時間がかかりすぎて、4話を書いた気分になります……。
エレキングを倒した翌日の朝。
僕は軽く荷物をまとめて、部屋を出る。
「さて、と。それじゃあ行こうか」
『まだミズキは来ていないぞ?』
「分かってるよ。ミズキさんが来る前に、父さんと母さんに話をしないとダメだからね」
『そうだったな……』
そうして僕達は二人がいるであろうリビングへと向かう。
一階に降りると父さんはソファで新聞を読んでいて、母さんはキッチンで朝食の準備をしている。
いつもと変わらない朝の光景だ。
「ん? 今日は随分早いな、ユウキ」
「おはよう」
「あら、その荷物はどうしたの? どこかにお出かけ?」
父さんと母さんは僕に気付いて話しかけてくる。
話をするには早い方が良いのだろうけど、まだ心の準備が出来ていない。
それに――
「ちょっと話があるんだけど……その前に朝ごはん、食べてもいいかな?」
今はお腹が空いている。
*
「ご馳走様」
暫くの間、こうして皆でご飯を食べる事が出来ないと思うと、少し寂しいと感じてしまう。
だけど永遠に会えなくなる訳じゃない。ゲルゼに勝って、平和になったらまたこの家で過ごせるんだから。
「それで、話って言うのは何だ?」
母さんは心配そうな顔で僕を見て、父さんが質問をしてきた。
そろそろ話さないとね。何より、早くしないとミズキさんも来ちゃうし。
「昨日、Guardianの人達が来たよね」
「スカウトに来たんだったな。父さん達が話を聞く前に、怪獣が現れたから避難するように言われたが」
「うん、それでその話なんだけど……僕はGuardianに入隊する事に決めたんだ」
僕は真っ直ぐ父さんの目を見たまま答える。
「……そうか」
父さんが言ったのはそれだけだった。
だけどその表情は、悲しんでいる訳でも怒っている訳でもなく、少し嬉しそうだ。
「ユウキ……」
対照的に、母さんはさっきと表情は変わらない。
「勝手に決めてごめん。でも、これは元々考えてた事だし、それに……僕にしか出来ない事があるから」
「何言ってるの!? ユウキ、貴方は普通の子で――」
「キョウコ、ユウキなら大丈夫だ。ユウキ、お前にしか出来ない事ってのは
やっぱり父さんは気付いてたんだ。
「そうだね……ブレイブ」
『良いのか?』
「うん」
『分かった。初めまして、と言った方が良いかな? 私はブレイブ、ウルトラマンブレイブだ』
首に下げていたブレイブの結晶を手に取り、二人が見える様にする。
ブレイブの声を聴いた二人は、驚きの表情を見せていた。
「ブレイブか……。まさかとは思っていたが、本当にユウキがウルトラマンだったなんてな」
「僕も最初はビックリだったけどね。父さんはいつから気付いたの?」
「もしかしてと思ったのはゴメスの時だな」
まぁそうだよね。
昨日の昼食の時に、気付かれてる? と感じたのは当たっていたらしい。
と、母さんの方を見ると両手で口を覆っていた。予想していなかったのか、余程驚いたみたいだ。
「ユウキが、あのウルトラマン……?」
「黙っててごめん」
「それじゃあ、今まで戦ってきたのも……」
「うん、僕も一緒に戦ってる。今のブレイブはこの状態でいるのが精一杯だからね」
『今の私には彼がいなければ、本来の姿で戦う事も出来ない。ユウキを巻き込んでしまって申し訳ない』
僕とブレイブの言葉を聞いた母さんは、僅かに俯きながら目を閉じた。
しばらくすると、さっきとは違い力強い表情で、こちらを真っ直ぐ見つめてくる。
「そうね、ユウキならきっと大丈夫……。ブレイブさん、ユウキの事、よろしくお願いします」
『ああ、任せてくれ』
母さんはブレイブとそう交わして微笑んだ。
正直、説得するのに苦労すると思ってた。父さんは気付いてたから分かるけど、母さんは意外にあっさり終わったなぁ。
やっぱり、ブレイブに話をさせたのは正解だったかもね。
僕達の話が終わったタイミングで、家のインターホンがなった。
時間的に考えると、迎えに来たミズキさんだろう。
「迎えが来たと思う」
「Guardianの方か。なら私達も行こう」
「そうね」
見送りの為に、父さんと母さんも付いてくるようだ。
玄関から出ると、やはりミズキさんが待っていた。僕の後ろにいる二人に気付いてお辞儀をする。
「ユウキを、息子をよろしくお願いします」
「はい、責任を持ってお預かりします」
父さんとミズキさんは握手を交わす。
それを見ていた僕に、母さんが声をかけてくる。
「ユウキ、怪我をしないように気をつけてね?」
「分かってるよ。あ、それから……悪いんだけど、この事はスズには内緒にしておいて欲しいんだ」
「それは両方の意味で?」
「うん、その方が良いと思う。余計な心配はかけたくないし……」
「スズちゃん、知ったら怒ると思うけど?」
そうだろうなぁ……。
だけど――
「事実を知っても、スズはGuardianに入れないからさ」
僕がGuardianに入れるのは、ブレイブの力があるからだ。
それがなければ、僕はこうしてGuardianの隊員になるどころか、多分入ろうとも思わなかっただろう。
しかし僕がウルトラマンに変身して戦って、Guardianの隊員になった事をスズが知ったら?
