ウルトラマンブレイブ   作:まさ(GPB)

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お待たせしました、本編4話目です。(もうすぐ劇場版ジードが公開されるというのに……)
自分で書いておいてあれですが、イチジョウさんの印象がちょっと悪く見えるかもしれませんが、彼もいい人なのです。彼なりに頑張っているのです……。


第4話「守る為に」

『どうしたユウキ、今日は気合が入ってないぞ!』

「くっ……!」

 

 怪獣の尻尾の一撃を受け、地面へと倒れるブレイブ()

 その攻撃をした張本人である怪獣――凶暴怪獣アーストロンは、そんな僕達に構う様子はなく、この山岳地帯から市街地を目指して歩いていく。

 

「この、待て!」

 

 すぐに起き上がり、攻撃に使われたばかりの尻尾を掴んで後ろに引っ張っていく。

 それによってアーストロンも数歩下がるが、頭を下げる事で前傾姿勢になり、その場で踏ん張って耐えている。

 ――ゴメス程ではないにしろ、やっぱりアーストロンのパワーも凄い。

 一瞬そう思ったのがいけなかった。アーストロンが右、左にと体を捻って尻尾を振り回した事で、僕達はその遠心力によって飛ばされてしまう。

 

『このままでは、奴が街に到達してしまう』

「分かってるけど……!」

 

 ブレイブが言うように、この場所から市街地へはさほど遠くない。街に被害が出ないように、ここで倒すしかないのも分かっている。

 しかし、僕はアーストロンに対して全力で戦うことが出来ないでいた。それはコイツが、以前現れたゴメスと同じく、地中から姿を見せた怪獣だからだ。

 ゲルゼは、ゴメスが地球で生まれた怪獣だと言った。もしアーストロンがゲルゼの操る怪獣ではなく、ゴメスと同じくこの地球で眠っていた怪獣だとしたら? と、そんな思いを、僕は捨てきれずにいた。

 

『ユウキ!』

 

 ブレイブの声で我に返る。

 その瞬間、こちらに振り向いていたアーストロンが、口から熱線――マグマ光線を吐き出してくるのが見えた。右側に前転をして避けるものの、立て続けに放たれた二発目を避けることが出来ず、左肩に直撃する。

 攻撃を受けた箇所を右手で押さえるけど、それほど深いダメージではないようだ。

 ――やるしか……倒すしか、方法はないのか? 

 

「ブレイブ、怪獣の戦意を喪失させる技はないかな? コスモスみたいな……」

『……すまない。私には怪獣を倒す技はあっても、彼のように相手の戦意をなくすものはない』

「やってみなくちゃ分からないじゃないか! ヒールで癒してやれば、きっと……!」

『ユウキ……分かった。一度だけ、試してみよう』

 

 右腕の全体にエネルギーを溜め、それをアーストロンへと放射する。大人しく地中へ帰ってくれ、という願いと共に。

 当のアーストロンは自身に放たれた光に、僅かに戸惑うかの様な仕草を見せたが、再びマグマ光線を放ってきた。

 

『くッ!』

 

 ブレイブが咄嗟にバリアを張って防ぐ。

 

「ダメなのか……?」

『……残念だが、諦めるしかない』

「そんなっ!」

『いい加減にしろユウキ! 自分が守れるモノも守れなくなるぞ!』

「っ……!」

 

 ……ブレイブの言う通りかもしれない。

 僕はガイアやコスモスの地球怪獣たちみたいに、このアーストロンも倒さずに大人しくさせる事で解決出来ると、させたいと思っていた。僕が守れる――守るべきモノも忘れて。

 

「……そう、だね。ごめん、ブレイブ。僕のせいで怪我までさせて」

『フッ、これくらいなら大した事はない!』

 

 ブレイブがいつもの声音で返してくれる事に安心する。と、アーストロンが口に炎を溜め、マグマ光線を撃とうとしているのが見えた。

 しかしそれは放たれる寸前で、Guard航空隊のF-2による援護射撃によって防がれた。ハセガワさんが操る機体のミサイルが、アーストロンの胴体に命中して怯んだからだ。

 更にイチジョウさんの機体が横から攻撃する。

 発射されたミサイルは、正確にアーストロンの頭部にある一本角へと直撃。あの特徴的な角は攻撃を受けた事で先端が欠け、それによって奴は悲鳴のような鳴き声を上げた。

 

