「シュアッ!」
ある日、僕は再びブレイブが戦っている夢を見ていた。
しかしそれは以前の夢とは少し違った。
「ハッ! セアッ!!」
ブレイブが戦っている場所は地球じゃない。知らない惑星だ。
そして戦っている相手も、見知らぬ黒い巨人だった。その黒い巨人はウルトラマンではない。
禍々しい闇の存在……以前ブレイブが言っていた、強大な闇だというのはこの黒い巨人の事なんだろうか?
「フン!」
「クッ……!」
黒い巨人の一撃がブレイブを襲う。
ダメージを負って膝を突いてしまったブレイブ。カラータイマーも点滅をしていた。
『ブレイブ――立って!』
僕は叫ぶ。
それが届いたからなのかは分からない。だけど彼は立ち上がった。
そして胸の前で腕を交差させると、ブレイブの身体が光に包まれる。
「ハァッ!!」
「なに!?」
その光が消えたかと思えば、彼は全身に見慣れない黄金の鎧を
× × ×
「ぁ……」
目が覚めて最初に見えたのは、Guardianの隊員それぞれに割り当てられている部屋の天井だった。
『おはよう、ユウキ。今日もいい朝だな』
「……」
『どうした?』
ブレイブはいつも通りの調子で話しかけてくる。
さっきの夢はブレイブの過去の戦いなんだろうか……?
「ブレイブ、聞きたい事があるんだけどいいかな?」
『何かあったのか?』
「うん。実はさっき夢を見たんだけど――」
僕はさっきの夢の内容をブレイブに話す。
『黒い巨人と戦う私が、黄金の鎧を纏っていたと』
「もしかしたらブレイブの昔の戦いだったんじゃないかって思うんだけど……」
『そうだな。恐らくそれは、私がこの状態になる前の最後の戦いだろう』
僕が見たあの夢が、僕と出会う前のブレイブの戦いだったんだ……。
『君がその時の戦いを夢で見たのは不思議だが……いや、それよりもその夢で見た黄金の鎧についてだな。この際だから話しておこう』
「あれってなんだったの?」
『実はブレイブブレスはあれが本来の形状ではない。元々は違う形をした物だったんだ』
「え、そうなの?」
彼はブレイブブレスについての説明を始める。
『私がこれを手にしたのは、調査任務の為に訪れたとある惑星だった。その惑星には古い時代から存在したと思われる神殿があり、私はその神殿の最深部まで入って行った』
「それって大丈夫だったの……?」
『ああ、危険性がないというのは事前調査で分かっていたからな。ともかく、その神殿で私は朽ち果てた古代の戦士が身に着けていた黄金の鎧と、手にしていた黄金の剣を見つけたんだ』
それが本来のブレイブブレスの姿だったのだ、とブレイブは語った。
僕としては黄金の鎧を纏ったブレイブを夢で見ている。だけど、あのブレイブブレスが違う形の武具だったと言われてもイマイチ飲み込めていない。それに、他にも気になる事があった。
「朽ち果てた古代の戦士が身に着けてたって言ってたけど、ブレイブはどうやってそれを手に入れたの?」
『調査の途中、その惑星に飛来してきた宇宙怪獣が襲い掛かって来てな。その宇宙怪獣と戦っていた時に、光となった武具が私の両腕に一体化して今のブレイブブレスに変化したんだ』
「そうだったんだ……そう言えば、夢――って言うか過去の戦いで鎧しか着てなかったけど、剣は使わなかったの?」
僕の質問に『それには理由がある』とブレイブは言った。
『ブレイブブレス自体はすぐに扱えるようになったが、本来の状態である鎧と剣は簡単には扱えなくてな。鎧の方はどうにか出来たんだが……』
ブレイブ
そういうのもあってブレイブは剣を使う事が出来ず、結果として僕が夢で見た黒い巨人との戦いも鎧だけだったと言う。
「それって僕が変身した状態でも使えるのかな?」
