ウルトラマンブレイブ   作:まさ(GPB)

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サブタイトルは守護者だけだと物足りないのでネクサス風にしましたが、ネクサスは出てきません。


第3話「守護者 -Guardian-」

 ゴメスを倒して三日が経った。

 あれからゲルゼが怪獣を送ってくる事も、またブレイブが言ったような地球怪獣が現れる事も無く、ここ数日は平和な日々が続いていた。

 その間にも復興作業が行われ、怪獣が破壊した街は少しずつだけど修復されていく。

 しかし、またいつ怪獣が現れるか分からない。僕はSNSなどで怪獣が出ていないか、また関係がありそうな事が起きていないかを中心に調べている。

 

『今日も静かだな』

「平和が一番。だけど、油断できないよ?」

『そうだな……ゲルゼが何か企んでいる可能性もある』

「うん、いつでも行けるようにしとかないとね」

 

 こういう時に静かだと逆に不安に感じてしまう。嵐の前の静けさ、と言ったところだろうか。

 だからこそ情報収集は念入りにやっている。

 ……一人だと限界があるのを実感してるけど。

 

「未だに収穫は無し、か……」

『流石に異変と言っても、簡単には見つからないな』

「まぁ原因というか弊害というか……ともかく理由はあるからね」

『理由?』

 

 それはこの世界特有の理由と言える。

 

「元々この世界でのウルトラマンは創作。それは何度も聞いたよね?」

『ああ。だが、それとどう関係が…………なるほど、そういう事か』

「気付いたみたいだね」

『私達ウルトラマン同様、また怪獣達も元は創作の存在。いざ手掛かりを探そうとしても、それが本物の怪獣の事か分からなくなる』

 

 そう。

 元より異変の兆候は発見しにくい。

 それに加え、特にネットでは面白がって嘘なんかを書いたりする人が少なからずいる。

 例え何かを発見したとしても、それが怪獣のものである確信を僕は持てなかった。さらに言えば、その兆候が仮に本物でもその場所まで簡単に行くことは出来ない。

 自力で行ける距離ならまだいいけど、それがブレイブの力を借りなければ行けない場所となれば話は違う。他の人に見られるわけにはいかないからだ。

 

「まぁ一人だと限界があるって言うのは最初から分かってたし、そもそも何も起きてない可能性もあるからね」

『超常現象だとか未確認生物を追っているだとか書いていた所はどうなんだ?』

「あー、あそこも最近はブレイブの戦いとかがメインみたいだよ。向こうも探してるみたいだけど、簡単には見つからないってさ」

 

 ブレイブが言っているのは昨日見つけたサイトの事だ。

 サイト自体はゲルゼがゲームを始める前からあったみたいだけど、特に話題になるような事は無かった。それがゲルゼの襲来とブレイブの登場で、少しずつ注目を集め始めるようになったらしい。

 運営の人が元からウルトラマンが好きだからなのか、サイトで他のウルトラマンを例にブレイブを研究している。まだ「彼はどこから来たのか?」とかブレイブブレスを見て「メビウスやヒカリとの関係は?」とかだけど。

 

『やはり今は怪獣が出現してからでなければ動けない、か』

「そうなると、やっぱり頼れそうなのは“Guardian”(ガーディアン)かな……」

 

 Guardian。簡単に言えば、ウルトラシリーズにお馴染みの防衛チームだ。

 最近……と言うか、ゲルゼが襲来した夜に結成されたらしい。五年前は何もなかったのに異様なまでに準備が良い様な気がする。

 結成されてからニュースになり、ネットでも色々と言われているようだった。

 

 [名前wwwガーディアンwww]

 [自衛隊と何が違うん? ]

 [ウルトラマンがいるんだから必要なくね? ]

 [つか出動する機会あんのかこいつら(笑)]

 [そもそも今の兵器で怪獣を倒せる気がしないんだよなぁ]

 

 とまぁ、主にはこんな感じの事を色々と書かれていた。

 ブレイブもこれを見たら怒ってたよ。『僅かでも自分達で地球を守ろうという気はないのか!』ってね。

 

『しかしGuardianから情報が出る訳じゃないだろう。どうするんだ?』

「入隊しようかと思ったんだけど……」

 

 ここに入隊した方が色々良いと思っている。だけど、そもそもそんな簡単に入れるのだろうか? とか、どうやったら連絡取れるのか分からないと言うのがある。

 と言う訳で、しばらくは怪獣が出現してから動くのが良いかもしれないという結論に至った。

 