『流石だな』

「きっとシミズ隊長が弱点を教えたんだろうね」

『で……どうする?』

 

 この問いかけの意味は分かってる。

 可哀想だけど、今の僕達――いや、僕には倒すしか方法はない。守るべき人達の為に、僕はもう迷っていられないんだ……。

 ブレイブシュートを撃つ為に、ブレスへのエネルギーチャージをする。が、両腕を真横に伸ばした瞬間、アーストロンは地面を掘り始めた。

 

『む?』

 

 弱点を攻撃されて逃げ始めたのだろう。

 それを見て、ブレイブシュートの動作を中断する。

 

「逃げるのなら、むやみに倒す必要はない……よね?」

『……ああ、そうだな』

 

 地面を掘って地中に潜っていくアーストロンを、僕はただ見つめていた。

 

 × × ×

 

 Guardianの基地に戻ってきた僕達は、司令室でアーストロンの追跡を行いつつ、束の間の休息を味わっていた。

 

「アーストロンの調査はどうなってる?」

 

 そこへ、さっきまで関係各所への説明と対策会議をしていたシミズ隊長が帰ってきた。

 それにミズキさんが応じる。

 

「今朝の戦闘後、震源が移動しています。しかし街から離れているので、現在のところ危険性はありません」

「ふむ……なら今は様子を見るとするか」

「再び出現する可能性もあるので、隊員は基地内待機にさせます」

「こちらから地中深くにいる目標には手を出せないからなぁ……。よし、頼む」

「了解しました」

 

 会話を終えた二人は、それぞれの席へと腰を下ろす。すると今度は、イチジョウさんが司令室へとやってきた。

 

「隊長、なぜ怪獣の駆除命令を出されなかったのですか!」

 

 イチジョウさんは隊長の席の前で声を荒げる。

 基地へ戻ってくる間にミズキさんから聞いたのだが、アーストロンが逃げる時に隊長は攻撃の中止を伝えたらしい。恐らく僕達の動きを見てそう決めたんじゃないかと、ミズキさんは言った。

 

「今は地中で大人しくしていますが、また地上に出て暴れだしたら、今度は街にも被害が出るかもしれないんですよ!?」

「気持ちは分かるが、少し落ち着きたまえ。コーヒーでもどうだ?」

「結構です! ……あの時、怪獣を倒してさえいれば、人々は今も安心して暮らせるんです」

 

 彼が静かに放った言葉は、確かに僕の耳に届いた。

 

「あのウルトラマンが怪獣を倒さないなら、我々でやるしかないんです。彼が頼りにならないのであれば、我々だけで怪獣を倒せる程の強力な装備()を――」

「ま、待ってくださいイチジョウさん! ブレイブは頼りないなんて事はありません! それに僕達が――人間が、力だけを求めるのは反対です!」

 

 僕はイチジョウさんが言った事に抑えきれず、席を立って反論する。この時、自分がブレイブの名前を口走ってしまった事も気付かずに。

 

「ではどうして、あの時ウルトラマンは怪獣を倒さなかった? その理由が君に分かるのか?」

「そ、それは……!」

「それにあのウルトラマンが倒されてしまったら、どうする?」

「――ッ!」

 

 倒さなかった理由は当然知っている。その理由は僕自身にあるのだから。しかし僕がウルトラマンであるとも、倒されるなんて事も絶対にないとは言えるはずもなく、言葉を詰まらせる。

 

「二人ともそこまでだ」

 

 と、そこにシミズ隊長が止めに入った。

 

「地球は我々人類が、自らの手で守り抜かなければならない。イチジョウ隊員、君の自分達で危機を乗り越えるという姿勢は評価出来る。しかし怪獣を倒すのに、単純に強力な力が必要だというのは、私も賛同しかねる」

「何故ですか?」

「確かに宇宙人や怪獣といった驚異から、人々を守る力は必要だ。しかし人類にとって必要以上な力は、我々自身をも危険に晒す代物となるだろう。それは私も、そしてミズキ副隊長も望んでいない」

 

 隊長に名前を呼ばれたミズキさんはイチジョウさんをジッとを見る。

 

「私も守る為の装備は必要だと思います。ですが過ぎた力は、自分が守ろうとした者すらも傷付けます」

 

 それを聞いた彼は、苦い顔をする。更にミズキさんは続けた。

 