きっと「私も一緒に行く!」って言うと思う。でも、それは出来ない。
「……分かったわ。スズちゃんには秘密ね」
「ありがとう、お願い」
難しいお願いをしちゃったけど、うまくやってくれるよね……?
「それじゃあ、行ってきます」
「頑張ってこい!」
「たまには連絡もするのよ?」
二人の言葉に頷いて車に乗り込む。
「行きます」
「……はい!」
僕が返事をすると、ミズキさんは車を発進させる。
――平和になったらまたここで皆と過ごせるんだ。絶対にゲルゼを倒して、この世界を、地球を守ってみせる。
× × ×
あれから、僕達はGuardianの基地に向かっている……んだけど、基地までは時間が結構かかるみたいだ。
その間は無言というのも落ち着かないから、ミズキさんの話でも聞いてみよう。
「あの、ミズキさんの事、聞いても良いですか?」
「……別に構わないわ」
「ミズキさんはどうしてこの世界に?」
これは、ミズキさんがサロメ星人だからと言うのもあるけど、単純に気になった事だ。
ブレイブは闇の力を追って、偶然この世界にやってきた。しかしこの人はどうなんだろう。
昨日聞いた言葉から、侵略に失敗してと言う訳ではないだろうけど……。まぁこの世界なら、ブレイブがいないと簡単に出来るだろうし。
「知っての通り、元は光の国がある宇宙にいたわ。……私がいた当時のサロメ星では、別次元の宇宙への転移装置を開発していたの」
「時空転移を可能にする装置……。それじゃあミズキさんはそれを使って?」
「装置の開発に反対していたサロメ人達――私達は、推進派の騙し討ちで、その装置によって強制転移させられた」
「それって……!」
「私達は彼らの実験台にされたのよ。気が付いたら別の宇宙、それも知らない星にいたわ」
サロメ星人がそんな物を開発していたのも驚いたけど、その実験に自分達の仲間を、しかも騙して使うなんて……。
「一緒に跳ばされた他の人達はどうなったんですか?」
「分からないわ。そこにいたサロメ人は私だけで、あとはその星の住人達だけだった……。私は彼らに助けられたの」
懐かしむように言うミズキさん。助けられたと言うその声音から、その星の彼らは良い人達だと分かる。
「他に行くあてもない私は、その星に住む事にした。……でも、その星での生活も長くは続かなかったわ」
「何かあったんですか?」
「突然、魔王と名乗る侵略者がやってきて、全てを破壊していった。私は彼らを助けようとしたけど、逆に宇宙艇に押し込まれて脱出させられて、次に目覚めたのはこの地球だったのよ」
「そういう事だったんですね……」
ミズキさんも侵略がどうとかじゃなくて、偶然この世界に来ただけだった。それも不幸と言えるような形で。
でも、そうか……昨日ミズキさんが言ってた事は、きっと、そういった経験があったからだろう。
だからゲルゼに狙われたこの地球を、サロメ星人としてではなく、この地球に住む一人の人間として守るって言ったんだ。
『魔王……まさか……』
そんな中、ミズキさんが言った魔王。それにブレイブが反応した。
「ブレイブ、どうかしたの?」
『いや……私の思い過ごしかも知れない、気にするな』
と言ったっきり、ブレイブは再び黙った。
その様子が少し気になって、それを聞こうとしたけど止めた。無理に聞いても言わないだろうし、それならいつか教えてくれる時まで待つのがいいだろうね。
「聞いた僕が言うのも何ですけど、ここまで教えてくれるとは思ってませんでした」
「貴方の秘密を知っているのに、私が教えないのも不公平よ。それに、気になった事をそのままにしておくのも気持ち悪いでしょ?」
「秘密って言っても、ミズキさんのと僕のとじゃ釣り合わないと思うんですけど……」
「確かにね。それでも、やっぱり貴方……いえ、貴方達には知っていて欲しかったのよ。私がGuardianの一員として、地球を守る戦いをする理由を」