「ブレイブは僕がGuardianに入るって言ったら反対する?」

『ユウキが無茶をしないならば賛成だ』

「……てっきり反対されると思ってたよ」

『どうせ反対しても聞かないだろう?』

 

 うっ……。

 

『だから、せめて無茶をするような事はしないと、そう約束してくれ』

「ブレイブ……。うん、分かった」

 

 ブレイブの心配する気持ちが伝わってくる。

 現実はテレビの中とは違う。例えウルトラマンが実在しても、危険を冒して怪我をしたり、命を落とすことだってあるかもしれない。

 ウルトラマンに変身していない僕はただの人間だ。体を鍛えたとしても、その事実は変わらない。

 だからブレイブが言う事はよく分かる。

 ……少し真っ直ぐすぎるけど。

 

「おーいユウキー、もうすぐ昼飯出来るから手伝ってくれー!」

 

 一階から父さんが僕を呼ぶ。

 気が付けばもう12時を回っていた。

 

「はーい! じゃあ行こっか」

『ああ』

 

 父さんに返事をして、僕はペンダントにしたブレイブの結晶を首に下げて部屋を出る。

 拾ってから今まではそのまま持っていたけど、これからはこうして身に着ける事にした。

 一見、冷たそうな印象を受けるほど綺麗な蒼い結晶なのに、こうやって一緒にいると胸に光の暖かさが伝わってきて、よりブレイブを強く感じる。

 

「ユウキ、ちょうど出来たからテーブルに持って行ってくれる?」

「これだね」

 

 キッチンに立つ母さんから料理を受け取って、既に食器が並べられたテーブルの真ん中に置く。

 そこへ父さんが三人分のご飯を持ってきた……んだけど、何故か一つだけ大盛りだった。

 

「ありがとう父さん……って、一つだけ多くない?」

「これはユウキの分だ」

「え、なんで!?」

「ここ最近、特にあのウルトラマンが現れた次の日は凄く疲れてたみたいだからな。ちゃんと食わないと、いざと言う時に力が出ないぞ?」

 

 父さんはそんな事をさも当然であるかのように、さらりと口にした。

 あれ、これってもしかして……? 

 

「ユウキ? どうした?」

「へっ!? あ、いや、なんでもないよ!?」

 

 僕は慌てて何もないように装う。

 だけど今の誤魔化し方は、拙かったのではないだろうか……。

 いや、確かにゴメスが現れたあの時の僕の行動で、もしかしたら父さんが気付いた可能性もある。勘が鋭い所もあるからね。

 しかも何より、この世界ではウルトラマンは創作であり、父さんもウルトラマンが好きでよく観ている。僕がウルトラマンを好きになったのもその影響だ。つまりヒントどころか、答えを見せているようなものだと言える。

 

「あらユウキ、食べないの?」

 

 そんな事を考えていると、いつの間にか席に着いていた母さんから声を掛けられた。

 

「う、ううん! 頂きます!」

「ふふ、それじゃあ私達も頂きましょうか」

「そうだな。頂きます」

 

 しかし僕はこれ幸いにと、食事を始める。母さんと父さんも言葉を交わして、箸を取った。

 

『やれやれ……』

 

 と、ブレイブが小さくそう呟いたのは、僕にだけ聞こえた。

 

 × × ×

 

 昼食後、僕はしばらく一階のリビングでテレビを見ていた。

 ワイドショーでは、怪獣災害に対する募金だとか保険の話をしている。怪獣災害募金はガイアでもしていたね。あっちのは民間だけど。

 その後、ここしばらくはお馴染みとなったブレイブやゲルゼの話、そしてGuardianの話になった。

 ふと時計を見ると、いつの間にか二時を過ぎていたらしい。

 そんな事を思っていると家のインターホンが鳴った。母さんと父さんには僕が出ると伝えて、玄関へ向かう。

 

「はい、どちら様ですか?」

 

 そう言ってドアを開けると、まず綺麗な女性の黒い長髪と瞳に僕は心を奪われた。

 そして次に、彼女が着ている白と蒼の服が目に入る。胸の所にGDと描かれたそれは、Guardianの隊員に支給される制服だった。

 どうしてここにGuardianの隊員が……? 

 

「カガヤ・ユウキ君ね」

 

 彼女の声で我に返る。

 

「は、はい、そうですけど……」

「私はGuardian副隊長のミズキ・スバルです。今日は貴方に用があって、こちらに伺いました」

「僕に……?」

「はい」

 

 ミズキ・スバルと名乗った彼女は僕を真っ直ぐ見詰めてくる。

 Guardianの副隊長を務める人が僕に用とは一体何だろう? 