「ですからGuardian副隊長としても、装備開発班の一人としても、守るべき人々にまで危険が及ぶような装備は許可出来ません」

「……分かりました。失礼します」

 

 イチジョウさんは諦めるようにして、司令室を後にした。シミズ隊長は「ふぅ~」と息を吐き、ミズキさんは再び作業に戻る。

 僕も席に座ろうと、椅子に手を掛けた時――

 

「ユウキ君、さっき言ってたブレイブって、あのウルトラマンの名前?」

 

 と、ニシハラさんが突然声を掛けてきた。それによって僕は、手は(おろ)か全身の動きが止まり、冷や汗が頬を伝う。

 ――もしかして、さっき無意識にブレイブの名前を言ってて、しかもニシハラさんはそれを聞き逃さなかった……? こ、これはどうやって誤魔化せばいいんだ!? 

 

「ユウキ君?」

「え、えっと……そ、そうです! ウルトラマンって色んな人がいて、名前も沢山あるじゃないですか!? だから、この世界のウルトラマンにも名前があったらなー……なんて」

 

 いや、ブレイブの名前は僕達が出会うからあったんですけどね! 

 当のブレイブは、周りに聞こえないように『やれやれ……』とか言って呆れてるし……。

 すると再び、シミズ隊長とミズキさんが助け舟を出してくれた。

 

「確かに、ウルトラマンはかなりの数がいるからなぁ。それにウルトラマンだけだったら、初代の方が有名だろう」

「そうですね。そう言う意味では、そろそろ彼に名前を付けて、それで呼ぶのがいいでしょう」

「あぁなるほど! それでユウキ君は、あのウルトラマンをブレイブって名前で呼んでるんだね?」

 

 僕はほっと胸を撫で下ろす。

 

「えぇ、はい。その、光の勇者……って事でブレイブと……」

「光の勇者、ブレイブかぁ……うん、格好良いね!!」

 

 咄嗟に思い付いた理由ではあるけど、どうやらニシハラさんは気に入ってくれたようだ。だが今度は、その隣で会話を聞いていたコバヤシさんが参加してくる。

 

「しかしそれでは、メビウスの強化形態と被るのでは?」

 

 ――僕も最初聞いた時にメビウスっぽいな、とか思いましたよ! って言うかコバヤシさん、鋭く痛い所を突いてきますね……! ほら今ブレイブからも『うぐっ……』とか聞こえたし!! 

 さっきは助けてくれた二人も、僕がどう返すのか見守っている。

 

「もー、そんな細かい事は気にしなくてもいいじゃないの、コバヤシ君。格好良いんだから! ね、ユウキ君?」

「へっ!? そ、そうですね……!」

 

 ブレイブの名前を気に入ったのか、意外な事にニシハラさんがそう言ってくれた。

 

「はぁ……隊長、副隊長も宜しいのですか?」

「ああ、良いと思うぞ。覚えやすい方が、人々にも浸透しやすいだろうしな」

「私もさほど気にはなりません」

「お二人が宜しいのでしたら、私は口出し出来ませんね……」

「それよりも、ブレイブの名前を決めたとして、周知させるにはどうするんですか?」

 

 ニシハラさんはコバヤシさんの事を気にしていないのか、彼が話しているに構わず質問する。

 

「ん? あぁ、それはこちらで通達しておくから、その辺りは任せてくれ!」

 

 と、シミズ隊長は答えた。多分、政府やマスコミ――それとテレビの制作会社にも、かな――に連絡するのだろう。

 それにしても、僕がうっかり口を滑らせてからこの形に落ち着けたのは、シミズ隊長とミズキさんの助けがあったおかげだ……。あとでお礼をしなくちゃね。

 これで一息つける――そう思い、再び椅子に腰を下ろそうとしたその時。突然、コバヤシさんが声を上げた。

 

「これは……隊長! アーストロンと思われる震源が移動を開始、再び市街地に向かっていると思われます!」

「ふむ、早いな……。よし、ミズキ副隊長とユウキ隊員はGuardクラウンで現場に急行!」

「「了解!」」

「ニシハラ隊員は航空隊に出撃要請、コバヤシ隊員はアーストロン出現の予想地区に避難指示……いや、緊急避難命令を出してくれ」

「はいっ!」

「了解しました」

 

 シミズ隊長の指示で全員が一斉に動き出す。僕とミズキさんは司令室を出て、Guardクラウンが止められている駐車場へ。オペレーターの二人も、各所へ連絡を始めていた。

 