『どうだろうな……ユウキとの変身でブレスは問題なく使えたが、武具として使えるかどうかはまだ未知数だ』
「あまり当てにしない方がいい、って事か……」
『そういう事だ』
しかしそうは言っても、ゲルゼが送り込んでくる怪獣は強力なものになっていく。今のままでは勝てない相手が出てくる可能性だってあるだろう。
そうなってしまった時の為に、その鎧や剣が使えるようになっている必要があるんじゃないかと考えてしまう。
――だけど、確かにその武具の力に固執して、本来の力を発揮出来ないんじゃ本末転倒だというのは分かる話だ。
「今のままでも、今まで以上に戦えるようにならないとね」
『ああ、共に頑張ろう!』
決意を新たにした僕達は、早速訓練室に向かおうとして――怪獣が現れた事を知らせる警報が鳴り響いた。
*
「遅くなりました!」
指令室に入ると、既に中央のモニターには怪獣の姿が捉えられていた。
しかしいつもとその様子が違う。
「揃ったな。では状況説明を始める――と言いたいんだが……」
全員が揃ったのを確認したシミズ隊長がモニターに目を向ける。
「怪獣のデータは出せるか?」
「少し待ってください。近いものとしては……パワードドラコが該当します」
「やはりそうか……」
シミズ隊長はその名を聞いて苦い顔をする。きっと僕も同じ表情をしているはずだ。
パワードドラコ――サイコバルタン星人がウルトラマンパワードの能力を測るために送り込んできたドラコで、メガ・スペシウム光線までをも跳ね返す身体や、パワードに大きなダメージを与えるほど鋭い両腕の鎌を持つ強力な怪獣だ。
「データにあるパワードドラコとは多少違うようですが」
ミズキさんが冷静に言う。
そう――今モニターに映っているパワードドラコは、サイコバルタン星人が送り込んだ個体とは違い、体表の色はむしろ通常のドラコと同じものだ。
「恐らくアーストロンやゲランダのように、今回もゲルゼが改造した個体だろうな。出現前に反応は観測されたんだよな?」
「はい。ゲルゼが怪獣を送り込んでくる際の反応は観測してます」
シミズ隊長の問いにコバヤシさんが答える。
「ならパワードドラコより強くなっている可能性も十分にあり得るな……ミズキ副隊長、
「問題ありません」
その返答にシミズ隊長は「よし」と頷いた。
「それにしてもこの怪獣、動きませんね……」
ニシハラさんが言うように、ドラコは微動だにせずただ立っているだけだ。
何かを待っているのだとしたら恐らく……。
「恐らく、このドラコは相手が来るのを待っているのだろうな」
「待ってる……ですか?」
「ああ。ウルトラマン――ブレイブをな」
そう言って、シミズ隊長は僕の方にチラリと視線を送ってきた。
パワードドラコと同等の力を持っているなら危険な相手なのは間違いないだろう……。それでも僕達は、黙ってあのドラコを放置していくわけにはいかない。
「――陸戦隊と航空隊は直ちに発進! 現地にてドラコの警戒、監視に当たれ!」
シミズ隊長の号令に、僕達はそれぞれに「了解!」と言って指令室を後にした。
× × ×
住民の避難が完了した街。地上ではGuardクラウンから降りた僕とミズキさんが、空中ではハセガワさんとイチジョウさんのF-2が旋回して、ドラコの警戒をしていた。
僕達――Guardianがこうして周囲に展開してもドラコは全く動かずにいる。
「やはり隊長が言った通り、あの怪獣はウルトラマンが現れるのを待っているようね……」
ミズキさんは視線をドラコに向けたままそう言う。
『……ユウキ』
「うん。ミズキさん、僕……行きます」
あのドラコ――いや、ゲルゼの狙いが
「――私も少し、パワードドラコという怪獣がどういった敵だったかを見たわ。気を付けなさい」