 そう考えていると、ミズキさんの後ろからもう一人、やや大柄な男性が現れた。この人もGuardianの制服を身に纏っている。

 

「申し訳ない、少し連絡をしていて遅くなった」

「貴方は確か……」

「Guardian隊長を任されているシミズ・タカシだ。突然ですまないが、ユウキ君に話がある」

「……分かりました、どうぞ」

 

 まさかGuardianの隊長までも来るとは思わず少し呆けてしまったが、すぐに気を取り直して、二人を招き入れる。

 

「ユウキ、お客様なの……!?」

 

 家に入ると、母さんは客が来たのに気が付いたようだ。しかし僕の後ろにいるGuardianの二人を見て驚いている。

 僕もさっきまであんな感じだったんだろうなぁ……。テレビでしか見た事がない人が目の前にいるのだから当然なんだろうけど。

 って、それを言ったら僕はウルトラマンなんだけどね。

 

「母さん、どうかしたのか……って」

「突然失礼します。私はGuardian隊長のシミズ・タカシ、こちらは副隊長のミズキ・スバルです。本日はカガヤさんの息子さんにお話があって、こちらに参りました」

 

 父さんも同じように驚いてる。

 シミズさんの挨拶の後、ミズキさんがお辞儀をした。

 それに父さんと母さんが応じる。

 

「……どうも、父のマモルです」

「は、母のキョウコです……。あの、ユウキにお話と言うのは?」

「はい」

 

 シミズさんが僕の方を向く。

 

「ユウキ君、三日前に怪獣……ゴメスが現れた日の事を覚えているかな?」

「……はい、近くでしたから」

「実はその現場にミズキ君がいてね。報告によるとあの時、君が人々が避難する方向とは逆に走っていくのを見かけたそうだ」

「っ……!」

 

 見られていた……。どこまで? まさか、ブレイブに変身するところも……? 

 僕の中に焦りと不安が渦巻く。だけどその時。

 ――心配しなくても大丈夫です。

 ブレイブの正体がバレたのでないかと考えていると、不意にそんな声が頭の中に響いたような気がした。

 そんな僕に構わず、シミズさんは話を続ける。

 

「そこで君は、避難誘導を手伝っていたと聞いている」

 

 さらに予想すらしていなかったこの一言に、僕は言葉が出ない。

 確かに僕はあの時、避難を手伝ってから行くと皆に伝えた。しかし何故Guardianの二人が知っているんだろうか? いやそれどころか、していないはずの手伝いをした事になっている……? 

 それにさっき聞こえた声……大丈夫って言うのはこの事? 

 ダメだ、突然の事で疑問が多過ぎる。

 

「……確かに僕は手伝いをすると言って残りました」

「うむ。そこで私達は君をGuardianに迎え入れたいと、そう思っている」

「え……!?」

 

 僕をGuardianに迎え入れたい。

 シミズさんの申し出は、僕にとって願ってもない事だった。だけど……。

 

「少し、シミズさん達と話をしてもいいですか?」

 

 本当ならすぐに返事をしたいけど、まずは色んな事を聞きたい。

 何をどこまで知っているのか、どうして僕なのか……。もしかして、僕がウルトラマンである事も知っているのか。

 

「そうだな、君には知る権利がある」

「それじゃあ僕の部屋へ。ミズキさんも」

 

 僕は二人を部屋へと案内する。

 ……父さんと母さんは蚊帳の外になっちゃったけど、あとでどう説明しよう……。

 

 

      *

 

 

「ここです、どうぞ」

 

 二人を部屋へと招き入れ、押入れから机を出して対面で座る。

 

「歓迎するぞ。なんならアンヌ隊員も呼んだらどうだい?」

「隊長、ふざけないで下さい」

「すまん……」

 

 突然メトロン星人のセリフをシミズさんが言って、すぐにミズキさんに怒られた。その二人のやり取りに思わず吹き出してしまう。

 今ので少し緊張が解れたかも。

 

「えっと、それで話なんですけど……」

「そうだったな。何を聞きたい?」

「三日前の事です」

「ふむ……」

 

 シミズさんは考えるように腕を組む。

 

「隠さずに言った方が良いな。ユウキ君、私達……いや、私とミズキは君がウルトラマンであるというのは知っている」

 

 僕を真っ直ぐ見ながらそう告げるシミズさん。

 ――やっぱり知ってたんだ。さっきの勧誘である程度そんな気はしていたから、そこまで動揺する事はない。

 でも“私とミズキは”って言う事は、他の隊員は知らないのか? 