そう言ったミズキさんの横顔は、どこか晴れやかな表情をしているように見えた。
*
あれからまた暫く車を走らせていると、湾岸地区の一角に広大な敷地と巨大な施設が見えてきた。
そこには、装備品やメカと同じくGuardianのマークである「GD」が描かれている。
「さ、着いたわ」
「ここが……。案外、普通の所なんですね」
「テレビみたいな基地を作ろうと思ったら、何年も掛かるわよ」
「……確かにそうですね」
言われて、僕は苦笑いを返すしかなかった。
「ついて来て、司令室に行くわよ」
「あ、はい」
僕達は車を降りてその施設へと入っていくと、何名かの職員が歩いているのが見て取れた。
職員達はミズキさんやシミズさんとは違う服装で、中には自衛隊の物や一般の作業服を着ている人もいる。
外から見た時は普通の場所だと思っていたけど、中に入ってみるとそこは、テレビで見たような光景が広がっていた。
「こっちよ」
ミズキさんについて行くと、他の物とは違う扉が見えてくる。
その前で止まったミズキさんが腰の左にある小型デバイスを取り出して、扉横の端末にかざす。すると赤く光っていたランプが、緑色に変わって扉が開く。
「戻りました」
「お、来たな。待っていたぞ」
「貴方も入りなさい」
ミズキさんに呼ばれて、部屋の中に足を踏み入れる。
まず目に映るのは正面の巨大なモニター。そしてテレビで見たような、いかにも司令室といった内装。
「ようこそユウキ君、Guardianの司令室へ」
「えっと……お邪魔します?」
「ははは、今日から君もここの一員になるんだ。そんなに固くならないでくれ」
そう言って手渡されたのは、さっきミズキさんがこの部屋に入る時に使っていたデバイスだった。
「Guardマルチシーバー。主に通信機として使用するが、隊員としての確認もこれで行っている。これは君の物だ」
「ありがとうございます」
「だが、それはまだ完全にユウキ君の物とは言えない。まずは登録を完了させる必要がある」
「認証、ですか?」
シミズさんからGuardマルチシーバーを受け取る。画面を見ると、指紋登録の文字が表示されていた。
「そこに親指を押し当てて、登録完了だ」
「ここですね」
シミズさんに言われた通り、マルチシーバーの画面に指をかざすと認証完了と画面に表示された。
どうやらここもシミズさんが言った通り、あとはこれで登録は完了だったらしい。
「よしミズキ、ユウキ君に部屋の案内を頼む」
「分かりました」
「ユウキ君は着替えがあるから、そこで着替えてきてくれ。メンバーとの顔合わせはそれからにしよう」
「はい」
そうして、僕とミズキさんは司令室をあとにする。
「貴方の部屋はここよ。入る時も
「部屋の中に忘れた、なんて事になったら……?」
「私と隊長のはどこにでも使える、要はマスターキーにもなるから開けられるけど、まずそんな事態にならないように気をつけなさい」
「……はい、忘れないようにしっかりと持ち歩きます」
ミズキさん、こういうのは凄く厳しいタイプだと分かった瞬間だった。
気を取り直して、部屋の端末にマルチシーバーをかざして扉を開ける。
部屋の中には机やベッド、棚といった最小限の物しか置かれていないようだった。そしてベッドの上に、Guardianの隊員服が畳まれていた。
「今はまだこんな殺風景な部屋だけど、必要な物は言ってくれれば用意するわ。任務に支障が出るような物はダメだけど」
「分かってます。遊びに来た訳じゃありませんから」
「それなら良いわ。それじゃあ、まずは着替えをしておいて。私はその間に取ってくる物があるから」
そう言ってミズキさんは部屋を出た。
僕は言われた通りに隊員服に着替え始める。
× × ×
着替えは終わったんだけど、ミズキさんはまだ戻らないのかな?
