引っ掻こうとするが、それを屈んで躱し、腹にも強烈な一撃を叩き込む。

 距離が空くと今度は炎を放つが、僕達はこれを難なくバリアで防ぐ。

 

「今度はこっちの番だ!」

 

 大地を強く蹴って空中へ飛び、今度はゴメスの頭を、これもエネルギーが乗った右脚で蹴る。

 ゴメスは勢いよく吹き飛んで倒れた。

 決めるなら今しかないと直感する。

 

「ブレイブシュートで倒すよ」

『よし、やり方は分かるな?』

「大丈夫、任せて」

 

 左腕と右腕を重ねるように前に伸ばして、両方のブレイブブレスへ光を集める。

 光がブレスへ集まった。両腕を左右に大きく広げると、ブレスに溜められた光が尾を引く。

 そこから腕を十字に組んで、ブレスに溜まったエネルギーを一気に開放し、ブレイブシュートを放つ。

 

「ハァッ!」

 

 丁度立ち上がったゴメスの胸に直撃、爆発して火花が弾ける。

 小さく力ない鳴き声を上げながら、ゴメスはゆっくりと倒れ、爆散する。

 

『やったな』

「うん」

 

 そう交わして、ゴメスが倒れた場所を見て僅かに頷き、僕達は夕焼けの空へと飛び立った。

 

「シュワ!」

 

 × × ×

 

 変身を解除した僕は、家へ向かって誰もいない道を歩いている。

 さっき父さんに携帯で連絡を取ると、皆も無事で、今は家へ戻っているそうだ。

 帰ったら、母さんとスズになんて言われるかな……そんな事を考えていると、ブレイブが声を掛けてきた。

 

『ユウキ、少しいいか?』

「うん。どうしたの?」

 

 周りに人がいないのを確認して、立ち止まり詳しく聞く。

 

『さっき倒した怪獣の事で、気になる所があってな』

「ゴメスの?」

『そのゴメスだが、ゲルゼが連れてきた怪獣ではない、と私は思っている』

「ゲルゼの怪獣じゃない……?」

『そうだ』

 

 ブレイブが肯定する。

 そして、ブレイブは自分の考えを話し始めた。

 

『ゴメスは……恐らく、この地球の怪獣なのではないかと考えている』

「地球の怪獣!?」

『ああ。ゲルゼがレイオニクスかも知れないという話をしたのは覚えているな?』

 

 今日の事だから当然覚えている。

 

「うん、覚えてるよ」

『レイオニクスが使役する怪獣は、出現する時も回収される時も、基本的には光となる。だが、あのゴメスが出現したのは地中から、倒されても光になって消える事は無かった』

 

 それは昨日のベムラーで見ている。

 確かにブレイブの言うように、ゴメスが光になって消えなかった。

 でもそれなら、何故今になって突然、ゴメスが地上に出てきたのかが分からない。

 恐竜の化石はたくさん見つかっている。

 だが、怪獣が存在する、もしくは存在していた痕跡は発見されていないはずだ。

 確かに、自分たちが住んでいる地球の事を全て知っている訳じゃないけど……。

 

「だけど、それなら何で、突然出てきたの?」

『まだ推測でしかないが……ゲルゼが原因だろう』

「ゲルゼが?」

『もっと正確に言えば、奴が連れてきた怪獣が、だな』

 

 ブレイブのその言葉に、僕は思い当たる例を思い出した。

 

「コッヴが現れた後、その地下からギールが目覚めた……」

『ユウキ?』

「この状況に似ているのがあるんだ。ガイアって言うウルトラマンが守った地球では、破滅招来体が襲ってくると、そこに地球の怪獣も現れてる。ブレイブが言う通り、ゴメスが地球の怪獣だって可能性はある訳だね」

 

 現状あのゴメスは、ゲルゼが連れてきた怪獣である可能性は捨てきれないけど、それと同時に、地球の怪獣かも知れないと考えておくのが良いみたいだ。

 今度ゲルゼが現れた時に、直接問いただしてみるのもいいかもね。

 

『そう言う事だな……ん?』

「ブレイブ?」

『いや、気のせいか……誰かに見られているように感じたのだが……』

 

 誰かに見られてる? 

 僕は気になって辺りを見渡すが、人影はどこにもない。

 

「んー、誰もいないみたいだけど、流石に行こうか。そろそろ避難した人達も戻ってくるだろうしね」

『……そうだな』

 

 こうして、僕は再び歩き出す。

 もう日は沈み、空は暗くなっていた。

 

『そう言えば、筋肉痛はもう平気なのか?』

「うっ、言わないでよ……忘れてたんだから……」

『明日からトレーニングだな』

「が、頑張るよ……」

 

 

 

      *

 

 

 

「彼が……」

 

 陰からユウキを見詰める一人の女性の姿があった。

 それは先程、ブレイブとゴメスの戦いを記録していたミズキだ。

 彼女はユウキの姿が見えなくなると、彼の後を追う事はなく、腰に下げていた通信用デバイスを取り出す。

 

「隊長、ウルトラマンに変身した青年を発見しました」

『やはりいたか! 顔が分かるように撮影はしたな?』

「問題ありません」

『上出来だ!』

 

 隊長の声が少し弾んでいた。

 その声に僅かな笑みをこぼすが、彼女は今から帰投します、とだけ返して通信を終える。

 きっとあの人――隊長は今頃、テンションが上がっているのだろうと思いながら、近くに停めてあった車へと乗り込む。

 

「あとは、この子が協力してくれると良いのだけれど、ね」

 

 彼女はそう言って、助手席にブレイブが戦っていた時に使った記録用デバイスを置く。

 そこにはユウキが写っており、彼女はそれをじっと見ていたが、暫くしてエンジンを掛け車を走らせた。

 まだ出来たばかりである、彼女が所属する組織の拠点へ向けて。

 

「今度こそ、私は逃げない。あの星の二の舞になんか、絶対させない」

 

 一人呟く。

 

「必ず守ってみせる……」

 

 彼女のその表情と声には、哀しみと怒りが入り混じっていた。

 




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