 

「それはゴメスと戦っている時に知ったんですか?」

「詳細は現場にいたミズキに話してもらおう」

「分かりました」

 

 ミズキさんは持っていたタブレット端末を操作し僕に見せる。そこにはブレイブとゴメスが戦っている動画と、そのあと僕がブレイブと話していた時の画像が写っていた。

 戦ってる最中は仕方ないけど、ブレイブと話してる所なんて、いつの間に撮られてたんだろう……? 

 

「三日前、私は任務で調査に出ていました。内容はウルトラマンの能力を確認する事、そして誰が変身しているのかを探る事です」

「それがGuardianにとっての初任務だ」

「貴方がゲルゼの怪獣と戦った現場へ向かい、何か手掛かりを探している途中、あの怪獣(ゴメス)が現れました」

 

 なるほど、だから戦ってる所が近くで撮れてたのか。

 因みに後から聞いた話では、三日前に任務が達成出来なかった場合、ブレイブが現れるまで調査を続ける予定だったそうだ。

 いつ怪獣が現れるか分からないし、ミズキさんは運が良かったのかも……。

 

「第一目標、能力の確認は達成。そして第二目標の誰が変身しているかについても、無事に見つける事が出来ました」

「……なぜ僕だって分かったんですか?」

「このデバイスには、光エネルギーを観測する機能を搭載してあります。貴方が変身を解除したあと、そのエネルギーを追って見つけました」

 

 シリーズでも度々、変身を解除する瞬間が見られる。

 ウルトラマンでは、空に飛んだウルトラマンから撃ち出されたエネルギーがハヤタ隊員になった。(戻ったと言った方が正しいだろうか)

 他にも地上で立ったまま解除したりするけど、ダイナではそれを追跡されてアスカがダイナであると知られてしまった。どうやら僕もそれをやられたらしい。空に飛んだんだけどね。

 だけど僕には、他に気になった事がある。それはシミズさんが僕は避難誘導を手伝っていたと言った事だ。

 

「何故シミズさんは、僕が避難誘導を手伝うと言ったのを知っていたんですか?」

「ん? あぁ、それはな……勘だ」

 

 ……え? 

 今この人、勘って言った? 

 

「……ごめんなさい、こういう人なの」

 

 僕が呆気にとられていると、ミズキさんが呆れたようにそう言った。

 すると、シミズさんは咳払いをして続ける。

 

「一応、理由はある」

「理由ですか?」

「簡単だ。君がウルトラマンであると両親に話していなければ、大方そう言わなければ一人になる事は難しい。あの状況なら特に、な」

 

 それを聞いて納得するしかない。

 だけど――

 

「とまぁ、勘と言うのはそういう意味だ。決してふざけた訳ではない」

「は、はぁ……」

 

 真面目な顔をして答えるシミズさんを、ミズキさんがジトリとした目で睨んでいた。

 そこには、二人がここに来た時のような空気はない。

 それどころか、何だか、ただの上司と部下と言う感じがしない。

 

「本題に戻ってもいいかしら?」

 

 と、ミズキさんが話を戻す。

 初めより口調が崩れてきてるけど。

 

「あ、はい。えっと……」

「なら、単刀直入に。カガヤ・ユウキ君、Guardianに入る気はない?」

 

 シミズさんが言っていた申し出。

 さっきは突然の事に混乱して、それにすぐ答える事は出来なかった。だけど、今は違う。

 僕の答えは既に決まっているし、それはブレイブにも話した。

 だから――

 

『ユウキ、待て』

「ちょ、ブレイブ!?」

「おぉ!」

「……ウルトラマン」

 

 僕がGuardianに入ると答える言う前に、突如ブレイブから声がかかった。

 それに僕が驚くとともに、Guardianの二人もそれぞれの反応を見せる。が、それよりも僕はある事に気が付いた。

 ブレイブの声の雰囲気が、いつもと違う。――いや、ある意味いつも通り、なのかな。

 

『ミズキと言ったな。何故、地球人ではない……サロメ星人である君が、地球を守るGuardianにいる?』

「サロメ星人!?」

 

 サロメ星人――ブレイブが放ったその言葉に、僕は更に驚き、ミズキさんを見る。

 

「流石ウルトラマン、彼女の事は気付いていたか」

『Guardian隊長である貴方のその反応を見る限り、知っていたようですね』

「勿論、承知している」

 

 突然ブレイブが喋り始めた事、そしてミズキさんがサロメ星人だった事によって、僕はさっきよりも更に混乱していた。

 だが当のミズキさんは落ち着いたまま、ブレイブと話す。

 