「はいッ!」
『よし、行くぞ!』
僕はブレイブブレスを両腕に出して変身する。
目の前に現れた
「あのドラコがパワードドラコと同じような強さなら、かなりの強敵のはずだよ」
『ああ。私も過去に、パワードに深手を与えた怪獣として戦闘記録を見た事がある。少しの油断で命取りになる相手だ』
「普段以上に間合いに気を付けないとね……」
あの鎌の一撃をまともに受けたら、僕達だってどうなるか分からない。可能な限りドラコの攻撃は回避しないと……。
『だが、あまり消極的では私達の時間切れになる』
ブレイブが言ったように、こちらには時間の制限がある。それを気にして攻撃を焦れば、逆にドラコの一撃を受けてしまうだろう。
かと言って、
本当に厄介な相手だ。
そんな事を考えている間に、ドラコの方がゆっくりと歩みを進めてきた。
『考えている暇はないな……』
「そうだね」
僕は大きく息を吐く。
「――行くよッ!」
迫るドラコの懐へ飛び込み、右ストレートパンチを繰り出す。しかし――やっぱりと言うべきか――効いている様子はない。
だったら、と今度は左右の連続パンチで攻撃する。だがこれも、ドラコには通用していないようだった。
『ユウキ!』
「ハッ……!」
ブレイブの声と同時に、
冷や汗が出るのを感じながらも、再び攻撃してくるドラコの腕を受け止め、一度距離を離すためにドラコの身体を手で押し退ける。
僕達が離れたタイミングで、ドラコへGuardianのみんなの援護が入る。それでもドラコの体表には傷一つ付かない。
『堅いな……!』
「これならどうだ!」
今度は右腕にブレイブブレードを発現させて斬りかかる。だけど、その光の刃さえもドラコは片腕で受け止め、逆にもう片方の腕で僕達は突き飛ばされてしまった。
ドラコはすぐさま倒れた僕達へと、手の鎌を
「危なかった……!」
『まだ来るぞ!』
「クッ!」
起き上がると同時に、再び飛んでくる鎌をブレイブバリアで防御する。しかしこれも完全に弾く事は出来ず、なんとその鋭い刃がブレイブバリアに突き刺さった。
『これを何度も防ぐのは厳しいぞ!?』
そんな事を言いながら焦りを見せるブレイブ。
そこへ、ドラコの頭部に向けてもう一度、航空隊とミズキさんからの援護射撃が行われる。Guardクラウンのレーザー砲による攻撃の後、二機のF-2からミサイルが撃ち込まれた。
ミサイルの爆炎でドラコの視界が遮られた瞬間に、僕達は追撃として同じくドラコの頭部へ――ここなら反射もされず、いくら堅い体表でも効くはずだと思い――ブレイブスラッシュを放つ。
しかし当たると思っていたその攻撃を、ドラコは首を
「なっ!?」
『今のを見切っていたのか!?』
「このままだと……」
時間が心配だ――そう考えている内に、ドラコが歩みを進めてくる。
――こんな時、夢で見た力が使えたら……。
そこまで考えて僕は頭を振る。使えない力に頼ろうとするのはダメだ。
「ブレイブ……こうなったら一か八かの賭けになるけど、ツインブレードを使おう」
『確かに強力な技だが……それで倒せなければやられるのは私達だぞ?』
「どっちにしてもこのままじゃ僕達の時間切れだ。それに、負ける事を前提に考えて戦うなんて――ウルトラマンらしくないでしょ?」
『……フッ、そうだな!』
気合を入れ直した僕達は、両腕にブレイブブレードを発現させて迫るドラコと向き合う。
『よぉし――』
「行くぞォ!!」
一気にドラコの懐に飛び込むと同時に、左右のブレイブブレードで横に斬る。さっきと違って受け止められる事はなかったが、ドラコの様子から思ったほどダメージを与える事は出来なかったようだ。
だけど僕達はツインブレードの攻撃を止めない。