 

      *

 

 

 陸戦隊(僕達)が街に到着する頃には、既にアーストロンが地上に姿を見せ、人々が逃げ惑っているところだった。しかしアーストロンのいる周辺は避難が完了したのか、先に到着していたGuard航空隊のF-2が機関砲による攻撃を始めている。

 ミズキさんは僕達の武器の射撃範囲まで接近して、車を止める。この辺りも、もう人はいないようだ。

 

「行くわよ」

「はい!」

 

 Guardハイパーに攻撃用レーザーカートリッジを装填する。ミズキさんの方は後部座席から、自衛隊でも扱われている自動小銃を取り出して肩に担ぐ。

 現状、ドラマの防衛組織が使うような武装は、僕が渡されたこのGuardハイパーだけだ。ミズキさんが持つサロメ星の技術を使って作られた物だが、それでも巨大な怪獣に対しては十分とは言えない。

 ――イチジョウさんが言う事も、確かに分かる。

 

「分かるけど……だけど!」

 

 Guardハイパーをアーストロンに向けて撃つ。やはり命中はするものの、こちらを気にする様子はなく、その歩みを止めない。

 隣でミズキさんも自動小銃で攻撃するけど、こっちは普通の武器だ。だからGuardハイパーより威力が低いのは当たり前で、全くと言っていい程にダメージを与えられずにいた。その事にミズキさんは、普段ではしない舌打ちをする。

 それでも手を休める事なく、アーストロンに向けて更に射撃していく。すると、僕とミズキさんのマルチシーバーに、ハセガワさんから通信が入る。

 

『航空隊から陸戦隊へ。これよりミサイルによる攻撃を開始する』

「了解しました」

 

 これを聞いて僕達は爆風を受けないように、建物の影に身を隠す。

 二機のF-2から一発ずつ発射されたミサイルは両方とも命中するが、それでもアーストロンは一時的に怯んで止まっただけで、完全に進行を止める事は出来なかった。

 アーストロンは反撃にと、マグマ光線を航空隊のF-2に向けて連続で放つ。二機は回避していくけど、それでもギリギリだ。

 

「ミズキさん!」

「……そうね、行きなさい」

「ありがとうございます! よし……ブレイブ!」

『ああ、行くぞ!』

 

 Guardハイパーをホルスターに収めて、両腕にブレスを出現させる。

 だけど変身しようとした僕のその頭上で、アーストロンが放ったマグマ光線が一機のF-2を(かす)めた。直撃は避けた為、すぐに爆発はしないけど、機体の後部から炎と煙を吹いている。

 マルチシーバーからハセガワさんが叫ぶのが聞こえる。

 

『イチジョウッ!』

『クソッ……――』

 

 イチジョウさんが乗る機体の高度が下がっていく。

 間に合え――! 

 

「うおぉぉぉッ!!!」

 

 イチジョウさんのF-2を追うように走りながら、右腕を前に出して変身する。

 

 × × ×

 

「クソッ……こんな所で……!」

 

 Guardian航空隊の二番機パイロットを務める彼――イチジョウ・ハルトは警報が鳴り響くコクピットで悪態をつく。

 ――せめて、あの怪獣と刺し違えられたなら……! 

 悔しさからか、脳裏にその思いが浮かぶ。しかし機体は推力を既に失い、墜ち始めていた。墜落するなら被害がなるべく少ない場所に――そう考えて機体を操る彼に、航空隊のリーダー、ハセガワ・カズヨシから通信が入る。

 

『イチジョウ、脱出できるか!?』

「脱出は出来ますが、このまま機体を落とせば街に被害を及ぼします。それだけは――」

『いいから脱出しろ!』

 

 イチジョウの言葉を遮ってハセガワは命令する。

 しかし運が悪い事に、アーストロンは墜ちていくF-2に向けて、もう一度マグマ光線を撃ち放った。脱出したとしても間に合わない。

 だがF-2とマグマ光線の間に、割って入ってきた光があった。その光はイチジョウの機体を抱くようにしてマグマ光線から守る。次第に輝きが収まると、その中から赤い巨人が姿を現した。

 

「……ウルトラマン」

 

 イチジョウの無事を確かめるかのように見ていたウルトラマンブレイブは、彼の機体を広い場所に置いて立ち上がり、アーストロンに振り向いて構えた。その後ろ姿を見たイチジョウは、自分はなんて無力なのかと思い知らされる。