「初めましてね、ウルトラマン」

『こうして話をするのはな』

「貴方の言った通り、私はサロメ星人……。けど、今の私は地球に住む一人の人間よ」

『今の君はサロメ星人ではないと?』

「ええ。それでも、この地球を守る為なら、地球に住む者として、私はその力を……技術を使うわ」

 

 ミズキさんは僕を――ブレイブを見詰めながら、その想いをぶつけた。

 

『……分かった。君がこの地球と人々を守ると言うのなら、共に戦おう』

「ウルトラマン……」

『私の事はブレイブと呼んでくれ。ユウキ、突然すまなかった』

「えっ? あ、うん、良いけど……」

 

 色々と驚いたけど、どうやらブレイブはミズキさんの想いを認めたみたいだ。

 ブレイブが話しかけた事は、この二人は僕がウルトラマンだと知っているから、まぁ大丈夫。しかし先程から、何だかシミズさんがソワソワしている気がする。

 メトロン星人のセリフも言ってたし、もしかしてこの人(シミズさん)、めちゃくちゃウルトラマンが好きなんじゃないだろうか? 

 

「それで、さっきの答えは聞かせてくれるかしら?」

「あ、はい! それは勿論――」

 

 再びミズキさんの問いかけに答えようとした、その時だった。

 二人の通信機らしき機械の音が鳴り、シミズさんが即座に手にして応答する。

 

「シミズだ、どうした?」

『隊長、再びゲルゼが怪獣を出現させました』

「来たか。怪獣はどんな奴だ?」

『該当するデータがあります! これは……宇宙怪獣エレキングです!』

 

 通信機からは男性と続いて女性の声が聞こえる。

 それにしても、今度はエレキングを送り込んできたのか。

 

「エレキングか……分かった、私達は現地で避難誘導と作戦指示をする。F-2は発進後、上空で待機だ」

『了解です!』

『お気を付けて』

 

 シミズさんは通信を終えると、ミズキさんと共に立ち上がった。

 

「すまないユウキ君、私達は行くよ」

「なら僕も一緒に行きます!」

「君はまだ正式なGuardian隊員ではない。だから私達とは……」

「さっき、ミズキさんは地球を守る為になら、過去に捨てた力を使うと言いました。そしてブレイブも、一緒に戦うと。だから僕も、自分が出来る事をやりたいんです!」

 

 僕に出来るのはウルトラマンとして戦う事。ゲルゼの怪獣が相手なら尚更だ。

 だから、今の僕がGuardianの一員でなくとも、そんなのは関係ない。

 僕も立ち上がり、両腕にブレイブブレスを呼び出す。

 

「……元々、君を勧誘しに来たのは私達だ。それに、実際に怪獣と戦えるのはウルトラマンだからな」

「それじゃあ……」

「ああ、協力しよう」

 

 そう言って頷くシミズさん。

 

「ご両親の避難は私に任せて、貴方達は行きなさい。隊長もです」

「了解だ」

「ミズキさん……お願いします。ブレイブ!」

『よし!』

 

 ミズキさんは母さんと父さんを避難させる為、部屋を出た。

 それを見送ったシミズさんは僕の方に向き直る。

 

「頼むぞ、ウルトラマン」

「はい!」

『行くぞ!』

 

 そうして僕は光に包まれた。

 

 × × ×

 

「こちらG1(ガード・ワン)、現場空域に到着した」

『G1、G2(ガード・ツー)の両機は、隊長から指示があるまで上空で待機せよ』

「G1了解」

「G2、了解です」

 

 街の上空を飛行する二機の戦闘機(F-2)。それぞれのパイロットは基地との通信を終えると、機体を旋回させた。

 するとG2が標的を発見する。

 

「G2からG1へ。10時の方向に怪獣を視認、どうします?」

「まだ攻撃許可が出ていない。我々はここで待機だ」

「目の前で被害が出ているのに……!」

 

 そう口にしたG2――イチジョウ・ハルトは今すぐにでも、眼下の街を破壊する怪獣(エレキング)を攻撃したいという衝動を抑える。

 自分達が所属する組織は軍隊ではない。しかし命令がない以上、勝手に攻撃する事は許されないと分かっているからだ。

 それに加えて、怪獣が暴れまわる街には、未だに多くの民間人が避難を続けている。そんな所に攻撃をして、下手に怒らせると被害を拡大させるだけだというのも、彼は分かっていた。

 だからと言って、ただ見ているだけと言うのも我慢ならない。早くしなければ、どのみち被害が広がるだけだ――そう考えていた時だった。

 

「ん? あれは……」

「……まさか」

 

 彼らが乗る戦闘機の側を一筋の光が通り過ぎ、怪獣の前に降り立った。

 その光が収まり、その中から姿を現したのは――

 