何か取りに行く物があるって言ってたけど……。
『終わったかしら?』
――と、考えていたタイミングで、部屋のモニターにミズキさんが映し出された。
どうやら外の端末にはこういう機能もあるらしい。
「今開けます、どうぞ」
部屋へと入ってきたミズキさんは、小型のアタッシュケースのような鞄を持っていた。
取ってくる物というのはこれの事だろう。
一体何かを聞く前に、ミズキさんはケースを机の上に置いてそれを開ける。ケースの中には見覚えがある銃が入っていた。
それはウルトラマンティガの特捜チーム「GUTS」のGUTSハイパーガンにそっくりだ。銃本体はもちろん、専用のカートリッジまである。
「ミズキさん、これって……」
「Guardian用に作った専用銃の試作品よ。まだ正式な名前はないけど、元になった通りに付けるなら……Guardハイパーかしらね」
そう言って、Guardハイパーを僕に手渡してくる。
「……触っても良いんですか?」
「良いも何も、これは貴方が使うのよ」
「僕がですか!?」
突然そんな事を言われた僕は、慌ててGuardハイパーを落としそうになった。なんとか落とさずに済んだけど……。
ミズキさんは僕の様子を気にせず、説明を続ける。
「さっきも言ったけど、それは試作品。つまり今はそれ一つしかない。だけど私達Guardianで、現場に出て扱えるのは私か貴方だけよ」
「隊員が少ないのは分かります。けど、どうして僕なんですか? ミズキさんが使えばいいんじゃ……」
「それじゃあ逆に聞くけど、貴方は本物の銃を撃った事はあるの?」
「ありません……」
「そうでしょう? それに、貴方は怪獣が出てきたら、いきなりブレイブに変身するつもり?」
その言葉に、僕はぐうの音も出なかった。
『ユウキの負けだな』
「そうだよね……分かりました。Guardハイパー、使います」
『地球の平和は、我々人間が自分達で守っていかなくてはならない』ブレイブも言っていた事だ。
僕が防衛チームであるGuardianに入った以上、いつまでもブレイブに頼ってばかりではダメだよね……。
「ホルスターはベルトの右にあるから、そこに収めて。カートリッジ用のは左にあるわ」
「ここと……ここですね」
「そう。そして今のカートリッジの種類は二つ。赤いのが攻撃用のレーザーカートリッジ、青いのが防御用のバリアカートリッジよ」
説明をしながら、ケースから二つに色分けされたカートリッジを取り出す。
カートリッジの下の方に赤いラインと青いラインが引かれた物が二つずつ、それらをベルト左のカートリッジ用ホルスターに入れる。
「さて、そろそろ司令室に行くわよ。皆待ってるわ」
「そうでした……!」
Guardハイパーをホルスターに収め、急いで部屋を出た。
*
再び司令室へと戻ってくると、既に他のメンバーが揃っていた。
「すみません、遅くなりました!」
「いや、部屋の事や色々と説明があったのだから、これくらいは想定内だ」
「そうですか……?」
僕の問いにシミズさんは笑みを浮かべながら頷く。
「緊急時に遅れなければ、それで良い。それよりも今は、皆に自己紹介を頼むよ」
「は、はい!」
僕は
目の前にいる初対面の隊員は四人。その内の一人である女性隊員が、何やら落ち着き無く――いや、ニコニコしながらこちらを見ていた。
その隣にいるメガネを掛けた隊員が「ニシハラさん、少し落ち着いてください」といったのが聞こえてくる。
「カガヤ・ユウキです。今日からGuardianの一員になりました。皆さん、どうぞよろしくお願いします!」
そう言ってお辞儀をする。すると拍手が聞こえてきた。
顔を上げると、さっき注意されていたニシハラさんが手を上げる。
「それじゃあ私から! ニシハラ・アカネ、ここのオペレーターです! よろしくね!!」
「ニシハラさん、もう少し静かにお願いします。私はコバヤシ・ハヤトです。不本意ながら、ニシハラさんと同期でオペレーターを務めています」
「ちょっとー、不本意ながらってどういう意味よー!?」
「あぁすみません、ついぽろっと出てしまいました」
「酷くないっ!?」
と、何やらニシハラさんとコバヤシさんが言い争い(?)を始めてしまう。
だけどその様子は、二人の仲が悪いとは思えないものだった。
そんな二人を止める訳でもなく、残りの隊員の一人が苦笑を浮かべながら、自己紹介を始める。
「騒がしいのがいてすまないな。私はハセガワ・カズヨシだ。航空隊のパイロットを務めている」
ハセガワさんは右手を差し出してくる。僕はそれに応え、握手を交わした。
「よろしくお願いします」
「こちらこそよろしく。それでコイツが――」
「イチジョウ・ハルト。同じくパイロットだ」
その口調と、やや鋭い目付きからクールな印象を受ける。
ちょっと近寄り難いかも……。
「コールサインはハセガワ君が
シミズさんが補足として説明してくれる。
……そうか、昨日助けてくれたのはこの人達だったんだ。
「改めて皆さん、これからよろしくお願いします!」
これから僕はこの人達と一緒に戦えるんだね……。
だけどこの人達には、僕がブレイブだというのは秘密にしなければならない。うっかり言わないように気を付けないと。