 

「クソ……クソォォォッ!!!」

 

 

      *

 

 

 間一髪、イチジョウさんを助ける事に成功した。機体のダメージは思ったよりも酷い訳じゃないらしく、爆発もしないようだ。

 僕は後ろに迫るアーストロンに向き合って構える。だけど足元にまだイチジョウさんがいるから、ここで戦う事は出来ない。

 

「シァッ!」

 

 アーストロンを正面から飛び越えるようにジャンプをし、頭上を超える辺りで空中で身体を捻って頭を掴み、そのままの勢いで引き倒す。僕達(ブレイブ)が二回バク転をして距離を取るその間に、アーストロンは起き上がる。狙い通り、アイツの注意をこちらに引きつけられたようだ。

 

『ユウキ、今度は行けるな?』

「……うん、大丈夫!」

『よし!』

 

 今朝の事は完全に吹っ切れてはいない。だけどこれ以上、被害を出すわけにもいかない……。

 気を引き締め直して、アーストロンと向き合う。ブレイブにはガイアやコスモスのような力はない事から、倒す以外の選択肢がないのも今朝の戦いで分かっている。

 だから僕は、僕達は――

 

「ふぅ……はぁっ!!」

 

 せめて全力を尽くして、アーストロンを倒す。それが僕達に出来る、唯一の事だ。

 

「シュアッ! タァッ!」

 

 アーストロンの胸に左右でストレートパンチを打っていく。少し怯むものの、すぐに反撃として爪で攻撃してきた。だがこれを(くぐ)り抜け、背中に一撃蹴り込むと、その勢いでアーストロンは地面へと倒れる。

 今朝の戦いで弱点の角を折られたせいか、あの時よりもわずかにだけど弱っているような気がする。……アーストロンを長く苦しませない為にも、早く倒す方がいいだろう。だがブレイブブレードを使おうと、ブレスを構えたその時だった。

 ブレイブがいる所ともアーストロンが倒れた所とも違う、別の場所で突如、土煙が吹き上がる。

 

「何だ!?」

『新しい怪獣だと!?』

 

 そう。ここに来て新たに、もう一体の怪獣が姿を見せた。それも、ブレイブたち光の国がある宇宙にはいなかった怪獣だ。乳白色と黒の表皮、ゴメスを超える巨体と肉食怪獣らしい大きな口。

 肉食地底怪獣ダイゲルン。

 この怪獣を僕は知っている。いや、この世界だからこそ知っている、と言った方が正しいんだろうね。

 

『コイツは……?』

「そんな、ダイゲルンまでこの世界にいるのか!?」

『ダイゲルン? ユウキ、どんな怪獣なんだ?』

 

 ブレイブが目覚めてから、まだそんなに月日は過ぎていない。ダイナを知っていても、それに出てくる怪獣までは把握していなかった。

 

「コイツはウルトラマンダイナと戦った地底怪獣。この見た目通り、顎や筋肉が凄く強くて、あの大口でダイナを持ち上げた程だよ……」

『なるほど、以前戦ったゴメスよりも、手強い怪獣と言う事か』

「何よりダイゲルンは肉食で人間も狙うから、こっちも放っておけない……!」

『二体の怪獣が相手か……厄介だな』

 

 ブレイブに説明を一通り終えて、ようやく起き上がったアーストロンと新たに現れたダイゲルンの両者を見る。二体とも、互いとブレイブ(僕達)を見て威嚇していた。

 僕はどちらが先に動くか見ていると、ダイゲルンがアーストロンに向かっていく。

 アーストロンは近付いてくるダイゲルンに対してマグマ光線を放つ。しかしダイゲルンも口から火炎を放ち、それは相殺するどころか、アーストロンのマグマ光線を押し返してダメージを与えた。

 再び倒れたアーストロンに近付くダイゲルン。

 

「何を……ま、まさか……!?」

 

 立ち上がろうとするアーストロンを踏みつけ、更にダメージを与えたダイゲルンは、弱り動けなくなったアーストロンの首元に噛み付く。

 それによって断末魔を上げて暴れるアーストロンだが、ダイゲルンのパワーには勝てず、遂に沈黙した。

 

『アーストロンも弱ってはいたが、しかし……!』

「やっぱりあの大口は気を付けないとね……」

『捕まったら終わり、だな』

 