「ウルトラマン……」

 

 

      *

 

 

 シミズさんの目の前で変身した僕達は、光となってエレキングの前に降り立つ。

 既に、街にはかなりの被害が出ているようだ。

 

「これ以上はやらせない!」

『ああ!』

 

 エレキングに向かって構え、そこから駆け出す。

 しかしエレキングは僕達(ブレイブ)に接近される前に、発光している口から三日月状の光弾を撃ち出してきた。

 

「くっ!」

 

 咄嗟にバリアを張って防ぐ。バリアを解除すると、今度は足元を狙ってきた。

 これは防ぎようがなく、バク転で回避する。エレキングは続けて二発、三発と光弾を撃ってくるが、今度は左右に転がって避けていく。

 しかし、こうしているだけで怪獣は倒せない。

 次の光弾を避けると、反撃にブレイブスラッシュを放つ。その狙いは、レーダーの役割がある角だ。

 

「セアッ!」

 

 だが、そこを狙われるのは分かっていたのだろう。僕達(ブレイブ)が撃ったブレイブスラッシュを、エレキングは的確に光弾で相殺した。

 

『手強い……!』

「うん、ゲルゼの怪獣だからだろうね……」

『このままでは、私達が時間切れになる。どうするんだ?』

「ブレードで光弾を弾きながら、接近する!」

 

 そう言うや否や、一気にブレスからブレイブブレードを発生させて走る。

 エレキングは再び、光弾を連続で放ってくる。だけど今度は止まらない。迫る光弾をブレードで一つずつ弾きながら、その距離を詰めていく。

 あと少しでブレードが届く距離だ、このまま一気に斬り込む! 

 

 ――しかしその剣先が、エレキングを捉える事は無かった。

 

『「なっ!?」』

 

 エレキングが背を向けたかと思うと、ワンテンポ遅れて身体に衝撃が受け、吹き飛ばされてしまう。

 その瞬間、視界の端に黄色と黒の鞭のような尻尾が見えた。

 迂闊だった。

 怪獣の武器は、鋭い爪や口から吐く炎、光線だけじゃない。その長い尻尾のリーチも脅威になる。特にエレキングの尻尾は、普通の怪獣よりも危険だ。

 遠距離には三日月の光弾、接近されそうになったら尻尾による打撃……。

 

「早くあの角を破壊しないと……!」

『だが、どうやって攻撃を当てるんだ?』

 

 ブレイブの言う通り、こちらの攻撃を当てる方法がない。

 何かで気を逸らさないと――

 

『ユウキ!』

「っ! しまった!?」

 

 どうすれば良いのかを考えている間に、右脚に尻尾が巻きつけられる。

 ――まずい! 

 そう感じて尻尾へブレイブスラッシュを放とうとしたその瞬間、エレキングの得意技である電撃が僕達の身体を襲う。

 

『がああぁぁぁッ!!!』

「ブレイブッ!?」

 

 だけど、身体への痛みはこなかった。

 ブレイブが守ってくれたからだ。僕に届かないように、一人でエレキングの電撃を受け止めて……。

 

「ブレイブ、どうして!?」

『今の私は、君の身体を借りて戦っている……だから君に負担を、傷を負わせる訳にはいかない……!』

「だからって!」

『私の事は気にせず、今は目の前の怪獣を倒す事を考えるんだ……!』

 

 ブレイブ……。

 

「――分かった……今は!」

 

 エレキングの尻尾からブレイブへと流れる電気を、左腕のブレスに集中させ、それと同時にエネルギーも溜める。こちらに背中を向けた状態のエレキングは、まだその様子に気が付いていない。

 倒れたこの角度からだと角は狙えないけど、それでも一撃を与えるチャンスだ。

 

「お前の電気を倍にして返してやる!」

 

 エレキングの背中へと狙いを定め、ブレスに溜めた電気とエネルギーを一つにして撃ちこむ。それをまともに受けたエレキングは前に倒れ、同時に僕達の脚に巻き付いていた尻尾が解かれた。

 

 ライトニングカウンター。

 本来はメビウスのメビウスブレスにあるクリスタルサークルを回転させ、そのエネルギーをプラズマ電撃にして放つ技。今のはエレキングの電撃を利用して、それをエネルギーと共に撃ち出したブレイブ版だ。

 

「一回やってみたかったんだよね、この技」

『これは……メビウスの技か?』

「そ、ライトニングカウンター。って、ブレイブは知ってるよね」

『訓練生時代に一度だけ見た事がある程度、だがな』

 