今度は回転しながらのツインブレードによる斬撃と、回し蹴りを
「これで――どうだ!」
ドラコの頭を後ろ回し蹴りで攻撃した後、両手を組んでツインブレードの刃を重ねる。そのまま回転の勢いを利用して、強烈な斬撃をドラコの胴体に繰り出す。
これなら流石にダメージを受けたはずだ――そう思いながらドラコに目を向けた。
しかしこの斬撃を受けても、ドラコの体表には
「回復能力まで!?」
そして遂に、ブレイブのカラータイマーが点滅を始めてしまった。
『クッ、時間が……!』
「……まだだ、まだ諦めない!」
『ユウキ……――ッ!』
今までの反撃なのか、ドラコが鎌を出した左腕を振り下ろしてくる。
この攻撃を受け止めようとツインブレードを交差させて鎌の前に出すが、なんとドラコの鎌を受けたツインブレードの刃が両方とも折れてしまった。
「そんな!?」
『これ程の切れ味とは……!』
目の前の状況に驚く。
だが当然、ドラコはそんな僕達を気にするはずがない。今度は右腕の鎌を振り下ろすのが見えた。
「しまっ――!」
しかしツインブレードを折られた事で反応が遅れた僕達は、その攻撃を防ぐ事も避ける事も出来ず、まともにドラコの鎌の一撃を胸に受けてしまった。
× × ×
ウルトラマンブレイブが膝を突く。ドラコの攻撃を受けた左胸からは光が漏れ出ていた。
なんとか立ち上がろうとするブレイブだったが、予想以上のダメージに耐えられずそのまま倒れ、その身体は光となって消えてしまう。
そしてウルトラマンブレイブが消えた場所には、同じように倒れているカガヤ・ユウキの姿があった。
「あれは……!」
「カガヤ隊員!?」
上空からその状況を見ていた航空隊の二人――イチジョウとハセガワは、倒れるユウキを見て驚愕する。いや、それは航空隊だけではない。指令室にいるオペレーターのコバヤシとニシハラも、この状況に言葉が出ずにいた。
「――ミズキ副隊長、ユウキ隊員の救助を頼む!」
「了解!」
その中でシミズは素早く指示を出し、ミズキもそれに応える。互いにその内心は穏やかではないのだが、二人は冷静であるように努めた。
そしてその声に反応して他にも動く者がいる。ハセガワだ。
「副隊長、援護する!」
「頼みます」
「イチジョウ!」
「――は、はい!」
ユウキを助けに向かったミズキから気を
勿論その攻撃の効果はないが、ドラコが航空隊へと意識が向いている隙にミズキは気を失っているユウキをGuardクラウンへと乗せ、急いでその場を退避した。
「こちらミズキ。ユウキ隊員の救助に成功しました」
その通信にシミズはひとまず胸を撫で下ろす。しかしまだ安心は出来ない。
「ユウキ隊員の状態は?」
「――至急、医療班を待機させててください」
「まさか……!」
「……今の彼には、ウルトラマンブレイブが最後に受けた傷と同じものがあります」
この報告に全員が息を呑む。
険しい表情のシミズは「分かった」と返すと、航空隊にも撤退を告げる。ユウキが深手を負った事もあり、これ以上は他の隊員も危険だと判断したからだ。
しかし、イチジョウのF-2はドラコへの攻撃態勢に入ったままだ。
「イチジョウ! 撤退命令だ!」
「俺はまだやれます! Mk.82でこの怪獣を倒せば……!」
彼はドラコの身体――ブレイブが傷を付けた個所へ狙いを定め、機体に搭載していたMk.82を全て投下した。
投下されたMk.82は全弾命中するが、やはりドラコは平然としたまま立っている。既にブレイブから受けた傷がある程度回復していて致命傷には至らなかったようだった。
「イチジョウ、これ以上は無理だ!
「……クソッ!」
撤退するハセガワの後に続くイチジョウは悔しさを
その彼らの後方では、大きく翼と両腕を広げて