 ダイゲルンは動かなくなったアーストロンをそのまま放り投げると、今度は僕達に狙いを定めた。さっきみたいに口から放つ火炎で攻撃をしてくるが、これはバリアを使って防ぐ。

 コイツに接近するのは危険だけど、そうは言ってられない。

 ダイゲルンの胸に右足での飛び蹴りを仕掛ける。着地して畳み掛けるように、左足で腹部を蹴り、続けて右ストレートパンチを繰り出す。

 これにダイゲルンは怯んで後退(あとずさ)る。

 

「まだまだ!」

 

 飛び上がってダイゲルンの頭を殴りつける。更に追撃しようとするが、ダイゲルンの巨体から繰り出される体当たりのような頭突きで、逆に押し返されてしまった。それにより隙が生まれ、攻撃のチャンスを与えてしまう。

 ダイゲルンはその大口も驚異だけど爪も鋭く長い。その爪が、ブレイブの胸を切り裂く。

 

『ぐ、ぁ!』

「ブレイブ!」

『いや、この程度なら平気だ……!』

 

 そこまで深手にはなっていないようだ。しかし今の攻撃によって、地面に膝をついたのがマズかった。ダイゲルンがその大口を開けて、ブレイブに噛み付こうとしてきた。

 

「うわっ!?」

 

 ギリギリのところで顎を掴んで止める。目の前には唾液が大量に分泌された、ダイゲルンの大口。

 

『コイツ!』

「押し返せない……!」

『この体勢では無理だ! 何とかしなければ……』

「……っ! あれは!」

 

 カラータイマーが点滅を始め、もう限界だという瞬間、ダイゲルンの背中にハセガワさんのF-2から発射されたミサイルが命中する。ブレイブ(僕達)はこの隙を突いて、攻撃に怯むダイゲルンから離れた。

 

『何とか助かったな……』

「はぁ、はぁ……うん……」

 

 ブレイブの言う通りピンチから脱したものの、まだダイゲルンはピンピンしている。しかもこちらの残り時間はもう(わず)かだ。

 今の僕達では、ダイゲルンのあの身体をブレードで攻撃しても、一撃で倒すのは難しい。どうするかと考えていると、僕はふと、ある物を使う事を思いついた。

 

「ブレイブ、ウルトラ念力で物体を変化させる事って出来る?」

『……ああ、あまり巨大な物でなければ可能だ』

「よし!」

 

 ブレイブとのやり取りが終わると同時に、ダイゲルンから火炎が放たれる。これを回避するがダイゲルンには向かわず、そのままイチジョウさんのF-2の元へ。

 イチジョウさんは脱出してコクピットにいないのを確認して、僕はF-2にある一つのミサイルを手に取る。

 

『これを使うのか?』

「うん、そしてこれを……」

『……なるほど、()()にして使うんだな!』

「そういう事!」

 

 手にしたミサイルを回しながら、ブレイブがウルトラ念力で変化させていく。さっきまで普通のミサイルだった物が、ウルトラランスに似た槍状の武器になった。出来上がったランスにエネルギーを付与させる。

 

「よし……この一撃で!」

 

 ダイゲルンの胸に向けて全力で投擲(とうてき)する。

 

「シュアァッ!!」

 

 それは狙った場所へ、見事に直撃して爆発した。かなりのダメージを与える事に成功するものの、まだダイゲルンは倒れなかった。

 それならば、と即座にブレスにエネルギーを溜めて、ランスが命中した部分にブレイブシュートを撃ち放つ。

 

「ハッ!」

 

 ブレイブシュートも同じ場所に命中し、遂にダイゲルンは倒れ大爆発を起こした。

 だけどこれで終わり、という訳じゃない。ダイゲルンに倒された、アーストロンがまだその場に残っている。そのアーストロンに近付いてみると、驚いた事に、まだ少しだけ息があった。

 

『……ユウキ』

「楽にしてあげよう……ブレイブ」

『……ああ、そうだな』

 

 空に運ぶため持ち上げようと、更にアーストロンに近付いた。しかし突如、背後から火炎らしき攻撃に吹き飛ばされる。

 

『何だ!?』

「また別の怪獣!?」

 

 攻撃してきた方に目を向けると、そこには三体目の怪獣がいた。

 アーストロンよりも大きな頭頂部の角、鋭利な牙と爪、そして刺の生えた(こぶ)が先端にある長い尻尾。宇宙凶険怪獣ケルビムだ。さっきの攻撃は、ケルビムが放った火球“弾道エクスクルーシブスピット”だろう。