 話しながら立ち上がり、エレキングを見る。

 直撃はさせたけど、致命傷とはいかなかったようだ。エレキングがタフなのか、使い慣れない技だから威力が出なかったか……。

 しかもタイミングが悪い事に、カラータイマーが点滅を始める。

 だけどこれで、初めてダメージを与えられた。

 

「ここで一気に攻める!」

『ああ!』

 

 そう交わして再び走り出す。

 エレキングも起き上がり向かってくる僕達に気付くと、光弾を放ってきた。だが、これを難無くブレイブスラッシュで相殺して走り続ける。

 それを見たエレキングは更に光弾を放つが、今度はバリアを纏わせた拳で、弾くように打ち消す。

 この距離まで接近すれば、次はさっきみたいに尻尾の一撃が――

 

「来た!」

 

 そろそろだと思った瞬間、やはりエレキングは一回転して尻尾による攻撃を仕掛けてくる。だけどそんなのはお見通しだ。

 地面を蹴って飛ぶ。そして尻尾を躱すと、刃状にしたエネルギーを右手に纏わせ、エレキング目掛けて急降下。着地すると同時に、エレキングの右角を手刀で叩き斬った。

 よし! と、わずかに油断したのがいけなかった。

 痛みで暴れるエレキングの左手が不意に当たり、それによって僕達はエレキングの目の前に倒れてしまう。それを見たエレキングは、口の部分に電気エネルギーを集中させる。

 

『まずい!』

「バリアを……!」

 

 ――だけど、それが放たれる事は無かった。

 

 突如、空からエレキングへ向けての攻撃があったからだ。

 攻撃をしてきた方向へ目を向けると、機銃を撃つ戦闘機が二機いるのが見えた。その尾翼には、Guardianのマークがある。

 

『あれは確かGuardianの……』

「うん、きっとシミズさん達が助けてくれたんだ」

 

 エレキングが戦闘機に気を取られている隙に、僕達は距離を取る。

 倒しきるなら、Guardianがいる今がチャンスだ。

 機銃を撃っていた戦闘機が二手に分かれた。左右の旋回の違いから、どうやら挟み撃ちでの時間差攻撃をするらしい。

 僕達から見て左に分かれた一機が、エレキングの足元に機銃を、胴体へ向けてはミサイルを撃っていく。

 

「ブレイブ、あの人達にタイミングを合わせるよ」

『ああ、分かった』

 

 僕達はブレイブシュートのチャージを始める。

 シミズさんが攻撃の指示をしているなら、恐らく狙うのは残っているあの角だろう。だったら攻撃が終わった瞬間に、必殺の一撃を叩き込む! 

 攻撃をしていた戦闘機は、そのままエレキングとすれ違うように飛んでいく。

 その戦闘機を追うように振り返ったエレキングに、もう一機の戦闘機が二発のミサイルを発射。一発目は胸に、二発目は狙い通りエレキングの角に命中する。

 

「今だッ!」

 

 両方の角を失い、その動きを完全に止めていたエレキングにブレイブシュートを放つ。

 ブレイブシュートはエレキングの胸に命中し、小さな爆発を起こす。それにより力尽きたエレキングは前に倒れ、爆散した。

 

『倒せたな……』

「シミズさんと、あの人達に感謝しないとね」

『そうだな』

 

 近くで旋回していた二機の戦闘機に、サムズアップをして見せる。

 と、その後ろに、今まで姿を消していたゲルゼの宇宙船が出現した。

 

「ゲルゼ……!」

「流石ですね、ウルトラマンブレイブ。まぁ今回はエレキングの弱点、それを知っている人間達の助けもあったようですが」

『一体何の用だ?』

「特に用と言う程ではありません。ただご挨拶を、と思いましてね」

「ならゲルゼ、一つ聞かせてくれ。三日前の怪獣は君の怪獣なのか?」

 

 三日前にブレイブと話した通り、ゴメスがゲルゼの使役する怪獣なのか、この地球の怪獣なのかを確かめる。

 

「あれは正真正銘、この地球で生まれた怪獣ですよ」

「ブレイブの予想通りだね……」

『ああ。しかしゲルゼ、お前が地球の怪獣を従える事も出来るのではないか?』

「ええ、容易い事ですね」

 

 やっぱり……。それが怪獣使い――いや、レイオニクスの力。

 その時、Guardianの戦闘機が残っていたミサイルで、ゲルゼの宇宙船を攻撃する。しかしそれは、僕達の時と同様にバリアによって防がれてしまった。

 

「フフフ、無駄な事を……。邪魔も入ったので、今日はここで引くとしましょう。また次のゲームを楽しみにしていますよ、ウルトラマンブレイブ」

 

 そう言って、ゲルゼの宇宙船は消えた。

 

 × × ×

 

 変身を解除した僕達は、現場に来ていたシミズさんの所へ向かった。

 

「シミズさん」

「ユウキ君。怪我は……無さそうだな」

「ええ、ブレイブが守ってくれましたから。ありがとう、ブレイブ」

『さっきも言っただろう? 私は君の身体を借りていると。だから――』

「それでも、お礼くらいは言わせてほしいな」

 

 僕はブレイブの言葉を遮って気持ちを伝える。

 今の僕達は一心同体、二人で一人だ。例えブレイブに守られるのが当たり前だとしても、何も言わずに戦うなんて僕には出来ない。

 

「シミズさんも、ありがとうございます」

「私は指示しただけだ。礼なら、パイロットの二人に言ってやってくれ」

 

 小さく笑いながら、シミズさんはそう言った。

 

「それってつまり……」

「さっきの話の続き、答えは決まっていたんだろう?」

「――はいっ!」

 

 それはエレキングが現れる前に話していた、僕がGuardianに入隊するかどうかと言う質問に対する答え。

 僕はGuardianに入隊する。

 シミズさんはあの時、僕が言おうとしていた事が分かっていたのだろう。だから助けられたお礼は、あの二機の戦闘機のパイロットに言ってくれって……。

 ――あれ? 

 

「……あの」

「ん? どうした?」

「その、パイロットにお礼を言うって事は、僕がウルトラマンだってバラしているのでは……?」

「……あ゛」

 

 どうやらシミズさんもそこは考えていなかったらしい。

 

「仕方ない、さっきの礼は二人に代わって、私が受け取っておこう」

 

 と言いながら、シミズさんは苦笑いを浮かべた。

 そこへ、ミズキさんがやってくる。

 

「ここにいたのね」

「おうミズキ、お疲れ」

「ミズキさん。両親の避難、ありがとうございました」

「それが仕事よ」

 

 ミズキさんは何でもないと言う風に答える。

 

「貴方の事をとても心配してたわ。良いご両親ね」

 

 と、ミズキさんは僕を見て微笑みながらそう言った。

 なんか結構照れると言うか、恥ずかしいな……。

 

「あ、ありがとうございます」

 

 そう言いながら頬を掻く。

 そんな僕を見て満足気に頷いていたシミズさんは、腕時計に目をやると僕に声を掛ける。

 

「ユウキ君、今日はとりあえず家へ帰った方が良いな」

 

 言われてみれば、エレキングを倒した頃にはもう陽が沈んでいた。避難していた母さんや父さんも、もう家に戻っているだろう。

 それに僕がGuardianに入隊すると言っても、まだ正式な隊員にはなっていないのだから、ここに残る訳にもいかない。

 

「分かりました」

「私が送ろう。その方が、ユウキ君にも都合が良いだろう?」

「そうね、貴方のご両親を避難させる際に『私達に任せて下さい』とは言いましたから」

 

 ですよね……。

 

「それじゃあ、お願いします」

「分かった」

「では私は、ここで被害の調査をします」

「頼む」

 

 ミズキさんに現場を任せ、僕とシミズさんは車に乗り込む。

 現場を後にして、僕の家へ向かう。

 

「そうだ、ユウキ君」

「何ですか?」

「明日の朝、ミズキを迎えに送る」

「随分と急ですね」

 

 理由は大体分かりますけど。

 明日の朝……という事は、あんまり皆――母さんや父さん、特にスズと話は出来ないかもね。

 

「まぁ時間はあまりないが、それまでにご両親を説得出来るか?」

「難しいとは思いますけど……やります!」

「すまんな」

「いえ、僕も元々Guardianに入ろうかと考えていたので、いつか通る道でした。それが今日になっただけですよ」

「そうか……。そう言ってくれると助かる」

 

 僕がGuardianに入るって言ったら、母さんと父さんは何て言うかな? 

 ……いざとなったら、全部話すしかないだろう。

 

「これからよろしくお願いします、シミズさん」

「あぁ、こちらこそ宜しく頼む」

『ユウキの両親を説得しなければ、隊員にはなれないぞ?』

 

 ブレイブがそんな事を口にするのに対し、僕とシミズさんは苦笑いするしかなかった。

 




活動報告に1話~3話までと番外編に登場したキャラクター達の設定集もあります。

Twitter:https://twitter.com/Masa_GPB
マシュマロ(感想などに):https://marshmallow-qa.com/masa_gpb
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