 

「何でコイツがここに……?」

『恐らく犯人は、アイツだ』

「え?」

 

 ブレイブにそう言われ空を見上げる。すると何もいなかった場所に、ゲルゼの宇宙船が現れた。

 

「ゲルゼ……」

「ご機嫌よう、ウルトラマンブレイブ」

『このケルビム(宇宙怪獣)は貴様が使役しているのだな?』

「ええ、その通りです」

 

 もうブレイブのエネルギーは残り少ない。そんな時に、新しく現れたケルビムを相手にするなんて無理だ……。

 しかしケルビムはあれ以降、攻撃をしようと動かない。

 

「警戒しなくても、今回は貴方達と戦うつもりはございません。そこに倒れている怪獣を、こちらで引き取ろうかと思いましてね」

『何?』

「――まさか!」

 

 ゲルゼは以前、ブレイブに地球の怪獣も従える事が出来るかと聞かれ、それに対して容易(たやす)い事だと答えた。引き取るというのがその事だとしたら……! 

 すぐに起き上がってブレイブシュートをアーストロンに撃とうとするが、ケルビムの火球と“超音速クラッシャーテイル”と呼ばれる長い尻尾の一撃で妨害されてしまう。アーストロンは光となってゲルゼの宇宙船に回収され、僕達は阻止する事が出来なかった。

 

「ここで貴方達を倒してしまっても構いませんが、それではゲームとして面白くありません。今回はここで失礼致します」

『ま、待て!』

 

 ゲルゼはそれだけを言うと、ケルビムも回収して再び姿を消した。

 

「く……」

『……ユウキ、私達も一体化を解除しよう』

「あぁ……」

 

 ブレイブに促されて僕は元の姿に戻る。だけどすぐにはミズキさんのところには戻らず、ダイゲルンが倒れた場所と、さっきまでアーストロンが倒れていた場所を見ていた。

 

『ユウキ、大丈夫か?』

「うん、体は大丈夫だよ」

『体もだが、君の気持ち……心の方だ』

「……そう、だね」

 

 僕が今朝、アーストロンとの戦いに集中して倒していれば、こうはならなかったのかもしれない。その事を今悔やんでも、起こった事の結果は戻らない……。

 きっとゲルゼは、アーストロンを完全な状態にして戦いに出してくるはずだ。なら、僕の――僕達のする事は一つ。

 

「ブレイブ……ゲルゼがあのアーストロンが出てきたら、今度こそ全力で戦う!」

『……ああ、私達が出せる全力で、奴を――アーストロンをゲルゼの支配から解放するんだ』

「うん、やろう! 僕達で!」

『その意気だ!』

 

 × × ×

 

 あれから少ししてミズキさんのところに戻ると、そこにはイチジョウさんの姿もあり、この場の後処理は一旦、自衛隊に任せて、僕達は基地に戻る事になった。イチジョウさんの機体の回収は別のチームがやるとの事らしい。

 

「戻りました」

「ええ、お疲れ様。イチジョウ隊員、貴方は後ろに」

「……了解です」

 

 ミズキさんに促され、イチジョウさんはGuardクラウンの後部座席に乗り込む。

 運転席に乗ったミズキさんは、マルチシーバーで司令室に通信を取った。

 

「こちらミズキ。イチジョウ、ユウキ両名と共に、これより基地に戻ります」

『了解しました』

『シミズだ。みんな無事だな?』

「はい、全員無事です」

 

 シミズ隊長はこの報告に「良かった」と胸を撫で下ろす。するとそこに、イチジョウさんのマルチシーバーにハセガワさんからの通信が入る。

 

『イチジョウ! 怪我はないか!?』

「申し訳ありません、大事な機体を……」

『機体の事はいい! お前が無事に帰ってきてくれれば、それで良いんだ!』

「……はい」

『はぁ……。イチジョウ、戻ったら説教の続きだ」

 

 そう言ってハセガワさんは通信を終える。

 

『ハセガワ君も大変だな……』

「……被害などの詳細は戻ってから報告書にします」

『ん、分かった。気を付けて帰って来い』

「了解」

 

 ミズキさんの方もシミズ隊長との通信を終えて、基地へ向けて車を発進させるのだった。

 




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